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ご乱行
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九月
ーーーーーー
「痛い! ちょっと何やってんのよ! 怪我させる気? 全くここのメイドは役に立たないんだから」
ブリジットはメイドを突き飛ばした。
「申し訳ございません」
床に土下座して謝るメイドを鏡越しに睨みつけ、
「さっさとやって頂戴。今度髪を引っ掛けたらクビにするからね」
と言って、アクセサリーBOXからお気に入りのネックレスを取り出した。
「あぁもういいわ、出てってちょうだい。全く下手くそなんだから。お兄様に言って、王都から腕のいいメイドを連れてきてもらうわ。そしたらあんたはクビよ。あんたはこれ」
と、先程取り出したネックレスを別のメイドに付けさせた。
ひとしきり鏡で確認した後、ブリジットは部屋を出ていった。残されたメイドは床に膝を突き「はぁ」とため息をついた。
アイラが昼食の確認に厨房へ向かうと、メイド達が廊下の隅で話し込んでいる。その中の一人が泣いているので、また今日も一悶着あったのだと気づいた。あの子は確か2日前から、ブリジットの担当をしているメイドのサラだ。
「どうしたの?」
「アイラ様・・あの、ブリジット様からクビだと」
真っ赤に目を腫らしたサラが言う。
「ここではなんだからお部屋に行きましょう」
サラの背中に優しく手を当ててアイラの自室へと促した。
「サラ、何があったのか教えてくれる?」
「はい、さっきブリジット様のお支度を手伝っていたのですが、髪を引っ掛けてしまって。そしたらクビだ、王都から別のメイドを連れてきてもらうって」
そう言った後俯いたサラは、またシクシクと泣き始めた。
「そう、御免なさいね。ブリジットさんの担当は別の人に変わってもらいましょう。心配しないで、あなたをクビにはしませんから。ブリジットさんはお客様で、メイドをクビにする権利は持っていないもの」
サラが安心するようにと、なるべく穏やかに話したが、
「でも、旦那様に頼むって仰ってたので、きっとクビにされてしまいます」
と首を振っている。
「大丈夫、私が旦那様と話しますから。貴方の雇い主は私なの、旦那様にもブリジットさんにもあなたを首にすることは出来ないわ」
サラは真っ赤な目を輝かせ、
「ありがとうございます。私ここで働かせて頂いてとても助かってるんです」
「知ってるわ、確か下に弟さんや妹さんがいるのよね。これからも宜しくね」
「はい、もっともっと頑張ります。ありがとうございます」
「今日は旦那様もブリジットさんもお出掛けされていないから、昼食が必要かもしれないの。厨房に行って準備は大丈夫か確認して来てくれるかしら」
「はい」
「その後の仕事はアニーに聞いてね。人手が足りないって言ってたから喜ぶわ」
アイラが仕事を頼むと安心したようで、サラは元気よく厨房にかけていった。
デイビッドとブリジットは、自前の侍従やメイドを連れてきていない為、領主館の使用人達は普段の倍も忙しくなっている。
2人とも気まぐれで要求も多く、ブリジットは気に入らない事があると、すぐに使用人に手を出す。
ウィルソンと女中頭のアニーから、人手が足りないと言われているので、早急に臨時の手伝いを頼まなければならない。果たして彼らの要求に応えられる人を、見つけられるのだろうかと不安になる。このまま逗留が続けば、何人かの使用人は辞めてしまうかもしれない。
二人はいつも外出の予定を連絡してこない。食事が必要かどうかなど直前になるまでわからないのだが、常にかなりの品数を出さなければ機嫌が悪くなる。
その為、今日のように出掛ける様子のない日は、念の為準備しておかなければならない。
不要になった料理は使用人達の口に入るので、無駄にはならないからと諦めているアイラだった。
一番の問題はブリジットの担当メイド。ブリジットがクビと言い出すのは何人目になるだろうか、みんな嫌がっているからと悩んでいたが、
(いっそのこと侯爵家から連れてきてもらう? 彼女は侯爵家の方だし、帰りの時連れて行って貰えばちょうど良いわ)
と思いつき、早速デイビッドに話しに行くことに決めた。
それまでの間をどうするか考えなくては。厨房の人手も増やした方が良いのかしら。
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「痛い! ちょっと何やってんのよ! 怪我させる気? 全くここのメイドは役に立たないんだから」
ブリジットはメイドを突き飛ばした。
「申し訳ございません」
床に土下座して謝るメイドを鏡越しに睨みつけ、
「さっさとやって頂戴。今度髪を引っ掛けたらクビにするからね」
と言って、アクセサリーBOXからお気に入りのネックレスを取り出した。
「あぁもういいわ、出てってちょうだい。全く下手くそなんだから。お兄様に言って、王都から腕のいいメイドを連れてきてもらうわ。そしたらあんたはクビよ。あんたはこれ」
と、先程取り出したネックレスを別のメイドに付けさせた。
ひとしきり鏡で確認した後、ブリジットは部屋を出ていった。残されたメイドは床に膝を突き「はぁ」とため息をついた。
アイラが昼食の確認に厨房へ向かうと、メイド達が廊下の隅で話し込んでいる。その中の一人が泣いているので、また今日も一悶着あったのだと気づいた。あの子は確か2日前から、ブリジットの担当をしているメイドのサラだ。
「どうしたの?」
「アイラ様・・あの、ブリジット様からクビだと」
真っ赤に目を腫らしたサラが言う。
「ここではなんだからお部屋に行きましょう」
サラの背中に優しく手を当ててアイラの自室へと促した。
「サラ、何があったのか教えてくれる?」
「はい、さっきブリジット様のお支度を手伝っていたのですが、髪を引っ掛けてしまって。そしたらクビだ、王都から別のメイドを連れてきてもらうって」
そう言った後俯いたサラは、またシクシクと泣き始めた。
「そう、御免なさいね。ブリジットさんの担当は別の人に変わってもらいましょう。心配しないで、あなたをクビにはしませんから。ブリジットさんはお客様で、メイドをクビにする権利は持っていないもの」
サラが安心するようにと、なるべく穏やかに話したが、
「でも、旦那様に頼むって仰ってたので、きっとクビにされてしまいます」
と首を振っている。
「大丈夫、私が旦那様と話しますから。貴方の雇い主は私なの、旦那様にもブリジットさんにもあなたを首にすることは出来ないわ」
サラは真っ赤な目を輝かせ、
「ありがとうございます。私ここで働かせて頂いてとても助かってるんです」
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「はい、もっともっと頑張ります。ありがとうございます」
「今日は旦那様もブリジットさんもお出掛けされていないから、昼食が必要かもしれないの。厨房に行って準備は大丈夫か確認して来てくれるかしら」
「はい」
「その後の仕事はアニーに聞いてね。人手が足りないって言ってたから喜ぶわ」
アイラが仕事を頼むと安心したようで、サラは元気よく厨房にかけていった。
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その為、今日のように出掛ける様子のない日は、念の為準備しておかなければならない。
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と思いつき、早速デイビッドに話しに行くことに決めた。
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