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ルーメン 暁のダンジョン
133.まずは攻撃より口撃
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白銀の嵐はポーターを含む5人でダンジョンに向かった。耐熱と防寒用品に加え食料やポーション、テントや鍋と皿等々。考えれば考えるほどポーター1人では持ちきれない。
「ポーターを雇う冒険者の多くは自分では殆ど荷物を持たないと聞くので素材を持ち帰るつもりがなくて目一杯荷物を詰めたとしても5人分の必要量を1人では持てませんから」
「この間の戦いで結構消費したんじゃねえのか?」
「それはもう補充済みだから大丈夫。ただ7人分の薬が必要になるとは思わなかったから保湿剤と火傷の薬が足りなくなりそう。全ての怪我や状態をポーションだけで賄うのは常識外れだし・・」
ミリアのアイテムバックには薬草だけでなく調合に使用する錬金釜なども全て入っているので、ベルフェゴール達との戦いで消費した薬は夜カノンをエレノアに託した後に部屋で調合しておいた。
「食料はこれで十分としてその他に防寒用と耐熱用のマントを人数分持って行くか」
「あの、ポーターは何人くらい準備すればいいでしょうか?」
「ん? 全部俺達で持って行くからポーターは不要だ。大急ぎで準備してくれよ」
唖然とする職員を残し会議室に移動した。最新の報告ではルーメンのギルドで一部の冒険者が《白銀の嵐》を救助に行くと騒いでいると言う。
「無謀な事をやる奴等にしては《白銀の嵐》は割と評判の良いパーティーだって事か」
「いえ、話の様子では出し抜かれるのが嫌だとか自分たちが助けて優位に立とうとかじゃないかと考えています」
「厄介だな。ルーメンについた後ソイツらがついてくるって言い出しかねねえ」
「四の五の言う奴がいたらギルドカードを剥奪するようギルマスに言ってあるんだが・・あそこのギルマスは問題があるんだ。彼では冒険者を黙らせるのは無理だろう」
セオドラが苛立たしげに机をコツコツと叩いているとノックの音が聞こえ会議室のドアが開いた。
「あ、あの・・「おー、揃ってるじゃねえか!」」
青褪めて挙動不審になっている職員を押し退けて皇帝がずかずかと会議室に入ってきた。背にはツヴァイハンダーを背負い防具を身につけてミリア達に同行する気満々で目を輝かせている。
「げっ!」
会議室内のルカ以外の者が立ち上がると、ルカの隣の椅子を勝手に引き出しドスンと座ってルカの背中を叩いた。
「思ったより早く再会したな。ジェルソミーノが暁のダンジョンに行くんだろ? 安心しろ、俺も一緒に行ってやるからな」
「お気遣いは有難いのですが今回は遠慮して頂きたいと」
「ジェルソミーノはたったの2人、完全に戦力不足だろ?」
「お言葉を返すようで恐縮ですがギルドとしてはこの2人なら問題な「セオドラ、時間が勿体ねえ。いいか、おっさんは大人しく帝国騎士団の守りをしてろ。こっちは忙しいんだ邪魔すんじゃねえよ」
机を叩いて立ち上がった挙句皇帝の言葉を遮ったルカの行動に、同席している職員達が青褪めてガタガタと震え出した。
「お前だけでミリアを守りながら調査が出来るのか? 先走った奴がいるそうじゃねえか。下手すりゃソイツらの世話もあるんだぜ?」
「皇帝陛下、《白銀の嵐》に会ったら勿論連れて帰る予定ですし調査もやり遂げられる自信があります。皇帝陛下との連携を考えながらでは調査に支障をきたします。
セオドラさん、先程の件ですがテスタロッサさんに一緒に行ってもらうのはどうですか?」
