27 / 41
27.コナーの告白とロクサーナの初めて
しおりを挟む
「その山に銀鉱があるって言うのが秘密で、私は前もってそれを知っていて買ったから」
山を買った時には将来フィレルが銀鉱を発見した後に購入価格と同額で売る予定だった。
大金を預けたままより安全な隠し場所だと思ったのだが、状況が変わり早急に手を打つ必要が出てきた。
発見者の名誉を奪うのは嫌だったのでここ数日かけてフィレルの情報を探した。
旧ロクサーナの記憶にあったのは、数人の雇い人のいる採掘業者がたまたま発見したということだけ。
ネイサンが快く請け負ってくれたので、ホッと安心したロクサーナはコナーと共に屋敷に帰ることにした。
「お嬢は何で銀があるって知ってたんだ?」
コナーが真顔で聞いてきた。
「あの山では4年後に銀鉱山がたまたま見つかるの。私はそれをズルして前倒しにしただけ」
「そん時鉱山を見つけるのがフィレルって奴か」
「うん」
自分の運命は絶対に変えると決めているが、罪のない人の人生を変えるのはできる限りしたくないと思っていたロクサーナだがそんな悠長な事を言ってられなくなってきた。
(これが、お金に汚い国王を黙らせる最善の策だと思う)
コナーはロクサーナの言葉を何の疑問も持たずに受け入れてくれた。
「時々な、変だなーと思うことがあってよ。お嬢はこの先起こる事を知ってんじゃねえかって。鍵の事とか、布の相場とか」
「黙っててくれてありがとう。コナーがいなかったらどうにもならなかったと思う」
「はは、確かに一人じゃ7歳で問屋街で買い物はできんわな。あんときゃ大の大人に啖呵切って凄かったぜ」
コナーはカラカラと楽しそうに笑った。
「モートン嬢?」
慌てて振り返ったロクサーナは地味な服装のリアムが立っているのを見て顔を引き攣らせた。
「こんにちは、意外なところでお会いしましたね。殿下はお買い物ですか?」
「うん、国の姉上から手紙が来て人気のリュックサックを買って送れって。
僕はカラビナって言うのが欲しくてね」
ウエストポーチ用にと製作したカラビナはあの後単独での購入者が激増しD型・洋梨型・楕円などが販売されている。
「この後予定がなければなんだけど、良かったらどこかでお茶でも飲まない?」
(新旧ロクサーナ合わせて初のお誘い?)
驚きでロクサーナが固まっていると、コナーが後ろから声をかけた。
「お嬢、ちょっと時間潰してくるんで」
「ありがとう。1時間くらいしたら広場の噴水のところに行くようにするから」
リアムとコナーの中で勝手に話が進んでいく。
「あっ、いえ。やめた方が、2人というのは良くないと思うので」
「じゃあ広場のオープンテラスにしよう。あそこなら人が大勢いるから変な詮索をされる心配はないよ」
勝手にいなくなったコナーに心の中で抗議しながら少し離れてリアムの後をついて行った。
初めて入ったコーヒーショップで紅茶とケーキを頼んだが緊張しすぎてケーキに手が出ないロクサーナとは違い、リアムはとても落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいる。
(そう言えばコーヒーはネルドリップしかないんだわ。フレンチプレスとか水出しコーヒーとかならこの国でも・・)
現実逃避をはじめたロクサーナにリアムが声をかけた。
「今日はどうしてあの辺にいたの?」
「えっ?」
「繊維問屋街から来たみたいに見えたから」
「何となく、散歩していましたの。ずっと家に籠っていると運動不足で」
「クラリア商会から出てきたと思ったんだけど」
リアムの言葉にロクサーナは顔に笑顔を貼り付けた。
「なぜそう思われますの?」
「ほら、姉上に頼まれたって言うリュックサック。うちの国でも取り扱いできないか聞きに行ったんだけどその時見かけたんだ」
「それでしたら服飾ギルドの方が・・あっ、多分ですけど」
「流石女の子は詳しいね。姉上からも同じことを言われた」
「では何故・・」
「服飾ギルドで話をしてだんだけど、服飾ギルド長は出かけてるから急ぎならクラリア商会で聞いてみたらって言われて寄ってみたんだ」
(くっ、余計な事を)
「繊維ギルドが扱ってたなんて面白いね。キルトについてクラリア商会に行こうと思ってたからちょうど良かったんだ」
山を買った時には将来フィレルが銀鉱を発見した後に購入価格と同額で売る予定だった。
大金を預けたままより安全な隠し場所だと思ったのだが、状況が変わり早急に手を打つ必要が出てきた。
発見者の名誉を奪うのは嫌だったのでここ数日かけてフィレルの情報を探した。
旧ロクサーナの記憶にあったのは、数人の雇い人のいる採掘業者がたまたま発見したということだけ。
ネイサンが快く請け負ってくれたので、ホッと安心したロクサーナはコナーと共に屋敷に帰ることにした。
「お嬢は何で銀があるって知ってたんだ?」
コナーが真顔で聞いてきた。
「あの山では4年後に銀鉱山がたまたま見つかるの。私はそれをズルして前倒しにしただけ」
「そん時鉱山を見つけるのがフィレルって奴か」
「うん」
自分の運命は絶対に変えると決めているが、罪のない人の人生を変えるのはできる限りしたくないと思っていたロクサーナだがそんな悠長な事を言ってられなくなってきた。
(これが、お金に汚い国王を黙らせる最善の策だと思う)
コナーはロクサーナの言葉を何の疑問も持たずに受け入れてくれた。
「時々な、変だなーと思うことがあってよ。お嬢はこの先起こる事を知ってんじゃねえかって。鍵の事とか、布の相場とか」
「黙っててくれてありがとう。コナーがいなかったらどうにもならなかったと思う」
「はは、確かに一人じゃ7歳で問屋街で買い物はできんわな。あんときゃ大の大人に啖呵切って凄かったぜ」
コナーはカラカラと楽しそうに笑った。
「モートン嬢?」
慌てて振り返ったロクサーナは地味な服装のリアムが立っているのを見て顔を引き攣らせた。
「こんにちは、意外なところでお会いしましたね。殿下はお買い物ですか?」
「うん、国の姉上から手紙が来て人気のリュックサックを買って送れって。
僕はカラビナって言うのが欲しくてね」
ウエストポーチ用にと製作したカラビナはあの後単独での購入者が激増しD型・洋梨型・楕円などが販売されている。
「この後予定がなければなんだけど、良かったらどこかでお茶でも飲まない?」
(新旧ロクサーナ合わせて初のお誘い?)
驚きでロクサーナが固まっていると、コナーが後ろから声をかけた。
「お嬢、ちょっと時間潰してくるんで」
「ありがとう。1時間くらいしたら広場の噴水のところに行くようにするから」
リアムとコナーの中で勝手に話が進んでいく。
「あっ、いえ。やめた方が、2人というのは良くないと思うので」
「じゃあ広場のオープンテラスにしよう。あそこなら人が大勢いるから変な詮索をされる心配はないよ」
勝手にいなくなったコナーに心の中で抗議しながら少し離れてリアムの後をついて行った。
初めて入ったコーヒーショップで紅茶とケーキを頼んだが緊張しすぎてケーキに手が出ないロクサーナとは違い、リアムはとても落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいる。
(そう言えばコーヒーはネルドリップしかないんだわ。フレンチプレスとか水出しコーヒーとかならこの国でも・・)
現実逃避をはじめたロクサーナにリアムが声をかけた。
「今日はどうしてあの辺にいたの?」
「えっ?」
「繊維問屋街から来たみたいに見えたから」
「何となく、散歩していましたの。ずっと家に籠っていると運動不足で」
「クラリア商会から出てきたと思ったんだけど」
リアムの言葉にロクサーナは顔に笑顔を貼り付けた。
「なぜそう思われますの?」
「ほら、姉上に頼まれたって言うリュックサック。うちの国でも取り扱いできないか聞きに行ったんだけどその時見かけたんだ」
「それでしたら服飾ギルドの方が・・あっ、多分ですけど」
「流石女の子は詳しいね。姉上からも同じことを言われた」
「では何故・・」
「服飾ギルドで話をしてだんだけど、服飾ギルド長は出かけてるから急ぎならクラリア商会で聞いてみたらって言われて寄ってみたんだ」
(くっ、余計な事を)
「繊維ギルドが扱ってたなんて面白いね。キルトについてクラリア商会に行こうと思ってたからちょうど良かったんだ」
35
お気に入りに追加
1,746
あなたにおすすめの小説
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~
瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】
ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。
爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。
伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。
まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。
婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。
――「結婚をしない」という選択肢が。
格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。
努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。
他のサイトでも公開してます。全12話です。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる