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アルスター侯爵家
116.ヘルメースの条件
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空に飛び上がったヘルメースにミリアが【デバフ】と【フレイムランス】を放ち、ルカに【ヒール】
ヘルメースのショーテルとルカのクレイモアが何度もぶつかり合い、少しずつヘルメースの傷が増えていった。
ヘルメースが空に逃げる度にミリアの魔法が炸裂し戦いは地上戦にもつれ込んでいった。
「なあ、狡くないか? そっちは傷が出来てもすぐにチビが回復するし、空に飛んだら魔法ぶつけやがる」
「神対人間だぞ。そのくらいのハンデあっても良いじゃねえか。それとも降参か?」
「巫山戯るな! 神が人間如きに降参するはずないだろうが!」
目を吊り上げたヘルメースがクレイモアを躱しルカの右足に切りつけ、千切れた傷口から大量の血が噴き出した。
ルカから距離を取ったヘルメースがショーテルの血を振り払い片眉を上げた。
「勝負あったな。とっととケーリュケイオンを返し・・」
左足を失いバランスを崩して座り込んだルカがニヤリと笑って左手を突き出した。握られていたエリクサーを足にかけるとルカの足が再生していった。
唖然として突っ立っているヘルメースにミリアが手にしていた護符で【サンダー】
衝撃で尻餅をついたヘルメースがポカンと口を開けて間抜けな顔を晒した。
「何で・・再生しただと?」
「くそ痛え。人生2回目だぞ! エリクサーがなかったら廃業だ!」
はあっと溜息をついたヘルメースが地面に胡座をかいた。
「やめだやめだ。切り落としても再生されたんじゃ話にならん。ケーリュケイオンさえ返せば終わりにしてやる」
「悪いがケーリュケイオンはまだ返せねえ」
「はあ? まだ戦う気か? その顔色からすると足は再生しても血は失ったままだろ?」
呆れ果てたヘルメースがルカを見やると座り込んで消えた足の傷を確認しているルカの後ろからミリアがそっと覗いていた。
「全部揃ってる?」
ルカが左足を持ち上げ足の指を揺らして『ほら』と見せびらかした。
「靴持ってくる」
ルカは駆け出したミリアの後ろ姿を見ながら(随分遠くまで吹っ飛んだな)と、呑気に感心していた。
「まあな、後で大量の肉を食うか。カリストーのお陰で熊の肉なら余ってるらしいしな」
「熊? あんなの臭くて食えんだろ?」
「上手く料理すりゃ結構イケる」
靴を持って帰って来たミリアがハッと思いついてアイテムバックから串に刺された肉をルカに差し出した。まだ暖かいその肉の香ばしい香りが漂ってきた。
「ふーん、なら俺も食ってやる。不味かったらもう一回足切り落とすからな。その前にそいつを俺にも寄越せ」
「はあ? 何で俺がお前に奢らなきゃなんねえんだよ。それでなくても奢りと聞いただけでやってくる奴らがいるってのに」
ミリアが出した串肉をルカがヘルメースに差し出すと『これ美味いな』と言いながら次を催促してきた。
「ほら、ケーリュケイオンの貸し賃寄越せ」
「セコい。あんた神なのにそんなにセコくて恥ずかしくないか?」
「神に憎まれ口聞くやつに言われる筋合いはない」
「神ねえ、最近碌な奴にあってねえ気がするんでね。敬えるような神に会ってみたいもんだ」
立て続けに6本の串肉を平らげたヘルメースはようやく満足したらしく脇に置いていたショーテルを片付けて両手を広げた。
「俺も武器を片付けたし後ろのチビもワンドを片付けろ。ユグドラシルのワンドなんか向けられてたら落ち着かん。チビの魔法はすげえ痛いし」
ミリアはワンドを片付けて代わりに出したコップに果実水を2人分注いでルカに渡した。
