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新しいパーティー
87.同情票が入りました
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クレイモアを掴んで咄嗟に走り出したルカの前にテトテトと呑気に歩くミリアが現れた。
「何があった、けがはないか。さっきの悲鳴は?」
青い顔で立て続けに質問するルカを見て、にっこり笑ったミリアが右手を持ち上げた。
「くっせえ。うへっ、マンドラゴラじゃねえか」
「向こうの樫の樹の根のとこに生えてたの」
マンドラゴラは引き抜く時悲鳴を上げ、まともに聞いてしまうと発狂して死んでしまうという伝説を持っている。
麻薬効果を持ち鎮痛鎮静剤・下剤・便秘薬などに使用するが、毒性が強く幻覚・幻聴・嘔吐などを引き起こす可能性がある為注意が必要な薬草の一つ。
非常に細かい根を大量に張る為引き抜くにはかなりの力が必要。
「これを抜いた? まさか、おし○こか? 女のおし○こをかけたら大人しくなるんだよな」
「やめて! マンドラゴラの採取くらいでは死なないし、そんなものかけたりしないわ。
根っこがちぎれる時にすごい音がするんだけど、それが丁度悲鳴みたいに聞こえるだけなの」
ミリアが持ち上げたマンドラゴラをゆらゆらと揺らしている。
「毒性が強いからそれもあって死んじゃうとかって伝説が出来たみたい。
目薬も作れるしすごく便利なの。
これは白いから雄ね、雌は黒いから。
いつも一人だったから忘れてたけど、心配かけてごめんなさい」
ルカは「はあっ」とため息を吐いてしゃがみ込んだ。
「てめえ、帰ったらお仕置き確定な」
アキレアを採取していた広場に戻るとカノンが元気に駆け出してきた。
「ミリアちゃんマンドラゴラ捕まえた?」
「ええ、今日は雄だった」
「凄いねー、今日も教えて貰ったの?」
「うん」
物問いたげなルカの顔を見てミリアが説明した。
「誰にも話してないんだけど、昔から『こういうのがないかな?』とか考えてるとどこに生えてるのかなんとなくわかるの。で、そこに行ったらあるって感じ。
理由はよくわからないけど薬草採取にはとても便利なのよね」
「聞くんじゃなかった。それマジやべぇじゃねえか、お前よく拉致されずに今まで生きてこれたよな」
「兄さんのお陰ね。最初に兄さんが気付いたのが私が三歳の時だったって言ってたから。
それからずっと、人に知られるな・人に見せるなって」
ミリアに異常な執着を見せるウォーカーに苦手意識を持っていたルカはかなり大幅に認識を改める事にした。
(コイツヤバすぎ。コイツ守ろうとすりゃああなるわ)
ウォーカーに大量の同情票が入った。
「ミリアちゃん、アキレアを分けたんだけど見てくれる?」
悪魔を遠ざける強い魔力があると言われているアキレアは別名兵士の傷薬と呼ばれ、葉をそのまま傷口にあてがったり粉末で軟膏を作り外用薬として用いる他に葉を煎じたりワインで煮出して使うこともできる。
花と葉には強壮効果・食欲増進・解熱作用がありハーブティーとして親しまれており、ドルイドが天候を占う時に使用するこの草は、繁殖力が強く植物の病気を治し害虫から守る力を持っている。
「生の葉を噛むと歯痛が鎮まるし、若葉を刻んでサラダの材料にしたり茹でて炒めても美味しいの。
綺麗に分けられてるわ。雑草や塵もついていなくて完璧ね」
ミリアに褒められたカノンが顔を赤くしながら小さくサムズアップしていた。
のんびり昼寝していたはずの猫が大欠伸をした後、(多分)ニヤけた顔をしながらルカの元にやってきた。
『今日のマンドラゴラは雄か。ルカよ、貰っておけば女にモテるぞ』
「はあ?」
「おっさんにはいらないよねー、だってアルラウネにも好かれちゃったんでしょー」
「なっ、何でてめえが知ってんだよ! くそ、あん時か。アレには理由があってだな」
『発情期の猫の匂いだろ? 雄のマンドラゴラの方がよっぽど効果高いぜ』
「がー、いらねえし」
『ふむ、貴様の初めては・・』
「ちがーう! ちびすけ、違うからな。ぜんっぜん違う、ほんとのほんとに違うぞ!」
慌ててミリアに言い募るルカを見たディーが、
「超あやしー」
爽やかな風が吹き抜ける夏の日差しの中で、三匹? を汗だらけになって追いかけ回すルカを見ながらのんびりとお茶を楽しんだミリアとカノンだった。
元気一杯の二人と三匹は、疲れ果てたルカと共に駅馬車を降りて街中へ歩いて行った。
「おっ、ルカじゃねえか。なんかお前一人疲れてんな」
ベテラン冒険者達が声をかけてきた。
「あ? まあな」
このメンバーは人は良いが、ルカを見ると揶揄うのが大好物なので、
(ヤバいやつに見つかった)
と内心ため息を吐いたルカ。
「なんだ、若いのにしっかりしろや」
「ちびちゃんとデートで張り切りすぎたんじゃね?」
ゲラゲラと笑う冒険者達。
「嬉しいのは分かるけどよ、ちっこいのも連れてんだ。あんまりハメ外すなよ」
「そうそう、教育上良くないことは目の前では禁止だからな。もしもの時は俺達がギルドでちっこいのを預かってやるからよ」
「ギルドん中にいりゃ誰にも手出しできねえからよ。それ迄は我慢しろよ」
「まぁこのワンコがいりゃ下手なことは出来んだろうがな」
ヴァンを撫でようと手を伸ばした冒険者がさっと躱されてがっかりしている。
「ああ、チビっこいくせになーんか迫力があんだよな」
「最近増えたこっちの猫もな」
じゃあ頑張れよと言いながら冒険者達がギルドの方へ歩いて行った。
「なんかこの街、すげぇ住みにくくなってきやがった」
「何があった、けがはないか。さっきの悲鳴は?」
青い顔で立て続けに質問するルカを見て、にっこり笑ったミリアが右手を持ち上げた。
「くっせえ。うへっ、マンドラゴラじゃねえか」
「向こうの樫の樹の根のとこに生えてたの」
マンドラゴラは引き抜く時悲鳴を上げ、まともに聞いてしまうと発狂して死んでしまうという伝説を持っている。
麻薬効果を持ち鎮痛鎮静剤・下剤・便秘薬などに使用するが、毒性が強く幻覚・幻聴・嘔吐などを引き起こす可能性がある為注意が必要な薬草の一つ。
非常に細かい根を大量に張る為引き抜くにはかなりの力が必要。
「これを抜いた? まさか、おし○こか? 女のおし○こをかけたら大人しくなるんだよな」
「やめて! マンドラゴラの採取くらいでは死なないし、そんなものかけたりしないわ。
根っこがちぎれる時にすごい音がするんだけど、それが丁度悲鳴みたいに聞こえるだけなの」
ミリアが持ち上げたマンドラゴラをゆらゆらと揺らしている。
「毒性が強いからそれもあって死んじゃうとかって伝説が出来たみたい。
目薬も作れるしすごく便利なの。
これは白いから雄ね、雌は黒いから。
いつも一人だったから忘れてたけど、心配かけてごめんなさい」
ルカは「はあっ」とため息を吐いてしゃがみ込んだ。
「てめえ、帰ったらお仕置き確定な」
アキレアを採取していた広場に戻るとカノンが元気に駆け出してきた。
「ミリアちゃんマンドラゴラ捕まえた?」
「ええ、今日は雄だった」
「凄いねー、今日も教えて貰ったの?」
「うん」
物問いたげなルカの顔を見てミリアが説明した。
「誰にも話してないんだけど、昔から『こういうのがないかな?』とか考えてるとどこに生えてるのかなんとなくわかるの。で、そこに行ったらあるって感じ。
理由はよくわからないけど薬草採取にはとても便利なのよね」
「聞くんじゃなかった。それマジやべぇじゃねえか、お前よく拉致されずに今まで生きてこれたよな」
「兄さんのお陰ね。最初に兄さんが気付いたのが私が三歳の時だったって言ってたから。
それからずっと、人に知られるな・人に見せるなって」
ミリアに異常な執着を見せるウォーカーに苦手意識を持っていたルカはかなり大幅に認識を改める事にした。
(コイツヤバすぎ。コイツ守ろうとすりゃああなるわ)
ウォーカーに大量の同情票が入った。
「ミリアちゃん、アキレアを分けたんだけど見てくれる?」
悪魔を遠ざける強い魔力があると言われているアキレアは別名兵士の傷薬と呼ばれ、葉をそのまま傷口にあてがったり粉末で軟膏を作り外用薬として用いる他に葉を煎じたりワインで煮出して使うこともできる。
花と葉には強壮効果・食欲増進・解熱作用がありハーブティーとして親しまれており、ドルイドが天候を占う時に使用するこの草は、繁殖力が強く植物の病気を治し害虫から守る力を持っている。
「生の葉を噛むと歯痛が鎮まるし、若葉を刻んでサラダの材料にしたり茹でて炒めても美味しいの。
綺麗に分けられてるわ。雑草や塵もついていなくて完璧ね」
ミリアに褒められたカノンが顔を赤くしながら小さくサムズアップしていた。
のんびり昼寝していたはずの猫が大欠伸をした後、(多分)ニヤけた顔をしながらルカの元にやってきた。
『今日のマンドラゴラは雄か。ルカよ、貰っておけば女にモテるぞ』
「はあ?」
「おっさんにはいらないよねー、だってアルラウネにも好かれちゃったんでしょー」
「なっ、何でてめえが知ってんだよ! くそ、あん時か。アレには理由があってだな」
『発情期の猫の匂いだろ? 雄のマンドラゴラの方がよっぽど効果高いぜ』
「がー、いらねえし」
『ふむ、貴様の初めては・・』
「ちがーう! ちびすけ、違うからな。ぜんっぜん違う、ほんとのほんとに違うぞ!」
慌ててミリアに言い募るルカを見たディーが、
「超あやしー」
爽やかな風が吹き抜ける夏の日差しの中で、三匹? を汗だらけになって追いかけ回すルカを見ながらのんびりとお茶を楽しんだミリアとカノンだった。
元気一杯の二人と三匹は、疲れ果てたルカと共に駅馬車を降りて街中へ歩いて行った。
「おっ、ルカじゃねえか。なんかお前一人疲れてんな」
ベテラン冒険者達が声をかけてきた。
「あ? まあな」
このメンバーは人は良いが、ルカを見ると揶揄うのが大好物なので、
(ヤバいやつに見つかった)
と内心ため息を吐いたルカ。
「なんだ、若いのにしっかりしろや」
「ちびちゃんとデートで張り切りすぎたんじゃね?」
ゲラゲラと笑う冒険者達。
「嬉しいのは分かるけどよ、ちっこいのも連れてんだ。あんまりハメ外すなよ」
「そうそう、教育上良くないことは目の前では禁止だからな。もしもの時は俺達がギルドでちっこいのを預かってやるからよ」
「ギルドん中にいりゃ誰にも手出しできねえからよ。それ迄は我慢しろよ」
「まぁこのワンコがいりゃ下手なことは出来んだろうがな」
ヴァンを撫でようと手を伸ばした冒険者がさっと躱されてがっかりしている。
「ああ、チビっこいくせになーんか迫力があんだよな」
「最近増えたこっちの猫もな」
じゃあ頑張れよと言いながら冒険者達がギルドの方へ歩いて行った。
「なんかこの街、すげぇ住みにくくなってきやがった」
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