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暴言
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十月
ーーーーーー
「またエジャートン伯爵とだわ」
「もしかしたら今日は他の方とも踊られるかもしれなくてよ」
「後でお声をかけてみようかしら」
トマスがダンスを終えて、ポーレット公爵夫人の下へ歩いて行く。
「やぁ、ミリアム」
「お久しぶりですトマス様。トマス様が踊られるのは久しぶりでは?」
「そんな事はないよ。先日の夜会でも踊ったしね」
「あの・・」
シンディが紹介して欲しそうにポーレット公爵夫人に声をかける。ブリジットも早足でやってきた。
「トマス様、こちらはストックトン侯爵夫人のシンディ様とブリジットさんですの。グラフトン公爵のトマス・グラフトン様です」
「お目にかかれて光栄です。どうかブリジットとお呼び下さい」
先程までとはうって変わり、柔かな笑みを浮かべカーテシーするブリジット。デイビッドは緊張から少し青褪めているようだ。
「今日、王立美術館に行ってきたんだ。ミリアムがパトロンになっている画家がいただろう? とても良い風景画だった。今度うちの別荘の絵を描いてもらえないかと思ってね」
「それは喜ぶ事でしょう。今展示している風景画ならハリーですわね」
「そう、色使いがとても繊細だし絵の中に風を感じたんだ。彼は将来が楽しみだね」
「トマス様、私も先程からミリアム様に同じ事を申し上げておりましたの」
「あの、トマス様は絵画がお好きなのですか? 是非お話をお聞かせいただけませんか?」
シンディとブリジットがトマスに声をかける。トマスは笑顔を見せて、
「絵画も好きだけど、私はどちらかと言えば彫刻の方が最近は気になっているかな」
ミリアムとトマスは、絵画と彫刻のどちらが素晴らしいか議論をはじめてしまった。他の者達は間に割り込む事ができず、黙って話を聞いていた。
「すっかり長話をしてしまった。ジョージに挨拶をしたら失礼させて頂こうかな」
来たばかりでもう帰ると言うトマスに、ミリアムが苦笑いを浮かべた。
「今日の目的は達成されたと言う事ですの?」
「そう言うことかな」
「でも、一度しか踊ってらっしゃいませんわ」
「うーん、二度目となると色々問題が出そうだからね」
「あの、トマス様私とダンスを踊って頂けませんか? もっとお話を聞かせて下さいませ」
「悪いが遠慮しておくよ。デイビッド、君はそちらの方と仲が良さそうだ。ダンスにお誘いしてはどうかな?」
「アイラとは踊ったのに!」
ブリジットの癇癪に、近くにいた人達が静まりかえった。癇癪を起こしてしまったブリジットは周りの様子が見えていない。
騒ぎを聞きつけて、ポーレット公爵がやってきた。
「どうしたのかね? 大きな声が聞こえたようだが」
「大したことではありませんの」
「ポーレット公爵様、皆さんが意地悪するんです」
「ブリジット! やめないか」
デイビッドが慌てている。ここで騒ぎを起こせば、二度と社交界には出入りできなくなる。ブリジットをポーレット公爵から引き離そうと腕を引っ張るが、ブリジットはポーレット公爵の手を掴んで胸に押し当て、
「皆さん、アイラとはダンスするのに私とは踊ってくださらないんです」
と、目を潤ませながら抗議した。
「それは仕方のないことだと思うが? アイラのご両親は私の友人だった。今はアイラが私の大切な友人だからね」
アイラを連れたアルフレッドがやってきて冷たく言う。
「私もですね。アイラは私の大切な友人だし、ダンスは大切だと思える相手としかしない」
トマスもアルフレッドに続ける。
「私達は友人を大切にしている。その人が傷つけられたりしたら、それなりの行動を取るのもやぶさかではない。その意味は分かっていただけるかな?」
「アイラが友達なら、私とも友達になっ「ブリジット、いい加減にしろ」」
「煩いわね、黙っててよ。この役立たず! 何よアイラなんてただの田舎者のアバズレじゃない」
ブリジットの叫び声は広間全体に響き渡り、全ての人が黙り込んだ。
「デイビッド、この方達は君がエスコートしてきたのだったね。お二方と一緒にお帰り願おうか」
「ポーレット公爵・・申し訳ありません。あの、この事は」
「ストックトン侯爵には、後程抗議を入れさせて頂こう。私の夜会に無理矢理乗り込んだ挙句、私達家族の大切な友人に暴言を吐いたこと。しっかりと責任をとっていただこう」
ポーレット公爵が合図をすると、護衛達が現れてデイビッド達を連れて行った。
