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アルスター侯爵家
109.通常運転のディーとエレノア
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「いえ、ウサギが気を失ってしまうと話に聞くほどもふもふしないし、何より私に恐怖を感じて気絶したって思うと心が折れちゃうんでやめときます」
「・・よし! 飯だ、しっかり食えば、な?」
「ルカ、フォロー下手すぎー。超ウケるー」
お腹を抱えてゲラゲラ笑うディーと口を押さえて笑いを堪えているカノン。
「なあ、木の精霊ってもっとこう上品なイメージだったんだが、お前ほんとにドリアードか?」
「ひど! ミリア、こいつ燃やしちゃって! バーンって思いっきり消し炭にして! 後で生き返らせれば良いからさ、一度やっつけちゃおう」
「あっあの・・」
ドアの近くからエレノアの声が聞こえてきて全員が静まりかえった。
「その、ちっちゃい方は、えっと?」
「おはよー、ドリアードのディーだよ。ミリアとカノンの友達なのー。ルカは私の丁稚」
「てめえ、誰が丁稚だよ! 捻り潰されたいか、プチっと」
ルカの言葉遣いにエレノアが小さく悲鳴を上げた。
「そんな、お兄様が・・」
「ルカはいっつもこんな感じ、超口悪いよー」
エレノアの中で何かがガラガラと崩れ落ちる音がして、崩れ落ちかけたエレノアをメイドが横から支えた。
「あの、冒険者ってみんなそうなっちゃうって言うか。戦ってるうちに段々と・・みんななんです! 私の兄も同じですし帝国の王様なんてもっと酷かったです」
「ミリアさん、ありがとうございます。ちょっと衝撃がありましたがもう大丈夫です。お食事に致しましょう。ディーさんはどのようなものを召しあがられるのでしょう? それと昨日気付かず申し訳なかったのですが、ヴァンさんのお食事はミルクとか?」
「あの、ヴァンもディーもみんなと同じで問題ないです」
「ディーはミリアのお菓子が一番だけどねー」
4人分のテーブルセットの横に小さなお皿に乗せた料理が運ばれた。ディーがウォーカーが作った小さなスプーンを使って食事をする姿をエレノアがうっとりと見つめている。
「ディーさんはなんてお可愛らしいのでしょう。まるで天使のような、精霊がこれほど美しいとは存じませんでした」
「ふふっ、ありがとう。エレノアもディーって呼んで良いからね。ルカは一回消し炭にするまでダメだけどー」
誰の前でも通常運転のディーがエレノアに手を振り、ルカは苦笑いをしながら楽しそうなエレノアを見ている。
「ミリアの側にいると色々あるんだが、まあ何だ。ここだけの話にしておいてくれると助かる。因みにカノンはハーフエルフだから絶対ひとりにしないでくれ」
「そうですね、精霊とお友達とか人に知られると何をされるかわかりませんもの。カノンさんはもしかしたらって思っておりましたの。十分に気をつけますから、ここにいる間安心して下さいまし」
食事の後ジョージを呼び出し母家の様子を聞いた。
「旦那様は昨夜はお帰りになられませんでした。お帰りは明日のお昼頃になると連絡が来ております」
「ここ数年の領内の様子とかオヤジの様子で気になる事はあるか?」
「と、申されますと?」
ジョージの顔が心なしが固くなった。長い間音信不通だったルカに思うところがあるのか、忠信として主家の事に口出ししたくないのか口を引き結び目線を逸らしている。
「昨日エレノアから話を聞いたんだが、お前は母家にいてエレノアとは違うものを見ているかも知れねえ。話をする気がないなら仕事に戻ればいい。そんときゃエレノアの話だけで動く」
「・・」
「お前らの手に追える事態じゃなさそうだってのが俺達の意見だが、お前はお前の考えて動いて構わん」
「ルカ様であれば問題解決できると仰せでしょうか?」
「あー、そこな。正直わからんが、解決できる可能性があるとしたらちびす、ミリアだけだってのは分かってる」
「ミリア様とは?」
ルカが指を指すとジョージの顔が歪んだ。
「ご冗談を。子供ではありませんか」
「あの、18歳なので大人に分類して頂いてもいいと思います」
「「ええっ!」」
エレノアとジョージが見事にハモった。
「こっこれは失礼を致しました。しかしながら他家の方にお話しするのは如何かと」
「ジョージ、わたくしは全てお兄様達にお話致しました。もう隠していられる状況ではないと思いますの」
(それにしても18歳なんて驚きだわ)
「・・畏まりました。エレノア様がそう仰るなら、わたくしの知っていることをお話し致します」
ジョージの話はエレノアの話とほぼ同じだったがいくつか新しい話が分かった。
侯爵はカリストーとマイアの2人と関係を持っていたが、最近はベルフェゴールの所に日参しており、屋敷より宿に泊まることの方が多くなっている。
その代わりにヘルメースが館でパーティーを開くことが増えたが、参加する女性は既婚者ばかりだと言う。
「既婚者ねえ。女ばっかりなんだろ?」
「はい、年齢層も広うございますからいずれ村中の既婚者が参加するのではないかと危惧しております。因みに夫の方はジュピター様とパレス様に夢中で誰一人妻の行動を気にしていないようです」
「多分、寡婦の方はいらっしゃらないのでしょう?」
「仰る通りでございます。寡婦以外の既婚者の方には年齢を問わず声をかけているのではないかと」
「男一人だろ? 色々無理があると思うんだが」
「それはエレノア様やお嬢様の前では・・」
「エレノアとカノンは耳塞いどけ。ちびすけは・・仕方ないか」
二人が素直に両手で耳を塞ぐと少し安心したような顔になったジョージがミリアに頭を下げた後話しはじめた。
「パーティーの基本は踊りや歌といった害のないものでございます。豪勢な食事を食べジュピター様やアデス様が歌い踊り、それを真似て他の方も楽しまれて。
ただ、佳境に入ってくるとその。メリクリウス様は周りの目を気にせずその場で参加者のどなたかと・・」
「はあ、とんでもねえ野郎だな」
「このままでは領内には離婚者が溢れそうで懸念しております」
「既婚者、テーテュースはへーラーの乳母。それからイーオーとアルゴス殺し」
「・・よし! 飯だ、しっかり食えば、な?」
「ルカ、フォロー下手すぎー。超ウケるー」
お腹を抱えてゲラゲラ笑うディーと口を押さえて笑いを堪えているカノン。
「なあ、木の精霊ってもっとこう上品なイメージだったんだが、お前ほんとにドリアードか?」
「ひど! ミリア、こいつ燃やしちゃって! バーンって思いっきり消し炭にして! 後で生き返らせれば良いからさ、一度やっつけちゃおう」
「あっあの・・」
ドアの近くからエレノアの声が聞こえてきて全員が静まりかえった。
「その、ちっちゃい方は、えっと?」
「おはよー、ドリアードのディーだよ。ミリアとカノンの友達なのー。ルカは私の丁稚」
「てめえ、誰が丁稚だよ! 捻り潰されたいか、プチっと」
ルカの言葉遣いにエレノアが小さく悲鳴を上げた。
「そんな、お兄様が・・」
「ルカはいっつもこんな感じ、超口悪いよー」
エレノアの中で何かがガラガラと崩れ落ちる音がして、崩れ落ちかけたエレノアをメイドが横から支えた。
「あの、冒険者ってみんなそうなっちゃうって言うか。戦ってるうちに段々と・・みんななんです! 私の兄も同じですし帝国の王様なんてもっと酷かったです」
「ミリアさん、ありがとうございます。ちょっと衝撃がありましたがもう大丈夫です。お食事に致しましょう。ディーさんはどのようなものを召しあがられるのでしょう? それと昨日気付かず申し訳なかったのですが、ヴァンさんのお食事はミルクとか?」
「あの、ヴァンもディーもみんなと同じで問題ないです」
「ディーはミリアのお菓子が一番だけどねー」
4人分のテーブルセットの横に小さなお皿に乗せた料理が運ばれた。ディーがウォーカーが作った小さなスプーンを使って食事をする姿をエレノアがうっとりと見つめている。
「ディーさんはなんてお可愛らしいのでしょう。まるで天使のような、精霊がこれほど美しいとは存じませんでした」
「ふふっ、ありがとう。エレノアもディーって呼んで良いからね。ルカは一回消し炭にするまでダメだけどー」
誰の前でも通常運転のディーがエレノアに手を振り、ルカは苦笑いをしながら楽しそうなエレノアを見ている。
「ミリアの側にいると色々あるんだが、まあ何だ。ここだけの話にしておいてくれると助かる。因みにカノンはハーフエルフだから絶対ひとりにしないでくれ」
「そうですね、精霊とお友達とか人に知られると何をされるかわかりませんもの。カノンさんはもしかしたらって思っておりましたの。十分に気をつけますから、ここにいる間安心して下さいまし」
食事の後ジョージを呼び出し母家の様子を聞いた。
「旦那様は昨夜はお帰りになられませんでした。お帰りは明日のお昼頃になると連絡が来ております」
「ここ数年の領内の様子とかオヤジの様子で気になる事はあるか?」
「と、申されますと?」
ジョージの顔が心なしが固くなった。長い間音信不通だったルカに思うところがあるのか、忠信として主家の事に口出ししたくないのか口を引き結び目線を逸らしている。
「昨日エレノアから話を聞いたんだが、お前は母家にいてエレノアとは違うものを見ているかも知れねえ。話をする気がないなら仕事に戻ればいい。そんときゃエレノアの話だけで動く」
「・・」
「お前らの手に追える事態じゃなさそうだってのが俺達の意見だが、お前はお前の考えて動いて構わん」
「ルカ様であれば問題解決できると仰せでしょうか?」
「あー、そこな。正直わからんが、解決できる可能性があるとしたらちびす、ミリアだけだってのは分かってる」
「ミリア様とは?」
ルカが指を指すとジョージの顔が歪んだ。
「ご冗談を。子供ではありませんか」
「あの、18歳なので大人に分類して頂いてもいいと思います」
「「ええっ!」」
エレノアとジョージが見事にハモった。
「こっこれは失礼を致しました。しかしながら他家の方にお話しするのは如何かと」
「ジョージ、わたくしは全てお兄様達にお話致しました。もう隠していられる状況ではないと思いますの」
(それにしても18歳なんて驚きだわ)
「・・畏まりました。エレノア様がそう仰るなら、わたくしの知っていることをお話し致します」
ジョージの話はエレノアの話とほぼ同じだったがいくつか新しい話が分かった。
侯爵はカリストーとマイアの2人と関係を持っていたが、最近はベルフェゴールの所に日参しており、屋敷より宿に泊まることの方が多くなっている。
その代わりにヘルメースが館でパーティーを開くことが増えたが、参加する女性は既婚者ばかりだと言う。
「既婚者ねえ。女ばっかりなんだろ?」
「はい、年齢層も広うございますからいずれ村中の既婚者が参加するのではないかと危惧しております。因みに夫の方はジュピター様とパレス様に夢中で誰一人妻の行動を気にしていないようです」
「多分、寡婦の方はいらっしゃらないのでしょう?」
「仰る通りでございます。寡婦以外の既婚者の方には年齢を問わず声をかけているのではないかと」
「男一人だろ? 色々無理があると思うんだが」
「それはエレノア様やお嬢様の前では・・」
「エレノアとカノンは耳塞いどけ。ちびすけは・・仕方ないか」
二人が素直に両手で耳を塞ぐと少し安心したような顔になったジョージがミリアに頭を下げた後話しはじめた。
「パーティーの基本は踊りや歌といった害のないものでございます。豪勢な食事を食べジュピター様やアデス様が歌い踊り、それを真似て他の方も楽しまれて。
ただ、佳境に入ってくるとその。メリクリウス様は周りの目を気にせずその場で参加者のどなたかと・・」
「はあ、とんでもねえ野郎だな」
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