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九月
ーーーーーー
アルフレッドの言葉通り、その後アイラの屋敷には沢山の招待状が届けられた。
「こんなに沢山来るなんて。お会いしたことのない方からの招待状まで」
「妖精姫が社交会に現れたのですから、この位は当然だと思いますよ」
ウィルソンの言葉にソフィアが笑っている。
「お願い、その妖精姫って言うのはやめて。まさかそんな風に言われていたなんて。こんな事なら学院を卒業してから、夜会とかお茶会とか出ておけばよかったわ。珍獣扱いされるなんて思わなかったもの」
「夜会はいかがでしたか?」
「トマス様の夜会はとても素敵だったわ。お屋敷はとても大きくて。大勢の方が居られたのに、大広間はちっとも窮屈に感じられなかったの。見事なシャンデリアが煌めいて、壁にはとても素晴らしいタペストリーが飾られていたの。あれほど大きなタペストリーを作るとしたら、一体どれだけの人手と時間がかかるのか想像もつかないわ」
「余程気に入られたようですね」
「勿論沢山の方とお話しやダンスもしたわ。タペストリーばかり見つめていたわけじゃないから安心してね」
「アルフレッド様が皆さんに紹介して下さったの。トマス様は気楽な身内の集まりだからって言って下さるし、他の方々も皆さんお優しい方ばかりだった。とても緊張していたのだけど、疲れてくるとアルフレッド様がテラスに誘ってくださったり、飲み物や軽食に誘ってくださったり「ジファール侯爵とテラスに?」」
「ええ、テラスはとても静かで緊張を解きほぐすのにはちょうど良かったわ。お庭も所々ライトアップされていて凄く綺麗だったの」
「アイラ様、テラスや庭は駄目です」
「何故?」
「もしかして庭を散歩しようとか言われてませんよね」
「えーっと、ウィルソンが怒ってる気がするのだけど、私何かしたかしら?」
「ジファール侯爵の放蕩ぶりは有名なんですよ。人気の無いところは危険です」
「よく分からないのだけど、大丈夫よ。暗い所ではちゃんと足元に注意してるし、ドレスを引っ掛けたりしないよう「ソフィア、お前ちゃんと仕事しろよ」」
「えっ? 私ですか?」
「当たり前だろう? お前じゃなかったら誰がアイラ様に説明するんだ?」
「あー、ですよねー」
「?」
「取り敢えず、アイラ様はテラスや庭その他人目のない所は、全て禁止だと覚えて下さい。質問があれば、後でソフィアに聞いてください」
「・・分かりました、おかあ「私は執事です」」
ソフィアが笑いを堪えて震えている。ウィルソンはソフィアを睨みながら聞いてきた。
「ストックトン侯爵家ではいかがでしたか?」
「そうだわ、思った通りだったの。デイビッドはあのメモをストックトン侯爵に渡していたの」
「侯爵が喋ったのですね?」
「ええ、工房の建設予定地をオレルアンの北ってはっきり。デイビッドから聞いたって言ってた。もう少し詳しく話を聞こうと思ったら、邪魔が入ってしまったからそれ以上は聞けなかったけど」
「それでもう十分です。侯爵には近づかないでいましょう」
「でも、これだけでは不十分よ。デイビッドが侯爵の指示でメモを盗んでいったのか、偶々侯爵に喋っただけなのか」
「これ以上はそう簡単には口にしないと思います。もし侯爵が黒幕だったら、疑っていることがバレた時点で強硬手段に出てくるかもしれません」
「侯爵は以前から染織工房を作りたがっていたの。でも腕の良い染物師を見つけられなくて計画が頓挫しているんですって。だからこちらの計画に興味津々だったわ。少しずつ情報を提供しながら話をしていけば「駄目です。大旦那様達の事を思い出してください」」
「危険なのは分かってる。でもね「「駄目です」」」
「ウィルソンだけじゃなく、ソフィアまで?」
「はい、今回は私も言わせていただきます。絶対に駄目です」
「分かったわ、だったらデイビッドの方から攻略する事にするわ」
「それも少しお待ちいただけますか? 侯爵の方をもっと詳しく調べてみます。指無しとの接点がないかと、侯爵とデイビッドがどの位の頻度で会っているか」
「ウィルソン? あなた今、デイビッドって呼び捨てにしてたわよ?」
「・・申し訳ありません。最近はいつも敬称を略させていただいておりましたので」
「ふふっ、いただいておりましたって。くすくす、ウィルソン真顔で言わないで、可笑しくてお腹が痛くなっちゃう」