ミリアは途中から皇帝を無視してセオドラに話を振った。テスタロッサの名前を聞いた途端ルカとセオドラがギョッとした顔でミリアを見た。
「しかし、いや・・うん・・それはアリかもな」
荷物をアイテムバックに詰め終える頃テスタロッサが保管庫にやってきた。
「ルーメンのギルドに同行するようセオドラに言われたんですが?」
「おう、向こうで冒険者が何人か騒いでるらしいんだ。んで、お前にいつもの調子でだな、ビシッと躾をしてもらいたいと」
腕を組んで不満げな顔をしたテスタロッサが壁にもたれかかって態とらしい溜息をついた。
「私は鑑定士ですよ。ルカでは力不足って事ですか?」
「と言うより私の見た目が問題なんです。Sランクどころか冒険者だって信用してもらうのにも時間がかかりそうだし、ついてこられたら足手まといですし無駄死には極力出したくありません」
「はあ、確かにソイツらが納得するまで説明するのは時間の無駄ですね。完全に職務の範囲外ですがミリアさんの為なら仕方ありません。ルーメンのギルマスは完全に舐められてるって有名ですし」
見送りに来たセオドラと皇帝にちょこんと頭を下げたミリアの横にはルカ・ヴァン・ぶち猫・テスタロッサ。3人と2匹は本部の転送陣でルーメンのギルドに転移して行った。
「力量を知る為について行きたかったんだがミリアの迫力には負けたぜ。迫力満点の仔犬の正体を今度こそ暴いてやろうと思ったんだがよお。しかも猫はこっちを威圧してきやがった」
「前回陛下と謁見した頃より2人とも数段力をつけています。陛下は今回の件を口実にダンジョンに潜りたがっているのが見え見えでした」
「まあな、退屈なんだよ。マモンを退治したって本当か?」
「退治ではなく排除です。先日はヘルメースやカリストーに勝利してベルフェゴールの排除にも成功しています」
「やっぱりついて行きゃ良かった。よし、近々闘技大会開催するぞ!」
意気揚々と握り拳を固める陛下を横目でちらりと見たセオドラはふっと鼻で笑った。
「皇帝を辞めて冒険者に戻ってもジェルソミーノには入れないですね」
「なんでそう言い切れる?」
「ポーターを雇う冒険者の多くは自分では殆ど荷物を持たないと聞くので素材を持ち帰るつもりがなくて目一杯荷物を詰めたとしても5人分の必要量を1人では持てませんから」
「この間の戦いで結構消費したんじゃねえのか?」
「それはもう補充済みだから大丈夫。ただ7人分の薬が必要になるとは思わなかったから保湿剤と火傷の薬が足りなくなりそう。全ての怪我や状態をポーションだけで賄うのは常識外れだし・・」
ミリアのアイテムバックには薬草だけでなく調合に使用する錬金釜なども全て入っているので、ベルフェゴール達との戦いで消費した薬は夜カノンをエレノアに託した後に部屋で調合しておいた。
「食料はこれで十分としてその他に防寒用と耐熱用のマントを人数分持って行くか」
「あの、ポーターは何人くらい準備すればいいでしょうか?」
「ん? 全部俺達で持って行くからポーターは不要だ。大急ぎで準備してくれよ」
唖然とする職員を残し会議室に移動した。最新の報告ではルーメンのギルドで一部の冒険者が《白銀の嵐》を救助に行くと騒いでいると言う。
「無謀な事をやる奴等にしては《白銀の嵐》は割と評判の良いパーティーだって事か」
「いえ、話の様子では出し抜かれるのが嫌だとか自分たちが助けて優位に立とうとかじゃないかと考えています」
「厄介だな。ルーメンについた後ソイツらがついてくるって言い出しかねねえ」
「四の五の言う奴がいたらギルドカードを剥奪するようギルマスに言ってあるんだが・・あそこのギルマスは問題があるんだ。彼では冒険者を黙らせるのは無理だろう」
セオドラが苛立たしげに机をコツコツと叩いているとノックの音が聞こえ会議室のドアが開いた。
