17 / 89
リリア
しおりを挟む
三月
ーーーーーー
ギータにリリアの迎えを頼んだ日のお昼過ぎ、執務室で郵便物の整理をしているとソフィアが声をかけてきた。
「アイラ様、リリアが来ました。いかがしますか?」
「談話室へお願い。疲れていると思うから、紅茶と一緒に甘いお茶菓子を。ウィルソンも呼んでちょうだい」
大急ぎで談話室に向かうと、ウィルソンがドアの所に待機していた。ウィルソンがドアを開け、ソフィアと3人で中に入った。
ソファに座っていたリリアが立ち上がって頭を下げた。
「お久しぶりです、お嬢様」
「リリア、無理をさせてごめんなさい。疲れたでしょう。座ってちょうだい」
アイラはリリアの正面に座った。ウィルソンはアイラの斜め後ろ、ソフィアは入り口近くに立っている。
「とんでもありません。私もずっと気になっていたので」
メイドが紅茶とお茶菓子を置いて下がるのを待って話をはじめた。
「あのね、あの日から今までの間におかしな事とかなかった?」
「いえ何もありませんでした。何かあったんですか?」
「いいえ、何もなかったのなら良かった。今はどうしているの?」
「今は知り合いのお店で手伝いをしています。店主が母の古くからの友人なので、あれから直ぐ雇ってもらえました。今日もすんなりお休みがもらえました」
アイラは心から安堵のため息を漏らした。
「あの、もう一度あの時の話がお聞きになりたいとか」
「そうなの、あの時はまだ気持ちの整理がついてなくて。今頃になって気になってきたの。もう一度話してもらえるかしら。」
「はい、夜かなり遅い時間でした。トイレに行こうとして玄関近くを通った時、玄関のドアを叩く音がして。覗き窓から見たら雪まみれの男の人が立っていて、大旦那様に急ぎの秘密の用があるって言いました。大旦那様はその男の人を直ぐ中に入れて、小声で話していました。話は全然聞こえなかったんですが、大旦那様が病気って仰ったのが聞こえたんです。その後男の人は出て行きました。大旦那様は大奥様と、馬車で出ていかれてそのまま」
「いくつか質問して良いかな? アイラ様も宜しいですか?」
「はい「ええ」」
「トイレに行く時灯りは持っていた?」
「はいランプを持っていました」
「なら覗き窓から外を見た時、ドアの向こうは見えたかな?」
「ぼんやりとですが見えました」
「どんな人だった?」
「よくわからないんです。雪まみれでフードを被っていて」
「背はどの位?」
「高かったです、覗き窓の方へ少し腰をかがめて話していたので」
「やってみよう、ちょっと立ってくれる?」
ソファの横に、ウィルソンとリリアが向かい合って立った。ウィルソンは少し前屈みになった。
「私がその男だと思って、こんな感じだった?」
「いえ、もう少し低かったです。そうそんな感じです」
「私の身長が6フィート2インチなので、多分6フィート弱位ですね。ありがとう、座っていいよ。覗き窓に近づいて話してたって言ってたよね、相手は正面を向いてた?」
「いえ、斜めの方を向いて、時々こっちを向いて話しました」
「どんな感じだった? 疲れてそうとか怒ってそうとか」
「イライラしているみたいで怖かったです」
「目つきとか睨んでる感じ?」
「はい、ドアは絶対開けたくないって思いました」
「ランプを持っていたなら相手の顔は見えた? ぼんやりとでもいいよ」
「そうですね、ぼんやりと見えてた気がします」
「目の色とか分かるかな、黒っぽいとか明るかったとか」
「明るかったと思います。あんまり濃い色じゃなかったような」
「口は? 大きかったとか小さかったとか、イメージで良いんだけど」
「そうですね、特に大きくはなかったような気がします。あと、ボソボソと話してましたけど割とはっきり言葉が聞き取れました」
「大旦那様を呼びに行く時、外に待たせてたんだよね」
「はい、夜遅い時間でしたし、なんだか怖そうな人だったから」
「でも大旦那様は直ぐ中に入れた」
「はい、覗き窓から見て直ぐにドアを開けられました」
「フードを被っていたんだよね。体型はどんな感じかな? 太ってるみたいとか痩せてそうとか」
「よく判りません、あっでも少し歩きにくそうにしてたから、いっぱい着てるからかなって思いました」
「もしいっぱい着てたら、太ってる人みたいになってたかも」
「いえ、そんな感じじゃなかったです。うーん、歩き方とか立ち方とか、少しカッコ良かった気がします。大旦那様と喋ってる時、結構手が動いてました。こんな感じで」
間違いない、デイビッドです(だ)。
ーーーーーー
ギータにリリアの迎えを頼んだ日のお昼過ぎ、執務室で郵便物の整理をしているとソフィアが声をかけてきた。
「アイラ様、リリアが来ました。いかがしますか?」
「談話室へお願い。疲れていると思うから、紅茶と一緒に甘いお茶菓子を。ウィルソンも呼んでちょうだい」
大急ぎで談話室に向かうと、ウィルソンがドアの所に待機していた。ウィルソンがドアを開け、ソフィアと3人で中に入った。
ソファに座っていたリリアが立ち上がって頭を下げた。
「お久しぶりです、お嬢様」
「リリア、無理をさせてごめんなさい。疲れたでしょう。座ってちょうだい」
アイラはリリアの正面に座った。ウィルソンはアイラの斜め後ろ、ソフィアは入り口近くに立っている。
「とんでもありません。私もずっと気になっていたので」
メイドが紅茶とお茶菓子を置いて下がるのを待って話をはじめた。
「あのね、あの日から今までの間におかしな事とかなかった?」
「いえ何もありませんでした。何かあったんですか?」
「いいえ、何もなかったのなら良かった。今はどうしているの?」
「今は知り合いのお店で手伝いをしています。店主が母の古くからの友人なので、あれから直ぐ雇ってもらえました。今日もすんなりお休みがもらえました」
アイラは心から安堵のため息を漏らした。
「あの、もう一度あの時の話がお聞きになりたいとか」
「そうなの、あの時はまだ気持ちの整理がついてなくて。今頃になって気になってきたの。もう一度話してもらえるかしら。」
「はい、夜かなり遅い時間でした。トイレに行こうとして玄関近くを通った時、玄関のドアを叩く音がして。覗き窓から見たら雪まみれの男の人が立っていて、大旦那様に急ぎの秘密の用があるって言いました。大旦那様はその男の人を直ぐ中に入れて、小声で話していました。話は全然聞こえなかったんですが、大旦那様が病気って仰ったのが聞こえたんです。その後男の人は出て行きました。大旦那様は大奥様と、馬車で出ていかれてそのまま」
「いくつか質問して良いかな? アイラ様も宜しいですか?」
「はい「ええ」」
「トイレに行く時灯りは持っていた?」
「はいランプを持っていました」
「なら覗き窓から外を見た時、ドアの向こうは見えたかな?」
「ぼんやりとですが見えました」
「どんな人だった?」
「よくわからないんです。雪まみれでフードを被っていて」
「背はどの位?」
「高かったです、覗き窓の方へ少し腰をかがめて話していたので」
「やってみよう、ちょっと立ってくれる?」
ソファの横に、ウィルソンとリリアが向かい合って立った。ウィルソンは少し前屈みになった。
「私がその男だと思って、こんな感じだった?」
「いえ、もう少し低かったです。そうそんな感じです」
「私の身長が6フィート2インチなので、多分6フィート弱位ですね。ありがとう、座っていいよ。覗き窓に近づいて話してたって言ってたよね、相手は正面を向いてた?」
「いえ、斜めの方を向いて、時々こっちを向いて話しました」
「どんな感じだった? 疲れてそうとか怒ってそうとか」
「イライラしているみたいで怖かったです」
「目つきとか睨んでる感じ?」
「はい、ドアは絶対開けたくないって思いました」
「ランプを持っていたなら相手の顔は見えた? ぼんやりとでもいいよ」
「そうですね、ぼんやりと見えてた気がします」
「目の色とか分かるかな、黒っぽいとか明るかったとか」
「明るかったと思います。あんまり濃い色じゃなかったような」
「口は? 大きかったとか小さかったとか、イメージで良いんだけど」
「そうですね、特に大きくはなかったような気がします。あと、ボソボソと話してましたけど割とはっきり言葉が聞き取れました」
「大旦那様を呼びに行く時、外に待たせてたんだよね」
「はい、夜遅い時間でしたし、なんだか怖そうな人だったから」
「でも大旦那様は直ぐ中に入れた」
「はい、覗き窓から見て直ぐにドアを開けられました」
「フードを被っていたんだよね。体型はどんな感じかな? 太ってるみたいとか痩せてそうとか」
「よく判りません、あっでも少し歩きにくそうにしてたから、いっぱい着てるからかなって思いました」
「もしいっぱい着てたら、太ってる人みたいになってたかも」
「いえ、そんな感じじゃなかったです。うーん、歩き方とか立ち方とか、少しカッコ良かった気がします。大旦那様と喋ってる時、結構手が動いてました。こんな感じで」
間違いない、デイビッドです(だ)。
29
お気に入りに追加
1,944
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる