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新しいパーティー
85.腰抜けのアンポンタンだから
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グルルと唸り声をあげたヴァンと元ギルマスが睨みあった。
「はあ? 今までどこに行ってやがった。ちびすけ達を放置とかありえんだろうが!」
『放置はしておらん、姿を消しておった』
ヴァンがフリフリと尻尾を振ったのがまるで元ギルマスを揶揄っているように見えた。
「ヨルムガンドと出かけてたんだろうが、巫山戯んじゃねえ」
『出かけてなぞおらん』
「さっきまでいなかったじゃねえか!」
『貴様がソフィアに我を犬コロ呼ばわりしておったのも知っておる』
「・・どう言うことだ?」
元ギルマスがミリアを振り返ったが意味が分からないミリアは首を横に振った。
「ヴァンとあたしは今日もミリア達とずーっと一緒にいたよー。姿を消してたの」
ふふっとディーが笑いヴァンは大きく尻尾を揺らした。
「ちょっと実験してみたの、おっさんがどうするかなって」
『我の勝ちであったな』
「おっさんがギルド退職するとは思わなかったなー。負けちゃった」
「また俺で遊んでたってわけか。ざけんなよ人間はテメェらのおもちゃじゃねえ」
ギルマスが眉間に皺を寄せ拳を握りしめた。
ヴァンが四つ足で立ち上がり牙を剥いた。
『愚か者が! 我に頼ってぬくぬくと巣穴に潜り込んでおったうつけ者がよくも犬コロなどと言いおったな』
「・・」
『誤魔化したければ最後まで誤魔化し切れ。逃げたければ何があろうと逃げ切れ。
それが出来ぬなら腹を括るのだな』
「・・」
『我を殴ると言ったのは貴様か?』
「悪かった。すまん」
「ルカちゃん、これから宜しくねー」
「おっさんもちゃん付けも勘弁してくれ」
ルカが頭をかいた。
「くそ、コイツらに一杯食わされた。ったく騙すとか性格悪すぎんだろ」
『貴様ほどではないがな』
「ふん! 勝手に言ってろ」
「あー退職したからこの部屋使えねえんだ、忘れてた。俺は荷物を片付けて宿を取らねえと、ちびすけは宿に帰るなら送ってくぞ?」
机の引き出しの中身を取り出しながらチラッとミリアを見た。
「カノンちゃんと下で待ってても良いかな。お腹空いてると思うから」
ミリアは少しドキドキしながら聞いてみた。
「おっ良いぜ。ここの荷物はすぐ片付くから俺も下で飯食うかな」
「分かった、待ってるね」
俯いて引き出しの中を覗き込んでいるルカは気付いていなかったが、ミリアの耳がほんのりと赤くなっていた。
階段を降りていくと興味津々の顔が並んでいた。
「皆さん、すみませんでした」
ミリアが頭を下げると冒険者達は吃驚して目が点になった。
「何でちびちゃんが謝んの?」
「ギルマスを誘ったのは私なんです」
「凄え、こんなにちっこくても最近の女の子は大胆だねえ」
「ルカの奴がへっぽこなんだよ」
ニヤニヤと笑う女冒険者。
「女に先に言わせたんじゃ一生尻に敷かれるな」
アイツは全く・・と言いながら笑っている冒険者。
「あのー、パーティーに誘ったんですけど?」
「へ? そっそうか。まあ、はじまりなんてそんなもんよ」
「終わりよければって言うからな、しっかり手綱握ってろよ」
「漸くあのボンクラが自分の気持ちに気付いたんだ。これからは大切にしてくれるだろうよ」
「あーいうのが結構良い旦那になんだよ。浮気はしなさそうだしな」
慌ててフォローをはじめた冒険者達にミリアは両手を振って説明をはじめた。
「えっ、違います! ギルマスは親切心でパーティー組んでくれたんですから」
「「「へ?」」」
「ですから、心配だからしょうがないって」
冒険者達の顔色が怒りで赤くなっていった。
「あんの馬鹿たれー」
「腰抜けのアンポンタンがー」
「もしかして童○か? ○貞確定だな」
「さっきから聞いてりゃ、てめえら良い加減にしろよ」
ギルマスがクレイモアを腰に下げ鞄を一つ抱えて降りて来た。
「お前なぁ、折角祝ってやろうと待ってたのに」
「なっさけねえ奴だぜ」
「だから何言ってんのかさっぱり分からん」
ルカは本気で首を傾げていた。
「ちびちゃん、こんな奴だが宜しくな」
「見捨てないで構ってやってくれ」
「ちびすけ、飯食いに行こうぜ。コイツら調子に乗ると直ぐ訳わからんことを言い出すからな」
「まぁいい、分かってないのはお前だけだけどな」
冒険者達が一斉にうんうんと頷いている。
ソフィアに付き添われたカノンが食堂で果実水を飲みながら待っていた。
「ようカノン、これから宜しくな」
キョトンと首を傾げていたカノンが「あっ」と声を上げた。
「パーティー組むの?」
「おう、飯食いながら話そうぜ。いやー腹減って死にそうだぜ。
おっさん、今日のおすすめな。ちびすけ達も一緒でいいか? なら三つで」
さっさと注文を済ませたルカはスッキリした顔をしており、ミリアは苦笑いを浮かべていた。
ソフィアとカノンは顔を見合わせた後首を傾げた。
「ミリアちゃん、何がどうなったのか聞いてもいい?」
ソフィアが恐々と聞いてきた。
「今日ヴァンとディーがそばにいなかったのを心配したギル・・ルカさんがパーティーを組んでくれることになりました。
あっ、因みにヴァン達は今日も傍にいてくれたそうです」
「そうなんだ、確かに心配はしてたけどそれだけ?」
もう一押し必要だったのかしらと不安になったソフィアの予感的中。
「冒険者の方達が何だか勘違いしてたのでちょっと恥ずかしくて戸惑ってました」
「にいちゃん、もう少し時間の余裕ありそうだよ。頑張れ」
小声で呟いている八才の女の子に負けているルカは呑気にヴァンと口喧嘩をしていた。
「はあ? 今までどこに行ってやがった。ちびすけ達を放置とかありえんだろうが!」
『放置はしておらん、姿を消しておった』
ヴァンがフリフリと尻尾を振ったのがまるで元ギルマスを揶揄っているように見えた。
「ヨルムガンドと出かけてたんだろうが、巫山戯んじゃねえ」
『出かけてなぞおらん』
「さっきまでいなかったじゃねえか!」
『貴様がソフィアに我を犬コロ呼ばわりしておったのも知っておる』
「・・どう言うことだ?」
元ギルマスがミリアを振り返ったが意味が分からないミリアは首を横に振った。
「ヴァンとあたしは今日もミリア達とずーっと一緒にいたよー。姿を消してたの」
ふふっとディーが笑いヴァンは大きく尻尾を揺らした。
「ちょっと実験してみたの、おっさんがどうするかなって」
『我の勝ちであったな』
「おっさんがギルド退職するとは思わなかったなー。負けちゃった」
「また俺で遊んでたってわけか。ざけんなよ人間はテメェらのおもちゃじゃねえ」
ギルマスが眉間に皺を寄せ拳を握りしめた。
ヴァンが四つ足で立ち上がり牙を剥いた。
『愚か者が! 我に頼ってぬくぬくと巣穴に潜り込んでおったうつけ者がよくも犬コロなどと言いおったな』
「・・」
『誤魔化したければ最後まで誤魔化し切れ。逃げたければ何があろうと逃げ切れ。
それが出来ぬなら腹を括るのだな』
「・・」
『我を殴ると言ったのは貴様か?』
「悪かった。すまん」
「ルカちゃん、これから宜しくねー」
「おっさんもちゃん付けも勘弁してくれ」
ルカが頭をかいた。
「くそ、コイツらに一杯食わされた。ったく騙すとか性格悪すぎんだろ」
『貴様ほどではないがな』
「ふん! 勝手に言ってろ」
「あー退職したからこの部屋使えねえんだ、忘れてた。俺は荷物を片付けて宿を取らねえと、ちびすけは宿に帰るなら送ってくぞ?」
机の引き出しの中身を取り出しながらチラッとミリアを見た。
「カノンちゃんと下で待ってても良いかな。お腹空いてると思うから」
ミリアは少しドキドキしながら聞いてみた。
「おっ良いぜ。ここの荷物はすぐ片付くから俺も下で飯食うかな」
「分かった、待ってるね」
俯いて引き出しの中を覗き込んでいるルカは気付いていなかったが、ミリアの耳がほんのりと赤くなっていた。
階段を降りていくと興味津々の顔が並んでいた。
「皆さん、すみませんでした」
ミリアが頭を下げると冒険者達は吃驚して目が点になった。
「何でちびちゃんが謝んの?」
「ギルマスを誘ったのは私なんです」
「凄え、こんなにちっこくても最近の女の子は大胆だねえ」
「ルカの奴がへっぽこなんだよ」
ニヤニヤと笑う女冒険者。
「女に先に言わせたんじゃ一生尻に敷かれるな」
アイツは全く・・と言いながら笑っている冒険者。
「あのー、パーティーに誘ったんですけど?」
「へ? そっそうか。まあ、はじまりなんてそんなもんよ」
「終わりよければって言うからな、しっかり手綱握ってろよ」
「漸くあのボンクラが自分の気持ちに気付いたんだ。これからは大切にしてくれるだろうよ」
「あーいうのが結構良い旦那になんだよ。浮気はしなさそうだしな」
慌ててフォローをはじめた冒険者達にミリアは両手を振って説明をはじめた。
「えっ、違います! ギルマスは親切心でパーティー組んでくれたんですから」
「「「へ?」」」
「ですから、心配だからしょうがないって」
冒険者達の顔色が怒りで赤くなっていった。
「あんの馬鹿たれー」
「腰抜けのアンポンタンがー」
「もしかして童○か? ○貞確定だな」
「さっきから聞いてりゃ、てめえら良い加減にしろよ」
ギルマスがクレイモアを腰に下げ鞄を一つ抱えて降りて来た。
「お前なぁ、折角祝ってやろうと待ってたのに」
「なっさけねえ奴だぜ」
「だから何言ってんのかさっぱり分からん」
ルカは本気で首を傾げていた。
「ちびちゃん、こんな奴だが宜しくな」
「見捨てないで構ってやってくれ」
「ちびすけ、飯食いに行こうぜ。コイツら調子に乗ると直ぐ訳わからんことを言い出すからな」
「まぁいい、分かってないのはお前だけだけどな」
冒険者達が一斉にうんうんと頷いている。
ソフィアに付き添われたカノンが食堂で果実水を飲みながら待っていた。
「ようカノン、これから宜しくな」
キョトンと首を傾げていたカノンが「あっ」と声を上げた。
「パーティー組むの?」
「おう、飯食いながら話そうぜ。いやー腹減って死にそうだぜ。
おっさん、今日のおすすめな。ちびすけ達も一緒でいいか? なら三つで」
さっさと注文を済ませたルカはスッキリした顔をしており、ミリアは苦笑いを浮かべていた。
ソフィアとカノンは顔を見合わせた後首を傾げた。
「ミリアちゃん、何がどうなったのか聞いてもいい?」
ソフィアが恐々と聞いてきた。
「今日ヴァンとディーがそばにいなかったのを心配したギル・・ルカさんがパーティーを組んでくれることになりました。
あっ、因みにヴァン達は今日も傍にいてくれたそうです」
「そうなんだ、確かに心配はしてたけどそれだけ?」
もう一押し必要だったのかしらと不安になったソフィアの予感的中。
「冒険者の方達が何だか勘違いしてたのでちょっと恥ずかしくて戸惑ってました」
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