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ルーメン 暁のダンジョン
143.意外な人物の意外な行動にオロオロ
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「あんたがここのボスならやるしかねえ」
『ウコバクを退治した実力を見せてみよ。わしも本気で相手致そう』
穏やかな様子だったジャックフロストがニヤリと笑うと目がつりあがり、口から白い冷気を吹き出しはじめた。痩せこけていた身体が膨れ上がり白いローブから氷柱が垂れ下がった。氷で出来たスタッフが現れた途端部屋の温度が一気に下がっていった。
降りはじめた雪が視界を奪い、あっという間に積もった雪がピキピキと音を立てて凍りつき身動きが取れなくなった。
ワンドを取り出したミリアが【フレアブレス】を撃つと足元の氷が溶けて降り頻る雪に隠れていたジャックフロストの姿が見えた。
『ほう、氷だけでなく炎も操るとは・・』
ジャックフロストがスタッフをミリアに向け巨大な氷の刃を飛ばし、ミリアが【グレイトフレイムランス】で応戦した。2つの技がぶつかり合い氷の刃が溶け出した。ミリアの魔法で熱せられた水が蒸気になり水蒸気爆発を起こした。
ジャックフロストが後ろに弾き飛ばされ、ルカの結界が粉々に弾け飛んだ。
「ちび、やり過ぎだぞ!」
「ごめん」
立ち上がったジャックフロストにルカがクレイモアで斬りかかりスタッフと鍔迫り合いになった。
「ジジイのくせに随分と力持ちじゃねえか」
ニヤリと笑ったジャックフロストの口から勢いよく冷気が噴き出し、ルカは慌てて飛び退った。
『ほう、あれを躱すとは。中々・・』
ジャックフロストがスタッフを突き出すと同時にルカが懐に飛び込んだ。
「二番煎じはな・・効かねえんだよ!」
(ルカさん、かなりキレてる?)
突き出されたスタッフを下から切り上げジャックフロストを袈裟斬りにした。
「ふん、問題が解決するまで穴蔵に逃げ込んでたジジイには負けねえ」
倒れたジャックフロストは光の粒になり、その後に美しい装飾の宝箱が現れた。箱を開けると布の上に一振りの短剣と封がされた小さな壺が3つも入っていた。
『短剣はカルンウェナン、布はコホリン・ドゥリューが・・2枚か』
カルンウェナンはアーサー王が持っていた短剣で魔女を一撃で切り捨てることができるほどの切れ味。
コホリン・ドゥリューは潜水を可能とさせる魔法の小さなフード。
壺に入っていたのは毒と魔法を打ち消すモーリュ。
プロメテウスのイーコールから生まれた薬草で、この薬草から作った薬を塗ると1日の間どんな物にも傷つけられない身体となるプロメテイオン。
神聖な植物で作る神酒。栄養豊富で傷の治癒の促進を行う。生命力を活性化させ身体を健康にし、子孫繁栄を司るハオマ。
「ボス部屋の宝箱って凄いんですね。3種類共伝説の薬ですよ」
ミリアは目を輝かせ、はあっと幸せそうにため息をついた。
「いや、かなりの大盤振る舞いだぞ。普通なら短剣か帽子のどっちかひとつだな」
『ルカの怒りに怯えたか』
『ほんとにガクブルだったぞ』
「えーっと、もらい過ぎなら・・どれかひとつ選べって事ですか?」
「安心しろ、3つともお前のもんだ・・ジャニスに声をかけて白銀を連れて帰るぞ」
ポス部屋を出ると扉の横にジャニスが座り込んで頭を抱えていた。
「おい、どうした?」
はっと顔を上げたジャニスは立ち上がり頭を下げた。
「お疲れ様でした。扉が開いたってことは討伐完了ですね」
「ああ、ちょい話し込んでたんで時間がかかっちまった。すまん」
ジャニスはびっくりして右手を顔の前で振った。
「とんでもないです。情報のわからないボスの討伐ですからもっとかかると思ってました。あっ、すみません。実力を疑ったとかじゃないんです」
「白銀の奴等をどうするかだが、転送陣を使いたくねえが仕方ないか」
『・・今ならギルマスの部屋はテスタロッサのみ』
「へー、ならお前が手伝ってくれるんだぁ。ほー、そりゃーすげーなー。ちびすけ、ジャニスとここで待っててくれ。クソどもをちょいと運んで来る」
「はい、じゃあこれをテスタロッサさんに貸してあげて下さい。魔力はちょっぴりじゃないと大変なことになりますって伝えて下さいね」
アイテムバックからケーリュケイオンを出したミリアは注意事項を伝えた。
「いや、それはやめとこう。テスタロッサが興奮しすぎて暴走する。向こうにはヴァンを置いてくる。なーんか仕事したいって張り切ってるしな」
『ふん』
ルカとヴァンが小部屋に向かって歩く後ろ姿を見つめているとジャニスがミリアの手元を覗き込んできた。
「変わった杖ですね。ミリアさんのですか?」
「知り合いが貸してくれたの」
「蛇と翼・・ん? それって・・」
ミリアは慌ててアイテムバックにケーリュケイオンを片付けなんとか誤魔化そうとネタを考えた。
「えーっと、どうしてジャニスさんはボス部屋にこだわったんですか?」
ジャニスはミリアを頭から足先までジロジロと見て『ふーん』と言った途端それ迄の礼儀正しかった態度が一変した。
「あー、俺達ポーターは経験で契約する料金が変わるんで。ここの20階をクリアしたパーティーのポーターをしたってなればランクが上がるんすよ」
「それはちっとも構わないですけど、ジャニスさんは冒険者にはならないんですか? ダンジョンに潜るならその方が稼げるんじゃないですか?」
「あ、才能なくて諦めたんだよね。俺のスキルって『回復』だから人には使えないし、ヒールやポーションが効きにくいし。その点ポーターなら疲れが取れやすいんで無理が効くというか」
(うーん、スキルって色々あるのね)
「しかし、ルカさんって凄いひとですよね。あんな人と同行して勉強出来るなんてミリアさんが羨ましいなあ。どうやって頼んだの?」
「えっ?」
「因みにミリアさんのスキルってなんなんすか? どんなスキル持ってたらルカさんに同行を頼めるのか教えてくれない?」
「わた・・私ですか?」
『ウコバクを退治した実力を見せてみよ。わしも本気で相手致そう』
穏やかな様子だったジャックフロストがニヤリと笑うと目がつりあがり、口から白い冷気を吹き出しはじめた。痩せこけていた身体が膨れ上がり白いローブから氷柱が垂れ下がった。氷で出来たスタッフが現れた途端部屋の温度が一気に下がっていった。
降りはじめた雪が視界を奪い、あっという間に積もった雪がピキピキと音を立てて凍りつき身動きが取れなくなった。
ワンドを取り出したミリアが【フレアブレス】を撃つと足元の氷が溶けて降り頻る雪に隠れていたジャックフロストの姿が見えた。
『ほう、氷だけでなく炎も操るとは・・』
ジャックフロストがスタッフをミリアに向け巨大な氷の刃を飛ばし、ミリアが【グレイトフレイムランス】で応戦した。2つの技がぶつかり合い氷の刃が溶け出した。ミリアの魔法で熱せられた水が蒸気になり水蒸気爆発を起こした。
ジャックフロストが後ろに弾き飛ばされ、ルカの結界が粉々に弾け飛んだ。
「ちび、やり過ぎだぞ!」
「ごめん」
立ち上がったジャックフロストにルカがクレイモアで斬りかかりスタッフと鍔迫り合いになった。
「ジジイのくせに随分と力持ちじゃねえか」
ニヤリと笑ったジャックフロストの口から勢いよく冷気が噴き出し、ルカは慌てて飛び退った。
『ほう、あれを躱すとは。中々・・』
ジャックフロストがスタッフを突き出すと同時にルカが懐に飛び込んだ。
「二番煎じはな・・効かねえんだよ!」
(ルカさん、かなりキレてる?)
