86 / 102
85..凡庸な者の勝利か
しおりを挟む
ジェロームもモルガリウス侯爵家の次男として何もしないわけにはいかないと声を上げた。
「それは助かる。アルフォンス公爵領を拝領したばかりで忙しいだろうが、旧フォルスト領は全く伝手がないからな」
「帝国を早めに押さえておけば公爵領に集中できるようになるでしょうから」
「あら、そうはいかないわ。モルガリウス侯爵家は新しい領地なんていらないから、さっさとアルフォンス公爵領を纏めて領地を継いでもらわなくては困るの。三年は待ちましょう、その後はどんな状況でもジェロームに引き渡すつもりだから予定に入れておいてね」
「多分ですけど、母上は旧フォルスト領の鉱山経営と港の運営が面倒なんですよね。⋯⋯あー、いえ、なんでもないです」
片眉を上げたエカテリーナに反論できる人はいなかった。
「鉱山があることは知らなかったのだと思うけれど、フォルスト侯爵は仕事を放棄していたから夫人だけでは手が回らないことが多かったらしいの。
しばらくはわたくしも手がかけられないから鉱山はジェロームが領地経営しはじめてから手を付けてもらいましょう。港は現状維持で帝国だけ排除しておく、キングストンの船団専用にするなり貿易の中継地として開発するなり好きにしたらいいわ。
いずれ爵位を継ぐ子供が領地なしの法衣貴族では可哀想ですからね」
旧フォルスト領が下賜されると決まってから機嫌がよくなかったエカテリーナだったが、手放す予定を組みはじめた途端目が輝きはじめた。
「船団か? あれは香辛料の貿易で忙しくしておるから当面は放置しておいて問題はないはずじゃ。元々デュークがガレオン船に乗りたいと言い出したから手に入れたんじゃし、何かあればデュークに話を持ってくるはず。詳しい話もデュークに聞けば良かろう」
「まさかガレオン船の船団を趣味で手に入れたとか仰いませんよね?」
ジェロームの顔が青ざめシャーロットのため息が聞こえた。
「お恥ずかしい話ですが、あの当時バッカニア時代の海賊の歴史に嵌まっておりまして。船団を手に入れた責任がございますから如何様にもお使いください」
苦笑いを浮かべている様子からすると船団を欲しがったのは本当にデュークだったのだろう。
(それならデュークに贈与したらどうかしら? 船団なんて持っていても困るばかりだもの)
「いえ、私はラルフ様の執事でございますから」
シャーロットの心の声にデュークがきっぱりと返事を返した。
今回の事件の発覚は一個人の問題には収まりきらず惰性に流されていた司法への批判から専門の調査会社との癒着が発覚した。収容所の立ち入り調査が行われると大量の暴力被害報告や物品の横流しなどが判明。
芋蔓式に見つかる不正に頭を抱えた大臣や法務部は人手不足を埋める為他の部署からクマ男やそれ以外にも少しでも知識のある者全員を招集した。
ジェロームにも出仕の指示が下ったが『身贔屓と言われない為』と断ると法務大臣とクマ男が仲良く卒倒したらしい。議会では議員が招集され連日会議が行われているが、保身を図るものとこれを足掛かりに昇進を狙うものが喧々囂々戦いを繰り広げている。
ソルダート王国の王太子と法務大臣の受け入れ準備や賠償請求についても調整が必要で、国王以下末端の使用人まで不眠不休の日が続いている。議会など無視し旧フォルスト領に向かうつもりだったアーサーは議会に参加せざるを得なくなり代わりにエカテリーナがフォルスト領に向かうことになった。
『烏合の衆が騒ぎ立てるだけの議会より領地の問題のほうが大事ですのに! 火事場泥棒などさっさと首にして牢に入れてしまえば、国の風通しが良くなって少しは真面な国になりますし椅子を温めるだけの無益な時間も減りますわ!!』
アーサー達は憤懣やるかたないエカテリーナの反撃がはじまる前に議員たちが大人しくなることを祈らずにはいられなかった。
「お祖父様がお名前を変えるだけにして下されば良かった」
キングストンの遺産の記載された膨大な資料を膝に置いたシャーロットが愚痴をこぼした。
どこの国のものなのかいつの時代のものかわからない美術品や絵画が各地に保管され、遺跡が発掘され現在考古学者が調査している島の所有権もある。点在する土地と屋敷は定期的に手入れはしているが無人のものと賃貸しているもの。
勿論、錬金術師と言われたキングストンらしく鉱山も所有しており、それらの山から産出された宝石や鉱石の一部もコレクションしていた。
「今回、シャーロット様に贈与するにあたり名義をすべて統一いたしました。その作業で予定よりお時間をいただきましたが、無事にお渡しすることができて安心いたしました」
「名義の変更とかって費用も手間も膨大だと聞いたことがあるのだけど?」
「そのあたりは『蛇の道は蛇』と申しますか、方法さえ知っていれば手助けしてくださる方は大勢いらっしゃいますので滞りなく。資金につきましては複数の銀行や商人ギルドに別名で点在していたものを一本化しておりますので、いつでも引き出していただくことが可能です」
シャーロットとジェロームがいの一番に街道の整備に着手したいと思っていることを知っているデュークの提案だった。他領と王都の間にあるアルフォンス公爵領の街道は長い間手つかずでいた為重い荷を積んだ馬車が事故を起こすことも多く、山道に至っては山賊のいい猟場になっていた。
(それでも別の道を進むより効率的だなんて)
「ふと気付いたら面倒くさいものがえらい増えておってのう、邪魔で邪魔でしかたなかったんじゃが、捨ててしまうわけにはいかんものもあったし……シャーロットが成人したら助けてくれるじゃろうと思うて待っておったのよ。はっはっは」
自由気ままに国を渡り歩き不要な資金ができる度に適当にアレコレと購入した結果だと豪快に笑うラルフ。
「そのツケを私に押し付けるなんて酷くない?」
「アルフォンス公爵家の領地のついでに管理すればよかろう。公爵領には可能性が山盛りじゃから愚か者が継げば国が乱れるじゃろうしな」
ラルフの一言でシャーロットとジェロームが青褪めたのは言うまでもない。
「これ以上、どうしろと……。何も聞かなかったことにしましょう」
「うん、それが一番だな」
平民街の家は貴族や商人達が押しかけてきて危険になったため、アルフォンス公爵邸を全面改築する間はラルフの屋敷で過ごしながら領地の勉強などに没頭した。
ジェロームは以前申し込みたいと言っていた仕事につけたと喜びながら、シャーロットと共に領地経営の勉強をやり直ししている。
『俺の仕事も人生もシャーロットの隣にあるんだ』
ジェロームの教育担当のジェファーソンとデュークは今まで以上に張り切っていて、夜ジェロームの部屋から魘されている声が聞こえてきた次の日はシャーロットが少し優しくなる。それに気付いたジェファーソン達が益々張り切るというジェロームにとっての最悪の無限ループが続いている。
『シャーロット様の為ですと一言言いさえすれば、ジェローム様はとても頑張られるので教えがいがあります』
黒い笑みをたたえたジェファーソンとデュークはとても仲が良くなった。
漸く婚姻届けにシャーロットのサインを獲得したジェロームは離婚届の受理と同時に婚姻届を出したが、それからというもの午後の休憩の度にシャーロットに賭けを挑んでくるようになった。俺が勝ったら……。
「これを食べさせて欲しい」
「二人きりで星を見に行きたい」
他愛もない願いに思えるがシャーロットにはハードルの高いものばかり。
「あーんって……そんなの恥ずかしすぎます! 無理無理無理!!」
「どどど、どうして毛布が……い、一枚なのですか!? さっ、寒いじゃないですか!」
赤い顔をして逃げ回るシャーロットを嬉々として追いかけるジェロームはラルフ邸の風物詩のようになっていた。
「相変わらずと言うか、人の目があるのを忘れておるのう」
「男としてはなんとかしてやりたい気も……あれでは生殺しというやつでしょう」
「拝見したご様子から致しますとそこまでも行っておられませんね。エカテリーナ様がいらっしゃれば『アーサー様とは違います』と仰られるのではないかと」
「ワシはシャーロットの子供を抱いてみたかったんじゃが先が長そうじゃなあ」
珍しいジェファーソンの突っ込みにラルフとアーサーのため息がシンクロした。
「それは助かる。アルフォンス公爵領を拝領したばかりで忙しいだろうが、旧フォルスト領は全く伝手がないからな」
「帝国を早めに押さえておけば公爵領に集中できるようになるでしょうから」
「あら、そうはいかないわ。モルガリウス侯爵家は新しい領地なんていらないから、さっさとアルフォンス公爵領を纏めて領地を継いでもらわなくては困るの。三年は待ちましょう、その後はどんな状況でもジェロームに引き渡すつもりだから予定に入れておいてね」
「多分ですけど、母上は旧フォルスト領の鉱山経営と港の運営が面倒なんですよね。⋯⋯あー、いえ、なんでもないです」
片眉を上げたエカテリーナに反論できる人はいなかった。
「鉱山があることは知らなかったのだと思うけれど、フォルスト侯爵は仕事を放棄していたから夫人だけでは手が回らないことが多かったらしいの。
しばらくはわたくしも手がかけられないから鉱山はジェロームが領地経営しはじめてから手を付けてもらいましょう。港は現状維持で帝国だけ排除しておく、キングストンの船団専用にするなり貿易の中継地として開発するなり好きにしたらいいわ。
いずれ爵位を継ぐ子供が領地なしの法衣貴族では可哀想ですからね」
旧フォルスト領が下賜されると決まってから機嫌がよくなかったエカテリーナだったが、手放す予定を組みはじめた途端目が輝きはじめた。
「船団か? あれは香辛料の貿易で忙しくしておるから当面は放置しておいて問題はないはずじゃ。元々デュークがガレオン船に乗りたいと言い出したから手に入れたんじゃし、何かあればデュークに話を持ってくるはず。詳しい話もデュークに聞けば良かろう」
「まさかガレオン船の船団を趣味で手に入れたとか仰いませんよね?」
ジェロームの顔が青ざめシャーロットのため息が聞こえた。
「お恥ずかしい話ですが、あの当時バッカニア時代の海賊の歴史に嵌まっておりまして。船団を手に入れた責任がございますから如何様にもお使いください」
苦笑いを浮かべている様子からすると船団を欲しがったのは本当にデュークだったのだろう。
(それならデュークに贈与したらどうかしら? 船団なんて持っていても困るばかりだもの)
「いえ、私はラルフ様の執事でございますから」
シャーロットの心の声にデュークがきっぱりと返事を返した。
今回の事件の発覚は一個人の問題には収まりきらず惰性に流されていた司法への批判から専門の調査会社との癒着が発覚した。収容所の立ち入り調査が行われると大量の暴力被害報告や物品の横流しなどが判明。
芋蔓式に見つかる不正に頭を抱えた大臣や法務部は人手不足を埋める為他の部署からクマ男やそれ以外にも少しでも知識のある者全員を招集した。
ジェロームにも出仕の指示が下ったが『身贔屓と言われない為』と断ると法務大臣とクマ男が仲良く卒倒したらしい。議会では議員が招集され連日会議が行われているが、保身を図るものとこれを足掛かりに昇進を狙うものが喧々囂々戦いを繰り広げている。
ソルダート王国の王太子と法務大臣の受け入れ準備や賠償請求についても調整が必要で、国王以下末端の使用人まで不眠不休の日が続いている。議会など無視し旧フォルスト領に向かうつもりだったアーサーは議会に参加せざるを得なくなり代わりにエカテリーナがフォルスト領に向かうことになった。
『烏合の衆が騒ぎ立てるだけの議会より領地の問題のほうが大事ですのに! 火事場泥棒などさっさと首にして牢に入れてしまえば、国の風通しが良くなって少しは真面な国になりますし椅子を温めるだけの無益な時間も減りますわ!!』
アーサー達は憤懣やるかたないエカテリーナの反撃がはじまる前に議員たちが大人しくなることを祈らずにはいられなかった。
「お祖父様がお名前を変えるだけにして下されば良かった」
キングストンの遺産の記載された膨大な資料を膝に置いたシャーロットが愚痴をこぼした。
どこの国のものなのかいつの時代のものかわからない美術品や絵画が各地に保管され、遺跡が発掘され現在考古学者が調査している島の所有権もある。点在する土地と屋敷は定期的に手入れはしているが無人のものと賃貸しているもの。
勿論、錬金術師と言われたキングストンらしく鉱山も所有しており、それらの山から産出された宝石や鉱石の一部もコレクションしていた。
「今回、シャーロット様に贈与するにあたり名義をすべて統一いたしました。その作業で予定よりお時間をいただきましたが、無事にお渡しすることができて安心いたしました」
「名義の変更とかって費用も手間も膨大だと聞いたことがあるのだけど?」
「そのあたりは『蛇の道は蛇』と申しますか、方法さえ知っていれば手助けしてくださる方は大勢いらっしゃいますので滞りなく。資金につきましては複数の銀行や商人ギルドに別名で点在していたものを一本化しておりますので、いつでも引き出していただくことが可能です」
シャーロットとジェロームがいの一番に街道の整備に着手したいと思っていることを知っているデュークの提案だった。他領と王都の間にあるアルフォンス公爵領の街道は長い間手つかずでいた為重い荷を積んだ馬車が事故を起こすことも多く、山道に至っては山賊のいい猟場になっていた。
(それでも別の道を進むより効率的だなんて)
「ふと気付いたら面倒くさいものがえらい増えておってのう、邪魔で邪魔でしかたなかったんじゃが、捨ててしまうわけにはいかんものもあったし……シャーロットが成人したら助けてくれるじゃろうと思うて待っておったのよ。はっはっは」
自由気ままに国を渡り歩き不要な資金ができる度に適当にアレコレと購入した結果だと豪快に笑うラルフ。
「そのツケを私に押し付けるなんて酷くない?」
「アルフォンス公爵家の領地のついでに管理すればよかろう。公爵領には可能性が山盛りじゃから愚か者が継げば国が乱れるじゃろうしな」
ラルフの一言でシャーロットとジェロームが青褪めたのは言うまでもない。
「これ以上、どうしろと……。何も聞かなかったことにしましょう」
「うん、それが一番だな」
平民街の家は貴族や商人達が押しかけてきて危険になったため、アルフォンス公爵邸を全面改築する間はラルフの屋敷で過ごしながら領地の勉強などに没頭した。
ジェロームは以前申し込みたいと言っていた仕事につけたと喜びながら、シャーロットと共に領地経営の勉強をやり直ししている。
『俺の仕事も人生もシャーロットの隣にあるんだ』
ジェロームの教育担当のジェファーソンとデュークは今まで以上に張り切っていて、夜ジェロームの部屋から魘されている声が聞こえてきた次の日はシャーロットが少し優しくなる。それに気付いたジェファーソン達が益々張り切るというジェロームにとっての最悪の無限ループが続いている。
『シャーロット様の為ですと一言言いさえすれば、ジェローム様はとても頑張られるので教えがいがあります』
黒い笑みをたたえたジェファーソンとデュークはとても仲が良くなった。
漸く婚姻届けにシャーロットのサインを獲得したジェロームは離婚届の受理と同時に婚姻届を出したが、それからというもの午後の休憩の度にシャーロットに賭けを挑んでくるようになった。俺が勝ったら……。
「これを食べさせて欲しい」
「二人きりで星を見に行きたい」
他愛もない願いに思えるがシャーロットにはハードルの高いものばかり。
「あーんって……そんなの恥ずかしすぎます! 無理無理無理!!」
「どどど、どうして毛布が……い、一枚なのですか!? さっ、寒いじゃないですか!」
赤い顔をして逃げ回るシャーロットを嬉々として追いかけるジェロームはラルフ邸の風物詩のようになっていた。
「相変わらずと言うか、人の目があるのを忘れておるのう」
「男としてはなんとかしてやりたい気も……あれでは生殺しというやつでしょう」
「拝見したご様子から致しますとそこまでも行っておられませんね。エカテリーナ様がいらっしゃれば『アーサー様とは違います』と仰られるのではないかと」
「ワシはシャーロットの子供を抱いてみたかったんじゃが先が長そうじゃなあ」
珍しいジェファーソンの突っ込みにラルフとアーサーのため息がシンクロした。
11
お気に入りに追加
1,779
あなたにおすすめの小説
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。
夢草 蝶
恋愛
シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。
どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。
すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──
本編とおまけの二話構成の予定です。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる