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アルスター侯爵家
117.誰か教えてやってくれ
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「ちっこくて良かったって初めて思ったかも」
微妙な気分のまま2人は取り敢えず離れに戻ることにした。
「ヘルメースさんって旅の神でもあるのよね。あちこち行ってるだろうし、目新しいものなんてあるのかしら」
「思いつかねえ。ウォーカーはなんか珍しい物作ってねえかな。ウリエルと篭って研究してただろ?」
「兄さんかぁ、確かに錬金術ならヘルメースさんが見たことない物がありそうだけど・・目新しいって言うと何かを改良した物じゃダメだよね」
「多分、よっぽどじゃねえと納得しなさそうだよな」
あちこち破れてぼろぼろな上に左足が剥き出し状態のルカは居間には入らず服を着替えに行った。居間には全員が揃っておりカリストーの隣にマイアが座っていた。
「おかえりー、ヘルメースやっつけたー?」
「ただいま。ヘルメースさんとは・・今、中休みかな? あの、ミリアです。宜しくお願いします」
「先程は失礼致しました。マイアと申します。ヘルメースはどうなりました?」
「お元気です! 神に私達が何か出来るわけはないですからご心配には及びません。はい」
「少し痛い目にでも遭えば良いのです。良い面も悪い面も突出しているので、思い上がったところがありますから」
流石母親。ヘルメースが聞いたら凹むこと間違いなしだろう。
「で、どうなったのだ? 其方達は無事なようだが」
ミリアが戦いのあらましを話すとルカの足の怪我の話のところでマイアが青褪めた。
「なんと言うことでしょう! 神が人の子を傷つけるなど」
「いや、戦いですからそんなもんです。もう薬で治ってますし」
「あの様子からすると足を再生したのであろう?」
「うっ、まあそんな感じです。あの、もし良ければ教えて頂きたいことがあるんです」
ミリアはヘルメースとの取引のことを話した。
「目新しい物が見たい・・困った事を言い出したものです。ヘルメースは旅の神でもありますから生まれた時から世界中のあらゆる所を旅しています」
着替えの終わったルカが戻って来た代わりにミリアが部屋に行きウォーカーに通信具で連絡したが繋がらなかった。がっかりして居間に戻って来たミリアを見たルカがミリアの頭を撫でた。
「連絡がつかなかった」
「討伐中かもな。よっぽど集中しなきゃならん時じゃなきゃアイツがちびすけからの連絡に出ないわけがないからな」
結局目新しいものは思いつかずその日は休む事にした。エレノアはカリストーとマイアに部屋を譲り、ルカの部屋にエレノアが泊まることになった。はみ出したルカは居間のソファに寝転んでいた。
『そこのチビがもうちょい大人だったらソイツで手を打ってやったんだが、子供は許容範囲超えてるしな』
『どうしても思いつかなかったらそのチビを貰ってく』
(すげ~慌てたぜ。思わず手が出そうになったもんな。アイツは俺のもんだ・・ん? あー、仲間が生贄とか洒落になんねえからな。うん)
相変わらずへっぽこ度マックスのルカは眠りについた。
「ちびすけ?」
「ヘルメースさんが商売の神様と言われるようになったのは牛と竪琴を交換したことからなの」
「そうか、でもな大事な事に気付いてねえだろうから教えてやる。今はまだ真夜中だ」
「それにね、ラファエル様が仰ってた事を思い出したの」
「うん、相変わらず聞いてねえ」
諦めて起き上がったルカはソファの横をポンポンと叩いた。ミリアが持って来たらしいランプの火がテーブルの上でゆらゆらと揺れており、ルカの隣に座ったミリアは火を見ながら話を続けた。
「トレントの森でラファエル様がペリに会ったのは初めてだって仰ったの。ウリエル様も頷いてらした」
「それがヘルメースとどう繋がるんだ?」
ヘルメースは生まれたその日にアポローンから50頭の牛を盗んだが、返すのが嫌だったヘルメースは洞穴で捕らえた亀の甲羅に羊の腸を張って竪琴を作りアポローンの牛と竪琴を交換した。
さらにヘルメースが葦笛をこしらえると、アポローンは自身の持つケーリュケイオンの杖を友好の証としてヘルメースに贈った。
「明日マイアさんにヘルメースさんからペリの話を聞いたことがないか確認してみようと思うんだけど、ペリの竪琴とヘルメースさんの竪琴で競演とかどうかな?」
「面白そうだな。マイアを起こしに行かなかったのは褒めてやる。明日、日が登ってからヴァンかディーにペリの居場所を調べて貰おう。で、今日は寝ろ。良い子だからねんねしろ」
「うん、聞いてくれてありがとう。これでぐっすり眠れそう」
ミリアが立ち上がりランプを持って居間を出て行った。
(ちびすけ・・ランプの灯りはな、透けるんだよ。頼むから誰か教えてやってくれ)
ルカは一睡も出来ないまま夜が明けた。
元気一杯のミリアとカノンが食堂に入ると、目の下にクマを作ったルカが椅子に座り不機嫌そうにコーヒーを飲んでいた。
「ルカさん、大丈夫? お肉食べる?」
「血が足りないわけじゃねえ。てか、足りなくて助かったかも・・いやいや、何でもねえ。そう、俺は何も見てねえし」
「ミリアちゃん、ルカさんまたおかしくなっちゃったね」
「カノン、そう言うのは聞こえねえように言え」
カノンをじろっと睨んだルカはミリアの姿が目に入った途端赤い顔をして横を向いた。
(なんか前もこういうの見た気がする。もしかして・・)
「ミリアちゃん、昨夜ルカさんに会いに行った?」
「相談があってルカさんとこに行ったよ。起こしちゃったかな?」
(あー、なんか分かったかも)
「それでお兄様は赤いお顔をしてらっしゃるのですね」
したり顔のエレノアの直接攻撃がルカにヒットした。
微妙な気分のまま2人は取り敢えず離れに戻ることにした。
「ヘルメースさんって旅の神でもあるのよね。あちこち行ってるだろうし、目新しいものなんてあるのかしら」
「思いつかねえ。ウォーカーはなんか珍しい物作ってねえかな。ウリエルと篭って研究してただろ?」
「兄さんかぁ、確かに錬金術ならヘルメースさんが見たことない物がありそうだけど・・目新しいって言うと何かを改良した物じゃダメだよね」
「多分、よっぽどじゃねえと納得しなさそうだよな」
あちこち破れてぼろぼろな上に左足が剥き出し状態のルカは居間には入らず服を着替えに行った。居間には全員が揃っておりカリストーの隣にマイアが座っていた。
「おかえりー、ヘルメースやっつけたー?」
「ただいま。ヘルメースさんとは・・今、中休みかな? あの、ミリアです。宜しくお願いします」
「先程は失礼致しました。マイアと申します。ヘルメースはどうなりました?」
「お元気です! 神に私達が何か出来るわけはないですからご心配には及びません。はい」
「少し痛い目にでも遭えば良いのです。良い面も悪い面も突出しているので、思い上がったところがありますから」
流石母親。ヘルメースが聞いたら凹むこと間違いなしだろう。
「で、どうなったのだ? 其方達は無事なようだが」
ミリアが戦いのあらましを話すとルカの足の怪我の話のところでマイアが青褪めた。
「なんと言うことでしょう! 神が人の子を傷つけるなど」
「いや、戦いですからそんなもんです。もう薬で治ってますし」
「あの様子からすると足を再生したのであろう?」
「うっ、まあそんな感じです。あの、もし良ければ教えて頂きたいことがあるんです」
ミリアはヘルメースとの取引のことを話した。
「目新しい物が見たい・・困った事を言い出したものです。ヘルメースは旅の神でもありますから生まれた時から世界中のあらゆる所を旅しています」
着替えの終わったルカが戻って来た代わりにミリアが部屋に行きウォーカーに通信具で連絡したが繋がらなかった。がっかりして居間に戻って来たミリアを見たルカがミリアの頭を撫でた。
「連絡がつかなかった」
「討伐中かもな。よっぽど集中しなきゃならん時じゃなきゃアイツがちびすけからの連絡に出ないわけがないからな」
結局目新しいものは思いつかずその日は休む事にした。エレノアはカリストーとマイアに部屋を譲り、ルカの部屋にエレノアが泊まることになった。はみ出したルカは居間のソファに寝転んでいた。
『そこのチビがもうちょい大人だったらソイツで手を打ってやったんだが、子供は許容範囲超えてるしな』
『どうしても思いつかなかったらそのチビを貰ってく』
(すげ~慌てたぜ。思わず手が出そうになったもんな。アイツは俺のもんだ・・ん? あー、仲間が生贄とか洒落になんねえからな。うん)
相変わらずへっぽこ度マックスのルカは眠りについた。
「ちびすけ?」
「ヘルメースさんが商売の神様と言われるようになったのは牛と竪琴を交換したことからなの」
「そうか、でもな大事な事に気付いてねえだろうから教えてやる。今はまだ真夜中だ」
「それにね、ラファエル様が仰ってた事を思い出したの」
「うん、相変わらず聞いてねえ」
諦めて起き上がったルカはソファの横をポンポンと叩いた。ミリアが持って来たらしいランプの火がテーブルの上でゆらゆらと揺れており、ルカの隣に座ったミリアは火を見ながら話を続けた。
「トレントの森でラファエル様がペリに会ったのは初めてだって仰ったの。ウリエル様も頷いてらした」
「それがヘルメースとどう繋がるんだ?」
ヘルメースは生まれたその日にアポローンから50頭の牛を盗んだが、返すのが嫌だったヘルメースは洞穴で捕らえた亀の甲羅に羊の腸を張って竪琴を作りアポローンの牛と竪琴を交換した。
さらにヘルメースが葦笛をこしらえると、アポローンは自身の持つケーリュケイオンの杖を友好の証としてヘルメースに贈った。
「明日マイアさんにヘルメースさんからペリの話を聞いたことがないか確認してみようと思うんだけど、ペリの竪琴とヘルメースさんの竪琴で競演とかどうかな?」
「面白そうだな。マイアを起こしに行かなかったのは褒めてやる。明日、日が登ってからヴァンかディーにペリの居場所を調べて貰おう。で、今日は寝ろ。良い子だからねんねしろ」
「うん、聞いてくれてありがとう。これでぐっすり眠れそう」
ミリアが立ち上がりランプを持って居間を出て行った。
(ちびすけ・・ランプの灯りはな、透けるんだよ。頼むから誰か教えてやってくれ)
ルカは一睡も出来ないまま夜が明けた。
元気一杯のミリアとカノンが食堂に入ると、目の下にクマを作ったルカが椅子に座り不機嫌そうにコーヒーを飲んでいた。
「ルカさん、大丈夫? お肉食べる?」
「血が足りないわけじゃねえ。てか、足りなくて助かったかも・・いやいや、何でもねえ。そう、俺は何も見てねえし」
「ミリアちゃん、ルカさんまたおかしくなっちゃったね」
「カノン、そう言うのは聞こえねえように言え」
カノンをじろっと睨んだルカはミリアの姿が目に入った途端赤い顔をして横を向いた。
(なんか前もこういうの見た気がする。もしかして・・)
「ミリアちゃん、昨夜ルカさんに会いに行った?」
「相談があってルカさんとこに行ったよ。起こしちゃったかな?」
(あー、なんか分かったかも)
「それでお兄様は赤いお顔をしてらっしゃるのですね」
したり顔のエレノアの直接攻撃がルカにヒットした。
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