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ルーメン 暁のダンジョン
137.調子に乗ったヨルムガンド
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3階と4階では深く降り積もった雪にトラップが埋もれていた。先頭を行くヴァンの指示で落とし穴を避け毒の矢を躱し天井から突き刺さる氷柱を【フレイムボール】で溶かし・・。
出没する魔物は虫系や鳥系の飛行タイプばかり。討伐に時間がかかり気力と体力を削っていく上に吹き続ける霰混じりの風が体温を奪っていく。
「この寒さだと思うように身体が動かねえ。集団で攻撃され続けは結構キツいな」
「ごめんなさい。回復魔法が使えたら良かったんですが」
練習しているもののミリアは未だに初級ですら回復魔法が使えない。
「気にすんな。ちびすけのポーションは優秀だから問題ねえよ」
5階のボスはオークジェネラル3体とオークキング。ボス部屋の扉を開けた途端、錆びた剣に氷を纏わせてオークジェネラルが一斉に攻撃して来た。
ルカの結界とミリアの【フレイムカッター】の脇からヴァンとヨルムガンドが飛び出していった。左右から回り込んで来たオークジェネラルにヴァンとヨルムガンドが飛びかかり、ミリアの魔法で剣を折られた正面のオークジェネラルは雄叫びを上げながら拳を大きく振り上げた。
ルカが駆け出しオークジェネラルの左膝を切りつけた。バランスを崩しかけたところにミリアが【フレイムカッター】を打ち込み尻餅をついたオークジェネラルの首をルカが切り裂いた。
「やっぱりコイツらも普通よりデカくて硬い」
ヴァンは炎でオークジェネラルの顔を焼き鋭い牙で頸動脈を噛み切り、ヨルムガンドは巨大な体躯でオークジェネラルを締め殺した。
部屋の奥から現れたオークキングは真っ先にミリアに狙いをつけた。ミリアを見つめて真っ直ぐに駆けてくるオークキングの首をヨルムガンドが締め上げ、ヴァンが剣を持った手首に噛み付いた。
ミリアの【フレイムランス】がオークキングの腹を切り裂くとオークキングは手にした剣と一緒にヴァンを床に叩きつけた。
くるりと反転して立ち上がったヴァンがルカに向かって走って来た。
『来い!』
ヴァンの背に飛び乗ったルカが右手にクレイモアを構えた。宙を駆け上がったヴァンの背中からルカが飛び降りオークキングの目を突き刺した。叫び声を上げて膝をついたオークキングを目掛けてミリアが【フレイムランス】を打った直後、ルカがオークキングの開いた口に向けてクレイモアを突き刺した。
6階からは巨大なゴーレムが現れたが勢いがつきすぎたヨルムガンドが大暴れしゴーレムの核を次々と砕いていく。
『ここの奴は他よりちょっと頑丈だから結構楽しいぞ』
ヨルムガンドの後ろからついていくだけのミリア達は暇を持て余していた。
「まあ、時間短縮になるからほっとくか」
「これで暫くの間は大人しくなりますね」
『あやつは全く・・興奮しすぎてダンジョンを壊さねば良いが』
ブリザードが吹き荒れる10階のボスはミスリルゴーレムが2体。ヨルムガンドが飛び出し先制攻撃を加えるとあっさりとミスリルゴーレムが膝をつき、もう一体にはミリアの【フレイムランス】が核に罅を入れルカがクレイモアを突き刺した。
立ち上がったミスリルゴーレムの核を狙いヴァンが前足を振り抜くと鋭い爪が一発で核を破壊した。
『兄者、あれは俺様の獲物だったのにぃ!』
『ふん』
メソメソといじけるヨルムガンドと、してやったりと尻尾を振るヴァン。
「仲がいいですね」
「だな。甘えん坊の弟とそれを揶揄う兄ってやつか? さてと、ここらで取り敢えず休憩しようぜ」
広々としたボス部屋に吹き荒れていたブリザードで壁の辺りには雪が高く積もっている。部屋の真ん中に陣取ったミリア達はお茶と甘いお菓子を堪能した。
「《白銀の嵐》いませんね。見落としたって事はないと思うんですけど」
「なんか気にいらねえんだよな。暁のダンジョンはAランクの筈なんだがボス以外の魔物が弱すぎる。冒険者が入ってないにしちゃ魔物が少なすぎてスタンピードが起こりそうな気配はねえし」
ミリアはダンジョン攻略がまだ2回目なので首を傾げるしかなかった。
「突然地形だの魔物の種類だのが変わるようになったのも不思議だが魔物のランクが極端に下がるのはおかしい」
「あの、20階層のボス部屋から彼等はどうやって逃げ出したんでしょうか? 確かボス部屋って勝たないと出られないんですよね」
「ああ、多分だが奴等が入ったのはボス部屋じゃなかったって事だと思う。ただ、そうなるとダンジョン全体に影響した理由がわかんねえんだよな」
久しぶりに暴れられたヨルムガンドはぶち猫の姿に戻りご機嫌に尻尾を揺らしている。
『なあ兄者、この後も俺様にやらせてくれよ。久しぶりにいい運動になってる』
呆れ顔の(をしているに違いない)ヴァンがいそいそと擦り寄ってきたヨルムガンドを鼻で押し退けた。
『ミリア、俺様にも名前が欲しい』
「ダメだ」
『ルカには言ってない! なあミリアぁ、俺様にも名前つけてくれよ』
「ルカさんとヴァンの許可が降りたらね」
(気持ち的には・・ヨルムガンドの別名はミドガルズオルムだから・・ミドかオルム?)
「それより通信具が使えるならギルドに連絡を入れてみるか」
かなり雑音が大きかったがなんとかテスタロッサの声が聞き取れた。
「こっちからは繋がらなかったから助かった。最低野郎から証言が取れたわ」
前回レイドを組んで攻略したのは《白銀の嵐》の他に2つのAランクパーティーでポーターは6名雇われた。
19階層まで順調に進み階段を降りた目の前にボス部屋の扉があった。中に入ると高熱で蒸された広い部屋の真ん中には口の広い壺が置いてあり、その横に小さな魔物がヘラヘラと笑いながら立っていた。
「だだっ広い部屋の奥には小さな扉が一つだけあって、冒険者達はそこにお宝がある筈だと思ったの。
魔物は誰も見たことがない醜悪なやつだけど小さいし一匹だけだから大したことないだろうと思って攻撃をはじめたんだけど・・」
出没する魔物は虫系や鳥系の飛行タイプばかり。討伐に時間がかかり気力と体力を削っていく上に吹き続ける霰混じりの風が体温を奪っていく。
「この寒さだと思うように身体が動かねえ。集団で攻撃され続けは結構キツいな」
「ごめんなさい。回復魔法が使えたら良かったんですが」
練習しているもののミリアは未だに初級ですら回復魔法が使えない。
「気にすんな。ちびすけのポーションは優秀だから問題ねえよ」
5階のボスはオークジェネラル3体とオークキング。ボス部屋の扉を開けた途端、錆びた剣に氷を纏わせてオークジェネラルが一斉に攻撃して来た。
ルカの結界とミリアの【フレイムカッター】の脇からヴァンとヨルムガンドが飛び出していった。左右から回り込んで来たオークジェネラルにヴァンとヨルムガンドが飛びかかり、ミリアの魔法で剣を折られた正面のオークジェネラルは雄叫びを上げながら拳を大きく振り上げた。
ルカが駆け出しオークジェネラルの左膝を切りつけた。バランスを崩しかけたところにミリアが【フレイムカッター】を打ち込み尻餅をついたオークジェネラルの首をルカが切り裂いた。
「やっぱりコイツらも普通よりデカくて硬い」
ヴァンは炎でオークジェネラルの顔を焼き鋭い牙で頸動脈を噛み切り、ヨルムガンドは巨大な体躯でオークジェネラルを締め殺した。
部屋の奥から現れたオークキングは真っ先にミリアに狙いをつけた。ミリアを見つめて真っ直ぐに駆けてくるオークキングの首をヨルムガンドが締め上げ、ヴァンが剣を持った手首に噛み付いた。
ミリアの【フレイムランス】がオークキングの腹を切り裂くとオークキングは手にした剣と一緒にヴァンを床に叩きつけた。
くるりと反転して立ち上がったヴァンがルカに向かって走って来た。
『来い!』
