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新しいパーティー
81.私はちょっと小柄なだけです
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「なんだ? もう用はねえだろ?」
異変を感じた冒険者や職員がギルドからわらわらと出てきた。
「ああ、貴様にはない。俺が待ってたのはそいつだ」
団長がミリアをビシッと指さすと全員戦闘モードに入った。
ギルマスの結界、ウォーカーのバリバリ・・。
「申し訳ない。任務だったとは言え、あんたには悪いことをした」
ガバッと頭を下げた団長。
「こんなちびっこを追い回して、幼児虐待で訴えられ「あのー、私十八歳ですけど?」」
「へっ?」
一瞬の後、ギルド前は大爆笑の渦になった。
「ミリア、機嫌なおせよ」
全員で街で一番人気の食堂に入り料理を注文した後になっても、まだニヤニヤ笑いが止まらないウォーカー達で店はほぼ貸切状態になっている。
「兄さん笑い過ぎ! 何でみんな私の事を・・あっ、わかった。ギルマスのせいね!」
「へっ、何で俺?」
「ちびすけは今後禁止します! アレを聞いた人がみんな勘違いしてるんだわ」
「だって、ちびはチビだし・・嘘は言ってねえぞ」
「ギルマスが大き過ぎるだけ。私はちょっと小柄なだけです!」
しんと静まり返り全員がミリアから目を逸らす。
「ミリア、ほんとにちっちゃいじゃん」
「「「アータル!」」」
ディーが木の枝でポカポカとアータルを叩きながら、
「ミリアはち○ぱいなのを気にしてるんだから言わないであげるのー」
「・・ディー、私特定の部分に特化して話してないから」
「・・」
「おっ、料理が来たぜ。今日は祝いだ、ミリアも元気出せ」
「ありがとう、ガンツさん」
山盛りの料理と大量の飲み物が消費された。
ディエチミーラの冒険譚や今後・リンドの希望や目標・ガンツの夢と計画・・。
それぞれが過去から抱えているものには触れず、楽しい夜が更けていった。
ガンツ達は工房に帰り、ミリアとディエチミーラとリンド・カノンの七人とヴァン達は宿を取る事にした。
ギルマスはギルドの近くに借りている部屋に、ソフィアは家族が待つ家にそれぞれ帰って行った。
騎士団の無用な警戒がなくなった夜の街には明るい笑い声や話し声が溢れていた。
せかせかと家路を急ぐ人や店の中を覗きながら歩く人達も心なしか楽しげに見えて、ミリアは『本当に終わったんだ』と実感していた。
「緊張するなって言う方が無理だってわかってるんだけど、絶対に大丈夫だから」
ウォーカーの言葉にロビンが相槌を打った。
「俺達がいれば手出しなんてさせないから」
「ありがとうございます。頭では分かってるつもりなんですが」
カノンと手を繋いでいるリンドの肩に力が入っている。
「どんどん人混みに出ていれば直に慣れるでしょう」
宿は街の大通りの中程にある広場を抜け公園の前を過ぎた所にあった。
四つ並んだ部屋は階段を上った二階にあり、二部屋ずつが向かい合わせになっている。
ミリアの部屋は左奥でシングルベッドが二つとテーブル・椅子が二脚。シンプルだが風呂があるのが嬉しかった。
ケット・シーとヨルムガンドとアータルは自身の住処に帰り、残っているのはヴァンとディーだけ。
風呂を出て寝巻きに着替えベッドに入ろうとしていると、ノックの音がしてウォーカーの声が聞こえた。
ウォーカーも風呂を済ませてきたらしく少し髪が濡れている。
「兄さん、髪乾かさないと」
「う、あー大丈夫。すぐ乾くから」
ウォーカーは自身のことに関しては結構ズボラで整理整頓は大の苦手。
ウォーカーの部屋は嵐が過ぎ去った後のようだとミリアは思っているが、本人はどこに何があるのか全部覚えているから問題ないらしい。
(その割にはしょっちゅう物を探してるけどね)
料理の苦手なミリアと掃除洗濯の苦手なウォーカーはいいコンビだった。
「漸くゆっくりできるね」
「うん、皇帝のアレで何だかおかしな気分になっちゃった」
ミリアはお茶のセットを出して湯を沸かしはじめた。
「炎のコントロール上手になったね」
「うん、ワンドのお陰もあるしギルマスがずっとつきっきりで教えてくれたし」
「ルカか、医者と画家の守護聖人だよね」
「えっ、ああ。ギルマスは聖人とは程遠い感じだけどね」
ミリアは淹れたてのお茶をウォーカーの前に置きながらふふっと笑った。
「アスカリオル帝国からの依頼を受けたことはあるけど皇帝には初めて会ったから吃驚したよ」
「宰相がいなくなったら大変だね。近衛騎士団長も団員もだし」
「膿が出せたってことで良いんじゃないかな?」
「だね」
「あー、ミリアに会ったら話したい事が一杯あったはずなのになぁ」
「いいじゃん、これからはいつでも会えるし」
「だな。・・ほんとに薬草採取するの?」
「うん、私は薬師だし。カノンちゃんを守れるようにってリンドは急いで強くなりたいんだと思うの。
昔の兄さんみたいだよね」
「俺もあんな風に見えてたのかな?」
ウォーカーが眉間に皺を寄せている。
「多分ね、兄さん凄く過保護だったもん」
「ミリアは俺達と一緒には行動しないって事?」
「うん。カノンちゃん次第だけどディエチミーラの活動にカノンちゃんを連れ回すのは危険すぎるでしょ?」
「だが、ミリア一人でカノンを守れるのか? ハーフエルフはエルフより高く売れるんだぞ」
「知ってる。ソフィアさんとテスタロッサさんに教えてもらったの」
「ヴァンとディーはこれからどうするのかな?」
「あたしはミリアと一緒にいるよー。カノンの事も守るし」
「ヴァンは?」
『我はミリアと共に行く』
「そっか、ヴァンとディーがいてくれるなら大丈夫だね」
「最強の二人だもん」
「明日の朝話そうと思ってたんだけど」
ウォーカーが真剣な顔をして話しはじめた。
異変を感じた冒険者や職員がギルドからわらわらと出てきた。
「ああ、貴様にはない。俺が待ってたのはそいつだ」
団長がミリアをビシッと指さすと全員戦闘モードに入った。
ギルマスの結界、ウォーカーのバリバリ・・。
「申し訳ない。任務だったとは言え、あんたには悪いことをした」
ガバッと頭を下げた団長。
「こんなちびっこを追い回して、幼児虐待で訴えられ「あのー、私十八歳ですけど?」」
「へっ?」
一瞬の後、ギルド前は大爆笑の渦になった。
「ミリア、機嫌なおせよ」
全員で街で一番人気の食堂に入り料理を注文した後になっても、まだニヤニヤ笑いが止まらないウォーカー達で店はほぼ貸切状態になっている。
「兄さん笑い過ぎ! 何でみんな私の事を・・あっ、わかった。ギルマスのせいね!」
「へっ、何で俺?」
「ちびすけは今後禁止します! アレを聞いた人がみんな勘違いしてるんだわ」
「だって、ちびはチビだし・・嘘は言ってねえぞ」
「ギルマスが大き過ぎるだけ。私はちょっと小柄なだけです!」
しんと静まり返り全員がミリアから目を逸らす。
「ミリア、ほんとにちっちゃいじゃん」
「「「アータル!」」」
ディーが木の枝でポカポカとアータルを叩きながら、
「ミリアはち○ぱいなのを気にしてるんだから言わないであげるのー」
「・・ディー、私特定の部分に特化して話してないから」
「・・」
「おっ、料理が来たぜ。今日は祝いだ、ミリアも元気出せ」
「ありがとう、ガンツさん」
山盛りの料理と大量の飲み物が消費された。
ディエチミーラの冒険譚や今後・リンドの希望や目標・ガンツの夢と計画・・。
それぞれが過去から抱えているものには触れず、楽しい夜が更けていった。
ガンツ達は工房に帰り、ミリアとディエチミーラとリンド・カノンの七人とヴァン達は宿を取る事にした。
ギルマスはギルドの近くに借りている部屋に、ソフィアは家族が待つ家にそれぞれ帰って行った。
騎士団の無用な警戒がなくなった夜の街には明るい笑い声や話し声が溢れていた。
せかせかと家路を急ぐ人や店の中を覗きながら歩く人達も心なしか楽しげに見えて、ミリアは『本当に終わったんだ』と実感していた。
「緊張するなって言う方が無理だってわかってるんだけど、絶対に大丈夫だから」
ウォーカーの言葉にロビンが相槌を打った。
「俺達がいれば手出しなんてさせないから」
「ありがとうございます。頭では分かってるつもりなんですが」
カノンと手を繋いでいるリンドの肩に力が入っている。
「どんどん人混みに出ていれば直に慣れるでしょう」
宿は街の大通りの中程にある広場を抜け公園の前を過ぎた所にあった。
四つ並んだ部屋は階段を上った二階にあり、二部屋ずつが向かい合わせになっている。
ミリアの部屋は左奥でシングルベッドが二つとテーブル・椅子が二脚。シンプルだが風呂があるのが嬉しかった。
ケット・シーとヨルムガンドとアータルは自身の住処に帰り、残っているのはヴァンとディーだけ。
風呂を出て寝巻きに着替えベッドに入ろうとしていると、ノックの音がしてウォーカーの声が聞こえた。
ウォーカーも風呂を済ませてきたらしく少し髪が濡れている。
「兄さん、髪乾かさないと」
「う、あー大丈夫。すぐ乾くから」
ウォーカーは自身のことに関しては結構ズボラで整理整頓は大の苦手。
ウォーカーの部屋は嵐が過ぎ去った後のようだとミリアは思っているが、本人はどこに何があるのか全部覚えているから問題ないらしい。
(その割にはしょっちゅう物を探してるけどね)
料理の苦手なミリアと掃除洗濯の苦手なウォーカーはいいコンビだった。
「漸くゆっくりできるね」
「うん、皇帝のアレで何だかおかしな気分になっちゃった」
ミリアはお茶のセットを出して湯を沸かしはじめた。
「炎のコントロール上手になったね」
「うん、ワンドのお陰もあるしギルマスがずっとつきっきりで教えてくれたし」
「ルカか、医者と画家の守護聖人だよね」
「えっ、ああ。ギルマスは聖人とは程遠い感じだけどね」
ミリアは淹れたてのお茶をウォーカーの前に置きながらふふっと笑った。
「アスカリオル帝国からの依頼を受けたことはあるけど皇帝には初めて会ったから吃驚したよ」
「宰相がいなくなったら大変だね。近衛騎士団長も団員もだし」
「膿が出せたってことで良いんじゃないかな?」
「だね」
「あー、ミリアに会ったら話したい事が一杯あったはずなのになぁ」
「いいじゃん、これからはいつでも会えるし」
「だな。・・ほんとに薬草採取するの?」
「うん、私は薬師だし。カノンちゃんを守れるようにってリンドは急いで強くなりたいんだと思うの。
昔の兄さんみたいだよね」
「俺もあんな風に見えてたのかな?」
ウォーカーが眉間に皺を寄せている。
「多分ね、兄さん凄く過保護だったもん」
「ミリアは俺達と一緒には行動しないって事?」
「うん。カノンちゃん次第だけどディエチミーラの活動にカノンちゃんを連れ回すのは危険すぎるでしょ?」
「だが、ミリア一人でカノンを守れるのか? ハーフエルフはエルフより高く売れるんだぞ」
「知ってる。ソフィアさんとテスタロッサさんに教えてもらったの」
「ヴァンとディーはこれからどうするのかな?」
「あたしはミリアと一緒にいるよー。カノンの事も守るし」
「ヴァンは?」
『我はミリアと共に行く』
「そっか、ヴァンとディーがいてくれるなら大丈夫だね」
「最強の二人だもん」
「明日の朝話そうと思ってたんだけど」
ウォーカーが真剣な顔をして話しはじめた。
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