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新しい地、カリーニン
98.俺のせい?
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ノームの横に現れたのは大天使ウリエル。
ウリエルという名前は、神の光や神の炎を意味し、天におけるすべての発光体・地上の運行・気象・自然現象を司る。
熾天使や智天使とも言われるウリエルは裁きと予言の解説者と言われ、本や巻物と焔の剣を持ちエデンの園の門を守っている。
「大天使ウリエル・・」
価値のない金属を貴金属に変える錬金術を人類にもたらしたのもウリエルだと言われており、錬金術師のウォーカーが憧憬を込めた声で名前を囁いた。
「だったらさ、ちゃちゃっと済ませるか」
アレンがウリエル、ノームと共に大穴に向けて歩いて行った。
「今ある結界の護符はこれ位なんだけど、あとどの位必要かな?」
ロビンが手に二十枚近い護符を持ちラファエルに見せた。
「うん、これだけあれば取り敢えずは大丈夫だね」
んじゃ穴が塞がったら護符を貼るか・・と言って手伝いを申し出たグレイソンと二人で大穴に向かって行った。
「あとはターニャのご両親達を助けなきゃ」
「何処にいるのか分かんのか?」
「ええ、マンドラゴラと一緒。何となくわかるから行ってくる」
「「一緒に行く!」」
ルカとウォーカーの声が重なりラファエルが笑い声を上げた。
「君達にはここに残ってもらう。大丈夫だとは思うけど万が一の時には二人の力が必要になる。
それに、捕まってる人達にはフェンリルの威嚇と僕の癒しが必要みたいだから」
ミリア達は南の問屋街に足を向けた。大きな倉庫が立ち並ぶ中、最も奥まったところにある古びた倉庫の前に立った。
「ここだと思います」
ラファエルとヴァンが頷き倉庫の扉に取り付けられた幾つもの鍵を壊し中に入って行った。
窓から入る月明かりが照らす倉庫の中には沢山の檻が並んでおり、それぞれに数人ずつの人が入れられていた。
俯いて口を開かない人達は皆、ミリア達に背を向けて蹲っている。
「皆さん、これから鍵を壊すのでゆっくり出てきてください」
ミリアが手前の檻に近づくと左奥の檻から声がした。
「今度は何の真似だ。俺達は絶対にアンタらに何も願ったりしねえ」
「奴はもういなくなったんで心配せず出てきて下さい」
「信用するな! これも何かの罠かもしんねえ」
ガタガタと檻を揺らし信用するなと叫ぶ男の人の声に被さるように、
「もう嫌だ」
「俺はうちに帰りたい」
「黙るんだ! 奴に隙を狙われるぞ」
叫び声と泣き声が倉庫に木霊し、ミリアの声が聞こえなくなった。
『グルル、グゥオーーン』
ヴァンの咆哮で倉庫内が静まりかえり、ラファエルの癒しの光が全ての檻を照らした。
「信用出来ないのは分かります。私達は鍵を開けたら帰るので後は皆さんで話し合って下さい。
それからターニャのお父さんかお母さんがいたら・・ターニャとレギーは元気でギルド待ってるので早「ターニャに会ったの? レギーは無事なのね」」
大声で怒鳴っていた男性と同じ檻の中から聞こえた声にミリアは鍵を壊しながら返事をした。
「ターニャとレギーに話を聞いてエリッソンに来たんです。お腹は空かせてたけど元気です」
ミリア達が倉庫を出た後ルカ達の元へ転移すると、セオドラに連れてこられた司教が怒鳴り声を上げ喧嘩をしている最中だった。
「これが・・この焼け野原が教会のせいだと! 巫山戯るな」
「アンタらが気楽に大聖堂の改築なんかやるからマモンが出てきやがったんだ。責任取るのは当然だろうが」
「証拠は・・証拠を見せろ! 冒険者の失敗を教会に押し付けるなど神を冒涜する行為だぞ」
ラファエルが帰ってきた事に気づいたウリエルが羽根を広げやって来た。
「なっ、大天使ウリエル様と・・ラファエル」
司教が膝をつきロザリオを握りしめて祈りを捧げた。
「神よ、感謝します」
「大聖堂の倉庫に放置したラファエル像をここに安置し速やかに礼拝堂を建立しなさい」
「は? ラファエル像でございますか」
「長きにわたりこの地を堕天使マモンより守りしは大天使ラファエル。その護りが薄れ結界に緩みが生じた」
「でっでは、大聖堂の改築がこの惨状をもたらしたと仰せなので御座いましょうか?」
大聖堂の改築と守護神をミカエルに変えようと画策した司教は愕然としガタガタと震え出した。
「この者達の尽力で悪しき者はあるべき場所へ戻り新たなる結界を築く事ができた。
これより後は再びラファエルの力で結界を護る」
腰を抜かした司教を引き摺り大聖堂からラファエル像を運び出す準備に向かわせた。
「さて、これで終わりか? 帰って飯でも食うか、あー腹減ったぜ」
ギルド職員と冒険者達に荒地の整理や工事人夫の手配などを任せて、ミリア達はカリーニンのギルドに戻って行った。
ギルドの近くまで行くとレギーが飛び出してきた。
「無事か? みんなは? アイツはどうなった?」
ギルドの中は綺麗に掃除されピカピカになった机や椅子がセットされていた。
「じっとしてたら落ち着かなくて、カノンちゃんと三人で掃除したんだ。で、あの・・」
「多分だけどお父さんとお母さんにあったと思う。もう少ししたら帰ってくると思うから待っててね」
泣き出したターニャをレギーが抱きしめ、カノンは久しぶりに会ったリンドに飛びついた。
その後ろで退屈そうな猫が欠伸をしていた。
ルカはカリーニンについてから見聞きした事や起きた事を簡潔に説明した。
説明を受けた殆どの者が一番興味を抱いたのは、
「「マモンがヘタレ・・」」
ウリエルという名前は、神の光や神の炎を意味し、天におけるすべての発光体・地上の運行・気象・自然現象を司る。
熾天使や智天使とも言われるウリエルは裁きと予言の解説者と言われ、本や巻物と焔の剣を持ちエデンの園の門を守っている。
「大天使ウリエル・・」
価値のない金属を貴金属に変える錬金術を人類にもたらしたのもウリエルだと言われており、錬金術師のウォーカーが憧憬を込めた声で名前を囁いた。
「だったらさ、ちゃちゃっと済ませるか」
アレンがウリエル、ノームと共に大穴に向けて歩いて行った。
「今ある結界の護符はこれ位なんだけど、あとどの位必要かな?」
ロビンが手に二十枚近い護符を持ちラファエルに見せた。
「うん、これだけあれば取り敢えずは大丈夫だね」
んじゃ穴が塞がったら護符を貼るか・・と言って手伝いを申し出たグレイソンと二人で大穴に向かって行った。
「あとはターニャのご両親達を助けなきゃ」
「何処にいるのか分かんのか?」
「ええ、マンドラゴラと一緒。何となくわかるから行ってくる」
「「一緒に行く!」」
ルカとウォーカーの声が重なりラファエルが笑い声を上げた。
「君達にはここに残ってもらう。大丈夫だとは思うけど万が一の時には二人の力が必要になる。
それに、捕まってる人達にはフェンリルの威嚇と僕の癒しが必要みたいだから」
ミリア達は南の問屋街に足を向けた。大きな倉庫が立ち並ぶ中、最も奥まったところにある古びた倉庫の前に立った。
「ここだと思います」
ラファエルとヴァンが頷き倉庫の扉に取り付けられた幾つもの鍵を壊し中に入って行った。
窓から入る月明かりが照らす倉庫の中には沢山の檻が並んでおり、それぞれに数人ずつの人が入れられていた。
俯いて口を開かない人達は皆、ミリア達に背を向けて蹲っている。
「皆さん、これから鍵を壊すのでゆっくり出てきてください」
ミリアが手前の檻に近づくと左奥の檻から声がした。
「今度は何の真似だ。俺達は絶対にアンタらに何も願ったりしねえ」
「奴はもういなくなったんで心配せず出てきて下さい」
「信用するな! これも何かの罠かもしんねえ」
ガタガタと檻を揺らし信用するなと叫ぶ男の人の声に被さるように、
「もう嫌だ」
「俺はうちに帰りたい」
「黙るんだ! 奴に隙を狙われるぞ」
叫び声と泣き声が倉庫に木霊し、ミリアの声が聞こえなくなった。
『グルル、グゥオーーン』
ヴァンの咆哮で倉庫内が静まりかえり、ラファエルの癒しの光が全ての檻を照らした。
「信用出来ないのは分かります。私達は鍵を開けたら帰るので後は皆さんで話し合って下さい。
それからターニャのお父さんかお母さんがいたら・・ターニャとレギーは元気でギルド待ってるので早「ターニャに会ったの? レギーは無事なのね」」
大声で怒鳴っていた男性と同じ檻の中から聞こえた声にミリアは鍵を壊しながら返事をした。
「ターニャとレギーに話を聞いてエリッソンに来たんです。お腹は空かせてたけど元気です」
ミリア達が倉庫を出た後ルカ達の元へ転移すると、セオドラに連れてこられた司教が怒鳴り声を上げ喧嘩をしている最中だった。
「これが・・この焼け野原が教会のせいだと! 巫山戯るな」
「アンタらが気楽に大聖堂の改築なんかやるからマモンが出てきやがったんだ。責任取るのは当然だろうが」
「証拠は・・証拠を見せろ! 冒険者の失敗を教会に押し付けるなど神を冒涜する行為だぞ」
ラファエルが帰ってきた事に気づいたウリエルが羽根を広げやって来た。
「なっ、大天使ウリエル様と・・ラファエル」
司教が膝をつきロザリオを握りしめて祈りを捧げた。
「神よ、感謝します」
「大聖堂の倉庫に放置したラファエル像をここに安置し速やかに礼拝堂を建立しなさい」
「は? ラファエル像でございますか」
「長きにわたりこの地を堕天使マモンより守りしは大天使ラファエル。その護りが薄れ結界に緩みが生じた」
「でっでは、大聖堂の改築がこの惨状をもたらしたと仰せなので御座いましょうか?」
大聖堂の改築と守護神をミカエルに変えようと画策した司教は愕然としガタガタと震え出した。
「この者達の尽力で悪しき者はあるべき場所へ戻り新たなる結界を築く事ができた。
これより後は再びラファエルの力で結界を護る」
腰を抜かした司教を引き摺り大聖堂からラファエル像を運び出す準備に向かわせた。
「さて、これで終わりか? 帰って飯でも食うか、あー腹減ったぜ」
ギルド職員と冒険者達に荒地の整理や工事人夫の手配などを任せて、ミリア達はカリーニンのギルドに戻って行った。
ギルドの近くまで行くとレギーが飛び出してきた。
「無事か? みんなは? アイツはどうなった?」
ギルドの中は綺麗に掃除されピカピカになった机や椅子がセットされていた。
「じっとしてたら落ち着かなくて、カノンちゃんと三人で掃除したんだ。で、あの・・」
「多分だけどお父さんとお母さんにあったと思う。もう少ししたら帰ってくると思うから待っててね」
泣き出したターニャをレギーが抱きしめ、カノンは久しぶりに会ったリンドに飛びついた。
その後ろで退屈そうな猫が欠伸をしていた。
ルカはカリーニンについてから見聞きした事や起きた事を簡潔に説明した。
説明を受けた殆どの者が一番興味を抱いたのは、
「「マモンがヘタレ・・」」
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