41 / 41
41.大団円
しおりを挟む
「この現場は信じられない程環境が整っています。お陰で病人や怪我人も少なくて、鉱夫達の人気なんです。本当にありがとうございます」
「そう言って頂けると嬉しいです。無理な採掘は望んでいないので、これからもよろしくお願いします」
ロクサーナが鉱夫のチャールズを連れて行く事を話し手続きを行っていると、部屋の片付けを終えたチャールズが小振りのカバンを一つ持ってやってきた。
「リアム王子殿下、ご無沙汰しております」
深々と頭を下げたチャールズにリアムは返事すらしない。
「よお、チャールズがいなくなるのは痛いがしょうがない。アンタならどこでもやってけるしな」
「お世話になりました」
「さて、これ以上遅くなったら不味いだろうから出発しようか」
リアムが無愛想に言い立ち上がった。
事務所にいた現場監督や事務員がチャールズの見送りに来てくれた。遠くから手を振っている人もいて、チャールズは片手を上げている。
「挨拶に行って来ても良いですよ」
ロクサーナが声をかけると少し迷っていたが『すみません』と言ってチャールズが走って行った。
「結構人気者だったんで」
現場監督が言うように何人もの鉱夫が走ってきてチャールズの肩を叩いたり握手したりしている。
別れを告げたチャールズが戻ってきてロクサーナやリアムと一緒に馬車に乗り込みガタゴトと馬車が走りはじめた。
「アルマンに宿をとっているので今夜はそこに泊まります」
「はい」
短い会話が交わされた後気詰まりな沈黙が続いていたが大きな溜息をついたリアムがチャールズを睨みながら話しはじめた。
「あなたのした事を私が批判するのは間違っていると思う。だけどやっぱり今回の事は納得できない」
「リアム、その事は何度も話し合ったじゃない。どうしても嫌なら会わなければ良いでしょう?」
「無理だよ、絶対顔を合わせることになる。納得は出来ないけどロクサーナの考えは理解してるから何とか折り合いをつけたいと思っている。
だから、感じの悪い態度をとってしまうと思うけど暫く時間が欲しい」
リアムはロクサーナの手を握ってまた溜息をついた。
「奥様の願いは叶えたいんだ」
「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいわ」
リアムに握られた手をロクサーナが握り返した。
「申し訳ありません」
馬車が宿の前に停まるまで頭を下げ続けているチャールズの傷だらけの手をリアムはじっと見つめていた。
警備の都合上貸し切った宿でチャールズは風呂に入った後準備されていた服を身につけたが、10年ぶりの貴族らしい服装は日に焼けたチャールズにとても良く似合っていた。
夕食の為に集まったが微妙な雰囲気の中で3人ともあまり食が進まないまま早々に部屋に戻ったが、チャールズが椅子に座る間も無くロクサーナの侍女が呼びに来た。
「奥様がお呼びでございます」
部屋を出て侍女について行くと立っていた護衛の一人がドアを開けてくれた。
「遅い時間に呼び立ててごめんなさい」
食事の時から青い顔をしていたロクサーナの顔色は蒼白と言ってもいいほどになっており、リアムは壁際で腕を組んで仁王立ちしている。
「お呼びだと伺ったのですが?」
もしかしたらロクサーナの体調は・・と、不安に駆られながらチャールズが口を開くと黙ったままのロクサーナが立ち上がり「こちらへ」と声をかけた。
奥にあるドアを侍女が開けロクサーナに続いて部屋に入った。
そこは寝室らしく大きなベッドが置かれておりロクサーナと同じくらいの年頃の女性が二人壁際に並んで立っていたがロクサーナの合図を受け部屋を出て行った。
チャールズはベッドを見つめ驚愕し目を見開いた。
「名前はチャーリーとベルナデット。この子達のそばにいてあげたくて、それで仕事をお願い出来ないかと。
我儘を言ってまだ公表してないの。王太子殿下にお子様がいらっしゃるから許されたけど近々発表があると思う」
「ああ、なんて事だ」
「私がまだ小さかった頃にね、お祖父様やお祖母様はどんな方だったのかなと考えたことがあって。この子達もいずれ同じ事を思うのかなって思ったの。だから・・」
親として精一杯の愛を子供達に・・。
「そう言って頂けると嬉しいです。無理な採掘は望んでいないので、これからもよろしくお願いします」
ロクサーナが鉱夫のチャールズを連れて行く事を話し手続きを行っていると、部屋の片付けを終えたチャールズが小振りのカバンを一つ持ってやってきた。
「リアム王子殿下、ご無沙汰しております」
深々と頭を下げたチャールズにリアムは返事すらしない。
「よお、チャールズがいなくなるのは痛いがしょうがない。アンタならどこでもやってけるしな」
「お世話になりました」
「さて、これ以上遅くなったら不味いだろうから出発しようか」
リアムが無愛想に言い立ち上がった。
事務所にいた現場監督や事務員がチャールズの見送りに来てくれた。遠くから手を振っている人もいて、チャールズは片手を上げている。
「挨拶に行って来ても良いですよ」
ロクサーナが声をかけると少し迷っていたが『すみません』と言ってチャールズが走って行った。
「結構人気者だったんで」
現場監督が言うように何人もの鉱夫が走ってきてチャールズの肩を叩いたり握手したりしている。
別れを告げたチャールズが戻ってきてロクサーナやリアムと一緒に馬車に乗り込みガタゴトと馬車が走りはじめた。
「アルマンに宿をとっているので今夜はそこに泊まります」
「はい」
短い会話が交わされた後気詰まりな沈黙が続いていたが大きな溜息をついたリアムがチャールズを睨みながら話しはじめた。
「あなたのした事を私が批判するのは間違っていると思う。だけどやっぱり今回の事は納得できない」
「リアム、その事は何度も話し合ったじゃない。どうしても嫌なら会わなければ良いでしょう?」
「無理だよ、絶対顔を合わせることになる。納得は出来ないけどロクサーナの考えは理解してるから何とか折り合いをつけたいと思っている。
だから、感じの悪い態度をとってしまうと思うけど暫く時間が欲しい」
リアムはロクサーナの手を握ってまた溜息をついた。
「奥様の願いは叶えたいんだ」
「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいわ」
リアムに握られた手をロクサーナが握り返した。
「申し訳ありません」
馬車が宿の前に停まるまで頭を下げ続けているチャールズの傷だらけの手をリアムはじっと見つめていた。
警備の都合上貸し切った宿でチャールズは風呂に入った後準備されていた服を身につけたが、10年ぶりの貴族らしい服装は日に焼けたチャールズにとても良く似合っていた。
夕食の為に集まったが微妙な雰囲気の中で3人ともあまり食が進まないまま早々に部屋に戻ったが、チャールズが椅子に座る間も無くロクサーナの侍女が呼びに来た。
「奥様がお呼びでございます」
部屋を出て侍女について行くと立っていた護衛の一人がドアを開けてくれた。
「遅い時間に呼び立ててごめんなさい」
食事の時から青い顔をしていたロクサーナの顔色は蒼白と言ってもいいほどになっており、リアムは壁際で腕を組んで仁王立ちしている。
「お呼びだと伺ったのですが?」
もしかしたらロクサーナの体調は・・と、不安に駆られながらチャールズが口を開くと黙ったままのロクサーナが立ち上がり「こちらへ」と声をかけた。
奥にあるドアを侍女が開けロクサーナに続いて部屋に入った。
そこは寝室らしく大きなベッドが置かれておりロクサーナと同じくらいの年頃の女性が二人壁際に並んで立っていたがロクサーナの合図を受け部屋を出て行った。
チャールズはベッドを見つめ驚愕し目を見開いた。
「名前はチャーリーとベルナデット。この子達のそばにいてあげたくて、それで仕事をお願い出来ないかと。
我儘を言ってまだ公表してないの。王太子殿下にお子様がいらっしゃるから許されたけど近々発表があると思う」
「ああ、なんて事だ」
「私がまだ小さかった頃にね、お祖父様やお祖母様はどんな方だったのかなと考えたことがあって。この子達もいずれ同じ事を思うのかなって思ったの。だから・・」
親として精一杯の愛を子供達に・・。
91
お気に入りに追加
1,747
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(136件)
あなたにおすすめの小説

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

気弱令息が婚約破棄されていたから結婚してみた。
古森きり
恋愛
「アンタ情けないのよ!」と、目の前で婚約破棄された令息がべそべそ泣きながら震えていたのが超可愛い!と思った私、フォリシアは小動物みたいな彼に手を差し出す。
男兄弟に囲まれて育ったせいなのか、小さくてか弱い彼を自宅に連れて帰って愛でようかと思ったら――え? あなた公爵様なんですか?
カクヨムで読み直しナッシング書き溜め。
アルファポリス、ベリーズカフェ、小説家になろうに掲載しています。

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】
「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」
私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか?
※ 他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
一気に読ませて頂きました。
と、いうか面白くてとまらなくなった。と、いうのが本音です。
最後まで楽しかったです。
ありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。
ありがとうございます。
とても励みになるお言葉に感謝です🤗🤗
完結おつかれ様です。
もう10年…!?って思ったけど、当時まだ11歳だった…
平民として穏やかに暮らしたい願望があったから
政争とか変に騒がれないように子どものこと伏せてた
のかなぁ。双子なのかな?
自分の幼少期みたいにはしたくないから精一杯側にいて
あげたい、父親を赦すことで家族を大事にしていきたい
という想いが伝わりました(*´꒳`*)
ありがとうございます。
やり直そうと口で言う勇気はなくて仕事の依頼をして関係を作ろうとしたロクサーナですが、これから少しずつチャールズとも良い関係が築けていくような(*´꒳`*)
残念な終わり
じゃなくて
意味がわからない
父を呼んだ意味は??
ありがとうございます。
仲直り? 家族としての関係の再構築って事なのです🤗🤗