「あれだけ食っといてよく言うぜ。因みにちびすけは杖なしでも無詠唱で魔法打つからな」
「で? こんな手間かけてまでケーリュケイオンが欲しかったのか?」
「いや、ことが終わったら返す。アレで眠らされたら勝負になんねえからちょい預かっただけだしな」
「ふーん、何をするつもりだ?」
「ベルフェゴールを追い出す」
「ぶはっ!」
飲みかけていた果実水を噴き出したヘルメースがゲラゲラと腹を抱えて笑い出した。
「ありえねー、人間が悪魔に楯突く? ないない、想像以上の阿呆だな。ぐうたらしててもルシファーの副官だぜ?」
「やってみる分には構わんだろ? いつまでも居座られちゃ迷惑だ」
「ん?」
「ここのバカ侯爵は一応俺の父親なんでね。オヤジはどうなっても構わねえが妹がいるしな」
ルカの渋面を見たヘルメースがニヤニヤ笑いを浮かべた。
「そーいやー、侯爵にはえらーく可愛い娘がいるんだよなー」
「くそ、手ェ出したらぶっ殺す。死ぬまで追いかけ続けるからな」
「人間の寿命なんてあっという「アンブロシアなら多分手に入る。そしたらお前とおんなじ不老不死だぜ」」
「あの、暫くの間身を隠して貰えませんか? その後ケーリュケイオンお返ししますから」
「今日カリストーがいなかったのもあんた達の仕業か。いいぜ、ベルフェゴールには一杯食わされたしな、そろそろ手を引いてもいい・・が、条件がある」
「やっぱりセコい」
ジト目のルカを見つめるヘルメースが異常に楽しそうに見えた。
「最近なー退屈してたんだ。んで、目新しいものが見たい。俺は商売の神でもある、俺が納得できる交換条件を示せば手を引いてやる。そこのチビがもうちょい大人だったらソイツで手を打ってやったんだが、子供は許容範囲超えてるしな」
思わず立ち上がったルカがクレイモアを突きつけた。
「コイツは駄目だ! そう、コイツはまだ子供だからな。うん、許容範囲外だ」
「なら、明日のこの時間にここで待つ。どうしても思いつかなかったらそのチビを貰ってく。楽しみにしてるぜ」
ヘルメースが哄笑をあげて空に飛び上がり消えていった。
ヘルメースのショーテルとルカのクレイモアが何度もぶつかり合い、少しずつヘルメースの傷が増えていった。
ヘルメースが空に逃げる度にミリアの魔法が炸裂し戦いは地上戦にもつれ込んでいった。
「なあ、狡くないか? そっちは傷が出来てもすぐにチビが回復するし、空に飛んだら魔法ぶつけやがる」
「神対人間だぞ。そのくらいのハンデあっても良いじゃねえか。それとも降参か?」
「巫山戯るな! 神が人間如きに降参するはずないだろうが!」
目を吊り上げたヘルメースがクレイモアを躱しルカの右足に切りつけ、千切れた傷口から大量の血が噴き出した。
ルカから距離を取ったヘルメースがショーテルの血を振り払い片眉を上げた。
「勝負あったな。とっととケーリュケイオンを返し・・」
左足を失いバランスを崩して座り込んだルカがニヤリと笑って左手を突き出した。握られていたエリクサーを足にかけるとルカの足が再生していった。
唖然として突っ立っているヘルメースにミリアが手にしていた護符で【サンダー】
衝撃で尻餅をついたヘルメースがポカンと口を開けて間抜けな顔を晒した。
「何で・・再生しただと?」
「くそ痛え。人生2回目だぞ! エリクサーがなかったら廃業だ!」
はあっと溜息をついたヘルメースが地面に胡座をかいた。
「やめだやめだ。切り落としても再生されたんじゃ話にならん。ケーリュケイオンさえ返せば終わりにしてやる」
「悪いがケーリュケイオンはまだ返せねえ」
「はあ? まだ戦う気か? その顔色からすると足は再生しても血は失ったままだろ?」
呆れ果てたヘルメースがルカを見やると座り込んで消えた足の傷を確認しているルカの後ろからミリアがそっと覗いていた。
「全部揃ってる?」
ルカが左足を持ち上げ足の指を揺らして『ほら』と見せびらかした。
「靴持ってくる」
ルカは駆け出したミリアの後ろ姿を見ながら(随分遠くまで吹っ飛んだな)と、呑気に感心していた。
「まあな、後で大量の肉を食うか。カリストーのお陰で熊の肉なら余ってるらしいしな」
「熊? あんなの臭くて食えんだろ?」
「上手く料理すりゃ結構イケる」
靴を持って帰って来たミリアがハッと思いついてアイテムバックから串に刺された肉をルカに差し出した。まだ暖かいその肉の香ばしい香りが漂ってきた。
「ふーん、なら俺も食ってやる。不味かったらもう一回足切り落とすからな。その前にそいつを俺にも寄越せ」
「はあ? 何で俺がお前に奢らなきゃなんねえんだよ。それでなくても奢りと聞いただけでやってくる奴らがいるってのに」
ミリアが出した串肉をルカがヘルメースに差し出すと『これ美味いな』と言いながら次を催促してきた。
「ほら、ケーリュケイオンの貸し賃寄越せ」
「セコい。あんた神なのにそんなにセコくて恥ずかしくないか?」
「神に憎まれ口聞くやつに言われる筋合いはない」
「神ねえ、最近碌な奴にあってねえ気がするんでね。敬えるような神に会ってみたいもんだ」
立て続けに6本の串肉を平らげたヘルメースはようやく満足したらしく脇に置いていたショーテルを片付けて両手を広げた。
「俺も武器を片付けたし後ろのチビもワンドを片付けろ。ユグドラシルのワンドなんか向けられてたら落ち着かん。チビの魔法はすげえ痛いし」
ミリアはワンドを片付けて代わりに出したコップに果実水を2人分注いでルカに渡した。
「あれだけ食っといてよく言うぜ。因みにちびすけは杖なしでも無詠唱で魔法打つからな」
「で? こんな手間かけてまでケーリュケイオンが欲しかったのか?」
「いや、ことが終わったら返す。アレで眠らされたら勝負になんねえからちょい預かっただけだしな」
「ふーん、何をするつもりだ?」
「ベルフェゴールを追い出す」
「ぶはっ!」
飲みかけていた果実水を噴き出したヘルメースがゲラゲラと腹を抱えて笑い出した。
「ありえねー、人間が悪魔に楯突く? ないない、想像以上の阿呆だな。ぐうたらしててもルシファーの副官だぜ?」
「やってみる分には構わんだろ? いつまでも居座られちゃ迷惑だ」
「ん?」
「ここのバカ侯爵は一応俺の父親なんでね。オヤジはどうなっても構わねえが妹がいるしな」
ルカの渋面を見たヘルメースがニヤニヤ笑いを浮かべた。
「そーいやー、侯爵にはえらーく可愛い娘がいるんだよなー」
「くそ、手ェ出したらぶっ殺す。死ぬまで追いかけ続けるからな」
「人間の寿命なんてあっという「アンブロシアなら多分手に入る。そしたらお前とおんなじ不老不死だぜ」」
「あの、暫くの間身を隠して貰えませんか? その後ケーリュケイオンお返ししますから」
「今日カリストーがいなかったのもあんた達の仕業か。いいぜ、ベルフェゴールには一杯食わされたしな、そろそろ手を引いてもいい・・が、条件がある」
「やっぱりセコい」
ジト目のルカを見つめるヘルメースが異常に楽しそうに見えた。
「最近なー退屈してたんだ。んで、目新しいものが見たい。俺は商売の神でもある、俺が納得できる交換条件を示せば手を引いてやる。そこのチビがもうちょい大人だったらソイツで手を打ってやったんだが、子供は許容範囲超えてるしな」
思わず立ち上がったルカがクレイモアを突きつけた。
「コイツは駄目だ! そう、コイツはまだ子供だからな。うん、許容範囲外だ」
「なら、明日のこの時間にここで待つ。どうしても思いつかなかったらそのチビを貰ってく。楽しみにしてるぜ」
ヘルメースが哄笑をあげて空に飛び上がり消えていった。
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