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「またエジャートン伯爵とだわ」
「もしかしたら今日は他の方とも踊られるかもしれなくてよ」
「後でお声をかけてみようかしら」
トマスがダンスを終えて、ポーレット公爵夫人の下へ歩いて行く。
「やぁ、ミリアム」
「お久しぶりですトマス様。トマス様が踊られるのは久しぶりでは?」
「そんな事はないよ。先日の夜会でも踊ったしね」
「あの・・」
シンディが紹介して欲しそうにポーレット公爵夫人に声をかける。ブリジットも早足でやってきた。
「トマス様、こちらはストックトン侯爵夫人のシンディ様とブリジットさんですの。グラフトン公爵のトマス・グラフトン様です」
「お目にかかれて光栄です。どうかブリジットとお呼び下さい」
先程までとはうって変わり、柔かな笑みを浮かべカーテシーするブリジット。デイビッドは緊張から少し青褪めているようだ。
「今日、王立美術館に行ってきたんだ。ミリアムがパトロンになっている画家がいただろう? とても良い風景画だった。今度うちの別荘の絵を描いてもらえないかと思ってね」
「それは喜ぶ事でしょう。今展示している風景画ならハリーですわね」
「そう、色使いがとても繊細だし絵の中に風を感じたんだ。彼は将来が楽しみだね」
「トマス様、私も先程からミリアム様に同じ事を申し上げておりましたの」
「あの、トマス様は絵画がお好きなのですか? 是非お話をお聞かせいただけませんか?」
シンディとブリジットがトマスに声をかける。トマスは笑顔を見せて、
「絵画も好きだけど、私はどちらかと言えば彫刻の方が最近は気になっているかな」
ミリアムとトマスは、絵画と彫刻のどちらが素晴らしいか議論をはじめてしまった。他の者達は間に割り込む事ができず、黙って話を聞いていた。
「すっかり長話をしてしまった。ジョージに挨拶をしたら失礼させて頂こうかな」
来たばかりでもう帰ると言うトマスに、ミリアムが苦笑いを浮かべた。
「今日の目的は達成されたと言う事ですの?」
「そう言うことかな」
「でも、一度しか踊ってらっしゃいませんわ」
「うーん、二度目となると色々問題が出そうだからね」
「あの、トマス様私とダンスを踊って頂けませんか? もっとお話を聞かせて下さいませ」
「悪いが遠慮しておくよ。デイビッド、君はそちらの方と仲が良さそうだ。ダンスにお誘いしてはどうかな?」
「アイラとは踊ったのに!」
ブリジットの癇癪に、近くにいた人達が静まりかえった。癇癪を起こしてしまったブリジットは周りの様子が見えていない。
騒ぎを聞きつけて、ポーレット公爵がやってきた。
「どうしたのかね? 大きな声が聞こえたようだが」
「大したことではありませんの」
「ポーレット公爵様、皆さんが意地悪するんです」
「ブリジット! やめないか」
デイビッドが慌てている。ここで騒ぎを起こせば、二度と社交界には出入りできなくなる。ブリジットをポーレット公爵から引き離そうと腕を引っ張るが、ブリジットはポーレット公爵の手を掴んで胸に押し当て、
「皆さん、アイラとはダンスするのに私とは踊ってくださらないんです」
と、目を潤ませながら抗議した。
「それは仕方のないことだと思うが? アイラのご両親は私の友人だった。今はアイラが私の大切な友人だからね」
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「私もですね。アイラは私の大切な友人だし、ダンスは大切だと思える相手としかしない」
トマスもアルフレッドに続ける。
「私達は友人を大切にしている。その人が傷つけられたりしたら、それなりの行動を取るのもやぶさかではない。その意味は分かっていただけるかな?」
「アイラが友達なら、私とも友達になっ「ブリジット、いい加減にしろ」」
「煩いわね、黙っててよ。この役立たず! 何よアイラなんてただの田舎者のアバズレじゃない」
ブリジットの叫び声は広間全体に響き渡り、全ての人が黙り込んだ。
「デイビッド、この方達は君がエスコートしてきたのだったね。お二方と一緒にお帰り願おうか」
「ポーレット公爵・・申し訳ありません。あの、この事は」
「ストックトン侯爵には、後程抗議を入れさせて頂こう。私の夜会に無理矢理乗り込んだ挙句、私達家族の大切な友人に暴言を吐いたこと。しっかりと責任をとっていただこう」
ポーレット公爵が合図をすると、護衛達が現れてデイビッド達を連れて行った。
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