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68.どんどん出てくるお宝

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「ニ本だけお譲りします。さっきギルマスが言った通り大勢の冒険者が薬頼りになったら、それを賄う程の量を作ることはできません。
公表するのも隠匿するのもお任せしますから本部長の裁量で使ってください。
でも次はないと覚えておいてくださいね。
今のところ私以外に作れる人はいないみたいですし、作り方を公表するつもりはありません」


「でも、ローデリアには教えたんでしょう?」

 諦めきれないテスタロッサが言い募った。



「それ、俺のせいなんだ」

 ロビンが話しはじめた。


「一年と三ヶ月前、俺達はローデリア王国からの依頼を受けて『モンストルムの森』の深部にある《失われた神殿》を攻略したんだ」

 その時ロビンが片腕を落とす大怪我をしてしまい、慌ててミリアの作ったエリクサーで欠損した腕を直して事なきを得た。

「それをローデリアの騎士に見られてしまって。
周りを確認するのを怠った俺のせいなんだ」


 薬の出所を知ろうとしたローデリアがロビンを拘束・拷問にかけたが、ウォーカー達がロビンを救い出す為に王宮に奇襲をかけようとしているのを知ったミリアが名乗り出た事でロビンを解放することができた。


「ローデリアには偶然の産物だからと言ってエリクサーをニ本だけ渡したの。
だから次を作らせようと必死になってるの」


「聞けば聞くほどローデリアはクソだな。よく無事でいられたな」


「私を拷問にかけたら薬が作れなくなる。ディエチミーラはあの後すぐ休止宣言をして身を隠したから奴等では見つけられなかったの」

「俺達はミリアを救い出す方法とローデリアが狙いそうな人達を逃す準備をしてたんだ」


 ミリアが逮捕されたと言う一報を聞いた直後、薬を卸していた商人達はローデリアを離れアスカリオル帝国へ逃れている。


「私はロビンに貰った転送の護符があったから兄さん達とは後から合流する事にしてたの」


「ハーミットはローデリアとそれほど仲が良くないはずだったから集合をここにしたんだけど上手くいかなかった。
商人達を引き連れていたから目立ってたのかもしれない。早い段階で見張りがついたんだ」

 ウォーカーがミリアを見ながら大きく肩をすくめた。

「でもウィレム商人さん達は上手く逃げられたしね」


「ギルマスがミリアに意地悪しなかったらとっととハーミットを出れたんだよねー」

 ディーがビシッと木の枝をギルマスに突きつけた。


「しょうがねえだろ、ちびすけは怪しさ満載だったんだからよ」

「そのお陰でみんなに会えたから良かったって事で」


「僕もミリアに会えたから嬉しかったです」

 ずっと黙って話を聞いていたリンドが声をかけてきた。

「俺も! ミリアに会いたかったから」

 マックスが手を挙げた。


「あらあら、ミリアったらモテモテじゃない。ギルマス、あんた頑張んないと一番おっさんじゃない」

「はあ? おっさんじゃねえし。なんで俺が頑張るんだよ」

「おっさんまではいってないような気がしますけど」

「ようなってなんだよ、俺はまだそんな歳じゃねえよ」



「ミリアやっさしー。あたしならとっくにこの杖でおっさ「ちょっと待ったー、それ何! なにを振り回してんの?」」


「おばさんには見せたげなーい。あたしの宝物だもん」

 ディーがユグドラシルの枝を振り回しながら逃げ回り、その後ろを髪を振り乱したテスタロッサが追いかけ回している。


「ねえ、ちょっとでいいから見せてー」

 ディーが空の高い所で杖を見せびらかしている。


「おばさんは敵! だからだーめ」

 テスタロッサはぴょんぴょんと飛び上がりながら枝に手を伸ばしている。

「お願い、ちょっとだけ。私は敵じゃないから」

「敵だもん、さっきミリアにしつこく薬を寄越せって言ってたじゃん!」

「あれは・・謝る・・だ・・から。はあはあ」

 息が切れて飛べなくなったテスタロッサを放置してディーがミリアのところに帰って来た。

「お仕置きしといた、ふふ」


 セオドラが呆然としてテスタロッサを見つめ、ミリアとギルマスが苦笑いしていた。

「あいつ、なんであんなに騒いでるんだ?」

 セオドラがギルマスの方に振り返って聞いてきた。

「ディーが持ってる枝がユグドラシルの枝だから」

 さらっと答えたギルマスにセオドラが絶句した。

「ミリアとお揃いなのー」


 ふわふわクルクルと回りながら枝を振るディーにテスタロッサがそろそろと近づいて来た。


「ミリアさんも持ってるの?」

「ガンツさんにワンドにしてもらいました」

「見せて! お願い、さっきのは謝るから!」


 ミリアはチラリとギルマスを見た後、ユグドラシルで作ったワンドをテスタロッサの前に出した。

「ちょっとだけ鑑定させてね」

 テスタロッサがワンドに触れた途端バチッと音がしてワンドが跳ねた。

「鑑定士がワンドに嫌われてるぜ」

 ゲラゲラと腹を抱えて笑うギルマスとセオドラに、テスタロッサが食ってかかった。

「笑う事ないじゃない。だったらセオドラが持ってみなさいよ!」


 セオドラが含み笑いをしながらワンドを手に持った。ギルマスが手を伸ばしてワンドをセオドラから受け取る。

「嫌われてんのはお前だけみたいだな」


「アンタが鑑定しようとするから嫌がっとる。持つだけなら出来るはずだぜ。
ユグドラシルはプライドが高いからな」

 ガンツの言葉を聞いてテスタロッサはミリアが持ったままの状態で鑑定を行った。

「ユグドラシルの枝とドラゴンの心臓の琴線、ヒヒイロカネ? うそ!」


「ああ、そいつに使ってくれたんだ。役に立ってる?」

 ウォーカーが嬉しそうに笑った。

「すごく使いやすいのよ。もう一つクリの木でも作ってもらったの」

「薬師垂涎のってやつです。ミリアにぴったりですね」

 グレイソンに杖を見せると「いい選択です」と言いながら頷いている。


「ガンツ、そのワンドって作り直し出来る?」

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