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ルーメン 暁のダンジョン
142.謎が判明したら
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「なんだ? ボス部屋が気になるのか?」
「・・あの、お二人はこのまま俺達をギルドに送り届けたらその後はどうされるんですか?」
「ん?」
「もうこのダンジョンには・・」
「ギルド本部の指示によるが、多分もう一度潜ると思う。魔物は倒したが調べないといけないことは残ってるからな」
ルカの言葉に俯いたポーターは暫く悩んでいたがパッと顔を上げルカの腕を握りしめた。
「その時は、俺をポーターに雇ってもらえませんか?」
「あー、悪い。俺達のパーティーにはもうポーターがいるんだ。それに討伐なんかに行くときにはポーターを連れてかねえしな」
「ポーターがいるのに連れてかない?」
「まあ、色々あってな」
「だったら・・ボス部屋を攻略してから帰るのは無理ですか?」
「俺達は構わんがその間ひとりで待ってもらう事になるが大丈夫か?」
「はい、体調はいつも以上に良いので問題ありません」
ルカがミリアをチラッと見るとミリアは首を傾げていたがルカに小さく頷いた。
「ルカさんに任せます」
「よし、ならボスをチャチャっと片付けてくるか」
部屋に《白銀の嵐》を残して結界を張り広間に出た。ヴァンが示した壁の前に立ったルカが剣を振ると分厚い壁がガラガラと崩れ落ち、氷に閉ざされた広い通路のその奥に扉があるのが見えた。
ジャニスは扉の前で待機しミリア達が扉を開けて入って行くと、蒼白い光に照らされた部屋に長い顎髭を蓄えた小柄な白髪の老人が立っていた。
『わしはジャックフロスト。お主達が奴を退治してくれたのじゃな』
「何が起こったのか教えてくれ」
『はじまりはフリームスルスじゃ』
ウコバクを倒した礼にとジャックフロストが話しはじめた。
『昔から、あちこちでフリームスルスが悪さをしておったのは知っておるかの?』
ミリアとルカが頷くとジャックフロストは白い髭を撫でながら頷いた。
『フリームスルスの始祖であるユミルは原初の巨人でな、非常に力のある傲慢な奴だったそうじゃ。その力を受け継いだフリームスルスの強さはお主らも知っての通りじゃが、以前のフリームスルス達はもっと力があり人間界で好き勝手しておった。
その頃ウコバクが何やらしておった地を運悪くフリームスルスのひとりが氷土に変えてしもうた。邪魔をされ腹を立てたウコバクじゃがフリームスルスはヨトゥンヘイムに帰ってしまい手が出せん。
執拗に不満を抱え続けたウコバクはここに氷のダンジョンができると知りフリームスルスを誘き出そうとしたのじゃ』
「そんな事でフリームスルスを誘い出せるとは思えんが・・」
『・・彼奴は何度もヨトゥンヘイムに伝令を送ってきおった。ヘラに握り潰されておったがな』
「つまり俺達はフリームスルスの悪戯の尻拭いに借り出されたわけか?」
振り返ったルカが目を眇めてヴァンを睨みつけた。
「知ってたんならさっさと言いやがれ! 今回に限って妙に協力的だと思ったらそう言う事か! てめえ、覚えてろよ。後でボッコボコにしてやる」
『ほっほっほ。神獣にそれだけ啖呵をきれる人間は珍しいのお』
怒りの収まらないルカは手を握ったり開いたりしながらヴァンとヨルムガンドを睨みつけ、今にも飛びかかっていきそうな勢いでふうふうと荒い息を吐いていた。
「灼熱と極寒が入れ替わっていたのは何故ですか?」
『ウコバクの宝を盗んだものがおったろう? 彼奴はそれを取り戻すためにここを離れておったのじゃ』
