25 / 41
25.憔悴する侯爵
しおりを挟む
「ロクサーナ!」
玄関ホールでチャールズが怒鳴っている声が聞こえたので、ロクサーナは私室を出て階段を降りて行った。
「手紙を読んだ。どう言う事だ、説明しなさい」
「執務室の方が良いのではありませんか?」
冷静さを失っていたチャールズは周りを見回し、チラチラと聞き耳を立てている使用人を見つけ舌打ちをした。
足早に階段を上がるチャールズの後について行き、執務室のドアを閉めた。
朝教室にシュルツがやって来たところから学園長室を出る所まで、なるべく詳細に感情を交えないよう気をつけながら報告した。
「直ぐに訴状を提出する。相手は学園長とシュルツ教諭」
「殿下と側近候補は含めないのですね」
「・・流石にそれは不味かろう」
(なんだ、やっぱりね)
「分かりました。ではお気の済むように」
冷ややかな顔で立ち上がったロクサーナはチャールズには目もくれず部屋を出ようとした。
「ロクサーナ、待ちなさい。王子殿下を告発しろと言うのか?それはあまりにも・・」
「侯爵様は家の名誉を、私は私自身を守ります」
「侯爵様・・父と呼ばないつもりか?」
「必要はなさそうですもの。
私の価値観の中では親は子を守るもの、守らない相手を敬う必要も従う必要もないと思いますの。
『殿下が瑕疵を作ってくるかも』と昨日言ったばかりですわ」
その後チャールズは学園長とシュルツ教諭に対し名誉毀損の訴えを出し、臨席者としてリチャード王子と3名の側近候補達の名前を列挙した。
キルトの模倣犯の摘発はネイサンが全面的に引き受けてくれたので、ロクサーナは学園へ登校せずひたすら図書室に閉じこもった。
(確かあったはず・・)
登校を取り止めて3日後、リアムが先触れもなく屋敷にやって来た。
「元気にしているか心配になって来てみたんだけど、思ったより元気そうで安心したよ」
「ありがとうございます。今回の事で一番憔悴してるのは侯爵・・お父様だと思いますわ。
しょっちゅう裁判所や王宮から呼び出しが来ていますの」
訴状に臨席者として王子と側近候補の名前が入っている事で、裁判所と司法大臣から再三の呼び出しを受け訴状の撤回や書き直しを求められている。
(あの人、何処まで粘れるのかしら・・)
「王妃様も心配しておられて様子を見て来いってしつこくて。
この状況では王宮に来るのは嫌か聞いて来いって」
お茶のカップを持ったままリアムが苦笑いしている。
「王妃様のお立場を考えるとお会いするのはあまり・・」
「私に何かできる事はないかな? 雑用係でも何でもやるよ」
前のめりになって意気込むリアムにロクサーナは吃驚して少しのけぞってしまった。
「隣国の王子様に雑用だなんて」
「友人としてなら? 昔会った事があるんだよ、と言っても私が一方的に見かけただけなんだけどね。
あの紫のドレス・・」
黒歴史を言われたロクサーナは真っ赤になって両手で口を押さえた。
現国王に連れられて遊びに来ていたリアムは、あの日リチャードの婚約者が来ると聞いて庭に隠れていた。そこであの騒ぎになり・・。
「それまでかなり陰湿な意地悪をされていたから、泣き喚くリチャードにザマアミロって。あれはどうやったの?」
目を輝かせて聞いてくるリアムはロクサーナが何かした事に確信を抱いているらしい。
「きっ企業秘密です。あっいえ知りませんから」
「まあいいさ、僕の分も仕返ししてもらった気になって感謝してるから」
学園では今回の件について意見が分かれていると教えてくれた。
「学園や王子が間違えるはずはないからって言う人と、空っぽのロッカーに盗んだものだけを入れとくなんてあり得ないって言う人」
王宮では戒厳令が敷かれているらしい。
「証拠もないのに犯罪者扱いしただろ? だからリチャードはかなり不味い立場になってる」
意外なリアムの知らせにロクサーナは吃驚してしまった。
「目撃者と告発文は?」
玄関ホールでチャールズが怒鳴っている声が聞こえたので、ロクサーナは私室を出て階段を降りて行った。
「手紙を読んだ。どう言う事だ、説明しなさい」
「執務室の方が良いのではありませんか?」
冷静さを失っていたチャールズは周りを見回し、チラチラと聞き耳を立てている使用人を見つけ舌打ちをした。
足早に階段を上がるチャールズの後について行き、執務室のドアを閉めた。
