上 下
23 / 149
逃走、ハーミット王国へ

21.頭を抱えるギルマス

しおりを挟む
「じゃあ、ドリアードとトレント呼んでくるわね」

「行かなくてもいい。おい! ドリアードいるんだろ。出てこいよ!」

 ケット・シーが怒鳴ると少し離れた場所にふわっとドリアードが現れた。

(あっ、やっぱ可愛い)

「うるさいわね、怒鳴らないでよね」


「ドリアード、トレント達に戻って来れるよって連絡したいの」

 ミリアが言うと、えっへん! と胸を張ったドリアードが、

「もうこっちに移動してる。でも、ここ凄く臭い」

 確かに、猫のおし○このにおいがする。

「じゃあ、私が綺麗にするね。これからは別の所でして貰えばいいし」

 ミリアは何度も場所を移動しながらクリーンの魔法をかけていった。


 ザワザワと音がしはじめトレントが戻って来た。

「言っとくけど、ミリアとは知り合いじゃなくて友達だからね」

「ありがとう」

「こっちこそ、ありがとう。ここの場所好きだったの」

 頬を赤く染めて含羞はにかむドリアードは超絶美少女だった。
 それを見たケット・シーが顔を赤らめたような気がした。


(黒猫だから分かんないけどね、なんとなくそんな気がしたのよね)


「大変! ネトルの葉を採取して帰らなくちゃ。馬車に乗り遅れちゃう」

 ミリアが慌てると、

「あたしが送ったげる! だから、あたしにもコンフェッティちょうだい」





 馬車に乗り遅れたミリアだったが、ドリアードのお陰でネトルの葉を採取して街の関所前に辿り着いた。


 突然現れたミリアを見た関所の兵士が驚いて、
「お前今どこから出てきた?」

「あっ、えー。私ちっこいから見えなかったのかも」

「そうか、そうだよな。突然現れたのかと思って吃驚した」

「はは、まさか」




 ギルドの入り口のドアを開けると大勢の冒険者がいて、小柄なミリアからはカウンターが見えなかった。

 巨大な冒険者の横をすり抜け、大楯を持った巨人を躱して・・漸くカウンターに辿り着いた。
 ミリアが短めの列に並ぶと、ソフィアがこっちに並べと手で合図をしてきた。


「完了報告したいんですが?」

 ネトルの葉をカウンターの上に乗せると、ソフィアの仮面が外れた。

「とっトレントは?」

「いなくなりました。で、それも完了報告です」

「はあ? ちょーっと待っててくれる?」

(すっごくやな予感がする・・)


 ソフィアが二階に駆け上がって行った。

(やっぱり)


「ちび! 上がってこい! ん? 逃げたか?」

(はあ、やっぱり。逃げてないし、登録名はミイだし)


 渋々階段を登ってギルマスの部屋に入った。

「トレント討伐完了だと?」

 ソファを指差しながらギルマスが怒鳴った。

「討伐してません。元の住処に帰りました」

「・・さっぱりわからん」

「トレントって元々余程のことがない限り住処は変えないじゃないですか。
だから元の住処に帰ってもらっただけです」

「どうやって? それから後ろのそれは何だ?」

 吃驚して後ろを振り返るとドリアードがふわふわ浮かんでいた。

「どうしたの? 何かあった?」

「面白そうだからついてきたの」


 ミリアはギルマスの方に向き直り、

「だそうです」

「じゃねえよ! お前は精霊使いか?」

「まさか、この子は友達です」

 堂々と宣言したミリアの後ろでドリアードが頷いている。

「そう、友達になったの。ケット・シーも友達だって言い張ってる」

「・・」

 ギルマスが頭を抱えた。

「それはともかく、これで二件と言う事ですよね」

「何が? あっ、ああそうだな。ぶったまげすぎて忘れてた」


 ミリアは立ち上がり、「そう言う事で」と言いながら部屋を後にした。


「昼から出かけて夕方までにトレント討伐・・引っ越しさせてきた。
訳わかんねえ」




 ギルドを出たミリアは宿に戻ることにした。
 ドリアードの姿は見えないので帰ったのか姿を隠しているのか、どうも後者の気がする。

 宿は二日分の宿代しか払っていないので、もう一週間分の宿代を前払いしておいた。


 部屋に戻ると案の定ドリアードが姿を現した。

「なんにもないとこね、ここに住んでるの?」

「ここは宿と言って、仮の住まいって感じかしら。荷物は全部アイテムバックに入っているの」

「ふうん、ねえこれからどうするの? ずっとここにいる訳じゃないんでしょ?」

「ええ、ここでもう暫く依頼を受けたら別の国に行く予定なの。その国で仲間に会えるはず」

「どうして直ぐに行かないの? なんで家に帰らないの?」


 ミリアはドリアードに今までの経緯と現状、今後の予定を簡単に説明した。

「酷い! ローデリア最低、ぶっ潰してあげようか?」

 真っ赤な顔でプンプンと怒りまくるドリアードは右に左にと瞬間移動している。


(えっ? 出来るの? 精霊って凄い)


「自分の手でやり返すつもりだから」

「楽しみ~。頑張ってね」

「ありがとう、一人も許さないから」

「うん、それとここから移動出来ないのは今日会ったおじさんのせいって事ね。
今日のお礼にぶっ飛ばしとけば良かった」


「ありがとう、それは気にしないで」

「ところで、Bランクって何?」

「魔物の強さのことよ」


「ふむ、だったらあたしが手伝ったげるわ」





(ドリアードとパーティー組んだって事?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?

田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。 受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。 妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。 今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。 …そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。 だから私は婚約破棄を受け入れた。 それなのに必死になる王太子殿下。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...