「あ、あの・・「おー、揃ってるじゃねえか!」」
青褪めて挙動不審になっている職員を押し退けて皇帝がずかずかと会議室に入ってきた。背にはツヴァイハンダーを背負い防具を身につけてミリア達に同行する気満々で目を輝かせている。
「げっ!」
会議室内のルカ以外の者が立ち上がると、ルカの隣の椅子を勝手に引き出しドスンと座ってルカの背中を叩いた。
「思ったより早く再会したな。ジェルソミーノが暁のダンジョンに行くんだろ? 安心しろ、俺も一緒に行ってやるからな」
「お気遣いは有難いのですが今回は遠慮して頂きたいと」
「ジェルソミーノはたったの2人、完全に戦力不足だろ?」
「お言葉を返すようで恐縮ですがギルドとしてはこの2人なら問題な「セオドラ、時間が勿体ねえ。いいか、おっさんは大人しく帝国騎士団の守りをしてろ。こっちは忙しいんだ邪魔すんじゃねえよ」
机を叩いて立ち上がった挙句皇帝の言葉を遮ったルカの行動に、同席している職員達が青褪めてガタガタと震え出した。
「お前だけでミリアを守りながら調査が出来るのか? 先走った奴がいるそうじゃねえか。下手すりゃソイツらの世話もあるんだぜ?」
「皇帝陛下、《白銀の嵐》に会ったら勿論連れて帰る予定ですし調査もやり遂げられる自信があります。皇帝陛下との連携を考えながらでは調査に支障をきたします。
セオドラさん、先程の件ですがテスタロッサさんに一緒に行ってもらうのはどうですか?」
ミリアは途中から皇帝を無視してセオドラに話を振った。テスタロッサの名前を聞いた途端ルカとセオドラがギョッとした顔でミリアを見た。
「しかし、いや・・うん・・それはアリかもな」
荷物をアイテムバックに詰め終える頃テスタロッサが保管庫にやってきた。
「ルーメンのギルドに同行するようセオドラに言われたんですが?」
「おう、向こうで冒険者が何人か騒いでるらしいんだ。んで、お前にいつもの調子でだな、ビシッと躾をしてもらいたいと」
腕を組んで不満げな顔をしたテスタロッサが壁にもたれかかって態とらしい溜息をついた。
「私は鑑定士ですよ。ルカでは力不足って事ですか?」
「と言うより私の見た目が問題なんです。Sランクどころか冒険者だって信用してもらうのにも時間がかかりそうだし、ついてこられたら足手まといですし無駄死には極力出したくありません」
「はあ、確かにソイツらが納得するまで説明するのは時間の無駄ですね。完全に職務の範囲外ですがミリアさんの為なら仕方ありません。ルーメンのギルマスは完全に舐められてるって有名ですし」
見送りに来たセオドラと皇帝にちょこんと頭を下げたミリアの横にはルカ・ヴァン・ぶち猫・テスタロッサ。3人と2匹は本部の転送陣でルーメンのギルドに転移して行った。
「力量を知る為について行きたかったんだがミリアの迫力には負けたぜ。迫力満点の仔犬の正体を今度こそ暴いてやろうと思ったんだがよお。しかも猫はこっちを威圧してきやがった」
「前回陛下と謁見した頃より2人とも数段力をつけています。陛下は今回の件を口実にダンジョンに潜りたがっているのが見え見えでした」
「まあな、退屈なんだよ。マモンを退治したって本当か?」
「退治ではなく排除です。先日はヘルメースやカリストーに勝利してベルフェゴールの排除にも成功しています」
「やっぱりついて行きゃ良かった。よし、近々闘技大会開催するぞ!」
意気揚々と握り拳を固める陛下を横目でちらりと見たセオドラはふっと鼻で笑った。
「皇帝を辞めて冒険者に戻ってもジェルソミーノには入れないですね」
「なんでそう言い切れる?」
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