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アルフレッドの言葉通り、その後アイラの屋敷には沢山の招待状が届けられた。
「こんなに沢山来るなんて。お会いしたことのない方からの招待状まで」
「妖精姫が社交会に現れたのですから、この位は当然だと思いますよ」
ウィルソンの言葉にソフィアが笑っている。
「お願い、その妖精姫って言うのはやめて。まさかそんな風に言われていたなんて。こんな事なら学院を卒業してから、夜会とかお茶会とか出ておけばよかったわ。珍獣扱いされるなんて思わなかったもの」
「夜会はいかがでしたか?」
「トマス様の夜会はとても素敵だったわ。お屋敷はとても大きくて。大勢の方が居られたのに、大広間はちっとも窮屈に感じられなかったの。見事なシャンデリアが煌めいて、壁にはとても素晴らしいタペストリーが飾られていたの。あれほど大きなタペストリーを作るとしたら、一体どれだけの人手と時間がかかるのか想像もつかないわ」
「余程気に入られたようですね」
「勿論沢山の方とお話しやダンスもしたわ。タペストリーばかり見つめていたわけじゃないから安心してね」
「アルフレッド様が皆さんに紹介して下さったの。トマス様は気楽な身内の集まりだからって言って下さるし、他の方々も皆さんお優しい方ばかりだった。とても緊張していたのだけど、疲れてくるとアルフレッド様がテラスに誘ってくださったり、飲み物や軽食に誘ってくださったり「ジファール侯爵とテラスに?」」
「ええ、テラスはとても静かで緊張を解きほぐすのにはちょうど良かったわ。お庭も所々ライトアップされていて凄く綺麗だったの」
「アイラ様、テラスや庭は駄目です」
「何故?」
「もしかして庭を散歩しようとか言われてませんよね」
「えーっと、ウィルソンが怒ってる気がするのだけど、私何かしたかしら?」
「ジファール侯爵の放蕩ぶりは有名なんですよ。人気の無いところは危険です」
「よく分からないのだけど、大丈夫よ。暗い所ではちゃんと足元に注意してるし、ドレスを引っ掛けたりしないよう「ソフィア、お前ちゃんと仕事しろよ」」
「えっ? 私ですか?」
「当たり前だろう? お前じゃなかったら誰がアイラ様に説明するんだ?」
「あー、ですよねー」
「?」
「取り敢えず、アイラ様はテラスや庭その他人目のない所は、全て禁止だと覚えて下さい。質問があれば、後でソフィアに聞いてください」
「・・分かりました、おかあ「私は執事です」」
ソフィアが笑いを堪えて震えている。ウィルソンはソフィアを睨みながら聞いてきた。
「ストックトン侯爵家ではいかがでしたか?」
「そうだわ、思った通りだったの。デイビッドはあのメモをストックトン侯爵に渡していたの」
「侯爵が喋ったのですね?」
「ええ、工房の建設予定地をオレルアンの北ってはっきり。デイビッドから聞いたって言ってた。もう少し詳しく話を聞こうと思ったら、邪魔が入ってしまったからそれ以上は聞けなかったけど」
「それでもう十分です。侯爵には近づかないでいましょう」
「でも、これだけでは不十分よ。デイビッドが侯爵の指示でメモを盗んでいったのか、偶々侯爵に喋っただけなのか」
「これ以上はそう簡単には口にしないと思います。もし侯爵が黒幕だったら、疑っていることがバレた時点で強硬手段に出てくるかもしれません」
「侯爵は以前から染織工房を作りたがっていたの。でも腕の良い染物師を見つけられなくて計画が頓挫しているんですって。だからこちらの計画に興味津々だったわ。少しずつ情報を提供しながら話をしていけば「駄目です。大旦那様達の事を思い出してください」」
「危険なのは分かってる。でもね「「駄目です」」」
「ウィルソンだけじゃなく、ソフィアまで?」
「はい、今回は私も言わせていただきます。絶対に駄目です」
「分かったわ、だったらデイビッドの方から攻略する事にするわ」
「それも少しお待ちいただけますか? 侯爵の方をもっと詳しく調べてみます。指無しとの接点がないかと、侯爵とデイビッドがどの位の頻度で会っているか」
「ウィルソン? あなた今、デイビッドって呼び捨てにしてたわよ?」
「・・申し訳ありません。最近はいつも敬称を略させていただいておりましたので」
「ふふっ、いただいておりましたって。くすくす、ウィルソン真顔で言わないで、可笑しくてお腹が痛くなっちゃう」
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