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ハーミット王国、ダンジョン
52.ラスボス、ラードーンの討伐証明
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ヴァンがヘイトを集めている間にディーが風魔法で一つずつ首を切っていった。
ミリアはクリの木のワンドを持ち、火魔法で切り口をしっかりと焼いていき・・。
最後の首が切り落とされヒュドラの身体が崩れ落ちて行ったが、切り落とされた最後の首がヴァンに襲い掛かった。
「「ヴァン!」」
ヴァンは大きく広げた口でヒュドラの首をパクりと飲み込んでしまう。
口の横からはチロチロと炎が揺らめいていた。
(太陽や月でさえ飲み込める口・・だったわ)
ヒュドラの身体から毒と素材を剥ぎ取り、階段を降りて行った。
「昨日ダンジョンに来たばっかりなのに、もうラスボスだよ。私達最強のパーティーじゃない?」
「神獣のヴァンと精霊のディー、向かう所敵なしね」
「ミリアだって知識と技術両方揃ってるし、何より土壇場でちっとも慌てないのが凄いよ。アレみてたらまだやれる! って気になるもん」
『其方はもう少し自信を持て』
五十階のラスボスは不死の百頭竜ラードーン。
黄金の林檎を眠らずに守っている百の頭を持ち尾に顎がある、身体全体が口であるというドラゴン。
色は茶色く口から炎を吐く力を持っている。
「ラードーンは毒に弱いの。コンポジット・ボウでヒュドラとバジリスクの毒を撃ち込むわ。
蜂の巣も弱点だって言うけど、流石に蜂は持って来れなかったから」
持って来れたら試したかったのか? と生ぬるい目でミリアを見つめたヴァンとディーだった。
扉を開けると口から大小様々な火を吐きながらラードーンが威嚇してきた。
「少しの間ここは任せてくれる?」
「いいよー」『分かった』
ヴァンとディーが部屋の隅に下がったのを確認して、ミリアは【シーウェイブ】でラードーンに向けて津波をおこした。
水が引いた後、ラードーンの百の頭からは火が消え大きく開けた口がはっきりと確認できた。
コンポジット・ボウに矢を番えてラードーンに向けて連射する。
ミリアの体力が尽きかける頃にはラードーンの頭はかなり数を減らしており、ヒュドラとバジリスクの毒で動きが緩慢になっていた。
ミリアは【アイスカッター】でラードーンの身体を切り裂いていった。
その後には黄金色に輝く林檎が一つ残されていた。
「ミリアすごーい、一人でラードーンをやっつけちゃった!」
空中でぴょんぴょん飛び跳ねるディー。
『うむ』
ヴァンは満足げな顔で頷いた。
床に座り込んだミリアの手は震え涙がこぼれ落ちた。
(兄さん、出来たよ)
最下層の水晶の前でミリア達は最後の休憩をとった。
「これに触ったら強制的に地上に戻されちゃうんでしょ?」
「うん、このダンジョンにいる冒険者達もみんな地上に戻されちゃう」
『ダンジョンの入り口と上の階には騎士団がウロウロしておる』
「昨日の今日だもんねー、二階とか三階とかを彷徨いてたりして」
『一番深く潜っておる者は十四階におるぞ。地形の変化に苦労しておるようだがな』
「へえ、意外に頑張ってるね」
ダンジョン入り口の記録石の異常に騎士団が気付いたのが昨日の昼前だった。
騎士団団長がギルドに釈明を求めたが、ギルマスはのらりくらりと躱し時間稼ぎをしていた。
ギルマスの態度に業を煮やした騎士団が、幾つかの隊に分かれダンジョンの捜索を決行したのが昨日の夕刻。
一般の冒険者は入り口で足止めを食らい、騎士団と一触即発の緊迫した状況になっている。
「だったら今出て行くと騎士団の真ん前ってこと?」
『だな』
「うわっ、超面白ーい? 行こう、すぐ行こうよ」
ディーの悪戯心が爆裂し、杖を振り回しながらくるくると飛び回っている。
『この後はどうする?』
「ギルドはどうなってるか分かる?」
ミリアの質問に目を閉じたヴァンが暫くして、
『騎士団が一階と二階に数人、ギルマスは団長と睨み合いをしておる』
「トレントの森は?」
『そこはいつも通り。ケット・シーが張り切っておって、ちと煩いが』
「じゃあ、ダンジョン完全攻略の報告ね。
ディーは姿を消しておいてくれる? トレントの森に興味を持たれると困るから」
ミリアが水晶に触れると辺り一面に光が溢れ目の前が真っ白になっていった。
少し淀んでいた空気が木や草の匂いに変わり、足元には乾いた土の感触がした。
ミリア達と同じ時に冒険者と騎士団の面々が転送されてきた。
「「「・・」」」
『すごーい、転送ってこんな感じなんだー』
ぽかんと口を開けた人達の中で、姿を消しているディーが一人大はしゃぎをしている。
「えっ、何だ?」
「まさか、ラスボスが攻略された?」
「ダンジョンが完全攻略?」
ポツポツと声が聞こえはじめた時、我に帰った騎士団員がミリアを見つけて剣を抜いた。
「ローデリアから逃亡中のAランク冒険者のミリアか?」
次々に剣がミリアを取り囲んだ。
「お仕事ご苦労様です」
にっこりと笑ったミリアと仔犬の姿がふっと消えた。
ダンジョンの前は状況を理解した冒険者達で大騒ぎになった。
「あの子が攻略したのか?」
「嘘だろ!」
「仔犬連れてたぞ! どうやって消えたんだ?」
騎士団員が「どけどけー」と喚きながら街へ走って行く。
冒険者達はその後ろ姿を見ながら勝鬨を上げた。
「やったー!」
「ざまぁ!」
「ちくしょー」
ミリア達はダンジョンの入り口からギルマスの部屋に転移した。
腕を組んだギルマスが眉間に皺を寄せてソファに座っており、その向かいに座る騎士団長と睨み合っている。
そして、壁際に二人の団員が並んで立っていた。
ミリアはクリの木のワンドを持ち、火魔法で切り口をしっかりと焼いていき・・。
最後の首が切り落とされヒュドラの身体が崩れ落ちて行ったが、切り落とされた最後の首がヴァンに襲い掛かった。
「「ヴァン!」」
ヴァンは大きく広げた口でヒュドラの首をパクりと飲み込んでしまう。
口の横からはチロチロと炎が揺らめいていた。
(太陽や月でさえ飲み込める口・・だったわ)
ヒュドラの身体から毒と素材を剥ぎ取り、階段を降りて行った。
「昨日ダンジョンに来たばっかりなのに、もうラスボスだよ。私達最強のパーティーじゃない?」
「神獣のヴァンと精霊のディー、向かう所敵なしね」
「ミリアだって知識と技術両方揃ってるし、何より土壇場でちっとも慌てないのが凄いよ。アレみてたらまだやれる! って気になるもん」
『其方はもう少し自信を持て』
五十階のラスボスは不死の百頭竜ラードーン。
黄金の林檎を眠らずに守っている百の頭を持ち尾に顎がある、身体全体が口であるというドラゴン。
色は茶色く口から炎を吐く力を持っている。
「ラードーンは毒に弱いの。コンポジット・ボウでヒュドラとバジリスクの毒を撃ち込むわ。
蜂の巣も弱点だって言うけど、流石に蜂は持って来れなかったから」
持って来れたら試したかったのか? と生ぬるい目でミリアを見つめたヴァンとディーだった。
扉を開けると口から大小様々な火を吐きながらラードーンが威嚇してきた。
「少しの間ここは任せてくれる?」
「いいよー」『分かった』
ヴァンとディーが部屋の隅に下がったのを確認して、ミリアは【シーウェイブ】でラードーンに向けて津波をおこした。
水が引いた後、ラードーンの百の頭からは火が消え大きく開けた口がはっきりと確認できた。
コンポジット・ボウに矢を番えてラードーンに向けて連射する。
ミリアの体力が尽きかける頃にはラードーンの頭はかなり数を減らしており、ヒュドラとバジリスクの毒で動きが緩慢になっていた。
ミリアは【アイスカッター】でラードーンの身体を切り裂いていった。
その後には黄金色に輝く林檎が一つ残されていた。
「ミリアすごーい、一人でラードーンをやっつけちゃった!」
空中でぴょんぴょん飛び跳ねるディー。
『うむ』
ヴァンは満足げな顔で頷いた。
床に座り込んだミリアの手は震え涙がこぼれ落ちた。
(兄さん、出来たよ)
最下層の水晶の前でミリア達は最後の休憩をとった。
「これに触ったら強制的に地上に戻されちゃうんでしょ?」
「うん、このダンジョンにいる冒険者達もみんな地上に戻されちゃう」
『ダンジョンの入り口と上の階には騎士団がウロウロしておる』
「昨日の今日だもんねー、二階とか三階とかを彷徨いてたりして」
『一番深く潜っておる者は十四階におるぞ。地形の変化に苦労しておるようだがな』
「へえ、意外に頑張ってるね」
ダンジョン入り口の記録石の異常に騎士団が気付いたのが昨日の昼前だった。
騎士団団長がギルドに釈明を求めたが、ギルマスはのらりくらりと躱し時間稼ぎをしていた。
ギルマスの態度に業を煮やした騎士団が、幾つかの隊に分かれダンジョンの捜索を決行したのが昨日の夕刻。
一般の冒険者は入り口で足止めを食らい、騎士団と一触即発の緊迫した状況になっている。
「だったら今出て行くと騎士団の真ん前ってこと?」
『だな』
「うわっ、超面白ーい? 行こう、すぐ行こうよ」
ディーの悪戯心が爆裂し、杖を振り回しながらくるくると飛び回っている。
『この後はどうする?』
「ギルドはどうなってるか分かる?」
ミリアの質問に目を閉じたヴァンが暫くして、
『騎士団が一階と二階に数人、ギルマスは団長と睨み合いをしておる』
「トレントの森は?」
『そこはいつも通り。ケット・シーが張り切っておって、ちと煩いが』
「じゃあ、ダンジョン完全攻略の報告ね。
ディーは姿を消しておいてくれる? トレントの森に興味を持たれると困るから」
ミリアが水晶に触れると辺り一面に光が溢れ目の前が真っ白になっていった。
少し淀んでいた空気が木や草の匂いに変わり、足元には乾いた土の感触がした。
ミリア達と同じ時に冒険者と騎士団の面々が転送されてきた。
「「「・・」」」
『すごーい、転送ってこんな感じなんだー』
ぽかんと口を開けた人達の中で、姿を消しているディーが一人大はしゃぎをしている。
「えっ、何だ?」
「まさか、ラスボスが攻略された?」
「ダンジョンが完全攻略?」
ポツポツと声が聞こえはじめた時、我に帰った騎士団員がミリアを見つけて剣を抜いた。
「ローデリアから逃亡中のAランク冒険者のミリアか?」
次々に剣がミリアを取り囲んだ。
「お仕事ご苦労様です」
にっこりと笑ったミリアと仔犬の姿がふっと消えた。
ダンジョンの前は状況を理解した冒険者達で大騒ぎになった。
「あの子が攻略したのか?」
「嘘だろ!」
「仔犬連れてたぞ! どうやって消えたんだ?」
騎士団員が「どけどけー」と喚きながら街へ走って行く。
冒険者達はその後ろ姿を見ながら勝鬨を上げた。
「やったー!」
「ざまぁ!」
「ちくしょー」
ミリア達はダンジョンの入り口からギルマスの部屋に転移した。
腕を組んだギルマスが眉間に皺を寄せてソファに座っており、その向かいに座る騎士団長と睨み合っている。
そして、壁際に二人の団員が並んで立っていた。
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