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ルーメン 暁のダンジョン
139.ウコバクの攻撃
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「崩れたらヤバいぞ!」
バラバラと石塊や氷が降り注ぐ中慌てて階段を駆け下りると、それまで吹き荒れていたブリザードがピタリとおさまり辺りは眩い光に包まれはじめた。足元のぬかるみが一気に乾き天井から落ちてきた雫が地面に吸い込まれていく。
「ったく、日が変わったってことだよな」
「暑くなるはずだからここで装備を変えていきましょう」
着替えが終わる頃には空気は乾き汗が流れるほどの暑さになった。
16階から18階には人間のような顔を持ち胴体がライオンでサソリの尾を持つマンティコア、牛頭人身のミノタウロスなど大型の魔物が出現した。
梟のような嘴を持ち大型の熊に似たアウルベアーは鋭い爪と嘴で直接攻撃をしてきた。ルカの魔法剣がアウルベアーの硬い皮を切り裂き、ミリアの魔法が手足を切り落とす。
「一気に魔物が強くなってきたな。これで18階層じゃもっと下は地獄だな」
ルカは汗を拭い血だらけのクレイモアを振りながら眉間に皺を寄せた。
「階層がそれほど深くない可能性は?」
「この様子だと30階辺りがラスボスかもな。それ以上だとディエチミーラを含む大掛かりなレイドでも組まなきゃ攻略できねえかもしれん」
「ヨルムガンド、お前のせいでとんでもない事になったじゃねえか。責任とってせっせと働けよ」
『俺様1人でか? よっしゃー、手だしなしだぞー』
『ならばウコバクは我がもらう』
『えーっ、待って! ここは全員でやろう。コイツらよりウコバクの方が珍しいから俺様はそっちの方がいい』
緊張のかけらもない呑気な会話をしているルカ達だが現在の状況は、19階に降りた途端息もできなくなりそうなほどのモンスターに囲まれ強烈な熱気に蒸された獣臭で息をするのも辛い状態。
『これがモンスターハウスかあ。なあ、ここなら毒使っても良いか?』
「ダメです。ヨルムガンドの毒にあたったらルカさんと私は瞬殺されちゃいます。それより早くやっちゃいませんか? 臭くてたまりません」
『イタチ臭は平気であったが?』
ヴァンはハーミットのダンジョンでイタチの臭いが充満する中、平気で剥ぎ取りをしていたミリアの事を思い出していた。
「イタチ? あの時は薬の素材の採取中だったから」
「よく分からんが、ここの奴等のどれかから素材が採取できるかもと思えば臭いは平気って事か?」
「そうか! そうですね。珍しい素材があるかも・・なら、先ずは汚れを落とさないと」
途端にキラキラと目を輝かせたミリアがワンドを構えて【ウォーターボール】で先制攻撃。吹き飛んだ魔物達にルカ達が飛びかかっていった。
「はぁ~、ルカさんに騙された」
「素材はマジで色々集まったし、俺は『あるかも』としか言ってねえし」
「だったらせめてヨルムガンドの毒を採取・・」
ミリアの呟きを聞いたヨルムガンドがぶち猫の姿になってルカの肩に飛び乗った。
『ルカ、俺様を守ってくれ! ミリアの奴本気だった。絶対本気で俺様を狙ってる』
ルカは毛を逆立ててルカの頭にしがみつくヨルムガンドを引き剥がしヴァンの横に放り投げた。
「にいちゃんに守ってもらえ。兄弟愛ってのは素晴らしいぞ」
端のほうに残っている魔物をアイテムバックに放り込みミリアの元に戻ってきたルカは階段に向かって歩きはじめた。
「遊んでないで次行くぞー」
「そう、パパッと終わらせてグレーニアを採取しにいくわ!」
歩き出したミリアの後ろを少し離れてヴァンとヨルムガンドがついてきた。
『兄者、ミリアの迫力・・凄い』
『ヘルを言い負かすくらいだからな。彼奴が本気になれば力量とは関係なくとんでもないことを思いつくし退屈はせん』
『だから兄者はミリアの側にいるんだろ? 羨ましい』
問題の20階に降りると目の前に巨大な扉が立ち塞がった。灼熱の風をものともせず輝く金に縁取られた見事な扉には燃え盛る炎の上で戦う虎と鰐が描かれていた。
「見た目はまるでラスボスの部屋だな」
「他に道はないの?」
『目の前の広間の奥に道がある』
「なら、ここを攻略したら行けるってことか」
ルカが扉に手を掛けて大きく開くと中からパチパチと何かが爆ぜる音とむせかえる異様な臭いが広がり、喉を焼く熱い空気に眉を顰めるミリア達の耳に下品な笑い声が聞こえてきた。
「ギヒヒ、久しぶりの新しい奴。ギヒ」
「なあ、最近来た奴等はどうした?」
魔物はスコップを抱え直しチラリと後ろを振り返った。
(小部屋にいるって事? そのまま放置してるってことはウコバクはここを離れられないの?)
