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26.鼠を痛ぶる猫の気持ち
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「間違いなく俺は信頼されていない。その上に信頼するつもりもないってシャーロットの顔に書いてあるよ」
「人を信頼⋯⋯それは深いお話ですね。わたくしが信頼していたのはお祖父様。デュークは最近ご当主様に懐柔されてる気がしているので却下ですわ」
「他にはいないのか?」
「⋯⋯うーん、難しい事はあまり考えないようにしていますの。今度ゆっくり考えてみますわ」
サラッと肩をすくめたシャーロットはまた窓から外を見はじめた。
(デューク以外はもう誰も残っていないのか)
一部の貴族や部下が少し陰口を言うくらいでジェロームには信頼できる家族も友人もいる。つい最近までは使用人達の事も信頼していた。
それに比べてシャーロットの両親は人として信頼に値するとは思えないし、妹のテレーザも好きになれない。彼等はシャーロットが出所した後会いにきたがる様子さえない。
あの事件が家族の仲を壊したのか、壊れていたからあんな事件を起こしたのか⋯⋯。
シャーロットと話す度に浮かんでくる違和感の正体が分からないジェロームはイライラと唇を噛んでいた。
ホテルの部屋をとり座り心地のいいソファのお陰でようやくほっと息をついた時、ジェロームの口から考えてもいなかった質問が漏れ出した。
「どうしてあんな事をしたんだ?」
ジェロームは口にして初めて気が付いた。シャーロットに一番聞きたかった事と、違和感の理由。
「あんな事とは?」
「大勢の恋人。不倫」
「さあ、何故でしょうね。昔の事ですし。過去は過去だと割り切るように言われたばかりですの。長旅で疲れてしまいましたし、そろそろ休ませていただきますわ」
「そうやってまた逃げ出すのか?」
ソファから立ち上がり割り当てられた部屋に向かうシャーロットの直ぐ後ろからジェロームが声をかけた。
(吃驚したわ! いつの間にこんな近くに来たの?)
「戦略的撤退と言っていただけます?」
「俺達は夫婦だよな」
「⋯⋯便宜上はそうなっておりますわね。でも、形だけのことです」
「形式だけの夫婦じゃなくなるのも良いと思わないか?」
ジリジリと距離を詰めてくるジェロームの狙いが分からずシャーロットは顔を引き攣らせた。
(ストレスが溜まりすぎて食べる気のない鼠を痛ぶる猫の気分になってるって事?)
「謹んで遠慮させていただきますわ」
「俺は好みじゃない?」
「ええ、全く。かけらも食指が動きませんわ」
「デュークみたいな包容力のある奴が?」
壁際まで追い詰められたシャーロットの髪を一房持ち上げて態とらしくキスをするジェローム。
「例えて言うなら⋯⋯ご当主様の執事のジョージとかかしら?」
「は? あんなに嫌な思いをさせられたのにか?」
「だからですわ。あれだけ嫌っているなら近くに寄って来る事は絶対にあり得ませんでしょう?」
呆然としているジェロームをつき飛ばしてシャーロットは自分に与えられた部屋にサッサと入ってベッドに潜り込んだ。
(全く、何を考えてるんだか。人を脅すのにも時と場所を考えて欲しいものだわ)
ジェロームが選んだ部屋はベッドルームが2つあるスイートだったので、シャーロットは安心して寝ていられるはずだった。
(鍵がないから? そんな必要はないけど)
ベッドで何度も寝返りを打ち枕の形を直しても眠れない。諦めて起き上がったシャーロットは眠れない時のいつもの作業⋯⋯レース編みをはじめた。
新しい糸を準備してベッドのヘッドボードにもたれてコツコツと作業を続けた。
(私って本当に成長しないのよね。昔から眠れない時はこればかり)
翌朝、ジェロームが起きた音が聞こえてきた時もシャーロットは黙々と針を動かしていた。
「シャーロット、起きたら食事を済ませてドレスを作りに行くぞ」
ノックの音と同時にドアの向こうから声が聞こえた。
「はぁ、準備しまーす」
荷物を片付けて部屋を出ると目の下のクマを見つけたジェロームが目を吊り上げた。
「まさか寝てないのか?」
「疲れすぎると不眠になるタイプなの。大したことではないのでお気になさらず」
届いていた朝食を無言で食べ終えるとコートを手にしたジェロームに腕を掴まれた。
「逃がさないからな」
「別にそんなつもりは⋯⋯」
ドレスなんて作りたくないし部屋から出たくもないと逃げ場を探していたことに気付かれていたらしい。
ホテルの前で馬車に乗り込んだ後も言い訳を考えていたシャーロットにジェロームが爆弾を落とした。
「朝食と一緒にメモが届いた。仕立て屋が待ってるそうだ」
「は?」
どこかのドレスショップで吊るしのドレスを買うのだと思っていたシャーロットは驚いてジェロームの顔を凝視した。
