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ハーミット王国、ドワーフの里へ
35.ノッカーとの約束
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「にっ匂い? 甘い・・ジャム?」
ナナが真っ赤な顔をして挙動不審に陥った。
ノッカーがナナの近くに擦り寄りクンクンと匂いを嗅いでいる。
ナナは恥ずかしくてジリジリと後ろに下がっていくが、ノッカーはそれに合わせて近づいて行く。
「ノッカーは甘い匂いが好きなの?」
《うん、この匂いはね》
「ノッカー、ナナが恥ずかしがってる。ジャムなら持ってるからこっちに来て」
ミリアがジャムを出すとノッカーはクンクンと匂いを嗅ぎ、
《この子の匂いとは違うけどこれもいい匂い》
「よく分かったわね。これは別のドワーフに貰ったの。
ねえ、取引しない?」
《ジャムをくれるの?》
「私がボギーを追い払う。で、今まで通りノッカーはドワーフを助ける。
そしたら、ヒヒイロカネの10分の1をあげるし、ドワーフがここに来る時は時々ジャムを待ってくる」
ノッカーは目をパチパチさせてミリアを見つめた。暫く考え込んでいたが、
《一回追い払っただけじゃダメだよ。あいつはすぐ戻ってくるから》
「あれがなくなったらボギーはここに来なくなる。でしょ?」
《あれに手を出したら・・あいつが来ちゃう。そしたらみんな死んじゃうよ》
「大丈夫、ガンツはすっごく強いから。じゃあ契約成立ね。
さあ、片付けて出発しましょう」
ミリア一行はノッカーと別れ坑道を更に下に進んでいった。
「ミイ、あいつって誰?」
ナナが後ろを振り返り不安そうに訪ねて来た。
「デーウ、悪魔よ」
「ひっ! マジで? ミイちゃん、いくらガンツでも悪魔とは戦えないよ。
絶対ボロ負けする」
「悪魔対策はしてあるの、やっつけるのは無理でも追い払う事は出来るはず。
違うものが出て来た方が厄介かな?」
ミリアは飄々とした態度を崩さずナナに返事を返した。
「なあ、引き返した方が良くない? ノッカーとは何とかできそうだしよお」
怖気付いたグレンが後ろを気にしながら囁いた。
「ノッカーが引越しする前に何とかしなきゃ、一度いなくなったら戻ってこないでしょ?」
「だな。ノッカーが逃げ出してなかっただけ儲もんだ。俺っちはもういないもんだと思ってた。
戦いにビビってんならお前だけ帰れや。マックス、お前は?」
「俺はおやっさんやミイと一緒にいます」
「俺もいるぜ。女だからって舐めてたらボコボコにしてやる」
「・・俺だって、ドワーフの底力見せてやる」
「グレン・・お前の底はすぐ見えちまいそうだがな」
「いいじゃん、グレンやマックスが腰を抜かしやがったら俺が去勢ってやつをやってやる」
「ナナ、意味がわからんなら言うな」
坑道に入ってから一言も口を開かないフェンリルに不安になりながら、ミリア達は坑道の最深部に辿り着いた。
「ガンツさん、ここ」
ミリアが壁の一箇所を指し示した。
「厚さは?」
「多分十五センチくらい。中にペリの魔力と別の魔力を感じる。
壊れやすいものだと思うから気を付けて」
「ミイちゃん、ここに何があるの?」
「ボギーが隠して時々見張りに帰ってくる物よ。すごく高価で貴重なものだから絶対に壊せないの」
「ナナ、タイミングを合わせるぞ」
「うん」
「グレンとマックスは私と一緒に見張りをお願い。敵は姿を隠せるから気配に注意して」
二人が坑道の入り口に向かい、ミリアはガンツとナナの後ろに立った。
ガンツの合図でピッケルが振り下ろされた。カツンカツンとほんの少しずつ慎重に壁を削る。
「来る!」
ほんの僅かな気配だった。ボギーは音も立てず空気を揺らすこともなく忍び寄って来た。
ミリアが覚えたての【ライトエリア】を放った。ミリアを中心に金色の光が周りに溢れた。
皆息を殺して微動だにしない。
ミリアが頷くと、ガンツとナナが再び壁を壊し始めた。
「グレン、これを遠くに投げて」
ミリアが手渡したのは大小二つのエメラルド。
掛け声と共にグレンが宝石を投げると、『俺の!』と言う声と共に黒い毛の塊が姿を表しエメラルドを追いかけた。
「マックス!」「うん!」
マックスが魔法を付与された刀を片手に黒い毛玉を追いかけ、マックスの剣がボギーを二つに切り裂いた。
「今のところ他にはいないみたい」
引き続き警戒している後ろでバラバラと岩が崩れる音がして壁に穴が空いた。
「ナナ、穴を下に広げる。中に落とすなよ」
「ああ、任せとけ」
再びカツンカツン・バラバラと壁が壊されていった。
長い時間をかけて無事に大きな穴があき、ミリアが中に隠されていた物を引っ張り出した。
「綺麗、これは?」
「不老不死の花、急ぎましょう」
ミリアがアイテムバックにそれを入れて全員で帰り道を急いだ。
ノッカーと話をした休憩場所に着くとノッカーは先程の場所に座って待っていた。
《見つけたんだね、ボギーの気配もない》
「ええ、これでもうここにボギーが来る理由はなくなったと思うわ」
《凄い、ねぇ見せて見せて》
ぴょんぴょんと跳ねながらミリアに強請るノッカー。
「どれから見たい?」
《うーん、どれでもいいから全部見せて》
ミリアは石を掌に乗せてノッカーに差し出した。その石をガンツが凝視していた。
《綺麗だね、10分の1だよ。僕が割ってあげる》
ノッカーはキラキラの笑顔で手を差し出した。
「勿論約束だもの、ノッカーには10分の1の取り分よね。
だけどあなたにはあげられないわ。デーウ」
ナナが真っ赤な顔をして挙動不審に陥った。
ノッカーがナナの近くに擦り寄りクンクンと匂いを嗅いでいる。
ナナは恥ずかしくてジリジリと後ろに下がっていくが、ノッカーはそれに合わせて近づいて行く。
「ノッカーは甘い匂いが好きなの?」
《うん、この匂いはね》
「ノッカー、ナナが恥ずかしがってる。ジャムなら持ってるからこっちに来て」
ミリアがジャムを出すとノッカーはクンクンと匂いを嗅ぎ、
《この子の匂いとは違うけどこれもいい匂い》
「よく分かったわね。これは別のドワーフに貰ったの。
ねえ、取引しない?」
《ジャムをくれるの?》
「私がボギーを追い払う。で、今まで通りノッカーはドワーフを助ける。
そしたら、ヒヒイロカネの10分の1をあげるし、ドワーフがここに来る時は時々ジャムを待ってくる」
ノッカーは目をパチパチさせてミリアを見つめた。暫く考え込んでいたが、
《一回追い払っただけじゃダメだよ。あいつはすぐ戻ってくるから》
「あれがなくなったらボギーはここに来なくなる。でしょ?」
《あれに手を出したら・・あいつが来ちゃう。そしたらみんな死んじゃうよ》
「大丈夫、ガンツはすっごく強いから。じゃあ契約成立ね。
さあ、片付けて出発しましょう」
ミリア一行はノッカーと別れ坑道を更に下に進んでいった。
「ミイ、あいつって誰?」
ナナが後ろを振り返り不安そうに訪ねて来た。
「デーウ、悪魔よ」
「ひっ! マジで? ミイちゃん、いくらガンツでも悪魔とは戦えないよ。
絶対ボロ負けする」
「悪魔対策はしてあるの、やっつけるのは無理でも追い払う事は出来るはず。
違うものが出て来た方が厄介かな?」
ミリアは飄々とした態度を崩さずナナに返事を返した。
「なあ、引き返した方が良くない? ノッカーとは何とかできそうだしよお」
怖気付いたグレンが後ろを気にしながら囁いた。
「ノッカーが引越しする前に何とかしなきゃ、一度いなくなったら戻ってこないでしょ?」
「だな。ノッカーが逃げ出してなかっただけ儲もんだ。俺っちはもういないもんだと思ってた。
戦いにビビってんならお前だけ帰れや。マックス、お前は?」
「俺はおやっさんやミイと一緒にいます」
「俺もいるぜ。女だからって舐めてたらボコボコにしてやる」
「・・俺だって、ドワーフの底力見せてやる」
「グレン・・お前の底はすぐ見えちまいそうだがな」
「いいじゃん、グレンやマックスが腰を抜かしやがったら俺が去勢ってやつをやってやる」
「ナナ、意味がわからんなら言うな」
坑道に入ってから一言も口を開かないフェンリルに不安になりながら、ミリア達は坑道の最深部に辿り着いた。
「ガンツさん、ここ」
ミリアが壁の一箇所を指し示した。
「厚さは?」
「多分十五センチくらい。中にペリの魔力と別の魔力を感じる。
壊れやすいものだと思うから気を付けて」
「ミイちゃん、ここに何があるの?」
「ボギーが隠して時々見張りに帰ってくる物よ。すごく高価で貴重なものだから絶対に壊せないの」
「ナナ、タイミングを合わせるぞ」
「うん」
「グレンとマックスは私と一緒に見張りをお願い。敵は姿を隠せるから気配に注意して」
二人が坑道の入り口に向かい、ミリアはガンツとナナの後ろに立った。
ガンツの合図でピッケルが振り下ろされた。カツンカツンとほんの少しずつ慎重に壁を削る。
「来る!」
ほんの僅かな気配だった。ボギーは音も立てず空気を揺らすこともなく忍び寄って来た。
ミリアが覚えたての【ライトエリア】を放った。ミリアを中心に金色の光が周りに溢れた。
皆息を殺して微動だにしない。
ミリアが頷くと、ガンツとナナが再び壁を壊し始めた。
「グレン、これを遠くに投げて」
ミリアが手渡したのは大小二つのエメラルド。
掛け声と共にグレンが宝石を投げると、『俺の!』と言う声と共に黒い毛の塊が姿を表しエメラルドを追いかけた。
「マックス!」「うん!」
マックスが魔法を付与された刀を片手に黒い毛玉を追いかけ、マックスの剣がボギーを二つに切り裂いた。
「今のところ他にはいないみたい」
引き続き警戒している後ろでバラバラと岩が崩れる音がして壁に穴が空いた。
「ナナ、穴を下に広げる。中に落とすなよ」
「ああ、任せとけ」
再びカツンカツン・バラバラと壁が壊されていった。
長い時間をかけて無事に大きな穴があき、ミリアが中に隠されていた物を引っ張り出した。
「綺麗、これは?」
「不老不死の花、急ぎましょう」
ミリアがアイテムバックにそれを入れて全員で帰り道を急いだ。
ノッカーと話をした休憩場所に着くとノッカーは先程の場所に座って待っていた。
《見つけたんだね、ボギーの気配もない》
「ええ、これでもうここにボギーが来る理由はなくなったと思うわ」
《凄い、ねぇ見せて見せて》
ぴょんぴょんと跳ねながらミリアに強請るノッカー。
「どれから見たい?」
《うーん、どれでもいいから全部見せて》
ミリアは石を掌に乗せてノッカーに差し出した。その石をガンツが凝視していた。
《綺麗だね、10分の1だよ。僕が割ってあげる》
ノッカーはキラキラの笑顔で手を差し出した。
「勿論約束だもの、ノッカーには10分の1の取り分よね。
だけどあなたにはあげられないわ。デーウ」
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