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アスカリオル帝国へ
73.ソフィアの一喝
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「折り返し連絡すると言ってあるのですぐ戻って下さい」
ソフィアの声を聞きつけてセオドラとミリアとディエチミーラがやって来た。
テスタロッサは既にギルドにいるらしく姿が見えなかった。
「なんて言ってきた?」
ギルドへ戻りながらセオドラが聞いてきた。
「アスカリオルらしい傲慢な態度でした。犯罪者をSランクにするなんてギルドは何を考えているのかとか、皇帝の暗殺でも考えているのかとか。
怒鳴りまくっていました」
ソフィアがチラッとミリアを見て申し訳なさそうな顔をしたので、ミリアは“気にしないで欲しい” とにっこり笑って両手を振った。
「宰相のオーガスタスだな」
「はい、ソイツです」
怒りを隠しきれていないソフィアの仮面が取れかかっている。
「奴は臆病者で猜疑心の塊なんだ。一番面倒な奴が出てきたならかなりいい感じだな」
セオドラの言っていることの意味がわからずミリアが首を傾げると、ウォーカーが詳しく説明してくれた。
「宰相はね物凄くプライドが高くて普通ならギルドへの連絡なんて自分ではしてこないんだ。
いつだって些事は部下にさせて椅子に踏ん反り返ってる」
「それが出来ないほど慌ててるって事ね」
「皇帝が会いに行くとかすぐ連れて来いとか騒いでんじゃねえか?
とすると交渉次第では転移が使えるな」
ふと後ろを振り返るとヴァンが後ろをトコトコ歩いていた。
「ヴァン、一緒に来てくれるって事?」
『面白い事になってきおった』
「いざと言う時のためにヴァンがいてくれると心強いよ。宰相は何を仕出かすか分からないところがあるからね」
ギルマスの部屋に着くとテスタロッサが眉間に皺を寄せていた。
「相変わらずの最低野郎でした。アイツが宰相で居続けるなら帝国は長くありませんね」
通信の魔道具でアスカリオルへ連絡を入れると待つほどもなくオーガスタス宰相が出た。
『ギルドは何を考えておる。アスカリオル帝国に牙を剥くならば受けて立つぞ、覚悟は出来ておるのだろうな』
オーガスタス宰相は開口一番低い声で威嚇しはじめた。
「分かりました。それが帝国の決定であれば謁見の希望は取り下げさせていただきましょう。帝国はSランク冒険者に興味なしと。
では、これで」
セオドラが冷静に通信を切ろうとするとオーガスタスが怒鳴りはじめた。
『そのような事は言っておらんわ。皇帝陛下は謁見の許可を出された。
一刻も早く連れてまいれ』
「宜しいのですか? 先程宰相殿は我々に二心ありと申された。ギルド本部長としてはそれ相応の対応をするべきかと。
ギルドにとってSランク冒険者は非常に貴重な存在なので、もしもの事があれば私の首一つでは賄えません」
『えーい、くそ! わかっておるわ。さっさと連れてまいれ』
「しかしここからですとアスカリオル帝国の王宮へ参内するには早くて・・三日、いや四日はかかるかと」
『転移してまいれば良かろう! わしが許可を出してやる。王宮前の広場じゃ』
「では帝国の準備が整い次第ギルド本部へその旨ご連絡下さい。
我々は本部からの連絡が来次第転移いたします。
それならば行き違いもありません」
『煩わしい事を申すな! わしが来いと申したのじゃ、さっさと来れば良かろうが』
「それは出来かねます。広場の安全と準備が終わっているのか、我々には分かりかねますので」
『・・本部に連絡を入れる。覚えておれよ!』
いきなり通信が切れた。
「奴さん、なんか仕掛けてくる気だな」
ギルマスが珍しく腕を組んで厳しい顔をしている。
「広場に着いたら衛兵だらけとか」
「いや、それはねえな。それをやったら皇帝に言い訳が出来ねえ」
全員で頭を抱えたが何も思いつかなかった。
「出たとこ勝負でいんじゃね? ヴァンが来るならミリアに危害を加えるのは不可能だしよ。後の奴らはどうにでもなんだろ?
それよりリンドとカノンも連れて行こうぜ。ついでにパーティーメンバーのお披露目だ」
「謁見に向けて着替えをして下さいね。そんな小汚い格好のまま行くのは禁止です!」
テスタロッサがリンド達を迎えに走り出し、ソフィアがビシッとギルマスを指さした。
ミリアはソフィアに客室に連れ込まれ、大急ぎで湯浴みさせられた後ドレスに着替えさせられた。
「あの、私平民なんでこのドレスは不味いと思います」
「Sランクはギルドよりも王家よりも格は上になるの。
だからこれで良いのよ。平民スタイルで行ったら笑われちゃうわ」
ミリアが着替え終わってギルマスの部屋に行くと、男性陣は全員アビ・ア・ラ・フランセーズを着用していた。
ジュストコール・ジレ・キュロット・タイツ。
絹やビロードのジュストコールは胴部がほっそりと体に沿っており、ウエストから裾に向かって緩く開いている。
袖口には大きな折り返しがなされており、袖口のカフスはモール装飾や金・銀糸入りの打ち紐などで飾られていた。
ジレとジュストコールにはそれぞれ意匠を凝らした刺繍が施され、着ている人の性格や好みを表しているように見えた。
リンドとカノンは昨夜ナナが大急ぎで仕立てた絹のローブ姿。
真っ白な布地が足元まで柔らかなドレープを描き、腰には金糸を編み込んだベルトが緩く巻かれている。
リンドの長い髪は一本の三つ編みに結われ、カノンの髪にはテスタロッサの手で白い花飾りが飾られていた。
ミリアのドレスは淡い黄色のペチコートに薄紫のガウンを重ねたローブ・ア・ラングレーズ。
ガウンの裾とロビングスにはゴージャスな刺繍が施され、七分丈の袖口には繊細なレースが使われている。
ペチコートとストマッカーには小花を散らし、花の中央には小さなエメラルドが縫い付けられている。
ハーフアップにしたプラチナブロンドにはウォーカーに貰った小花をアレンジしたダイヤとエメラルドの髪飾りをつけ、首元のチョーカーにはペリに貰ったエメラルドが燦然と輝いていた。
男性陣はミリアを・・ミリアは男性陣を見て呆然としていた。
「ギルマス、さっきから通信具がジージー鳴ってますけど?」
ソフィアの声を聞きつけてセオドラとミリアとディエチミーラがやって来た。
テスタロッサは既にギルドにいるらしく姿が見えなかった。
「なんて言ってきた?」
ギルドへ戻りながらセオドラが聞いてきた。
「アスカリオルらしい傲慢な態度でした。犯罪者をSランクにするなんてギルドは何を考えているのかとか、皇帝の暗殺でも考えているのかとか。
怒鳴りまくっていました」
ソフィアがチラッとミリアを見て申し訳なさそうな顔をしたので、ミリアは“気にしないで欲しい” とにっこり笑って両手を振った。
「宰相のオーガスタスだな」
「はい、ソイツです」
怒りを隠しきれていないソフィアの仮面が取れかかっている。
「奴は臆病者で猜疑心の塊なんだ。一番面倒な奴が出てきたならかなりいい感じだな」
セオドラの言っていることの意味がわからずミリアが首を傾げると、ウォーカーが詳しく説明してくれた。
「宰相はね物凄くプライドが高くて普通ならギルドへの連絡なんて自分ではしてこないんだ。
いつだって些事は部下にさせて椅子に踏ん反り返ってる」
「それが出来ないほど慌ててるって事ね」
「皇帝が会いに行くとかすぐ連れて来いとか騒いでんじゃねえか?
とすると交渉次第では転移が使えるな」
ふと後ろを振り返るとヴァンが後ろをトコトコ歩いていた。
「ヴァン、一緒に来てくれるって事?」
『面白い事になってきおった』
「いざと言う時のためにヴァンがいてくれると心強いよ。宰相は何を仕出かすか分からないところがあるからね」
ギルマスの部屋に着くとテスタロッサが眉間に皺を寄せていた。
「相変わらずの最低野郎でした。アイツが宰相で居続けるなら帝国は長くありませんね」
通信の魔道具でアスカリオルへ連絡を入れると待つほどもなくオーガスタス宰相が出た。
『ギルドは何を考えておる。アスカリオル帝国に牙を剥くならば受けて立つぞ、覚悟は出来ておるのだろうな』
オーガスタス宰相は開口一番低い声で威嚇しはじめた。
「分かりました。それが帝国の決定であれば謁見の希望は取り下げさせていただきましょう。帝国はSランク冒険者に興味なしと。
では、これで」
セオドラが冷静に通信を切ろうとするとオーガスタスが怒鳴りはじめた。
『そのような事は言っておらんわ。皇帝陛下は謁見の許可を出された。
一刻も早く連れてまいれ』
「宜しいのですか? 先程宰相殿は我々に二心ありと申された。ギルド本部長としてはそれ相応の対応をするべきかと。
ギルドにとってSランク冒険者は非常に貴重な存在なので、もしもの事があれば私の首一つでは賄えません」
『えーい、くそ! わかっておるわ。さっさと連れてまいれ』
「しかしここからですとアスカリオル帝国の王宮へ参内するには早くて・・三日、いや四日はかかるかと」
『転移してまいれば良かろう! わしが許可を出してやる。王宮前の広場じゃ』
「では帝国の準備が整い次第ギルド本部へその旨ご連絡下さい。
我々は本部からの連絡が来次第転移いたします。
それならば行き違いもありません」
『煩わしい事を申すな! わしが来いと申したのじゃ、さっさと来れば良かろうが』
「それは出来かねます。広場の安全と準備が終わっているのか、我々には分かりかねますので」
『・・本部に連絡を入れる。覚えておれよ!』
いきなり通信が切れた。
「奴さん、なんか仕掛けてくる気だな」
ギルマスが珍しく腕を組んで厳しい顔をしている。
「広場に着いたら衛兵だらけとか」
「いや、それはねえな。それをやったら皇帝に言い訳が出来ねえ」
全員で頭を抱えたが何も思いつかなかった。
「出たとこ勝負でいんじゃね? ヴァンが来るならミリアに危害を加えるのは不可能だしよ。後の奴らはどうにでもなんだろ?
それよりリンドとカノンも連れて行こうぜ。ついでにパーティーメンバーのお披露目だ」
「謁見に向けて着替えをして下さいね。そんな小汚い格好のまま行くのは禁止です!」
テスタロッサがリンド達を迎えに走り出し、ソフィアがビシッとギルマスを指さした。
ミリアはソフィアに客室に連れ込まれ、大急ぎで湯浴みさせられた後ドレスに着替えさせられた。
「あの、私平民なんでこのドレスは不味いと思います」
「Sランクはギルドよりも王家よりも格は上になるの。
だからこれで良いのよ。平民スタイルで行ったら笑われちゃうわ」
ミリアが着替え終わってギルマスの部屋に行くと、男性陣は全員アビ・ア・ラ・フランセーズを着用していた。
ジュストコール・ジレ・キュロット・タイツ。
絹やビロードのジュストコールは胴部がほっそりと体に沿っており、ウエストから裾に向かって緩く開いている。
袖口には大きな折り返しがなされており、袖口のカフスはモール装飾や金・銀糸入りの打ち紐などで飾られていた。
ジレとジュストコールにはそれぞれ意匠を凝らした刺繍が施され、着ている人の性格や好みを表しているように見えた。
リンドとカノンは昨夜ナナが大急ぎで仕立てた絹のローブ姿。
真っ白な布地が足元まで柔らかなドレープを描き、腰には金糸を編み込んだベルトが緩く巻かれている。
リンドの長い髪は一本の三つ編みに結われ、カノンの髪にはテスタロッサの手で白い花飾りが飾られていた。
ミリアのドレスは淡い黄色のペチコートに薄紫のガウンを重ねたローブ・ア・ラングレーズ。
ガウンの裾とロビングスにはゴージャスな刺繍が施され、七分丈の袖口には繊細なレースが使われている。
ペチコートとストマッカーには小花を散らし、花の中央には小さなエメラルドが縫い付けられている。
ハーフアップにしたプラチナブロンドにはウォーカーに貰った小花をアレンジしたダイヤとエメラルドの髪飾りをつけ、首元のチョーカーにはペリに貰ったエメラルドが燦然と輝いていた。
男性陣はミリアを・・ミリアは男性陣を見て呆然としていた。
「ギルマス、さっきから通信具がジージー鳴ってますけど?」
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