朝教室にシュルツがやって来たところから学園長室を出る所まで、なるべく詳細に感情を交えないよう気をつけながら報告した。
「直ぐに訴状を提出する。相手は学園長とシュルツ教諭」
「殿下と側近候補は含めないのですね」
「・・流石にそれは不味かろう」
(なんだ、やっぱりね)
「分かりました。ではお気の済むように」
冷ややかな顔で立ち上がったロクサーナはチャールズには目もくれず部屋を出ようとした。
「ロクサーナ、待ちなさい。王子殿下を告発しろと言うのか?それはあまりにも・・」
「侯爵様は家の名誉を、私は私自身を守ります」
「侯爵様・・父と呼ばないつもりか?」
「必要はなさそうですもの。
私の価値観の中では親は子を守るもの、守らない相手を敬う必要も従う必要もないと思いますの。
『殿下が瑕疵を作ってくるかも』と昨日言ったばかりですわ」
その後チャールズは学園長とシュルツ教諭に対し名誉毀損の訴えを出し、臨席者としてリチャード王子と3名の側近候補達の名前を列挙した。
キルトの模倣犯の摘発はネイサンが全面的に引き受けてくれたので、ロクサーナは学園へ登校せずひたすら図書室に閉じこもった。
(確かあったはず・・)
登校を取り止めて3日後、リアムが先触れもなく屋敷にやって来た。
「元気にしているか心配になって来てみたんだけど、思ったより元気そうで安心したよ」
「ありがとうございます。今回の事で一番憔悴してるのは侯爵・・お父様だと思いますわ。
しょっちゅう裁判所や王宮から呼び出しが来ていますの」
訴状に臨席者として王子と側近候補の名前が入っている事で、裁判所と司法大臣から再三の呼び出しを受け訴状の撤回や書き直しを求められている。
(あの人、何処まで粘れるのかしら・・)
「王妃様も心配しておられて様子を見て来いってしつこくて。
この状況では王宮に来るのは嫌か聞いて来いって」
お茶のカップを持ったままリアムが苦笑いしている。
「王妃様のお立場を考えるとお会いするのはあまり・・」
「私に何かできる事はないかな? 雑用係でも何でもやるよ」
前のめりになって意気込むリアムにロクサーナは吃驚して少しのけぞってしまった。
「隣国の王子様に雑用だなんて」
「友人としてなら? 昔会った事があるんだよ、と言っても私が一方的に見かけただけなんだけどね。
あの紫のドレス・・」
黒歴史を言われたロクサーナは真っ赤になって両手で口を押さえた。
現国王に連れられて遊びに来ていたリアムは、あの日リチャードの婚約者が来ると聞いて庭に隠れていた。そこであの騒ぎになり・・。
「それまでかなり陰湿な意地悪をされていたから、泣き喚くリチャードにザマアミロって。あれはどうやったの?」
目を輝かせて聞いてくるリアムはロクサーナが何かした事に確信を抱いているらしい。
「きっ企業秘密です。あっいえ知りませんから」
「まあいいさ、僕の分も仕返ししてもらった気になって感謝してるから」
学園では今回の件について意見が分かれていると教えてくれた。
「学園や王子が間違えるはずはないからって言う人と、空っぽのロッカーに盗んだものだけを入れとくなんてあり得ないって言う人」
王宮では戒厳令が敷かれているらしい。
「証拠もないのに犯罪者扱いしただろ? だからリチャードはかなり不味い立場になってる」
意外なリアムの知らせにロクサーナは吃驚してしまった。
「目撃者と告発文は?」
65
お気に入りに追加
1,747
あなたにおすすめの小説

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

気弱令息が婚約破棄されていたから結婚してみた。
古森きり
恋愛
「アンタ情けないのよ!」と、目の前で婚約破棄された令息がべそべそ泣きながら震えていたのが超可愛い!と思った私、フォリシアは小動物みたいな彼に手を差し出す。
男兄弟に囲まれて育ったせいなのか、小さくてか弱い彼を自宅に連れて帰って愛でようかと思ったら――え? あなた公爵様なんですか?
カクヨムで読み直しナッシング書き溜め。
アルファポリス、ベリーズカフェ、小説家になろうに掲載しています。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる