101 / 149
アルスター侯爵家
99.黒山の人だかりと転移の恐怖
しおりを挟む
街の者に説明するのは司教に押し付けることに決めたが、マモンから受け取った金や宝石は既に塵になっている人も多く彼等の不満は全て教会へと向けられた。
まだ金や宝石を持っている者達も教会に押しかけ何とかしろと騒いでおり、連日教会の前は黒山の人だかりができている。
事件の日ディーが作った生垣の辺りには大勢の人が詰めかけており、ラファエルとウリエルの姿を見て直接声を聞いた者達が声高に話を広めている為誤魔化しようがない。
「欲をかいて物を売りに行ったのは奴らだし、教会だけが悪いとは言えない気もするんだが」
セオドラが苦笑いを浮かべながらテーブルに出されたお菓子を選んでいる。
「まあ、元凶は司教ですからお仕置きの意味を込めて頑張ってもらうしかないかな」
「人の欲望には限りがありませんが、それと同じくらい責任転嫁が好きな生き物ですから仕方ないでしょう」
グレイソンはしたり顔で頷き、最近妙に仲良くなった猫にコンフェッティを渡している。
「ちょい聞きたいんだけど、何気に大天使様が混じってんのおかしくねえか?
何でみんな普通に話してるんだか意味わかんねえ」
ギルマスの家の食堂にはルカの他に、ミリア・セオドラ・グレイソン・猫・ラファエルが寛いでいる。
「最近はあまり動じなくなってしまった気がします。お祝いのあの日の衝撃でしょうか?」
「僕は元々医者だからミリアと話すのはとても楽しくて」
「まあ何が一番衝撃的かと聞かれると、ミリアがここにいるのにウォーカーがいないって事かな?」
ウリエルはウォーカーが錬金術で作った道具に関心を示し、ウォーカーもウリエルの知識に興奮して連日寝食を忘れて研究に没頭している。
「あんまり長居されるとヤバいんだよなー。ここには人目を誤魔化す訓練場とかねえし」
口にするべきではない一言をルカが喋った途端、全員がトレントの森に転移させられていた。
「ミリア、俺様に会いにきてくれたのか!」
駆け寄ってきたケット・シーがミリアに飛び付こうとした瞬間、ルカが間に飛び込んで来てケット・シーはルカに抱きしめられていた。
「なんだよ、おっさんに用はねえよ!」
「あーはっは、ちょっとは進歩したみたいじゃないか。何時迄もトロトロしてたんじゃジジイになっちまうからねえ」
勝手にテーブルを設えたヘルがミスラと優雅にワイングラスを傾けていた。
「でた!」
「なんだって? アンタあたしに喧嘩売ってんのかい、折角祝いに来てやったってのに去勢してやろうか?」
「いや、それでは今後の展開が退屈になる。漸く面白くなってきたってのに」
「ミスラ、あんた以前と性格変わってねえか?」
「ミスラは今のが素なんだよー。こないだまではカッコつけてたもんね」
アータルがルカの隙を狙いミリアに飛びついた。
「ミリアー、すっげえつまんなかった。ミスラがこき使うんだもん。
美味しいお菓子ちょうだい、あの滅茶苦茶甘いやつー」
「何が『もん』だ、ったく油断も隙もあったもんじゃねえ・・ってか、何でヘルの横にガンツが増えてんだ? ヴァン、お前かお前だな」
『ヘルは神獣使いが荒い』
「とか言いながら妹甘やかしてんじゃねえよ。そうやって妹を甘やかす奴らがいるから・・ん? ウォーカーだけじゃねえリンドもそうだよな。よく考えたらガンツお前もだよな」
「最近はナナがマックスの教育に忙しくてな、俺っちは暇にしてるぜ?」
「って事は一人脱落かい? ギルマス、良かったじゃないか」
ニヤニヤ笑うヘル達の元へ猫が走り込んできた。
『コイツら超つまんねえ、ちっとも暴れられねえ』
「ルカ、手紙預かってますよ」
「・・おう、ソフィアお前まで普通に参加してんのな」
ルカはソフィアに渡された手紙の裏をチラッと見てポケットに押し込んだ。
「はい、久しぶりにミリアちゃん達に会えて幸せです」
「こないだのお祝いに追加の大天使か」
「いや、テスタロッサはいないぞ」
「あたしもフリームスルスと、フレースヴェルグや栗鼠のラタトスクは置いてきたよ」
「僕もノッカーにはごめんって言っておいたから」
ペリがひょっこりと顔を出した。
「僕達は滅多に天界から出ないから・・。ペリは初めましてですね。嬉しい驚きです。ヨトゥンヘイムのフリームスルスとフレースヴェルグや栗鼠のラタトスクですか? ノッカーに至っては人見知り過ぎて誰も見たことがないのかと。会ってみたかったなあ」
「・・ラファエル、会ってどうする。こないだフリームスルスはノッカーを腕にぶら下げて遊んでたぞ? 頭に鷲を乗せて」
「えっ? ではラタトスクは何をしていたんですか?」
「フリームスルスに登って腹齧ってたな」
「あー、あれは笑えたねえ。よほど楽しかったらしくてさ、また連れてけってうるさいの何の。セリーナが叱り飛ばしてるよ」
あっはっはと豪快に笑うヘル。
「ちびすけの母ちゃんも健在か。いずれはちびすけもそうなるってことか?
しっかし父ちゃんの名前は一回も出ねえな」
「おや、ルカ君は随分と先まで」
「こないだのあれは可愛かったねえ。二人で手を繋いで大穴覗き込んでさ」
「・・はあ! てめえ、何覗き見してんだよ」
ルカが真っ赤になって立ち上がり叫んだ。
「どいつもコイツも、俺達の事はほっといてくれよ」
「そうだ、ルカお前に連絡事項があったんだ」
まだ金や宝石を持っている者達も教会に押しかけ何とかしろと騒いでおり、連日教会の前は黒山の人だかりができている。
事件の日ディーが作った生垣の辺りには大勢の人が詰めかけており、ラファエルとウリエルの姿を見て直接声を聞いた者達が声高に話を広めている為誤魔化しようがない。
「欲をかいて物を売りに行ったのは奴らだし、教会だけが悪いとは言えない気もするんだが」
セオドラが苦笑いを浮かべながらテーブルに出されたお菓子を選んでいる。
「まあ、元凶は司教ですからお仕置きの意味を込めて頑張ってもらうしかないかな」
「人の欲望には限りがありませんが、それと同じくらい責任転嫁が好きな生き物ですから仕方ないでしょう」
グレイソンはしたり顔で頷き、最近妙に仲良くなった猫にコンフェッティを渡している。
「ちょい聞きたいんだけど、何気に大天使様が混じってんのおかしくねえか?
何でみんな普通に話してるんだか意味わかんねえ」
ギルマスの家の食堂にはルカの他に、ミリア・セオドラ・グレイソン・猫・ラファエルが寛いでいる。
「最近はあまり動じなくなってしまった気がします。お祝いのあの日の衝撃でしょうか?」
「僕は元々医者だからミリアと話すのはとても楽しくて」
「まあ何が一番衝撃的かと聞かれると、ミリアがここにいるのにウォーカーがいないって事かな?」
ウリエルはウォーカーが錬金術で作った道具に関心を示し、ウォーカーもウリエルの知識に興奮して連日寝食を忘れて研究に没頭している。
「あんまり長居されるとヤバいんだよなー。ここには人目を誤魔化す訓練場とかねえし」
口にするべきではない一言をルカが喋った途端、全員がトレントの森に転移させられていた。
「ミリア、俺様に会いにきてくれたのか!」
駆け寄ってきたケット・シーがミリアに飛び付こうとした瞬間、ルカが間に飛び込んで来てケット・シーはルカに抱きしめられていた。
「なんだよ、おっさんに用はねえよ!」
「あーはっは、ちょっとは進歩したみたいじゃないか。何時迄もトロトロしてたんじゃジジイになっちまうからねえ」
勝手にテーブルを設えたヘルがミスラと優雅にワイングラスを傾けていた。
「でた!」
「なんだって? アンタあたしに喧嘩売ってんのかい、折角祝いに来てやったってのに去勢してやろうか?」
「いや、それでは今後の展開が退屈になる。漸く面白くなってきたってのに」
「ミスラ、あんた以前と性格変わってねえか?」
「ミスラは今のが素なんだよー。こないだまではカッコつけてたもんね」
アータルがルカの隙を狙いミリアに飛びついた。
「ミリアー、すっげえつまんなかった。ミスラがこき使うんだもん。
美味しいお菓子ちょうだい、あの滅茶苦茶甘いやつー」
「何が『もん』だ、ったく油断も隙もあったもんじゃねえ・・ってか、何でヘルの横にガンツが増えてんだ? ヴァン、お前かお前だな」
『ヘルは神獣使いが荒い』
「とか言いながら妹甘やかしてんじゃねえよ。そうやって妹を甘やかす奴らがいるから・・ん? ウォーカーだけじゃねえリンドもそうだよな。よく考えたらガンツお前もだよな」
「最近はナナがマックスの教育に忙しくてな、俺っちは暇にしてるぜ?」
「って事は一人脱落かい? ギルマス、良かったじゃないか」
ニヤニヤ笑うヘル達の元へ猫が走り込んできた。
『コイツら超つまんねえ、ちっとも暴れられねえ』
「ルカ、手紙預かってますよ」
「・・おう、ソフィアお前まで普通に参加してんのな」
ルカはソフィアに渡された手紙の裏をチラッと見てポケットに押し込んだ。
「はい、久しぶりにミリアちゃん達に会えて幸せです」
「こないだのお祝いに追加の大天使か」
「いや、テスタロッサはいないぞ」
「あたしもフリームスルスと、フレースヴェルグや栗鼠のラタトスクは置いてきたよ」
「僕もノッカーにはごめんって言っておいたから」
ペリがひょっこりと顔を出した。
「僕達は滅多に天界から出ないから・・。ペリは初めましてですね。嬉しい驚きです。ヨトゥンヘイムのフリームスルスとフレースヴェルグや栗鼠のラタトスクですか? ノッカーに至っては人見知り過ぎて誰も見たことがないのかと。会ってみたかったなあ」
「・・ラファエル、会ってどうする。こないだフリームスルスはノッカーを腕にぶら下げて遊んでたぞ? 頭に鷲を乗せて」
「えっ? ではラタトスクは何をしていたんですか?」
「フリームスルスに登って腹齧ってたな」
「あー、あれは笑えたねえ。よほど楽しかったらしくてさ、また連れてけってうるさいの何の。セリーナが叱り飛ばしてるよ」
あっはっはと豪快に笑うヘル。
「ちびすけの母ちゃんも健在か。いずれはちびすけもそうなるってことか?
しっかし父ちゃんの名前は一回も出ねえな」
「おや、ルカ君は随分と先まで」
「こないだのあれは可愛かったねえ。二人で手を繋いで大穴覗き込んでさ」
「・・はあ! てめえ、何覗き見してんだよ」
ルカが真っ赤になって立ち上がり叫んだ。
「どいつもコイツも、俺達の事はほっといてくれよ」
「そうだ、ルカお前に連絡事項があったんだ」
0
お気に入りに追加
960
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放されましたのでちょっと仕返しします
あおい
恋愛
婚約破棄からの爵位剥奪に国外追放!
初代当主は本物の天使!
天使の加護を受けてる私のおかげでこの国は安泰だったのに、その私と一族を追い出すとは何事ですか!?
身に覚えのない理由で婚約破棄に爵位剥奪に国外追放してきた第2王子に天使の加護でちょっと仕返しをしましょう!
呪いをかけられ婚約破棄をされた伯爵令嬢は仕事に生きます!なのに運命がグイグイ来る。
音無野ウサギ
恋愛
社交界デビューの園遊会から妖精に攫われ姿を消した伯爵令嬢リリー。
婚約者をわがままな妹に奪われ、伯爵家から追い出されるはずが妖精にかけられた呪いを利用して王宮で仕事をすることに。
真面目なリリーは仕事にやる気を燃やすのだが、名前も知らない男性に『運命』だと抱きつかれる。
リリーを運命だといいはる男のことをリリーは頭のおかしい「お気の毒な方」だと思っているのだがどうやら彼にも秘密があるようで……
この作品は小説家になろうでも掲載しています。
無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで
海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。
さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。
従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。
目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。
そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!?
素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。
しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。
未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。
アデリーナの本当に大切なものは何なのか。
捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ!
※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。
(完結)妹の為に薬草を採りに行ったら、婚約者を奪われていましたーーでも、そんな男で本当にいいの?
青空一夏
恋愛
妹を溺愛する薬師である姉は、病弱な妹の為によく効くという薬草を遠方まで探す旅に出た。だが半年後に戻ってくると、自分の婚約者が妹と・・・・・・
心優しい姉と、心が醜い妹のお話し。妹が大好きな天然系ポジティブ姉。コメディ。もう一回言います。コメディです。
※ご注意
これは一切史実に基づいていない異世界のお話しです。現代的言葉遣いや、食べ物や商品、機器など、唐突に現れる可能性もありますのでご了承くださいませ。ファンタジー要素多め。コメディ。
この異世界では薬師は貴族令嬢がなるものではない、という設定です。
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる