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新しいパーティー
80.涙と鼻水はちょっと・・
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「ギルマスはなんでそんなに一人だけボロボロなんですか? まるで強力な魔物と対決してきたみたいな」
ソフィアの疑問に全員が頷いた。
「ソフィア、お前結構いい目してるな。正解だよ」
ソファに座り込み頭をガシガシと掻きむしりながらギルマスがぶつくさと文句を言った。
「やっぱ留守番しとくんだったな、アスカリオルは鬼門なんだよ」
『結界を張れたのは貴様だけだがのう』
火矢の襲撃を思い出し言葉につまったギルマスに、ミリアが礼を言った。
「あの時は本当に助かりました。ギルマスの結界がなかったら馬車が燃えてたかも」
「ああ、まあそうだけどな。しっかし普通あんな場所で仕掛けてくるか? アイツら頭おかしすぎんだろ」
「アレは想定外でした。ウォーカーは気がついていたのですか?」
グレイソンがウォーカーを振り返って見た。
「馬車に乗る前にルーバンが薄寒い笑い方をしたんだ。だから気になってね」
「急いで着替えてみんなのと「ミリア、お帰り!」」
ナナが真っ先に部屋に飛び込んできた。その後にマックスとガンツが続いてやって来た。
「ミリア、すげえ可愛いぜ。こんなドレス見た事ない」
ナナの目がハートマークになっている。
「ほー、ナナも女だなあ。ドレスに興味があんならちっと女らしくしたらどうだ?」
「うっせえ、ガンツは工房に籠って遊んでやがれ」
ナナはドスドスと音を立てて歩いて行き、何故か今日もマックスに蹴りを入れた。
「いってえ! ナナさん、なんで俺を蹴るんすか? やるならおやっさんでしょう?」
マックスが蹴られた脛を摩りながら抗議した。
「・・ガンツは丈夫過ぎて蹴ってもつまんねえんだよ」
ナナは嬉しかったり恥ずかしかったりするとマックスに八つ当たりしているように見えた。
(もしかしてナナさんは・・)
自分の事は鈍感すぎるがナナの気持ちには速攻で気づいたミリアだった。
「さて、みんなで飯でも食うか?」
「あの、だったら外食にしませんか? ねっ、カノンちゃん」
「あっ、いいの?」
以前カノンは自由になったら街に美味しいご飯を食べに行ってみたいと言っていた。
「ミリアちゃん、覚えててくれたんだ」
「勿論だよ、今日はカノンちゃんが一番食べたいものにしよう。みんなもそれで良いですか?」
全員一致で決まり大急ぎで着替えに走って行くカノンの後ろ姿をリンドが嬉しそうに見つめていた。
「俺様は森に帰る。じゃあまた森に遊びに来いよ、イヤ来てくれよな」
ケット・シーが空元気を出してドアに向かった。
「なんで帰るの? 一緒にご飯行こうよ」
ミリアが首を傾げて話しかけると、つんと横を向いたケット・シーは返事をしないで黙り込んでいる。
「・・友達で行けばいいだろ、俺様「ケット・シーはもう友達だよ?」」
パッと振り返ったケット・シーは目をうるうるとさせている。
「だっ、だったら俺様も・・俺様にも名前が欲しい。むっ無理にとは言わねえけど、ドリアードとか羨ましいなぁとか」
「私で良ければ何時でもいいよ」
「俺、俺様弱いしなんも役に立てねえし」
「ばーか、お前みたいなのを賑やかしって言うんだよ。特に何にもしなくても何となーく場を明るくしたり笑わせてくれる奴の事。それはそれで役に立ってんじゃね?」
「うわーん、ミリア! おっ俺、俺」
ぐしゃぐしゃの顔でケット・シーがミリアに飛びついてきたが、ミリアが両手で阻止した。
「ごめん、着替えるまで待って。ケット・シーの顔、涙と鼻水ですごい事になってるから」
「ひっひでえよー、ここは感動で抱き合うとこじゃねーのかよー」
ウォーカーがケット・シーの首根っこを後ろからつまみ上げた。
「ミリアと抱き合うだと? 百万年早い」
バリバリと放電がはじまっている。
「ひっ」
(わかったぞ、ピシピシはまだ大丈夫で、バリバリは危険に首を突っ込んだ時だな)
毛を逆立てて震えるケット・シーを観察しながらギルマスが状況分析していた。
「王様が泣かないのー、森の猫達に笑われるんだから。超カッコ悪い」
ずびっと鼻を啜り、
「俺様もお前とおんなじミリアの友達なんだぞ。カッコ悪いとか・・」
「ソフィアさーん」
カノンがソフィアを呼ぶ声が聞こえてきた。
「着替えの入ってる場所がわからないんだわ。ミリアちゃん一緒に行きましょう」
ガンツに無理矢理顔を洗われたケット・シーと、着替えを済ませたミリア達は意気揚々とギルドの一階に降りた。
そこには職員や冒険者達が大勢いていつも通りの賑わいを見せていた。
「おー、Sランクの登場だぜ!」
冒険者の誰かが声を上げるとおめでとうの声や拍手、指笛が鳴り響いた。
「騎士団の奴ら、ザマアミロってんだ」
「最近ギルマスがますます仕事サボってると思ってたけど、アンタ頑張ってたんだ。よしよししてやろうか?」
「ちびっこ冒険者バンザーイ」
「握手しようぜ。おっちゃん手洗ったばっかだからな」
沢山のお祝い? の言葉にお礼を言ったり手を振ったり。
何故か一番みんなに揉みくちゃにされて弄りまくられていたのは・・やっぱりギルマスだった。
「おい、髪をぐちゃぐちゃにすんな。俺は関係ねえんだ」
「おい、変なとこ触んな! ボコボコにすん・・うわっやめろ」
(みんなに愛されてるよね。冒険者に戻ってなんてやっぱり言えないよね)
ギルドの表に出ると仁王立ちした騎士団長が腕組みをして立っていた。
ソフィアの疑問に全員が頷いた。
「ソフィア、お前結構いい目してるな。正解だよ」
ソファに座り込み頭をガシガシと掻きむしりながらギルマスがぶつくさと文句を言った。
「やっぱ留守番しとくんだったな、アスカリオルは鬼門なんだよ」
『結界を張れたのは貴様だけだがのう』
火矢の襲撃を思い出し言葉につまったギルマスに、ミリアが礼を言った。
「あの時は本当に助かりました。ギルマスの結界がなかったら馬車が燃えてたかも」
「ああ、まあそうだけどな。しっかし普通あんな場所で仕掛けてくるか? アイツら頭おかしすぎんだろ」
「アレは想定外でした。ウォーカーは気がついていたのですか?」
グレイソンがウォーカーを振り返って見た。
「馬車に乗る前にルーバンが薄寒い笑い方をしたんだ。だから気になってね」
「急いで着替えてみんなのと「ミリア、お帰り!」」
ナナが真っ先に部屋に飛び込んできた。その後にマックスとガンツが続いてやって来た。
「ミリア、すげえ可愛いぜ。こんなドレス見た事ない」
ナナの目がハートマークになっている。
「ほー、ナナも女だなあ。ドレスに興味があんならちっと女らしくしたらどうだ?」
「うっせえ、ガンツは工房に籠って遊んでやがれ」
ナナはドスドスと音を立てて歩いて行き、何故か今日もマックスに蹴りを入れた。
「いってえ! ナナさん、なんで俺を蹴るんすか? やるならおやっさんでしょう?」
マックスが蹴られた脛を摩りながら抗議した。
「・・ガンツは丈夫過ぎて蹴ってもつまんねえんだよ」
ナナは嬉しかったり恥ずかしかったりするとマックスに八つ当たりしているように見えた。
(もしかしてナナさんは・・)
自分の事は鈍感すぎるがナナの気持ちには速攻で気づいたミリアだった。
「さて、みんなで飯でも食うか?」
「あの、だったら外食にしませんか? ねっ、カノンちゃん」
「あっ、いいの?」
以前カノンは自由になったら街に美味しいご飯を食べに行ってみたいと言っていた。
「ミリアちゃん、覚えててくれたんだ」
「勿論だよ、今日はカノンちゃんが一番食べたいものにしよう。みんなもそれで良いですか?」
全員一致で決まり大急ぎで着替えに走って行くカノンの後ろ姿をリンドが嬉しそうに見つめていた。
「俺様は森に帰る。じゃあまた森に遊びに来いよ、イヤ来てくれよな」
ケット・シーが空元気を出してドアに向かった。
「なんで帰るの? 一緒にご飯行こうよ」
ミリアが首を傾げて話しかけると、つんと横を向いたケット・シーは返事をしないで黙り込んでいる。
「・・友達で行けばいいだろ、俺様「ケット・シーはもう友達だよ?」」
パッと振り返ったケット・シーは目をうるうるとさせている。
「だっ、だったら俺様も・・俺様にも名前が欲しい。むっ無理にとは言わねえけど、ドリアードとか羨ましいなぁとか」
「私で良ければ何時でもいいよ」
「俺、俺様弱いしなんも役に立てねえし」
「ばーか、お前みたいなのを賑やかしって言うんだよ。特に何にもしなくても何となーく場を明るくしたり笑わせてくれる奴の事。それはそれで役に立ってんじゃね?」
「うわーん、ミリア! おっ俺、俺」
ぐしゃぐしゃの顔でケット・シーがミリアに飛びついてきたが、ミリアが両手で阻止した。
「ごめん、着替えるまで待って。ケット・シーの顔、涙と鼻水ですごい事になってるから」
「ひっひでえよー、ここは感動で抱き合うとこじゃねーのかよー」
ウォーカーがケット・シーの首根っこを後ろからつまみ上げた。
「ミリアと抱き合うだと? 百万年早い」
バリバリと放電がはじまっている。
「ひっ」
(わかったぞ、ピシピシはまだ大丈夫で、バリバリは危険に首を突っ込んだ時だな)
毛を逆立てて震えるケット・シーを観察しながらギルマスが状況分析していた。
「王様が泣かないのー、森の猫達に笑われるんだから。超カッコ悪い」
ずびっと鼻を啜り、
「俺様もお前とおんなじミリアの友達なんだぞ。カッコ悪いとか・・」
「ソフィアさーん」
カノンがソフィアを呼ぶ声が聞こえてきた。
「着替えの入ってる場所がわからないんだわ。ミリアちゃん一緒に行きましょう」
ガンツに無理矢理顔を洗われたケット・シーと、着替えを済ませたミリア達は意気揚々とギルドの一階に降りた。
そこには職員や冒険者達が大勢いていつも通りの賑わいを見せていた。
「おー、Sランクの登場だぜ!」
冒険者の誰かが声を上げるとおめでとうの声や拍手、指笛が鳴り響いた。
「騎士団の奴ら、ザマアミロってんだ」
「最近ギルマスがますます仕事サボってると思ってたけど、アンタ頑張ってたんだ。よしよししてやろうか?」
「ちびっこ冒険者バンザーイ」
「握手しようぜ。おっちゃん手洗ったばっかだからな」
沢山のお祝い? の言葉にお礼を言ったり手を振ったり。
何故か一番みんなに揉みくちゃにされて弄りまくられていたのは・・やっぱりギルマスだった。
「おい、髪をぐちゃぐちゃにすんな。俺は関係ねえんだ」
「おい、変なとこ触んな! ボコボコにすん・・うわっやめろ」
(みんなに愛されてるよね。冒険者に戻ってなんてやっぱり言えないよね)
ギルドの表に出ると仁王立ちした騎士団長が腕組みをして立っていた。
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