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ルーメン 暁のダンジョン
145.助けてなんかやらない
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「ソイツはちびすけが単なる同行者だと思ってるらしいぞ」
ルカが足を投げ出してソファにもたれるとテスタロッサがジャニスを睨みつけた。
「それ、どういう意味かしら?」
不穏な空気にジャニスが目をパチパチと瞬かせルカを見やった。
「あの、ミリアさんはルカさんが勉強に連れてるんですよね? 子供を連れてあのダンジョンを攻略したなんて凄いですよね」
「バン!」
テスタロッサが手に持っていた書類を机に叩きつけた。
「ルカ、なんでこんなことになってるの!」
「知るかよ、コイツが勝手に想像してるだけだ。調子に乗るなって言っても聞きゃしねえ」
「ジャニスさん、ミリアさんは単独Sランク冒険者です。今回本部が依頼したSランクパーティーのメンバーはミリアさんとルカさんの2人です」
「えっ、まさか。だってまだ子供じゃないですか」
(やっぱり・・はぁ、やっぱりそこか)
「ちびすけは18歳だぜ。仮にちびすけが子供だったとしてもお前の態度は間違ってるがな」
「そんな、だったら先に教えて下さいよ。俺が勘違いしてるって」
「なあ、なんで俺達が態々お前に説明しなきゃならん? お前は瀕死の状態だったのを助けられたんだろ? 俺達の戦いを何一つ見てないくせに目の前にいる奴を勝手に役立たずだと決めつけた野郎をなんでフォローしなきゃいけねえのか分からん。しかも、黙れっつってもベラベラ」
「でっ、でも・・ミリアさんが一言言ってくれれば」
「ジャニスさんは一応被害者ですから、動揺している人はおかしな行動をとることもあるんで」
「そう、それです。酷い目にあったから状況を把握できなかったんです」
「それにしても押し退けたりお茶を入れてこいってのは流石に見た事ねえぜ? 今までパニック状態のやつも見てきたが、ソイツらと違ってお前の頭はしっかりしてるしな」
必死になって言い募るジャニスだが、ルカとテスタロッサの冷たい視線は微塵も揺るがなかった。
「盗人する知恵は働いてたしな」
「護符なら返したじゃないですか! 忘れてただけだって」
「・・それだけか? まあ好きにしたらいい。って事で俺達の報告は別でやらせてもらうが、ひとつだけ先に言っとく。例の小部屋にあったお宝は全部持って帰ってる。ソイツの扱いは本部に任せる」
態々宝についてだけを言うルカにピンときたテスタロッサが質問をした。
「2人の取り分は?」
「いらねえ。ってか、なくなったお宝も全て回収しないとヤバいぜ。俺達は飯でも食ってくる。ちびすけ行くぞ」
ルカに続いてミリアが立ち上がるとヴァンとヨルムガンドもついて来た。ドアの近くまで来た時ミリアが振り返った。
「あの衣装箱に入っていたお宝は非常に危険な物です。持ちだした人に必ず災厄をもたらす物ばかりなので、必ず全て回収してください。
それから、もし故意に隠した人がいてその所為で何か起こっても私達はその人を助けることはしません。ジェルソミーノだけでなくディエチミーラも同じことを言うでしょう」
「・・アンタに決める権利があるのかよ。Sランクは冒険者を守るんだろ? だったら」
「Sランクだからって自分から災厄を呼び込んだ奴の尻拭いをする責任なんかねえよ」
「でも、ディエチミーラは違う! 彼等なら人を見捨てたりしない」
「試したきゃ試せばいいぜ? 俺達には関係ないしな。そういやあ喉が乾いてるんだよな。下で頼んどいてやるよ」
「いいえ、話が終わるまで我慢してもらうわ」
テスタロッサの冷たい声が青褪めたジャニスに突き刺さった。
ギルドを出て適当に繁盛している店を見つけたルカ達は料理を頼んで漸く一息入れる事ができた。
「全く、この街にゃ碌な奴がいねえ。報告が終わったらさっさと帰ろうぜ」
「・・年齢相応に見える方法ってないんですかね」
「ちびすけはそのままで良いんだよ。勘違いする奴の方が間違ってる」
「でも」
ため息をついたミリアは果実水の入ったコップを覗き込んだ。
「ここで私がワインやエールを頼んだら間違いなく断られるでしょう?」
「まあな、そんなに気にするな。ああ言う奴らは何にでもケチをつけて優位に立った気分を味わいたいんだ」
ギルドに戻るとギルマスの執務室にはテスタロッサとセオドラがいた。
「帝国は大丈夫なのか?」
「あー、取り敢えずはな。今は忙しいからグダグダ言ってんじゃねえ。大人しく待ってろと・・」
沈着冷静なセオドラの言葉にミリアがギョッとするとルカが目を丸くした。
「へっ? セオドラが? お前がおっさんに言ったのか?」
「ルカが言うはずだと伝えておいた」
ミリアとテスタロッサが吹き出しルカはガックリと肩を落とした。
「お前は昔からそう言う奴だよな」
「ポーターから話を聞きました。内容は予想通りでしたけど」
「ポケットの中身は秘密ってか」
「要約すると、ポーターとして自分はとても優秀だから巻き込まれた可哀想な被害者だ。ルカに推薦して欲しい。ルカの指導を受ければ冒険者にだってなれる自信がある。
ポーターは今の所本人が言うように被害者の立ち位置なので身体検査をするわけにもいきませんし」
「随分と気に入られたな」
ルカはニヤニヤと笑うセオドラに机の上のお菓子を投げつけた。
「奴は俺達がウコバクをやってる時にお宝を盗んだんだろう。ちびすけがもしもの時用に渡した転移の護符もネコババしようとした。そんな奴に気に入られても胸糞悪いだけだっつうの」
「そのウコバクとダンジョンについて報告してくれるか?」
ルカが20階層のボス、ジャックフロストから聞いた話をするとセオドラがうめき声を上げた。
ルカが足を投げ出してソファにもたれるとテスタロッサがジャニスを睨みつけた。
「それ、どういう意味かしら?」
不穏な空気にジャニスが目をパチパチと瞬かせルカを見やった。
「あの、ミリアさんはルカさんが勉強に連れてるんですよね? 子供を連れてあのダンジョンを攻略したなんて凄いですよね」
「バン!」
テスタロッサが手に持っていた書類を机に叩きつけた。
「ルカ、なんでこんなことになってるの!」
「知るかよ、コイツが勝手に想像してるだけだ。調子に乗るなって言っても聞きゃしねえ」
「ジャニスさん、ミリアさんは単独Sランク冒険者です。今回本部が依頼したSランクパーティーのメンバーはミリアさんとルカさんの2人です」
「えっ、まさか。だってまだ子供じゃないですか」
(やっぱり・・はぁ、やっぱりそこか)
「ちびすけは18歳だぜ。仮にちびすけが子供だったとしてもお前の態度は間違ってるがな」
「そんな、だったら先に教えて下さいよ。俺が勘違いしてるって」
「なあ、なんで俺達が態々お前に説明しなきゃならん? お前は瀕死の状態だったのを助けられたんだろ? 俺達の戦いを何一つ見てないくせに目の前にいる奴を勝手に役立たずだと決めつけた野郎をなんでフォローしなきゃいけねえのか分からん。しかも、黙れっつってもベラベラ」
「でっ、でも・・ミリアさんが一言言ってくれれば」
「ジャニスさんは一応被害者ですから、動揺している人はおかしな行動をとることもあるんで」
「そう、それです。酷い目にあったから状況を把握できなかったんです」
「それにしても押し退けたりお茶を入れてこいってのは流石に見た事ねえぜ? 今までパニック状態のやつも見てきたが、ソイツらと違ってお前の頭はしっかりしてるしな」
必死になって言い募るジャニスだが、ルカとテスタロッサの冷たい視線は微塵も揺るがなかった。
「盗人する知恵は働いてたしな」
「護符なら返したじゃないですか! 忘れてただけだって」
「・・それだけか? まあ好きにしたらいい。って事で俺達の報告は別でやらせてもらうが、ひとつだけ先に言っとく。例の小部屋にあったお宝は全部持って帰ってる。ソイツの扱いは本部に任せる」
態々宝についてだけを言うルカにピンときたテスタロッサが質問をした。
「2人の取り分は?」
「いらねえ。ってか、なくなったお宝も全て回収しないとヤバいぜ。俺達は飯でも食ってくる。ちびすけ行くぞ」
ルカに続いてミリアが立ち上がるとヴァンとヨルムガンドもついて来た。ドアの近くまで来た時ミリアが振り返った。
「あの衣装箱に入っていたお宝は非常に危険な物です。持ちだした人に必ず災厄をもたらす物ばかりなので、必ず全て回収してください。
それから、もし故意に隠した人がいてその所為で何か起こっても私達はその人を助けることはしません。ジェルソミーノだけでなくディエチミーラも同じことを言うでしょう」
「・・アンタに決める権利があるのかよ。Sランクは冒険者を守るんだろ? だったら」
「Sランクだからって自分から災厄を呼び込んだ奴の尻拭いをする責任なんかねえよ」
「でも、ディエチミーラは違う! 彼等なら人を見捨てたりしない」
「試したきゃ試せばいいぜ? 俺達には関係ないしな。そういやあ喉が乾いてるんだよな。下で頼んどいてやるよ」
「いいえ、話が終わるまで我慢してもらうわ」
テスタロッサの冷たい声が青褪めたジャニスに突き刺さった。
ギルドを出て適当に繁盛している店を見つけたルカ達は料理を頼んで漸く一息入れる事ができた。
「全く、この街にゃ碌な奴がいねえ。報告が終わったらさっさと帰ろうぜ」
「・・年齢相応に見える方法ってないんですかね」
「ちびすけはそのままで良いんだよ。勘違いする奴の方が間違ってる」
「でも」
ため息をついたミリアは果実水の入ったコップを覗き込んだ。
「ここで私がワインやエールを頼んだら間違いなく断られるでしょう?」
「まあな、そんなに気にするな。ああ言う奴らは何にでもケチをつけて優位に立った気分を味わいたいんだ」
ギルドに戻るとギルマスの執務室にはテスタロッサとセオドラがいた。
「帝国は大丈夫なのか?」
「あー、取り敢えずはな。今は忙しいからグダグダ言ってんじゃねえ。大人しく待ってろと・・」
沈着冷静なセオドラの言葉にミリアがギョッとするとルカが目を丸くした。
「へっ? セオドラが? お前がおっさんに言ったのか?」
「ルカが言うはずだと伝えておいた」
ミリアとテスタロッサが吹き出しルカはガックリと肩を落とした。
「お前は昔からそう言う奴だよな」
「ポーターから話を聞きました。内容は予想通りでしたけど」
「ポケットの中身は秘密ってか」
「要約すると、ポーターとして自分はとても優秀だから巻き込まれた可哀想な被害者だ。ルカに推薦して欲しい。ルカの指導を受ければ冒険者にだってなれる自信がある。
ポーターは今の所本人が言うように被害者の立ち位置なので身体検査をするわけにもいきませんし」
「随分と気に入られたな」
ルカはニヤニヤと笑うセオドラに机の上のお菓子を投げつけた。
「奴は俺達がウコバクをやってる時にお宝を盗んだんだろう。ちびすけがもしもの時用に渡した転移の護符もネコババしようとした。そんな奴に気に入られても胸糞悪いだけだっつうの」
「そのウコバクとダンジョンについて報告してくれるか?」
ルカが20階層のボス、ジャックフロストから聞いた話をするとセオドラがうめき声を上げた。
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