「母上と義姉上が手ぐすねひいて待ってるらしい」
「待って! それは嫌!」
「諦めるんだな。俺と結婚してれば俺の家族と会うことになるのは当然だろ?」
昨夜、シャーロットがそばに寄ってこない男が一番の好みだと発言してからというもの、ジェロームは妙に気分がよかった。
(過去はどうあれこれからは貞淑に生きていきたいと思ってるって事だよな。それならこのままコーネリア伯爵夫人として⋯⋯)
自分の気持ちが上向きなのはシャーロットが新しい人生を歩もうと思いはじめたせいだと勘違いしているジェロームは苛立って睨みつけるシャーロットが可愛く見えて仕方がない。
「私が決めたんじゃないもの。勝手にサインして勝手に書類を出しただけでしょう!」
「それでもだ、結果は同じ。この間みたいに抱えて移動されるのが嫌なら諦めるんだな」
「え? あれは違⋯⋯何でもないわ」
「モルガリウス侯爵家に向かう」
「そう言えば、ご当主様ってお仕事に行かなくていいのかしら? もう何日もお休みしてるみたいだし」
「ありがたいことに休みが溜まっててね」
「ちっ!」
シャーロットが思わず舌打ちをするとジェロームが笑いはじめた。
「全く、君と言う人は見ていて飽きない。ツンとすました貴族令嬢かと思えば平気で口論を仕掛けてくるし、毒づいたり舌打ちしたりもする。話すたびにどんどん目が離せなくなる」
「所詮は女子収容所帰りですから、直ぐにお里が知れてしまいますの。侯爵家などに参りましたらどんな粗相をしてしまうか、考えただけで震えがきてしまいますわ」
「構わないさ。多分あの2人なら大喜びしそうだ」
「最低のご趣味をお持ちですこと!」
何を言っても今日のジェロームは暖簾に腕押しで話にならず非常にやりにくい。
(家族パワーかしら、妙に強気でムカつくわ)
狭い王都にもかかわらず3階建ての白亜の豪奢な屋敷には左右対称のドームまであった。広い前庭には芝が敷き詰められ噴水を中心に馬車がゆっくりと玄関前まで入っていけるようになっていた。
「母上が雨に濡れるのは嫌だと言ってね」
「素晴らしいご趣味ですこと。流石は陸軍大臣のお屋敷ですわ」
シャーロットの嫌味をサラッと流したジェロームがニヤリと笑って手を差し出した。
「エスコートさせていただけますか? 奥様」
「お手数をお掛け致しますわ、ご当主様」
白い扉に金色の鷹だろうか⋯⋯モルガリウス侯爵家の紋章が刻まれていた。その前に立っているのは小柄で上品な夫人と、銀の仔馬亭であった女性。少し離れた場所に立っているのはこの屋敷の執事だろう。
「よくいらしてくださったわね。待ちきれなくてお義母様とここで待機しておりましたのよ」
「お久しぶりでございます。先日はご挨拶もせず大変失礼をいたしました。
シャーロットと申します。若輩者でございます故ご指導ご鞭撻いただけますと幸いに存じます」
「人を信頼⋯⋯それは深いお話ですね。わたくしが信頼していたのはお祖父様。デュークは最近ご当主様に懐柔されてる気がしているので却下ですわ」
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「⋯⋯うーん、難しい事はあまり考えないようにしていますの。今度ゆっくり考えてみますわ」
サラッと肩をすくめたシャーロットはまた窓から外を見はじめた。
(デューク以外はもう誰も残っていないのか)
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シャーロットと話す度に浮かんでくる違和感の正体が分からないジェロームはイライラと唇を噛んでいた。
ホテルの部屋をとり座り心地のいいソファのお陰でようやくほっと息をついた時、ジェロームの口から考えてもいなかった質問が漏れ出した。
「どうしてあんな事をしたんだ?」
ジェロームは口にして初めて気が付いた。シャーロットに一番聞きたかった事と、違和感の理由。
「あんな事とは?」
「大勢の恋人。不倫」
「さあ、何故でしょうね。昔の事ですし。過去は過去だと割り切るように言われたばかりですの。長旅で疲れてしまいましたし、そろそろ休ませていただきますわ」
「そうやってまた逃げ出すのか?」
ソファから立ち上がり割り当てられた部屋に向かうシャーロットの直ぐ後ろからジェロームが声をかけた。
(吃驚したわ! いつの間にこんな近くに来たの?)
「戦略的撤退と言っていただけます?」
「俺達は夫婦だよな」
「⋯⋯便宜上はそうなっておりますわね。でも、形だけのことです」
「形式だけの夫婦じゃなくなるのも良いと思わないか?」
ジリジリと距離を詰めてくるジェロームの狙いが分からずシャーロットは顔を引き攣らせた。
(ストレスが溜まりすぎて食べる気のない鼠を痛ぶる猫の気分になってるって事?)
「謹んで遠慮させていただきますわ」
「俺は好みじゃない?」
「ええ、全く。かけらも食指が動きませんわ」
「デュークみたいな包容力のある奴が?」
壁際まで追い詰められたシャーロットの髪を一房持ち上げて態とらしくキスをするジェローム。
「例えて言うなら⋯⋯ご当主様の執事のジョージとかかしら?」
「は? あんなに嫌な思いをさせられたのにか?」
「だからですわ。あれだけ嫌っているなら近くに寄って来る事は絶対にあり得ませんでしょう?」
呆然としているジェロームをつき飛ばしてシャーロットは自分に与えられた部屋にサッサと入ってベッドに潜り込んだ。
(全く、何を考えてるんだか。人を脅すのにも時と場所を考えて欲しいものだわ)
ジェロームが選んだ部屋はベッドルームが2つあるスイートだったので、シャーロットは安心して寝ていられるはずだった。
(鍵がないから? そんな必要はないけど)
ベッドで何度も寝返りを打ち枕の形を直しても眠れない。諦めて起き上がったシャーロットは眠れない時のいつもの作業⋯⋯レース編みをはじめた。
新しい糸を準備してベッドのヘッドボードにもたれてコツコツと作業を続けた。
(私って本当に成長しないのよね。昔から眠れない時はこればかり)
翌朝、ジェロームが起きた音が聞こえてきた時もシャーロットは黙々と針を動かしていた。
「シャーロット、起きたら食事を済ませてドレスを作りに行くぞ」
ノックの音と同時にドアの向こうから声が聞こえた。
「はぁ、準備しまーす」
荷物を片付けて部屋を出ると目の下のクマを見つけたジェロームが目を吊り上げた。
「まさか寝てないのか?」
「疲れすぎると不眠になるタイプなの。大したことではないのでお気になさらず」
届いていた朝食を無言で食べ終えるとコートを手にしたジェロームに腕を掴まれた。
「逃がさないからな」
「別にそんなつもりは⋯⋯」
ドレスなんて作りたくないし部屋から出たくもないと逃げ場を探していたことに気付かれていたらしい。
ホテルの前で馬車に乗り込んだ後も言い訳を考えていたシャーロットにジェロームが爆弾を落とした。
「朝食と一緒にメモが届いた。仕立て屋が待ってるそうだ」
「は?」
どこかのドレスショップで吊るしのドレスを買うのだと思っていたシャーロットは驚いてジェロームの顔を凝視した。
「母上と義姉上が手ぐすねひいて待ってるらしい」
「待って! それは嫌!」
「諦めるんだな。俺と結婚してれば俺の家族と会うことになるのは当然だろ?」
昨夜、シャーロットがそばに寄ってこない男が一番の好みだと発言してからというもの、ジェロームは妙に気分がよかった。
(過去はどうあれこれからは貞淑に生きていきたいと思ってるって事だよな。それならこのままコーネリア伯爵夫人として⋯⋯)
自分の気持ちが上向きなのはシャーロットが新しい人生を歩もうと思いはじめたせいだと勘違いしているジェロームは苛立って睨みつけるシャーロットが可愛く見えて仕方がない。
「私が決めたんじゃないもの。勝手にサインして勝手に書類を出しただけでしょう!」
「それでもだ、結果は同じ。この間みたいに抱えて移動されるのが嫌なら諦めるんだな」
「え? あれは違⋯⋯何でもないわ」
「モルガリウス侯爵家に向かう」
「そう言えば、ご当主様ってお仕事に行かなくていいのかしら? もう何日もお休みしてるみたいだし」
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「ちっ!」
シャーロットが思わず舌打ちをするとジェロームが笑いはじめた。
「全く、君と言う人は見ていて飽きない。ツンとすました貴族令嬢かと思えば平気で口論を仕掛けてくるし、毒づいたり舌打ちしたりもする。話すたびにどんどん目が離せなくなる」
「所詮は女子収容所帰りですから、直ぐにお里が知れてしまいますの。侯爵家などに参りましたらどんな粗相をしてしまうか、考えただけで震えがきてしまいますわ」
「構わないさ。多分あの2人なら大喜びしそうだ」
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何を言っても今日のジェロームは暖簾に腕押しで話にならず非常にやりにくい。
(家族パワーかしら、妙に強気でムカつくわ)
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「母上が雨に濡れるのは嫌だと言ってね」
「素晴らしいご趣味ですこと。流石は陸軍大臣のお屋敷ですわ」
シャーロットの嫌味をサラッと流したジェロームがニヤリと笑って手を差し出した。
「エスコートさせていただけますか? 奥様」
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「よくいらしてくださったわね。待ちきれなくてお義母様とここで待機しておりましたのよ」
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