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アスカリオル帝国へ

76.何故か罪が増えてる

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「黙りなさい! 陛下の御前で嘘偽りを申すつもりであろう。
陛下、この者は作れもしない薬を作れると偽りを申しそれを咎めた第二王子の薬に毒を! 陰湿で悪質極まりない女でございます」

「その上この女は国庫から横領までしていたのでございます。
連れ帰りそれらをどこへ隠したのか問いたださなくてはなりません。
恐らくはディエチミーラもそれに加担しているはず、全員を拘束してくださいませ」


 エスメラルダの次にイライザもミリアの罪を言い募る。

(何か罪が増えてるし、イライザはついでにアレンとリンドを狙ってるし)



 皇帝がルーバン達を睨んだ。
「余はミリアに聞いておる。其の方らの話はその後。ミリア、詳しく申してみよ」


「横領については今初めて聞きましたので、調べて頂きたいとしか申し上げられません。
私が調合致しましたのはごくありふれた塗り薬でございます。
それについては皇帝にご覧頂きたいものがございます。アイテムバックから出しても宜しいでしょうか?」

「構わぬ」

「陛下危険です、お下がりください。衛兵!」

 オーガスタス宰相が大声で騒ぎはじめたが、ミリアはそれを無視して両手に一つずつ記録装置を取り出した。


「下がれ! この後余の許しなく口を聞いた者はタダではおかん。良いな!」

 気の短い皇帝がとうとう広間中の者達を威嚇しはじめた。


 気の弱い者や魔力量の少ない者達は青褪めて座り込んだ。ルーバン・エスメラルダ・イライザ・モルガリウス・オーガスタス・その他にも書記官と侍従が。



「それはウォーカーが作った記録装置ではないか。直ぐにそれを見せてみよ」



 帝国の謁見室の壁に大写しになったローデリア王国の謁見の間。

 ミリアの目線で映し出されるそれには玉座の前で派手なドレス姿のライラを腕にぶら下げたネイサン第二王子と、周りに居並ぶ重鎮達がはっきりと映し出されていた。

 ミリアの断罪が続き拘束されたところで記録は終わったが、

「今ので何がわかると?」


 皇帝は首を傾げ、青褪めていたルーバン達がほっとした顔で皇帝を見上げた。

「今の記録の一部を大写しにさせて頂きます」

 記録が再び再生され、ネイサンが容器を高く掲げたところで大写しになった容器の蓋に書かれた文字がくっきりと映し出された。


 《水虫用塗り薬、一日三回》


「・・はあ? つまり其方は王子に水虫の薬を調合して国家反逆罪になったのか?」


 ぷっと一人が吹き出すと部屋中の者達が大爆笑した。

「つっ・・つまり・・ぐっぶわっはっは・・すまん・・ぐっわっはっは」


 皇帝の笑いは止まらず、部屋中の者達も涙を流しながら笑っている。


 ガウンを握りしめ真っ赤な顔で目を潤ませているミリアの頭をギルマスが撫で、反対側からウォーカーが肩を抱いた。




「ぐっゴホン、ミリア恥ずかしい・・ぐっ・・思いをさせて申し訳なかった」

 涙を拭いながら話しはじめた皇帝はまだ笑いを堪えている。


「陛下、ミリアはもう一つ記録を持っております。それを見て頂けますか?」

 場の雰囲気を変えるためにウォーカーが皇帝に話しかけた。

「うむ、見せて貰おう」



 次の記録では煉瓦造りの塔の中に錬金の道具が所狭しと並べられていた。

 ガチャガチャと音を響かせドアが開き、ローデリア国王とモルガリウス宰相が入ってきた。

 国王と宰相が全てを隠蔽し全てを終わらせようとし、それに抗議するミリアの声が聞こえてくる。
 一つ目の記録を取り上げようとミリアに手をあげるモルガリウス宰相や抜刀した護衛が映し出された。



「・・何と言う事を。国の長たる国王が我が子可愛さに罪を揉み消すなど言語道断、そこにおる宰相は一つ目の記録にも映っておったな!」

「ひいっ」


 皇帝の威圧・恫喝にモルガリウス宰相が悲鳴を上げ、辺りに異臭が漂いはじめた。



「わっ我々は知らなかったのです! この者が犯罪を犯したと報告を・・」

「調べたと申したのではなかったのか? ミリアが口を開く前に連れ帰ろうと随分必死だったが?」

 腕を組み冷たい目でルーバン達を睨みつける皇帝。


「全てはローデリアの愚かな国王と第二王子、そしてライラと宰相でございます。
この者達には厳しい罰を与えるとお約束致しますわ。
幸いルーバンは摂政として政務に励んでおります。国王の退位を含めて処罰はお任せ頂きたく」


「アレン、私は何も知らなかったのよ! どうか私を守ってちょうだい」

「何で俺が?」

「そんな、私の事愛しているのでしょう、意地悪言わないで」

「俺はアンタのことが大嫌いだ、一度も好意なんか持ったことない」


「嘘よ、エルフ私を助けなさい! そうしたら生かしておいてあげるわ。私の庇護の元可愛がってあげるから」

「断固お断りします。興味ありません」




 黙り込んでいたルーバン王太子が口を開いた。

「皇帝陛下、今回の不祥事・・王太子の名にかけて不正を正します。
ミリア嬢への謝罪も含め一度国に持ち戻りたいと思います。

ミリア、嫌な思いをさせてすまなかった。国に帰って詳しく話を聞かせて貰いたい。その上で今後について話し合おう」


「二度とローデリアには戻りません」

 ミリアが断言するとディエチミーラや他の面々も首を縦に振った。



「皇帝陛下、一つ宜しいでしょうか」

 セオドラが皇帝に向かい話しかけた。

「今回の謁見について幾つか気になることがございます。
まず一つ目・・」

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