ウコバクがいる間は灼熱のダンジョンになり、ここを離れている間は本来の氷のダンジョンに戻る。下級悪魔のウコバクの魔力では人間に変身しても3日しか持たなかった。ここに戻り魔力を蓄えては宝を探しに行っていたのだと言う。
『あの壺は地獄の釜に通じておったのでな。その側でなければ魔力を補充できなんだのじゃよ』
「私達がここに来た時冒険者達が放置されていました。ウコバクは何故彼等を無視していたんでしょうか?」
『逃げ出す手段を持たぬ者達じゃったから興味をひかんかったのか、囮にでも使おうと思ったのか』
「・・フリームスルスはウコバクの料理の邪魔でもしたのかしら?」
「料理?」
ミリアの呟きを聞き咎めたルカが聞き返した。
「ウコバクって花火と揚げ物を発明したって言われてるから」
「マジかよ。食い物の恨みでモンスターハウスとか・・堪忍してくれ」
どっと疲れが出たルカがしゃがみ込んで頭を抱えた。
『ウコバクから宝を盗んだ者とそれを持っておる者達には災厄が待っておろう。あれはルシファーの居城パンデモニウム産じゃからな』
「・・それは・・ウコバクは相当慌てた筈ね。持ち出して挙句の果てに盗まれたなんて知られたら大変だもの」
「何だってそんな物を持ち出したんだ?」
『ダンジョンでは宝が産まれるが奴にはその力がないからであろうな』
「となると冒険者を誘き寄せる疑似餌?」
「高価な宝が出れば冒険者が集まる、多くの冒険者が殺られれば流石にフリームスルスが出てくると踏んだのか?」
ジャックフロストは、寒さを具現化する霜の怪物。名前の意味は"霜男"で、雪と氷で出来た妖精ともいわれる。
小人・白髪の老人・雪だるまなどの姿で現れ、悪戯好きで無邪気な子供のような性格だが一度怒らせるとその相手を氷漬けにして殺してしまう事もある。笑いながら人間を凍らせるという恐ろしい性質を持つ。ジャックフロストの触れたところには霜柱が付く。
『さて、話はこれくらいじゃがお主達はどうする?』
「・・あの、お二人はこのまま俺達をギルドに送り届けたらその後はどうされるんですか?」
「ん?」
「もうこのダンジョンには・・」
「ギルド本部の指示によるが、多分もう一度潜ると思う。魔物は倒したが調べないといけないことは残ってるからな」
ルカの言葉に俯いたポーターは暫く悩んでいたがパッと顔を上げルカの腕を握りしめた。
「その時は、俺をポーターに雇ってもらえませんか?」
「あー、悪い。俺達のパーティーにはもうポーターがいるんだ。それに討伐なんかに行くときにはポーターを連れてかねえしな」
「ポーターがいるのに連れてかない?」
「まあ、色々あってな」
「だったら・・ボス部屋を攻略してから帰るのは無理ですか?」
「俺達は構わんがその間ひとりで待ってもらう事になるが大丈夫か?」
「はい、体調はいつも以上に良いので問題ありません」
ルカがミリアをチラッと見るとミリアは首を傾げていたがルカに小さく頷いた。
「ルカさんに任せます」
「よし、ならボスをチャチャっと片付けてくるか」
部屋に《白銀の嵐》を残して結界を張り広間に出た。ヴァンが示した壁の前に立ったルカが剣を振ると分厚い壁がガラガラと崩れ落ち、氷に閉ざされた広い通路のその奥に扉があるのが見えた。
ジャニスは扉の前で待機しミリア達が扉を開けて入って行くと、蒼白い光に照らされた部屋に長い顎髭を蓄えた小柄な白髪の老人が立っていた。
『わしはジャックフロスト。お主達が奴を退治してくれたのじゃな』
「何が起こったのか教えてくれ」
『はじまりはフリームスルスじゃ』
ウコバクを倒した礼にとジャックフロストが話しはじめた。
『昔から、あちこちでフリームスルスが悪さをしておったのは知っておるかの?』
ミリアとルカが頷くとジャックフロストは白い髭を撫でながら頷いた。
『フリームスルスの始祖であるユミルは原初の巨人でな、非常に力のある傲慢な奴だったそうじゃ。その力を受け継いだフリームスルスの強さはお主らも知っての通りじゃが、以前のフリームスルス達はもっと力があり人間界で好き勝手しておった。
その頃ウコバクが何やらしておった地を運悪くフリームスルスのひとりが氷土に変えてしもうた。邪魔をされ腹を立てたウコバクじゃがフリームスルスはヨトゥンヘイムに帰ってしまい手が出せん。
執拗に不満を抱え続けたウコバクはここに氷のダンジョンができると知りフリームスルスを誘き出そうとしたのじゃ』
「そんな事でフリームスルスを誘い出せるとは思えんが・・」
『・・彼奴は何度もヨトゥンヘイムに伝令を送ってきおった。ヘラに握り潰されておったがな』
「つまり俺達はフリームスルスの悪戯の尻拭いに借り出されたわけか?」
振り返ったルカが目を眇めてヴァンを睨みつけた。
「知ってたんならさっさと言いやがれ! 今回に限って妙に協力的だと思ったらそう言う事か! てめえ、覚えてろよ。後でボッコボコにしてやる」
『ほっほっほ。神獣にそれだけ啖呵をきれる人間は珍しいのお』
怒りの収まらないルカは手を握ったり開いたりしながらヴァンとヨルムガンドを睨みつけ、今にも飛びかかっていきそうな勢いでふうふうと荒い息を吐いていた。
「灼熱と極寒が入れ替わっていたのは何故ですか?」
『ウコバクの宝を盗んだものがおったろう? 彼奴はそれを取り戻すためにここを離れておったのじゃ』
ウコバクがいる間は灼熱のダンジョンになり、ここを離れている間は本来の氷のダンジョンに戻る。下級悪魔のウコバクの魔力では人間に変身しても3日しか持たなかった。ここに戻り魔力を蓄えては宝を探しに行っていたのだと言う。
『あの壺は地獄の釜に通じておったのでな。その側でなければ魔力を補充できなんだのじゃよ』
「私達がここに来た時冒険者達が放置されていました。ウコバクは何故彼等を無視していたんでしょうか?」
『逃げ出す手段を持たぬ者達じゃったから興味をひかんかったのか、囮にでも使おうと思ったのか』
「・・フリームスルスはウコバクの料理の邪魔でもしたのかしら?」
「料理?」
ミリアの呟きを聞き咎めたルカが聞き返した。
「ウコバクって花火と揚げ物を発明したって言われてるから」
「マジかよ。食い物の恨みでモンスターハウスとか・・堪忍してくれ」
どっと疲れが出たルカがしゃがみ込んで頭を抱えた。
『ウコバクから宝を盗んだ者とそれを持っておる者達には災厄が待っておろう。あれはルシファーの居城パンデモニウム産じゃからな』
「・・それは・・ウコバクは相当慌てた筈ね。持ち出して挙句の果てに盗まれたなんて知られたら大変だもの」
「何だってそんな物を持ち出したんだ?」
『ダンジョンでは宝が産まれるが奴にはその力がないからであろうな』
「となると冒険者を誘き寄せる疑似餌?」
「高価な宝が出れば冒険者が集まる、多くの冒険者が殺られれば流石にフリームスルスが出てくると踏んだのか?」
ジャックフロストは、寒さを具現化する霜の怪物。名前の意味は"霜男"で、雪と氷で出来た妖精ともいわれる。
小人・白髪の老人・雪だるまなどの姿で現れ、悪戯好きで無邪気な子供のような性格だが一度怒らせるとその相手を氷漬けにして殺してしまう事もある。笑いながら人間を凍らせるという恐ろしい性質を持つ。ジャックフロストの触れたところには霜柱が付く。
『さて、話はこれくらいじゃがお主達はどうする?』
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