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21.はじまりました

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 ロクサーナが意を決して話しはじめた。

「教育の最初にテストをして頂くわけには参りませんでしょうか?」

 教師陣が顔を見合わせ首を傾げている。

「テストの結果を見て頂いて、それから必要な内容を教えて頂くことは可能でしょうか?」

 ロクサーナが言い直しをしてみた。

 何とか王子妃教育の時間を短縮したいロクサーナの苦肉の策だったので、教師陣の不興を買う覚悟は出来ていた。

(この方法が上手くいけばステラと関わらずに済むから一石二鳥だし)


「王子妃教育を馬鹿にしておられるのかしら? たかが11歳の子供に何が分かると言うの?」

「全くですわ、このような不遜な考えの者など聞いたことがありません」


 黙って聞いていた王妃がにっこりと笑った。

「面白そうだこと。
テストの結果が良ければ無駄な時間がなくなるわ、試してみましょう」

 王妃がメイドにリアムを呼びに行かせた。


 暫くしてリアムがやって来たが、部屋に漂う険悪な雰囲気に戸惑っている。

「えー、お呼びと聞いて来たのですが?」

「こちらに来てちょうだい。今ロクサーナから面白い提案があったの。
で、実験してみたいから手伝ってくれるかしら。
リアムはオーランセル語が得意だったわよね。ちょっとロクサーナとオーランセル語で会話してくれる?」


 怪訝な顔をしていたリアムだが、ロクサーナに学園の事や市井の事、農業や輸出の関税について質問をしてきた。


「凄い、細かい発音まで完璧だ。何処で覚えたんですか?」

 リアムと語学担当のキャリック侯爵夫人が驚きの声を上げた。

「では次はダンスね。リアムで試せるのはそのくらいかしら」


 ワンツースリーと音楽がわりのリズムをとりながらステップを踏む。

「如何かしら、サルゼリス伯爵夫人。テストしてみる価値はありそうではなくて?」

「たっ確かに・・ですが」

「では皆さんは授業のはじめにテストの準備をお願いね。ロクサーナは自分でハードルを上げたようなものだけど大丈夫かしら?」

「はい、精一杯頑張らせて頂きます」

(ふっふっふ、2回目だもんねチョロいチョロい)



 その後テスト結果により王子妃教育の殆どが省略され、平日の放課後王宮に出向き新たなテストを行うか課題を提出する。

 そのお陰で土日は事業に専念することができる上リチャード&ステラ回避にもなった。



 何とか普段通りの時間を捻出することができホッとしていた頃、災難が歩いてやって来た。

 その日の授業が終わり荷物を片付けていると、ステラと腕を組んだリチャードが側近候補3人を連れて教室にやって来た。

「ロクサーナ、話がある」

(げっ! 来た)


 リチャード達に連れて行かれたのは校庭の外れの噴水の近く。


「何故王子妃教育を逃げ出している?」

「仰っている意味がわかりかねますが」

「教育はもうはじまっているはずだろう? お前が王子妃になりたいと我儘を言った癖に教育は嫌だとかどういう了見だ」

 イライラと眉間に皺を寄せたリチャードがロクサーナを睨んだ。

「教育でしたら順調に終わっておりますが?」


「殆どの王宮に来ていないじゃないか」

 アーノルドがロクサーナの肩を小突いた。

「必要な時しか参りませんから」


「今後は王子妃教育にステラを参加させる。お前のような不真面目な奴なんかよりステラの方がよっぽど意欲的だ」

 リチャードはステラと見つめ合った後肩を抱きロクサーナを睨みつけた。


「どうぞ王妃様とお話しくださいませ。スケジュールに関してはサルゼリス伯爵夫人にお聞きになるのが宜しいかと」


 ロクサーナが優雅に会釈をしてその場を離れようとするとロジャーがロクサーナの肘を捻り上げた。

「都合が悪くなったら逃げるのか!」

「聞いてますよ、可哀想なステラに対する数々の虐めの話を」

 サミュエルがロクサーナの顔を覗き込んで言い募る。


「手を離して頂けますか? それから何のことを仰っているのか分かりません」

「酷い、散々虐めて家を追い出したくせに。お父様に嘘を教えて、私の宝物全部盗んだくせに!」

(嘘と虐めと盗み・・盛ってきたわねー)


「どうぞ侯爵家へ事実確認においで下さい。何も後ろめたい事はしておりませんので」



「やあ、女性に手を出すなんて君達は何をしてるんだい?」

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