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ルーメン 暁のダンジョン
132.不機嫌なヴァン、ギルド本部へ
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「ありがちだよな、俺様こそって自信過剰になって先走る奴。功を焦る奴で長生きしたってのは聞いた事がないがな」
突き放したようなルカの台詞に大男とその後ろにいた冒険者達が色めき立った。
「てめえ、偉そうな口聞いてんじゃねえ! お前みたいなヒョロヒョロの小僧に冒険者の何がわかるって言うんだ」
「おっさんって言われてたと思ったら今度は小僧か、ディーに聞かせてやりたいぜ。あー、因みに俺達がジェルソミーノ」
腕を組んで飄々と答えるルカは髪を後ろで一つに結んで無精髭を剃り、剣士らしい軽装に身を包んでいる。ミリアから見ても今のルカなら年齢相応の青年に見えた。しかもかなりの高身長なせいで細身の体型が強調されている。
(初めて見た時は私にもヨレヨレのおじさんに見えたし、羨ましくなるくらいヒョロ・・細いんだもん)
ルカの言葉に大男が鼻を鳴らした。
「ディエチミーラが見つからない今、唯一のSランクだって期待してたのにこいつがSランク冒険者? しかも1人だけかよ。他の奴はどうしたんだ?」
「今のところジェルソミーノは俺とコイツの2人だぜ?」
ルカがミリアを指し示すとギルマスが絶句し、後ろにいた冒険者達がゲラゲラと笑いはじめた。
「おいおい。お子ちゃま連れでピクニックでもする気か?」
「おままごとの間違いだろ?」
「しかもペットを連れてやがる」
冒険者の言葉にルカとセオドラが慌てたように後ろを振り向くとミリアの斜め後ろにヴァンとぶち猫がちょこんとお座りして尻尾を振っていた。
「お前らいつの間に・・」
(ヴァンの横の猫はヨルムガンドだよな。それなら・・)
咳払いをして平静なふりをしたセオドラが向き直りギルマス達に対して話しはじめた。
「ジェルソミーノは現在Sランク冒険者のミリアとSランク冒険者のルカの2人だが実力はギルド本部が保証する。見た目で判断するのはやめてもらおう」
セオドラの厳しい口調にギルマス達が静まりかえった。
「でもさ、ジェルソミーノなんて聞いた事ないし」
「ルカだのミリアだのって名前も聞いた事ねえっす」
「ルカは私と同じ元《白狼の剣》のパーティーメンバーで実力は私が保証する。ミリアは・・」
ディエチミーラとの関係を話すかどうか悩んだセオドラがミリアに目を向けるとルカが口を挟んだ。
「ちびすけの実力はアスカリオルの狂皇の保証付きだぜ」
「マジかよ」
「冒険者登録出来てるだけでも信じらんないのに。一体何歳よ」
『いつまで其奴らと遊んでおるのだ。貴様らは戯言に付き合う暇があるのか?』
しつこく絡んでくる冒険者達に不機嫌になったヴァンが四つ足で立ち上がり『グルル』と唸るとその場の空気が凍りついた。
「この仔犬の迫力・・なんなんだ?」
「俺達は本部に飛んで準備が出来次第ルーメンのギルドに飛ぶ。セオドラはどうする?」
「俺も一緒に連れて行ってくれ。その方が帝国の横暴を抑えられるからな」
戦い好きの皇帝が大人しく事態を静観するとは限らない。皇帝が騎士団を引き連れ暁のダンジョンに乗り込む可能性もないとは言えない今、セオドラは本部に戻りギルドや冒険者への指示と共に皇帝を抑える役目が待っている。
「ここにいる冒険者でルーメンに行く者達はギルドの転送陣を使って向こうで待機していてくれ。わかっていると思うがギルドの指示を無視して勝手な行動をした者はギルドカードを剥奪する可能性もある」
セオドラの厳命にギルマスと冒険者達が頷いたのを確認したミリア達はヴァンの転送で本部一階のホールに転移した。
「ミルタウン本部長!」
重装備を固めた冒険者達が驚いて見つめる中、カウンターを飛び越えて職員が走ってきた。
「お待ちしておりました。ルーメンの報告があるので急ぎ会議室へお願いします。それで、ジェルソミーノの方々はどちらに? ルカさんってハーミットの元ギルマスのルカさんですよね、またどっかで遊んでるのですか?」
身だしなみを整えたルカは本部職員に気付かれなかったらしい。
「おい、俺の事わかんねえのかよ」
「えっ? ル・・カさんですか?」
ルカの顔をガン見した職員が唖然としていると、ルーメンの様子を心配して顔を強ばらせていたセオドラがぷっと吹き出した。
「報告を聞く前に荷物の確認だ。足りない物があったら会議中に準備できるしな」
セオドラを先頭にして本部の保管庫にやってきたミリア達は、机の上に並べられた装備と食料品や薬を確認した。
「足りない物は?」
「えーっと、男性用の羊毛の靴下・手袋・帽子を増やした方がいいと思います。それと塩をもっと。食用以外に足の凍傷は温かい食塩水に浸けておくと早く治るから。
それから、保湿剤が足りないかも知れないので・・ラノリンと錫石はあるから・・ジャガイモの準備を。それとバラの香油とテレピン油と卵をもっと下さい」
「卵・・料理じゃなさそうだね?」
職員が必死にメモを取っている横でセオドラが尋ねた。
「バラの香油とテレピン油と卵白で創傷に効く薬になるの。薬草や調合済みのポーションは準備してあるけど広範囲の怪我ならそっちの方が役に立つ場合があるので」
「《白銀の嵐》を見つけた時の為ならサイズは大きめが良いですよね?」
馬車の中でセオドラから聞いた話では暁のダンジョンの中は凡そ3日ごとに地形や魔物が変化していると言う。それに伴って気象の変化まで起こっている。
「灼熱と極寒の両方に対応出来るほどの準備を《白銀の嵐》がしていればいいんですが、ポーターがいると言っても何かしら不足していると考えた方がいいと思うんです」
突き放したようなルカの台詞に大男とその後ろにいた冒険者達が色めき立った。
「てめえ、偉そうな口聞いてんじゃねえ! お前みたいなヒョロヒョロの小僧に冒険者の何がわかるって言うんだ」
「おっさんって言われてたと思ったら今度は小僧か、ディーに聞かせてやりたいぜ。あー、因みに俺達がジェルソミーノ」
腕を組んで飄々と答えるルカは髪を後ろで一つに結んで無精髭を剃り、剣士らしい軽装に身を包んでいる。ミリアから見ても今のルカなら年齢相応の青年に見えた。しかもかなりの高身長なせいで細身の体型が強調されている。
(初めて見た時は私にもヨレヨレのおじさんに見えたし、羨ましくなるくらいヒョロ・・細いんだもん)
ルカの言葉に大男が鼻を鳴らした。
「ディエチミーラが見つからない今、唯一のSランクだって期待してたのにこいつがSランク冒険者? しかも1人だけかよ。他の奴はどうしたんだ?」
「今のところジェルソミーノは俺とコイツの2人だぜ?」
ルカがミリアを指し示すとギルマスが絶句し、後ろにいた冒険者達がゲラゲラと笑いはじめた。
「おいおい。お子ちゃま連れでピクニックでもする気か?」
「おままごとの間違いだろ?」
「しかもペットを連れてやがる」
冒険者の言葉にルカとセオドラが慌てたように後ろを振り向くとミリアの斜め後ろにヴァンとぶち猫がちょこんとお座りして尻尾を振っていた。
「お前らいつの間に・・」
(ヴァンの横の猫はヨルムガンドだよな。それなら・・)
咳払いをして平静なふりをしたセオドラが向き直りギルマス達に対して話しはじめた。
「ジェルソミーノは現在Sランク冒険者のミリアとSランク冒険者のルカの2人だが実力はギルド本部が保証する。見た目で判断するのはやめてもらおう」
セオドラの厳しい口調にギルマス達が静まりかえった。
「でもさ、ジェルソミーノなんて聞いた事ないし」
「ルカだのミリアだのって名前も聞いた事ねえっす」
「ルカは私と同じ元《白狼の剣》のパーティーメンバーで実力は私が保証する。ミリアは・・」
ディエチミーラとの関係を話すかどうか悩んだセオドラがミリアに目を向けるとルカが口を挟んだ。
「ちびすけの実力はアスカリオルの狂皇の保証付きだぜ」
「マジかよ」
「冒険者登録出来てるだけでも信じらんないのに。一体何歳よ」
『いつまで其奴らと遊んでおるのだ。貴様らは戯言に付き合う暇があるのか?』
しつこく絡んでくる冒険者達に不機嫌になったヴァンが四つ足で立ち上がり『グルル』と唸るとその場の空気が凍りついた。
「この仔犬の迫力・・なんなんだ?」
「俺達は本部に飛んで準備が出来次第ルーメンのギルドに飛ぶ。セオドラはどうする?」
「俺も一緒に連れて行ってくれ。その方が帝国の横暴を抑えられるからな」
戦い好きの皇帝が大人しく事態を静観するとは限らない。皇帝が騎士団を引き連れ暁のダンジョンに乗り込む可能性もないとは言えない今、セオドラは本部に戻りギルドや冒険者への指示と共に皇帝を抑える役目が待っている。
「ここにいる冒険者でルーメンに行く者達はギルドの転送陣を使って向こうで待機していてくれ。わかっていると思うがギルドの指示を無視して勝手な行動をした者はギルドカードを剥奪する可能性もある」
セオドラの厳命にギルマスと冒険者達が頷いたのを確認したミリア達はヴァンの転送で本部一階のホールに転移した。
「ミルタウン本部長!」
重装備を固めた冒険者達が驚いて見つめる中、カウンターを飛び越えて職員が走ってきた。
「お待ちしておりました。ルーメンの報告があるので急ぎ会議室へお願いします。それで、ジェルソミーノの方々はどちらに? ルカさんってハーミットの元ギルマスのルカさんですよね、またどっかで遊んでるのですか?」
身だしなみを整えたルカは本部職員に気付かれなかったらしい。
「おい、俺の事わかんねえのかよ」
「えっ? ル・・カさんですか?」
ルカの顔をガン見した職員が唖然としていると、ルーメンの様子を心配して顔を強ばらせていたセオドラがぷっと吹き出した。
「報告を聞く前に荷物の確認だ。足りない物があったら会議中に準備できるしな」
セオドラを先頭にして本部の保管庫にやってきたミリア達は、机の上に並べられた装備と食料品や薬を確認した。
「足りない物は?」
「えーっと、男性用の羊毛の靴下・手袋・帽子を増やした方がいいと思います。それと塩をもっと。食用以外に足の凍傷は温かい食塩水に浸けておくと早く治るから。
それから、保湿剤が足りないかも知れないので・・ラノリンと錫石はあるから・・ジャガイモの準備を。それとバラの香油とテレピン油と卵をもっと下さい」
「卵・・料理じゃなさそうだね?」
職員が必死にメモを取っている横でセオドラが尋ねた。
「バラの香油とテレピン油と卵白で創傷に効く薬になるの。薬草や調合済みのポーションは準備してあるけど広範囲の怪我ならそっちの方が役に立つ場合があるので」
「《白銀の嵐》を見つけた時の為ならサイズは大きめが良いですよね?」
馬車の中でセオドラから聞いた話では暁のダンジョンの中は凡そ3日ごとに地形や魔物が変化していると言う。それに伴って気象の変化まで起こっている。
「灼熱と極寒の両方に対応出来るほどの準備を《白銀の嵐》がしていればいいんですが、ポーターがいると言っても何かしら不足していると考えた方がいいと思うんです」
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