「ヨルムガンド、俺達の用事が済むまで遊んでてくれ。俺達はあの部屋に向かう」
ミリアが【アイスバレット】をうちヨルムガンドが飛び出した。ウコバクはスコップを振り回して溶けた溶岩のような炎の塊を飛ばしてきた。バチバチという音と派手な閃光が弾ける中でヨルムガンドが氷の矢を放つが、ウコバクの身体を包む炎に当たり溶けてしまった。
(アイスバレットもヨルムガンドの攻撃も効かない!?)
ウコバクの炎の礫はルカの結界に当たりバラバラと地面に落ちた。
「おんなじ箇所に何度も当たったら罅が入りそうだ。急げ!」
ウコバクがヨルムガンドの攻撃に気を取られている隙にミリア達は小部屋に駆け込んだ。
「あんた達が《白銀の嵐》か?」
部屋の中には男が4人。盾と片刃のファルシオンを持ちフルアーマーを着込んだ大男と長いスタッフを握り締めて蒼白く輝くローブを着た男が部屋の奥にある衣装箱の前に立ち塞がった。
その2人の前に立った男はロングソードを構えルカに狙いを定めている。
「お前らは誰だ!? どうやってここまで来た」
「お前らもここまで来たんだし、俺達が来れてもおかしくねえだろ? それよりそこに倒れてる奴はどうしたんだ? 魔物にやられた怪我には見えねえが」
バラバラと石塊や氷が降り注ぐ中慌てて階段を駆け下りると、それまで吹き荒れていたブリザードがピタリとおさまり辺りは眩い光に包まれはじめた。足元のぬかるみが一気に乾き天井から落ちてきた雫が地面に吸い込まれていく。
「ったく、日が変わったってことだよな」
「暑くなるはずだからここで装備を変えていきましょう」
着替えが終わる頃には空気は乾き汗が流れるほどの暑さになった。
16階から18階には人間のような顔を持ち胴体がライオンでサソリの尾を持つマンティコア、牛頭人身のミノタウロスなど大型の魔物が出現した。
梟のような嘴を持ち大型の熊に似たアウルベアーは鋭い爪と嘴で直接攻撃をしてきた。ルカの魔法剣がアウルベアーの硬い皮を切り裂き、ミリアの魔法が手足を切り落とす。
「一気に魔物が強くなってきたな。これで18階層じゃもっと下は地獄だな」
ルカは汗を拭い血だらけのクレイモアを振りながら眉間に皺を寄せた。
「階層がそれほど深くない可能性は?」
「この様子だと30階辺りがラスボスかもな。それ以上だとディエチミーラを含む大掛かりなレイドでも組まなきゃ攻略できねえかもしれん」
「ヨルムガンド、お前のせいでとんでもない事になったじゃねえか。責任とってせっせと働けよ」
『俺様1人でか? よっしゃー、手だしなしだぞー』
『ならばウコバクは我がもらう』
『えーっ、待って! ここは全員でやろう。コイツらよりウコバクの方が珍しいから俺様はそっちの方がいい』
緊張のかけらもない呑気な会話をしているルカ達だが現在の状況は、19階に降りた途端息もできなくなりそうなほどのモンスターに囲まれ強烈な熱気に蒸された獣臭で息をするのも辛い状態。
『これがモンスターハウスかあ。なあ、ここなら毒使っても良いか?』
「ダメです。ヨルムガンドの毒にあたったらルカさんと私は瞬殺されちゃいます。それより早くやっちゃいませんか? 臭くてたまりません」
『イタチ臭は平気であったが?』
ヴァンはハーミットのダンジョンでイタチの臭いが充満する中、平気で剥ぎ取りをしていたミリアの事を思い出していた。
「イタチ? あの時は薬の素材の採取中だったから」
「よく分からんが、ここの奴等のどれかから素材が採取できるかもと思えば臭いは平気って事か?」
