【完結】双子だからって都合よく使われて犯罪者にされたので、ざまあしようとしたら国をあげての大騒ぎになりました

との

文字の大きさ
上 下
31 / 102

30.家族会議で坊ちゃんが⋯⋯

しおりを挟む
「ご当主様、あの不倫騒動を起こしたのはテレーザですわ」

「は? しかし、公爵夫妻は裁判に⋯⋯えっと、つまり⋯⋯ご両親も騙されていたと言う事か」

「テレーザはシャーロットと名乗って交際していたんです。そして、どのタイミングでかは存じませんが公爵夫妻はそれを知っておられました」

「⋯⋯⋯⋯そうか、だからか⋯⋯違和感があったんだ。3年近く経ったとは言ってもシャーロットはあんな無責任な事をする人には思えなくて。冤罪なら裁判のやり直しをすれば⋯⋯。
それならそうと言ってくれればいくらでも手助けできたのに」

「ご当主様が信用なさるとは思えませんでしたの。間違いなく、元犯罪者の戯言だと言われてしまうだけだと」

 法務部に務めるジェロームは裁判で有罪判決を出した側の人間。シャーロットが冤罪だと言ったところで自分の立場をよくしようと嘘偽りを言い立てていると思われるのが関の山だっただろう。

「このお馬鹿さんにも理解できるよう説明してくれるかしら?」




「大講堂で当時の婚約者エドワードに婚約破棄された時、前日不貞で有罪になった事を初めて知りました。
その日の夜両親から裁判所から判決と処分が言い渡されたからもう覆らないと言われて⋯⋯法律とはそう言うものなのかと信じ込んでしまったんです。
当時、エドワードはテレーザと親しくしていて私ではなくテレーザと結婚したがっていたらしく、両親は私を女子収容所に入れてしまえば全てが丸く収まると言いました」

「そう言えば裁判記録には未成年者の犯罪行為なので両親が同席したと書いてあったな⋯⋯」


「女子収容所に入ってから不当な裁判はやり直しもできると知りました。祖父が助けると言ってくれたんですが、『今ここを出られても未成年の私はあの家に戻るしかなくなる。恥をかかされた公爵夫妻と罪がバレたテレーザに何をされるか分からないから』と言って断りました。
出所する時は18歳だから離籍出来ると言ったんです。
出所日の前日にやってきた公爵夫妻が私はとっくに結婚していると言って笑いました。
テレーザの結婚式が近づいたけれどあの娘はフォルスト侯爵家に言えない借金を作っていた。コーネリア伯爵家から貰った多額の支度金や結納金は全部それの支払いに使ったから離婚したければそのお金を自力で返せと。
公爵夫妻はとても贅沢な格好をしていたので、テレーザの借金と公爵夫妻の全員で使い切ったんだと思います」

「それでうちにやって来た」

「私に出来るのは白い結婚を証明して離婚すると同時に離籍届けを出すことだけだと考えています。後はご当主様が公爵に離婚したいと話す前になんとかしなくてはと、公爵家に話を持って行かないようにデュークがご当主様に頼みました」

「待ってくれ! 白い結婚って⋯⋯じゃあ君はその」



「ご当主様からならば後数ヶ月待たずに離婚できますから、公爵一家に知られないうちに離籍届けと一緒に提出させてもらえれば一気に片がつきます」

 ジェロームの疑問を完全に無視して説明するシャーロットを全員が見つめていた。

「勿論、支度金や結納金は公爵家に返還請求して下さい。どれくらいの返済能力があるかわかりませんけど⋯⋯不足分はなんとかしますから」


「離婚前提で話を進めるのはやめてくれ! 過去がわかる前から言ってるが俺は離婚はしない!!」

「あと数ヶ月逃げ切ればいいだけですもの。なんとかなりますわ」

 顔を赤くして怒鳴るジェロームだがシャーロットから冷ややかな態度で肩をすくめられて終わった。

「シャーロットが神殿に訴え出ても俺は抗議する。あれは訴えの後1ヶ月の猶予があるからな、その時に妻はずっと家出していたと言ってやる」

「馬鹿馬鹿しい。冷静になればすぐにお分かりになりますわ。わたくしなどに拘う時間がどれほど無駄か」

「無駄かどうかは俺が決める!」

「仕事を放棄してフラフラしているより社会的責任を果たされる方が大切だとご提案させて頂きますわ」

「くそっ! そうやって話をすり替えるのはシャーロットの得意技だって知ってるからな。それをやりはじめたって事は君が劣勢に回ったかまだ何か隠してるかのどっちかだ!」

「このままわたくしがウロウロしていたら碌なことにならないと確信を持って言えます。テレーザは前回で味を占めていますし、既に同じ事を繰り返しているそうです⋯⋯新しい醜聞が広まる前に手を切らなければ状況は悪くなる一方ですわ」

「させないから! テレーザが何を画策しても絶対に阻止してみせる。一度くらい信じてくれないか?」

「そんな低レートのギャンブルに私の人生をかける気にはなれませんわ。成人した後再犯して女子収容所に入れられたら二度と出てこられないそうですの。
わたくしはそうなった女性の末路を知っております。あそこがどんなところかも知らないくせに呑気に信じろだなんて⋯⋯お金持ちのお坊っちゃまにしか言えない台詞ですわ」

 馬鹿にしたような目でジェロームを見たシャーロットはアーサーに向き直った。

「長々とお時間を頂き申し訳ありませんでした。わたくしはこれで失礼させていただきたいと存じますが⋯⋯。
もしご迷惑でなければ、正義感溢れるご子息に是非とも常識を説いていただいて、この場で離婚届けにサインするのが最善だと説得していただけないでしょうか」

「それで終わりにして帰ってしまうのかね? で、その後はどうするつもりかい?」


「暫くどこかに潜伏致しますわ。多分何とかなると思います」

「公爵達は大人しくしているだろうか?」

「離婚と離籍さえ出来れば全ての問題が片付きますから」


「離婚はしないと言ってるだろう! そんなに俺の事が嫌か!? 確かに態度は悪かったさ。認めるし心から謝る。すまなかった⋯⋯でも、俺は一緒にいたいと思ってるんだ。どうしてもやり直せないほど嫌なのか?」

「アルフォンス公爵家の者はこれから先も醜聞塗れですわ。しかも、今後は今まで以上にお金の無心に来るようにもなるでしょう。
貴族社会で最も縁を結んではいけない人達だと、現時点でその程度の事はお分かりでしょう? エカテリーナ様からも是非常識を説いて下さいませ」


「くそっ! 俺といるより公爵達から逃げ回る人生の方が魅力があるって事か」

「自由を満喫する予定ですのよ」

「掃除婦がそんなに良いのか」

「試してみろとは申しませんが、綺麗になるのが気持ちいいのは確かですわね。法務部にお勤めなんですもの、離婚届の書式くらいはご存知でしょう?
理性的になってさっさと書いて下さいませんこと?」

 睨み合うシャーロットとジェロームの横から大きな溜め息が聞こえてきた。


「本当に、ジェロームの言う通り隠し事と誤魔化しがお上手ね。その資質は社交界で役に立ちそうだわ」

「は? エカテリーナ様?」

「お義母様と呼ぶように言ったはずですよ」

「ですがそれは」

 立ち聞きした時エカテリーナはシャーロットの事を認めていないようだった。それは当然の事だと思っているしそれで構わないとも思っていた。


「モルガリウス侯爵家としてシャーロットの社交界デビューを全面的に補佐致します。だから、残りの秘密も全部吐いておしまいなさい」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...