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31.痛いのに笑うリアム

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「ほら昔リチャードの手が真っ赤に腫れたやつ。僕にも効果があるから治るまで僕は帰国できないし、王妃様もそれを口実にこの国に残れる」

 王妃は旧ロクサーナをとても可愛がっていたので断罪は王妃の不在を狙って行われた。
 今回も王妃をメルバーグ王国に追いやっておこうとしていたのは王妃の勘気を被る事を恐れての事だと思われる。


「あれは・・ハゼの木の樹液です」

「なんだ、あれはお前がやったのか」

「仕方なかったんです。旧ロクサーナはあの時池に突き落とされて1週間高熱で寝込んだんですもの。
もう少しタイミングがズレていたら新ロクサーナも池に落とされるところでしたの」

「はは、そりゃアイツらの自業自得だな」




 そのすぐ後から全員がうごきはじめた。

 チャールズはネイサンと協力してフィレルを見つけ急いで山に向かった。

 おおよその発見場所は旧ロクサーナの記憶から割り出した。


 『たまたま見つけた』


 この言葉から比較的簡単に見つかる可能性もあると期待をかけ、フィレルを急かして山を登っていった。
 山裾と中継地点には馬を準備し発見し次第王都まで戻る予定だが早くても3日はかかる。

 その頃リアムは両手を赤く腫らしベッドでニンマリほくそ笑んでいた。
 治りが早すぎた時用に樹液はまだ残してあり、必要な時には腫れを広げる予定。


 コナー・繊維ギルド・金属加工ギルド・服飾ギルドのメンバー総出でシエラの捜索が行われ、2日目にシエラの姉の嫁ぎ先に隠れているところを発見し拘束した。
 シエラの証言からロクサーナのネックレスをリチャードに渡したのはステラの指示だったことが判明した。

 シエラはステラ専属メイドの一人と親友で紹介状なしで解雇された友達の恨みを晴らそうとしたと語った。

「お金が欲しかったわけじゃないんです。だからネックレス以外には手をつけてません」


 シエラの身柄を確保した数日後フィレルの銀鉱発見の知らせを持ってチャールズ達が戻ってきた。
 それまでの間、ロクサーナは編み機の調整とデモンストレーションに使う見本の製作に没頭した。



 王妃は王宮大広間にて編み機のデモンストレーションと共に、見本として作成された製品の展示・説明会を行うと発表した。

 代表者は服飾ギルド長メイリーン、その他に金属加工ギルド長ラルクと繊維ギルド副ギルド長マーカスの3名。

 参加者として王妃が指名したのは国王・宰相・各大臣・リチャード・領地の領主又は代表者と言う錚々たる面々。
 広間の隅には側近候補3名とメリッサ・ステラがいた。


 編み機の説明後、アニー商会についての報告がなされた。商会で特許又は商標登録されているものや開発・提供された物は、

 ・編み機
 ・キルト
 ・ワッペン
 ・アップリケ
 ・リュックサック
 ・ウエストポーチ
 ・カラビナ
 ・バックル

等多岐にわたる。


「賢明なみなさんはお気づきだと思いますが、これらは全てここ4年の間にアニー商会の商会長から提案されたものばかりです。
ここにおります繊維・金属加工・服飾の3つのギルドはアニー商会と共にこれらの製品を生み出してまいりました」


 メイリーンの説明に参加者が騒然となった。

「ここのところ我が国で騒ぎになってる製品ばかりじゃないか」

「アニー商会なんて初めて聞いたぞ」

「キルトのサインは《アニー》だったな」



 騒つく大広間に陛下の声が響いた。

「王妃よ、何故商会長はここにおらんのだ?」



 王妃の合図で大広間の扉が開きロクサーナがチャールズとネイサンとコナーと共に入って来たが、商会長が現れると思っていた参加者達は顔を見合わせ首を傾げた。


「なっ、何故お前が!」

 リチャードが怒鳴り声を上げた。

「衛兵、その者を捕らえよ!」

 アーノルドが意気揚々と大声を張り上げた。



「王妃様からの招待状が届いておりましたので、娘ロクサーナと共に参上致しました」

 チャールズが口上を述べるとリチャードが喚き始めた。

「貴様の娘は王家の宝物庫から母上のティアラを盗み出した。証拠は宝物庫に落ちていたこのネックレスだ」


 騒つく大広間に宰相の声が響いた。

「このような場所におめおめ現れるとは、恥を知れ! 陛下、どうぞご決断を」

「お待ちください、この者の罪を審議もせず決断されると仰せですか?」

 王妃が止めに入った。


「リチャードやアーノルド達から報告は受けておる」

 陛下が宰相に合図をすると一歩前に出た宰相が宣言した。


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