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アスカリオル帝国へ
77.ボケてんじゃねえのか?
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「まず一つ目。
今回オーガスタス宰相から王宮前広場への転移の指示がありましたが、まるで待ち構えていたかのように王太子達が広場に待機しておられた事。
二つ目。
広場から王宮までの道で狙いすましたかのようにミリアの乗った馬車だけが火矢で襲撃された事。
三つ目。
襲撃を目撃したはずの帝国騎士達が誰一人馬車を守ろうとせず、賊の討伐にも向かわなかった事。
四つ目。
襲撃から現在に至るまで何も話が出ない事」
セオドラが話す毎に皇帝の周りでピシピシと音が響き、皇帝の眉間に皺が寄ると同時に座り込んだままのオーガスタス宰相が震えはじめた。
「宰相、説明して貰おうか。余の王宮で襲撃事件があったと?」
「きっ聞いておりません。連絡が・・来ておりませんのでなっなん・・ひいっ」
皇帝に睨まれたオーガスタス宰相はずりずりと後退りをはじめた。
「騎士団か? 近衛か? どちらを動かした」
「こっ近衛騎士団です」
「団長を呼べ、すぐにだ!」
「次に宰相よ、ミリアを執拗に国に連れ帰りたがっている者達の前に随分タイミングよく転移させた。何故だ」
「ぞっ存じません、たまたま偶然が」
「その言葉に嘘はあるまいな」
「ルーバン、ミリアが転移してくると誰に聞いた。申せ」
「たまたまあの場所に居合わせました。騎士や馬車が待機していたので気になってその場にとどまっていただけです」
「余の前で嘘偽りを申せばどうなるか分かっておろうな」
「ほっ本当です」
「ならば、このタイミングで謁見を申し込んできた要件は何だ? ルーバン、答えぬか」
「・・」
「手配をしたのはオーガスタスであったな。此度の謁見にローデリアの者は含まれておらなんだのを、急に変更になったと申したのはオーガスタスであったな?
余はミリア達が希望していると聞いたがそのような様子はなさそうだが?」
「・・」
オーガスタスとルーバン達がガタガタと震えている。
謁見室の扉が開き近衛騎士リズバーン団長が入ってきた。
室内の異様な雰囲気に立ち竦んだ団長は、恐る恐る前に進みでて皇帝の前で片膝をついた。
「王宮前で何があったのか話せ」
「・・と申されますと?」
「ミリア達が乗った馬車が火矢による襲撃を受けたのではないか? 貴様はその時どこにいた」
「・・オーガスタス宰相から賊の討伐を行うので、手出し無用と指示が」
「ほう、近衛は余の配下だと思っておったが宰相の配下であったか」
皇帝が右手をあげると壁際に整列していた衛兵が団長を拘束し連れて行った。
「襲撃は貴様の発案か?」
「ちっ違います。あれはルーバン王太子が!」
「違う、私は関係ない! 証拠を見せろ、私がやったと言うなら証拠を出せ!」
「証拠なら出せるぜ」
「「へっ?」」
ギルマスがチラリとヴァンを見ると、仔犬が溜息をついたように見えた。
『つまらんのう、少しも楽しめなんだ』
部屋の隅に白い影が湧き起こり、拘束された六人の兵士と猫が現れた。その近くにはディーとアータルがふわふわと浮いている。
『兄者、もちっと手応えのある奴はおらんのか。少しも手応えがない』
『貴様が楽しんだら国が壊れる』
「これは面白い、ただの仔犬かと思おておったが。精霊はアレンのか?」
「ちがーう、あたし達はミリアの友達なのー」
目を輝かせている皇帝がミリアを振り返って話を聞こうとするとギルマスがミリアの前に立ち塞がった。
「それより兵士を尋問しろよ」
「ん? そうだった、忘れておったわ」
小声で「ボケてんじゃねえのか?」とブツブツ呟く通常運転のギルマスは周りが凍りついている事に気付いていなかった。
「ルカ、余はボケてなぞおらんわ!」
「ギルマス、せめてここではちゃんとした言葉遣いした方が良いと思う」
ミリアが正論を吐きセオドラ以外の全員が頷いた。
「だってこのおっさんにはすんげえ恨みが一杯あんだぜ。
冒険者だった頃でかい案件ばっかり見つけ出してはレイドを組むって言って引っ張り回されて、その度に酷え目にあったんだ。だよなセオドラ」
「だな、二度とやりたくねえ」
「ありゃ楽しかったなぁ、ルカがヒィヒィ言いながらドラゴンから逃げ回って。
アルラウネに惚れられて寝てる間に連れてかれてたってのもあったな。
見つけた時には蔦でぐるぐる巻きになってぎゃーぎゃー喚いてた。
その隙に見つけた素材は高く売れたんだよなあ」
「なっ、クソ親父だろ?」
兵士を尋問するとルーバン王太子たちの命令でミリアを襲った事が判明した。
その後の皇帝の決断は素早かった。素早過ぎた理由は、
「あれ、絶対飽きたんだよな。それより精霊やらヴァンやらが気になってそれどころじゃなくなったんだぜ」
これはギルマスの予想だが、全員満場一致で納得したのはその後皇帝がミリアを側に置いて手放そうとしなくなったから。
ウォーカーは全身からパチパチと放電し続けている。
ローデリア国王の一族全員と宰相は処刑、ミリアの断罪劇の時列席していた貴族達は領地縮小の上降爵されることに決まった。
アスカリオル帝国では宰相と近衛騎士団長が処刑、襲撃を目撃・放置した団員は降格又は除籍となった。
オーガスタス宰相はローデリアに騙されたんだと最後まで騒いでいたが、ルーバン王太子から賄賂を貰っていたことが後に発覚し処刑前の鞭打ち百回が追加された。
「闘技大会を開催しようと思う」
ミリアを隣に座らせた皇帝がとんでもない事を言い出した。
今回オーガスタス宰相から王宮前広場への転移の指示がありましたが、まるで待ち構えていたかのように王太子達が広場に待機しておられた事。
二つ目。
広場から王宮までの道で狙いすましたかのようにミリアの乗った馬車だけが火矢で襲撃された事。
三つ目。
襲撃を目撃したはずの帝国騎士達が誰一人馬車を守ろうとせず、賊の討伐にも向かわなかった事。
四つ目。
襲撃から現在に至るまで何も話が出ない事」
セオドラが話す毎に皇帝の周りでピシピシと音が響き、皇帝の眉間に皺が寄ると同時に座り込んだままのオーガスタス宰相が震えはじめた。
「宰相、説明して貰おうか。余の王宮で襲撃事件があったと?」
「きっ聞いておりません。連絡が・・来ておりませんのでなっなん・・ひいっ」
皇帝に睨まれたオーガスタス宰相はずりずりと後退りをはじめた。
「騎士団か? 近衛か? どちらを動かした」
「こっ近衛騎士団です」
「団長を呼べ、すぐにだ!」
「次に宰相よ、ミリアを執拗に国に連れ帰りたがっている者達の前に随分タイミングよく転移させた。何故だ」
「ぞっ存じません、たまたま偶然が」
「その言葉に嘘はあるまいな」
「ルーバン、ミリアが転移してくると誰に聞いた。申せ」
「たまたまあの場所に居合わせました。騎士や馬車が待機していたので気になってその場にとどまっていただけです」
「余の前で嘘偽りを申せばどうなるか分かっておろうな」
「ほっ本当です」
「ならば、このタイミングで謁見を申し込んできた要件は何だ? ルーバン、答えぬか」
「・・」
「手配をしたのはオーガスタスであったな。此度の謁見にローデリアの者は含まれておらなんだのを、急に変更になったと申したのはオーガスタスであったな?
余はミリア達が希望していると聞いたがそのような様子はなさそうだが?」
「・・」
オーガスタスとルーバン達がガタガタと震えている。
謁見室の扉が開き近衛騎士リズバーン団長が入ってきた。
室内の異様な雰囲気に立ち竦んだ団長は、恐る恐る前に進みでて皇帝の前で片膝をついた。
「王宮前で何があったのか話せ」
「・・と申されますと?」
「ミリア達が乗った馬車が火矢による襲撃を受けたのではないか? 貴様はその時どこにいた」
「・・オーガスタス宰相から賊の討伐を行うので、手出し無用と指示が」
「ほう、近衛は余の配下だと思っておったが宰相の配下であったか」
皇帝が右手をあげると壁際に整列していた衛兵が団長を拘束し連れて行った。
「襲撃は貴様の発案か?」
「ちっ違います。あれはルーバン王太子が!」
「違う、私は関係ない! 証拠を見せろ、私がやったと言うなら証拠を出せ!」
「証拠なら出せるぜ」
「「へっ?」」
ギルマスがチラリとヴァンを見ると、仔犬が溜息をついたように見えた。
『つまらんのう、少しも楽しめなんだ』
部屋の隅に白い影が湧き起こり、拘束された六人の兵士と猫が現れた。その近くにはディーとアータルがふわふわと浮いている。
『兄者、もちっと手応えのある奴はおらんのか。少しも手応えがない』
『貴様が楽しんだら国が壊れる』
「これは面白い、ただの仔犬かと思おておったが。精霊はアレンのか?」
「ちがーう、あたし達はミリアの友達なのー」
目を輝かせている皇帝がミリアを振り返って話を聞こうとするとギルマスがミリアの前に立ち塞がった。
「それより兵士を尋問しろよ」
「ん? そうだった、忘れておったわ」
小声で「ボケてんじゃねえのか?」とブツブツ呟く通常運転のギルマスは周りが凍りついている事に気付いていなかった。
「ルカ、余はボケてなぞおらんわ!」
「ギルマス、せめてここではちゃんとした言葉遣いした方が良いと思う」
ミリアが正論を吐きセオドラ以外の全員が頷いた。
「だってこのおっさんにはすんげえ恨みが一杯あんだぜ。
冒険者だった頃でかい案件ばっかり見つけ出してはレイドを組むって言って引っ張り回されて、その度に酷え目にあったんだ。だよなセオドラ」
「だな、二度とやりたくねえ」
「ありゃ楽しかったなぁ、ルカがヒィヒィ言いながらドラゴンから逃げ回って。
アルラウネに惚れられて寝てる間に連れてかれてたってのもあったな。
見つけた時には蔦でぐるぐる巻きになってぎゃーぎゃー喚いてた。
その隙に見つけた素材は高く売れたんだよなあ」
「なっ、クソ親父だろ?」
兵士を尋問するとルーバン王太子たちの命令でミリアを襲った事が判明した。
その後の皇帝の決断は素早かった。素早過ぎた理由は、
「あれ、絶対飽きたんだよな。それより精霊やらヴァンやらが気になってそれどころじゃなくなったんだぜ」
これはギルマスの予想だが、全員満場一致で納得したのはその後皇帝がミリアを側に置いて手放そうとしなくなったから。
ウォーカーは全身からパチパチと放電し続けている。
ローデリア国王の一族全員と宰相は処刑、ミリアの断罪劇の時列席していた貴族達は領地縮小の上降爵されることに決まった。
アスカリオル帝国では宰相と近衛騎士団長が処刑、襲撃を目撃・放置した団員は降格又は除籍となった。
オーガスタス宰相はローデリアに騙されたんだと最後まで騒いでいたが、ルーバン王太子から賄賂を貰っていたことが後に発覚し処刑前の鞭打ち百回が追加された。
「闘技大会を開催しようと思う」
ミリアを隣に座らせた皇帝がとんでもない事を言い出した。
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