ヴァンの背に飛び乗ったルカが右手にクレイモアを構えた。宙を駆け上がったヴァンの背中からルカが飛び降りオークキングの目を突き刺した。叫び声を上げて膝をついたオークキングを目掛けてミリアが【フレイムランス】を打った直後、ルカがオークキングの開いた口に向けてクレイモアを突き刺した。
6階からは巨大なゴーレムが現れたが勢いがつきすぎたヨルムガンドが大暴れしゴーレムの核を次々と砕いていく。
『ここの奴は他よりちょっと頑丈だから結構楽しいぞ』
ヨルムガンドの後ろからついていくだけのミリア達は暇を持て余していた。
「まあ、時間短縮になるからほっとくか」
「これで暫くの間は大人しくなりますね」
『あやつは全く・・興奮しすぎてダンジョンを壊さねば良いが』
ブリザードが吹き荒れる10階のボスはミスリルゴーレムが2体。ヨルムガンドが飛び出し先制攻撃を加えるとあっさりとミスリルゴーレムが膝をつき、もう一体にはミリアの【フレイムランス】が核に罅を入れルカがクレイモアを突き刺した。
立ち上がったミスリルゴーレムの核を狙いヴァンが前足を振り抜くと鋭い爪が一発で核を破壊した。
『兄者、あれは俺様の獲物だったのにぃ!』
『ふん』
メソメソといじけるヨルムガンドと、してやったりと尻尾を振るヴァン。
「仲がいいですね」
「だな。甘えん坊の弟とそれを揶揄う兄ってやつか? さてと、ここらで取り敢えず休憩しようぜ」
広々としたボス部屋に吹き荒れていたブリザードで壁の辺りには雪が高く積もっている。部屋の真ん中に陣取ったミリア達はお茶と甘いお菓子を堪能した。
「《白銀の嵐》いませんね。見落としたって事はないと思うんですけど」
「なんか気にいらねえんだよな。暁のダンジョンはAランクの筈なんだがボス以外の魔物が弱すぎる。冒険者が入ってないにしちゃ魔物が少なすぎてスタンピードが起こりそうな気配はねえし」
ミリアはダンジョン攻略がまだ2回目なので首を傾げるしかなかった。
「突然地形だの魔物の種類だのが変わるようになったのも不思議だが魔物のランクが極端に下がるのはおかしい」
「あの、20階層のボス部屋から彼等はどうやって逃げ出したんでしょうか? 確かボス部屋って勝たないと出られないんですよね」
「ああ、多分だが奴等が入ったのはボス部屋じゃなかったって事だと思う。ただ、そうなるとダンジョン全体に影響した理由がわかんねえんだよな」
久しぶりに暴れられたヨルムガンドはぶち猫の姿に戻りご機嫌に尻尾を揺らしている。
『なあ兄者、この後も俺様にやらせてくれよ。久しぶりにいい運動になってる』
呆れ顔の(をしているに違いない)ヴァンがいそいそと擦り寄ってきたヨルムガンドを鼻で押し退けた。
『ミリア、俺様にも名前が欲しい』
「ダメだ」
『ルカには言ってない! なあミリアぁ、俺様にも名前つけてくれよ』
「ルカさんとヴァンの許可が降りたらね」
(気持ち的には・・ヨルムガンドの別名はミドガルズオルムだから・・ミドかオルム?)
「それより通信具が使えるならギルドに連絡を入れてみるか」
かなり雑音が大きかったがなんとかテスタロッサの声が聞き取れた。
「こっちからは繋がらなかったから助かった。最低野郎から証言が取れたわ」
前回レイドを組んで攻略したのは《白銀の嵐》の他に2つのAランクパーティーでポーターは6名雇われた。
19階層まで順調に進み階段を降りた目の前にボス部屋の扉があった。中に入ると高熱で蒸された広い部屋の真ん中には口の広い壺が置いてあり、その横に小さな魔物がヘラヘラと笑いながら立っていた。
「だだっ広い部屋の奥には小さな扉が一つだけあって、冒険者達はそこにお宝がある筈だと思ったの。
魔物は誰も見たことがない醜悪なやつだけど小さいし一匹だけだから大したことないだろうと思って攻撃をはじめたんだけど・・」
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