突き出されたスタッフを下から切り上げジャックフロストを袈裟斬りにした。
「ふん、問題が解決するまで穴蔵に逃げ込んでたジジイには負けねえ」
倒れたジャックフロストは光の粒になり、その後に美しい装飾の宝箱が現れた。箱を開けると布の上に一振りの短剣と封がされた小さな壺が3つも入っていた。
『短剣はカルンウェナン、布はコホリン・ドゥリューが・・2枚か』
カルンウェナンはアーサー王が持っていた短剣で魔女を一撃で切り捨てることができるほどの切れ味。
コホリン・ドゥリューは潜水を可能とさせる魔法の小さなフード。
壺に入っていたのは毒と魔法を打ち消すモーリュ。
プロメテウスのイーコールから生まれた薬草で、この薬草から作った薬を塗ると1日の間どんな物にも傷つけられない身体となるプロメテイオン。
神聖な植物で作る神酒。栄養豊富で傷の治癒の促進を行う。生命力を活性化させ身体を健康にし、子孫繁栄を司るハオマ。
「ボス部屋の宝箱って凄いんですね。3種類共伝説の薬ですよ」
ミリアは目を輝かせ、はあっと幸せそうにため息をついた。
「いや、かなりの大盤振る舞いだぞ。普通なら短剣か帽子のどっちかひとつだな」
『ルカの怒りに怯えたか』
『ほんとにガクブルだったぞ』
「えーっと、もらい過ぎなら・・どれかひとつ選べって事ですか?」
「安心しろ、3つともお前のもんだ・・ジャニスに声をかけて白銀を連れて帰るぞ」
ポス部屋を出ると扉の横にジャニスが座り込んで頭を抱えていた。
「おい、どうした?」
はっと顔を上げたジャニスは立ち上がり頭を下げた。
「お疲れ様でした。扉が開いたってことは討伐完了ですね」
「ああ、ちょい話し込んでたんで時間がかかっちまった。すまん」
ジャニスはびっくりして右手を顔の前で振った。
「とんでもないです。情報のわからないボスの討伐ですからもっとかかると思ってました。あっ、すみません。実力を疑ったとかじゃないんです」
「白銀の奴等をどうするかだが、転送陣を使いたくねえが仕方ないか」
『・・今ならギルマスの部屋はテスタロッサのみ』
「へー、ならお前が手伝ってくれるんだぁ。ほー、そりゃーすげーなー。ちびすけ、ジャニスとここで待っててくれ。クソどもをちょいと運んで来る」
「はい、じゃあこれをテスタロッサさんに貸してあげて下さい。魔力はちょっぴりじゃないと大変なことになりますって伝えて下さいね」
アイテムバックからケーリュケイオンを出したミリアは注意事項を伝えた。
「いや、それはやめとこう。テスタロッサが興奮しすぎて暴走する。向こうにはヴァンを置いてくる。なーんか仕事したいって張り切ってるしな」
『ふん』
ルカとヴァンが小部屋に向かって歩く後ろ姿を見つめているとジャニスがミリアの手元を覗き込んできた。
「変わった杖ですね。ミリアさんのですか?」
「知り合いが貸してくれたの」
「蛇と翼・・ん? それって・・」
ミリアは慌ててアイテムバックにケーリュケイオンを片付けなんとか誤魔化そうとネタを考えた。
「えーっと、どうしてジャニスさんはボス部屋にこだわったんですか?」
ジャニスはミリアを頭から足先までジロジロと見て『ふーん』と言った途端それ迄の礼儀正しかった態度が一変した。
「あー、俺達ポーターは経験で契約する料金が変わるんで。ここの20階をクリアしたパーティーのポーターをしたってなればランクが上がるんすよ」
「それはちっとも構わないですけど、ジャニスさんは冒険者にはならないんですか? ダンジョンに潜るならその方が稼げるんじゃないですか?」
「あ、才能なくて諦めたんだよね。俺のスキルって『回復』だから人には使えないし、ヒールやポーションが効きにくいし。その点ポーターなら疲れが取れやすいんで無理が効くというか」
(うーん、スキルって色々あるのね)
「しかし、ルカさんって凄いひとですよね。あんな人と同行して勉強出来るなんてミリアさんが羨ましいなあ。どうやって頼んだの?」
「えっ?」
「因みにミリアさんのスキルってなんなんすか? どんなスキル持ってたらルカさんに同行を頼めるのか教えてくれない?」
「わた・・私ですか?」
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