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逃走、ハーミット王国へ
18.ミリアVSギルマス
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ギルマスは機嫌が悪い、ものすごーく機嫌が悪い。
ミリアがニコニコしている、そのせいでとてつもなく機嫌が悪い。
「Cランクがそんなに嬉しいか?」
(これで兄さん・・みんなに会える)
あの失敗したファイアボール一発で自由が手に入ったミリアは超ご機嫌だった。
「ちび、訓練場ぶっ壊れたんだぞ」
「はい、そうですね」
(ふふん)
「聞いちゃいねえ」
「はい、そうですね」
(ふふん)
「お前はまだ街から出れねえ」
「はい、そー・・えっ? 何でですか? Cランクですよね。だったら、お出入り自由ですよね。理由を教えて下さい!」
ミリアは立ち上がりギルマスを睨みつけた。
「なんかムカつくから」
ついさっきまで眉間に皺を寄せていたギルマスが悪どい顔で笑っている。
脳内に『ふふん』と言う声が響いていそうだ。
「・・はあ?」
「ちび、お前ギルドのランクについてずいぶん詳しいんだな」
抗議するつもりでどすんと音を立ててソファに座ったつもりのミリアだが、小柄なのが災いしてちょこんと座っただけに終わった。
「知り合いに冒険者がいましたから」
「ふーん、そうかー。その辺の話ゆっくり聞きてえなー」
「ギルマスには面白くない話ですから」
「あのファイアボール・・なーんかおかしかったんだよなー」
それまでふんぞり返って腕組みしていたギルマスが前のめりになってニヤついている。
「ぐっ」
「あん時なんか持って必死な顔で走ってきたのが見えたんだよなー」
「その語尾を伸ばすの、やめてもらえませんか? なんかムカつく」
「暫くはここで依頼をこなせ。でないとギルドカードは剥奪する。
それとも、ちびが隠してることを話すか?」
「・・分かりました。薬草採取してきます」
ガックリと項垂れたミリアはしおしおと立ち上がりった。挨拶をして部屋を出ようとすると、
「別に薬草採取じゃなくても、ちびなら討伐でもなんでも出来んだろ?」
「いえ、私に出来るのは薬草を見つける事だけです。
依頼を見にいくので失礼します」
「だー、ちび! こっち来て座れ! このままじゃちっちゃいガキを虐めたみたいで寝覚めが悪い」
「(虐めたから、みたいじゃないから。期待させといて!)
薬草採取は得意なんでポイント頑張って貯めます。
元々そのつもりだったので」
渋々ソファの隅に腰掛けた。
「それだけじゃ時間かかりすぎんだろうがよ。早く出てきたいんじゃねえのか?」
「別に? 急いでないです」
「なあ、薬草採取しかしないんなら何であんなにレベルも上がってんだ?」
「薬草採取してると魔物が出てくる事もあるので」
希少な薬草の採取に行くと結構な確率で強力な魔物に遭遇する。
まるで薬草を守っているのかと思うくらいに。
「なら魔物もやっつけれるって事だろ?」
「ちょっぴりなら出来ます」
『モンストルムの森』は希少な薬草の宝庫だったし、貴重な素材が歩き回っていた。
「この街の近くにダンジョンがある。行ってみねえか?」
「いえ、私では無理です」
(それに、通行証代わりのギルドカードが欲しいだけだし)
森を抜けるためには貰った護符を使ったし、貰った魔道具があったし・・あのキング戦がもう一度あったら森を抜けられた気がしない。
「今度大きなレイドがあのダンジョンを攻略する。参加してみないか? 冒険者だろ?」
「足を引っ張るだけです。それに、私は・・薬師です」
情報を漏らすのは不安だが仕方がない。
国を挙げてひとりの薬師を探しているとなると興味を持つものが現れるだろう。だから、王国はその情報は絶対外には出さないはず。
ただ、どこか別の人から漏れる可能性は残っている。
(切り札はこちらが持っている、多分だけど)
「薬草採取か、だから木の枝?」
「まあ、そうですね。
極力手は空けておきたいので」
「分かってないが分かった。何となくな。
薬草採取と近くに現れた魔物の討伐、これを何回かやったらお出入り自由だ」
「何回ですか?」
「そりゃ討伐した魔物にもよる。ゴブリン連れてきて一件にカウントされちゃ話にならんからな」
「だったら魔物のランクは何以上?」
「Bだな」
「結構厳しいですけど、B以上なら何回ですか?」
「・・えっ?(マジで受けんの?)うーん、そうだな、十件」
「この辺りにそんなにいるんですか? Bランク以上が」
「結構いるぜ。だから冒険者ギルドは大繁盛だ」
「ダンジョンのせいで大繁盛なんだと思ってました」
「そっちのが確かに多いな」
「Aランクは二件にカウントして下さい。では失礼します」
ミリアが部屋を出ると、
「Bランク、サラッと受けてったよ。
普通はビビるけどな・・しかもAランクだと?」
ギルドの一階に降りて依頼のボードを見に行くと、冒険者達がミリアを遠巻きにジロジロと見ている。
その後カウンターに行きソフィアに声をかけた。
「薬草採取ね、ネトル・・今は結構大変よ」
「受けられますか?」
「それは大丈夫だけど、近くには強力な魔物がいるから」
仮面を完璧に被ったソフィアが心配してくれた。
ネトルは《利尿・浄血》の効果がある毒薬草の一つ。
棘のある葉や茎に注意が必要で引き付けや嘔吐が起きる事も。
「最近Cランクのトレントが住み着いたの。複数ならB判定になる魔物よ。
討伐依頼も出てるし、流石にソロでは厳しいと思うわ」
「討伐ではなくて駆逐でも構いませんか?」
「トレントはなかなか住処を変えないけど、出来るならそれでも構わないわ」
「討伐依頼も受けていきます。
ありがとうございました」
依頼書を持ってギルドを出た。次は関所に行って正式な滞在証明書をもらおう。
(今回の狙いはトレントではなくドリアード)
ミリアがニコニコしている、そのせいでとてつもなく機嫌が悪い。
「Cランクがそんなに嬉しいか?」
(これで兄さん・・みんなに会える)
あの失敗したファイアボール一発で自由が手に入ったミリアは超ご機嫌だった。
「ちび、訓練場ぶっ壊れたんだぞ」
「はい、そうですね」
(ふふん)
「聞いちゃいねえ」
「はい、そうですね」
(ふふん)
「お前はまだ街から出れねえ」
「はい、そー・・えっ? 何でですか? Cランクですよね。だったら、お出入り自由ですよね。理由を教えて下さい!」
ミリアは立ち上がりギルマスを睨みつけた。
「なんかムカつくから」
ついさっきまで眉間に皺を寄せていたギルマスが悪どい顔で笑っている。
脳内に『ふふん』と言う声が響いていそうだ。
「・・はあ?」
「ちび、お前ギルドのランクについてずいぶん詳しいんだな」
抗議するつもりでどすんと音を立ててソファに座ったつもりのミリアだが、小柄なのが災いしてちょこんと座っただけに終わった。
「知り合いに冒険者がいましたから」
「ふーん、そうかー。その辺の話ゆっくり聞きてえなー」
「ギルマスには面白くない話ですから」
「あのファイアボール・・なーんかおかしかったんだよなー」
それまでふんぞり返って腕組みしていたギルマスが前のめりになってニヤついている。
「ぐっ」
「あん時なんか持って必死な顔で走ってきたのが見えたんだよなー」
「その語尾を伸ばすの、やめてもらえませんか? なんかムカつく」
「暫くはここで依頼をこなせ。でないとギルドカードは剥奪する。
それとも、ちびが隠してることを話すか?」
「・・分かりました。薬草採取してきます」
ガックリと項垂れたミリアはしおしおと立ち上がりった。挨拶をして部屋を出ようとすると、
「別に薬草採取じゃなくても、ちびなら討伐でもなんでも出来んだろ?」
「いえ、私に出来るのは薬草を見つける事だけです。
依頼を見にいくので失礼します」
「だー、ちび! こっち来て座れ! このままじゃちっちゃいガキを虐めたみたいで寝覚めが悪い」
「(虐めたから、みたいじゃないから。期待させといて!)
薬草採取は得意なんでポイント頑張って貯めます。
元々そのつもりだったので」
渋々ソファの隅に腰掛けた。
「それだけじゃ時間かかりすぎんだろうがよ。早く出てきたいんじゃねえのか?」
「別に? 急いでないです」
「なあ、薬草採取しかしないんなら何であんなにレベルも上がってんだ?」
「薬草採取してると魔物が出てくる事もあるので」
希少な薬草の採取に行くと結構な確率で強力な魔物に遭遇する。
まるで薬草を守っているのかと思うくらいに。
「なら魔物もやっつけれるって事だろ?」
「ちょっぴりなら出来ます」
『モンストルムの森』は希少な薬草の宝庫だったし、貴重な素材が歩き回っていた。
「この街の近くにダンジョンがある。行ってみねえか?」
「いえ、私では無理です」
(それに、通行証代わりのギルドカードが欲しいだけだし)
森を抜けるためには貰った護符を使ったし、貰った魔道具があったし・・あのキング戦がもう一度あったら森を抜けられた気がしない。
「今度大きなレイドがあのダンジョンを攻略する。参加してみないか? 冒険者だろ?」
「足を引っ張るだけです。それに、私は・・薬師です」
情報を漏らすのは不安だが仕方がない。
国を挙げてひとりの薬師を探しているとなると興味を持つものが現れるだろう。だから、王国はその情報は絶対外には出さないはず。
ただ、どこか別の人から漏れる可能性は残っている。
(切り札はこちらが持っている、多分だけど)
「薬草採取か、だから木の枝?」
「まあ、そうですね。
極力手は空けておきたいので」
「分かってないが分かった。何となくな。
薬草採取と近くに現れた魔物の討伐、これを何回かやったらお出入り自由だ」
「何回ですか?」
「そりゃ討伐した魔物にもよる。ゴブリン連れてきて一件にカウントされちゃ話にならんからな」
「だったら魔物のランクは何以上?」
「Bだな」
「結構厳しいですけど、B以上なら何回ですか?」
「・・えっ?(マジで受けんの?)うーん、そうだな、十件」
「この辺りにそんなにいるんですか? Bランク以上が」
「結構いるぜ。だから冒険者ギルドは大繁盛だ」
「ダンジョンのせいで大繁盛なんだと思ってました」
「そっちのが確かに多いな」
「Aランクは二件にカウントして下さい。では失礼します」
ミリアが部屋を出ると、
「Bランク、サラッと受けてったよ。
普通はビビるけどな・・しかもAランクだと?」
ギルドの一階に降りて依頼のボードを見に行くと、冒険者達がミリアを遠巻きにジロジロと見ている。
その後カウンターに行きソフィアに声をかけた。
「薬草採取ね、ネトル・・今は結構大変よ」
「受けられますか?」
「それは大丈夫だけど、近くには強力な魔物がいるから」
仮面を完璧に被ったソフィアが心配してくれた。
ネトルは《利尿・浄血》の効果がある毒薬草の一つ。
棘のある葉や茎に注意が必要で引き付けや嘔吐が起きる事も。
「最近Cランクのトレントが住み着いたの。複数ならB判定になる魔物よ。
討伐依頼も出てるし、流石にソロでは厳しいと思うわ」
「討伐ではなくて駆逐でも構いませんか?」
「トレントはなかなか住処を変えないけど、出来るならそれでも構わないわ」
「討伐依頼も受けていきます。
ありがとうございました」
依頼書を持ってギルドを出た。次は関所に行って正式な滞在証明書をもらおう。
(今回の狙いはトレントではなくドリアード)
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