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ハーミット王国、ガンツの本領発揮
46.リンドとカノン
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(どうしよう、アルフヘイムに帰りたいって言われたら空の上だよね)
エルフがハーフエルフの手を引いて姿を表した。
エルフは伝説通り腰の近くまである白に近い金髪と明るい蒼眼で、真っ白な肌にはしみひとつない。
身につけている白いローブ風の衣装はあちこちに草や土の汚れがついている。
ハーフエルフの肌はエルフよりやや肌色が強く、鼻の辺りに金の粉を振ったようなそばかすが散らばっている。
「ドリアードに聞いたんだね。だった僕達がどんなに人間が嫌「言う訳ないじゃん、ディーは友達の秘密をしゃべったりしないもん!」」
エルフは真っ赤な顔で怒鳴るディーの剣幕に驚き目を大きく見開いた。
「・・そうだった。ごめん」
『我は神獣、我に隠し事は出来ぬ』
小さな仔犬が威厳たっぷりに言い放った。
(可愛いけど、迫力満点なのよね)
「だったら僕らをアルフヘイムに帰してくれるの?」
『それが其方の望みならば』
ミリアは思わず足元のヴァンを凝視した。
(えっ、ヴァン空飛べるの?)
「アルフヘイムなんてクソ喰らえだよ。あんなとこ二度と帰ってやるもんか」
ミリアはエルフに対して少しばかり親近感を覚えた。
(そう、私だってあんな国なんてクソ喰らえだわ)
エルフがミリアを睨んでいる。
「人間にできることなんて何にもないね。お前らは俺達を捕まえて奴隷にしたり殺したりするんだ」
背の高いエルフは小柄なミリアを文字通り見下ろして文句を言った。
「そう言う人がいるのは知ってる。でもそうじゃない人もいるわ。
みんながそんな酷い人だったら私はとっくに捕まってるもの」
「えっ? お前が?」
「にいちゃん、あれさわってもいい?」
ハーフエルフが兄の服の裾をくいくいと引っ張ってコンポジット・ボウを指差した。
「ダメだ、にいちゃんが確認してからじゃないと危ないからな」
「うん」
エルフはまるで昔のウォーカーを見ているよう。
妹を守るために必死になっているように見えた。
(多分兄さんも周りからあんな風に見えたんだろうな)
「あなた達が追放組なら私は脱走組なの。
冤罪で牢屋に拘束されて頭にきて逃げ出したから。
今は騎士団が街中を探し回ってる。懸賞首だけど匿ってくれてる人がいるの」
「へえ、そんな大変な時に呑気にここで遊んでるんだ。いい御身分だね」
エルフは整った美しい口を歪め嘲るように言い放った。
ディーが身を乗り出して抗議しようとしたが、フェンリルに止められた。
「この状況を変えるためにコンポジット・ボウの使い方を覚えないといけないの。
彼奴を権力の座から叩き落として自由を得るために」
「どうせそんなことできないよ。そう言うのって絵空事って言うんだ」
「いいえ、出来るし絶対に成功させる」
ミリアはキッパリとエルフの目を見て言い切った。
「俺達は安全な住処と自由が欲しい。アンタに準備できる?」
ミリアは考え込んだ。
エルフは精霊の一種と言われごく稀に人間界に現れる。
エルフの心臓を手に入れた者は永遠の命を手にすると言われ、捕まったら生きたまま心臓を抜かれたり奴隷として売り飛ばされたりしていると言う。
加えてエルフの類稀なる美しさから、捕まえてコレクションしようとする悪辣な好事家もいると言う。
確かに二人は薄汚れている今でさえ、この世のものとは思えない程美しい。
彼らが安全と自由を手に入れるために必要なもの・・必要なもの・・必要なもの。
「できるわ! 私にやらせて」
「は、どうやって? カノンはハーフエルフだし女の子だ。捕まったら俺よりもっと辛い目に遭う」
「気が付いたの。相手は違うけど手に入れたいと思うものは一緒って。安全と自由」
「ミイちゃん、よくわかんなよ。どう言うこと?」
「ドワーフはパーティーメンバーに登録できるの。だったらエルフだって登録できるはず。ディエチミーラに参加しても良いし、私達だけでパーティーを組んでも良いって事」
ディーがにっこり笑って宣言した。
「そうか、Sランクパーティーのメンバーになったら誰にも手出しさせない!」
「で、友達が増えたってか?」
「はい、宜しくお願いしますね。私、全力で頑張りますから」
「ったく、宜しくじゃねえよ。可愛い顔して頼みゃなんでも叶うと思うなよ」
「えっ、ダメですか?」
ミリアはギルマスを見上げて。
「だーっ、その顔禁止! いいか、禁止だ。
今回はなんとかできる、なんとかする。だから反則技を使うな!」
(あっ、そう言えばギルマスが可愛いって。兄さん達以外にはじめて言われた・・)
俯いてぽっと赤くなった頬を両手で抑えた。
エルフのお陰でコンポジット・ボウの扱いは格段に進歩した。
「腰が引けてる。基本の姿勢を保って」
「これじゃあ後から使いはじめたカノンの方がよっぽど上手いよ」
「ちょっと君には大きすぎるみたいだ。腕の力が足りない」
はじめは珍しい形の弓に懐疑的だったエルフも今では、
「どうすれば作れる? 素材は?」
いつかドワーフに会いたいと言い続けている。
エルフの名前はリンド、ハーフエルフはカノン。
二人はフレイの治める妖精の国アルフヘイムに住んでいたが、母が狩りの最中に命を落とした後人間とエルフの混血であるカノンが光のエルフ達に迫害されるようになった。
狩りの獲物を取り上げられて毎日腹を空かせ、とうとう家から出ることも儘ならなくなった二人は弓だけを持たされアルフヘイムから追放された。
地上に降りてからは二人を捕まえようとする人間から逃れる為各地を転々とし、半年前に漸くトレントの森を見つけた。
この森で小動物を狩り、木の実や果物を集め暮らしていた時にディーに出逢ったと言う。
エルフがハーフエルフの手を引いて姿を表した。
エルフは伝説通り腰の近くまである白に近い金髪と明るい蒼眼で、真っ白な肌にはしみひとつない。
身につけている白いローブ風の衣装はあちこちに草や土の汚れがついている。
ハーフエルフの肌はエルフよりやや肌色が強く、鼻の辺りに金の粉を振ったようなそばかすが散らばっている。
「ドリアードに聞いたんだね。だった僕達がどんなに人間が嫌「言う訳ないじゃん、ディーは友達の秘密をしゃべったりしないもん!」」
エルフは真っ赤な顔で怒鳴るディーの剣幕に驚き目を大きく見開いた。
「・・そうだった。ごめん」
『我は神獣、我に隠し事は出来ぬ』
小さな仔犬が威厳たっぷりに言い放った。
(可愛いけど、迫力満点なのよね)
「だったら僕らをアルフヘイムに帰してくれるの?」
『それが其方の望みならば』
ミリアは思わず足元のヴァンを凝視した。
(えっ、ヴァン空飛べるの?)
「アルフヘイムなんてクソ喰らえだよ。あんなとこ二度と帰ってやるもんか」
ミリアはエルフに対して少しばかり親近感を覚えた。
(そう、私だってあんな国なんてクソ喰らえだわ)
エルフがミリアを睨んでいる。
「人間にできることなんて何にもないね。お前らは俺達を捕まえて奴隷にしたり殺したりするんだ」
背の高いエルフは小柄なミリアを文字通り見下ろして文句を言った。
「そう言う人がいるのは知ってる。でもそうじゃない人もいるわ。
みんながそんな酷い人だったら私はとっくに捕まってるもの」
「えっ? お前が?」
「にいちゃん、あれさわってもいい?」
ハーフエルフが兄の服の裾をくいくいと引っ張ってコンポジット・ボウを指差した。
「ダメだ、にいちゃんが確認してからじゃないと危ないからな」
「うん」
エルフはまるで昔のウォーカーを見ているよう。
妹を守るために必死になっているように見えた。
(多分兄さんも周りからあんな風に見えたんだろうな)
「あなた達が追放組なら私は脱走組なの。
冤罪で牢屋に拘束されて頭にきて逃げ出したから。
今は騎士団が街中を探し回ってる。懸賞首だけど匿ってくれてる人がいるの」
「へえ、そんな大変な時に呑気にここで遊んでるんだ。いい御身分だね」
エルフは整った美しい口を歪め嘲るように言い放った。
ディーが身を乗り出して抗議しようとしたが、フェンリルに止められた。
「この状況を変えるためにコンポジット・ボウの使い方を覚えないといけないの。
彼奴を権力の座から叩き落として自由を得るために」
「どうせそんなことできないよ。そう言うのって絵空事って言うんだ」
「いいえ、出来るし絶対に成功させる」
ミリアはキッパリとエルフの目を見て言い切った。
「俺達は安全な住処と自由が欲しい。アンタに準備できる?」
ミリアは考え込んだ。
エルフは精霊の一種と言われごく稀に人間界に現れる。
エルフの心臓を手に入れた者は永遠の命を手にすると言われ、捕まったら生きたまま心臓を抜かれたり奴隷として売り飛ばされたりしていると言う。
加えてエルフの類稀なる美しさから、捕まえてコレクションしようとする悪辣な好事家もいると言う。
確かに二人は薄汚れている今でさえ、この世のものとは思えない程美しい。
彼らが安全と自由を手に入れるために必要なもの・・必要なもの・・必要なもの。
「できるわ! 私にやらせて」
「は、どうやって? カノンはハーフエルフだし女の子だ。捕まったら俺よりもっと辛い目に遭う」
「気が付いたの。相手は違うけど手に入れたいと思うものは一緒って。安全と自由」
「ミイちゃん、よくわかんなよ。どう言うこと?」
「ドワーフはパーティーメンバーに登録できるの。だったらエルフだって登録できるはず。ディエチミーラに参加しても良いし、私達だけでパーティーを組んでも良いって事」
ディーがにっこり笑って宣言した。
「そうか、Sランクパーティーのメンバーになったら誰にも手出しさせない!」
「で、友達が増えたってか?」
「はい、宜しくお願いしますね。私、全力で頑張りますから」
「ったく、宜しくじゃねえよ。可愛い顔して頼みゃなんでも叶うと思うなよ」
「えっ、ダメですか?」
ミリアはギルマスを見上げて。
「だーっ、その顔禁止! いいか、禁止だ。
今回はなんとかできる、なんとかする。だから反則技を使うな!」
(あっ、そう言えばギルマスが可愛いって。兄さん達以外にはじめて言われた・・)
俯いてぽっと赤くなった頬を両手で抑えた。
エルフのお陰でコンポジット・ボウの扱いは格段に進歩した。
「腰が引けてる。基本の姿勢を保って」
「これじゃあ後から使いはじめたカノンの方がよっぽど上手いよ」
「ちょっと君には大きすぎるみたいだ。腕の力が足りない」
はじめは珍しい形の弓に懐疑的だったエルフも今では、
「どうすれば作れる? 素材は?」
いつかドワーフに会いたいと言い続けている。
エルフの名前はリンド、ハーフエルフはカノン。
二人はフレイの治める妖精の国アルフヘイムに住んでいたが、母が狩りの最中に命を落とした後人間とエルフの混血であるカノンが光のエルフ達に迫害されるようになった。
狩りの獲物を取り上げられて毎日腹を空かせ、とうとう家から出ることも儘ならなくなった二人は弓だけを持たされアルフヘイムから追放された。
地上に降りてからは二人を捕まえようとする人間から逃れる為各地を転々とし、半年前に漸くトレントの森を見つけた。
この森で小動物を狩り、木の実や果物を集め暮らしていた時にディーに出逢ったと言う。
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