「そうか! そうですね。珍しい素材があるかも・・なら、先ずは汚れを落とさないと」
途端にキラキラと目を輝かせたミリアがワンドを構えて【ウォーターボール】で先制攻撃。吹き飛んだ魔物達にルカ達が飛びかかっていった。
「はぁ~、ルカさんに騙された」
「素材はマジで色々集まったし、俺は『あるかも』としか言ってねえし」
「だったらせめてヨルムガンドの毒を採取・・」
ミリアの呟きを聞いたヨルムガンドがぶち猫の姿になってルカの肩に飛び乗った。
『ルカ、俺様を守ってくれ! ミリアの奴本気だった。絶対本気で俺様を狙ってる』
ルカは毛を逆立ててルカの頭にしがみつくヨルムガンドを引き剥がしヴァンの横に放り投げた。
「にいちゃんに守ってもらえ。兄弟愛ってのは素晴らしいぞ」
端のほうに残っている魔物をアイテムバックに放り込みミリアの元に戻ってきたルカは階段に向かって歩きはじめた。
「遊んでないで次行くぞー」
「そう、パパッと終わらせてグレーニアを採取しにいくわ!」
歩き出したミリアの後ろを少し離れてヴァンとヨルムガンドがついてきた。
『兄者、ミリアの迫力・・凄い』
『ヘルを言い負かすくらいだからな。彼奴が本気になれば力量とは関係なくとんでもないことを思いつくし退屈はせん』
『だから兄者はミリアの側にいるんだろ? 羨ましい』
問題の20階に降りると目の前に巨大な扉が立ち塞がった。灼熱の風をものともせず輝く金に縁取られた見事な扉には燃え盛る炎の上で戦う虎と鰐が描かれていた。
「見た目はまるでラスボスの部屋だな」
「他に道はないの?」
『目の前の広間の奥に道がある』
「なら、ここを攻略したら行けるってことか」
ルカが扉に手を掛けて大きく開くと中からパチパチと何かが爆ぜる音とむせかえる異様な臭いが広がり、喉を焼く熱い空気に眉を顰めるミリア達の耳に下品な笑い声が聞こえてきた。
「ギヒヒ、久しぶりの新しい奴。ギヒ」
「なあ、最近来た奴等はどうした?」
魔物はスコップを抱え直しチラリと後ろを振り返った。
(小部屋にいるって事? そのまま放置してるってことはウコバクはここを離れられないの?)
「ヨルムガンド、俺達の用事が済むまで遊んでてくれ。俺達はあの部屋に向かう」
ミリアが【アイスバレット】をうちヨルムガンドが飛び出した。ウコバクはスコップを振り回して溶けた溶岩のような炎の塊を飛ばしてきた。バチバチという音と派手な閃光が弾ける中でヨルムガンドが氷の矢を放つが、ウコバクの身体を包む炎に当たり溶けてしまった。
(アイスバレットもヨルムガンドの攻撃も効かない!?)
ウコバクの炎の礫はルカの結界に当たりバラバラと地面に落ちた。
「おんなじ箇所に何度も当たったら罅が入りそうだ。急げ!」
ウコバクがヨルムガンドの攻撃に気を取られている隙にミリア達は小部屋に駆け込んだ。
「あんた達が《白銀の嵐》か?」
部屋の中には男が4人。盾と片刃のファルシオンを持ちフルアーマーを着込んだ大男と長いスタッフを握り締めて蒼白く輝くローブを着た男が部屋の奥にある衣装箱の前に立ち塞がった。
その2人の前に立った男はロングソードを構えルカに狙いを定めている。
「お前らは誰だ!? どうやってここまで来た」
「お前らもここまで来たんだし、俺達が来れてもおかしくねえだろ? それよりそこに倒れてる奴はどうしたんだ? 魔物にやられた怪我には見えねえが」
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