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19.まだまだ怒る
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「ロクサーナの部屋を見て、お前が案内できなかった訳がわかった。
ステラを連れて出て行け、荷物を持って行くことは許さん。理由は分かるな」
「そんな、何処へ行けと仰るのですか! しかも荷物もなしなどと」
「メルヨー男爵家に戻るがいい。手紙を書いてやる、お前がロクサーナに掛かった費用だと言っていた金について不問にしてやるだけでもありがたいと思え。
あの豪奢な部屋にある物を一つでも持ち出せば犯罪者として牢にぶち込んでやる」
「すっステラはどうなりますの?」
「アレは侯爵家とは関係ない、お前の連れ子だからな」
「そんな、あの子はリチャード様と」
「そう言うことか、お前はステラを王子妃にするために、ロクサーナに婚約の事を知らせなかったのだな。
ステラの父親は平民でお前は男爵の娘、王子妃にはなれん。
養子縁組はしておらんし、するつもりもなかったがな」
「そんな・・」
「ステラは何処だ」
「馬車が迎えに行っております。もうじきお戻りだと」
「ステラ専属の馬車と御者か?」
「・・はい」
「ロクサーナの送り迎えは?」
「・・徒歩で」
「侯爵家の一人娘が徒歩だと! 万が一のことがあったらどうするつもりだったのだ」
チャールズが目の前のテーブルをドン! と叩き、ジェームズが「ひっ!」と叫んで飛び上がった。
「今更だと思いますけど?」
怒り続けるチャールズを冷ややかな目で見ながらロクサーナが呟いた。
「どう言う意味だ」
「7年もあの部屋に住んでおりますけど特に不便はありません。
何よりこんな長い間何も知ろうとしなかった方が突然被害者のような顔をされても滑稽でしかありませんわ」
「私は報告を受けて・・」
「それに何の疑問も持たず過ごされていたのでしょう?
どんなに我儘な子供でも一度も食事に現れないなんて誰が聞いてもおかしいと思いますわ。
それを黙認しておられたのでしょう?」
「・・」
「突然万一の事などと言われても・・」
肩をすくめ話を途中でやめた。
(面倒・・同じ穴の狢じゃん)
静まりかえった執務室に、開いたままの入り口からステラの声が聞こえて来た。
「サッサとしなさいよ、リアムが待ってるのよ。こんな大切な日に帰りが遅くなるなんて、あの御者はクビよ。
今日中に次を探しておきなさい、わかったわね」
ステラの癇癪とその内容を聞いたチャールズが頬を痙攣させメリッサを睨みつけた。
「ジェームズ、ステラを呼んでこい」
血相を変えてジェームズが飛び出していきステラと共に戻ってきた。
「お父様、お呼びですか? 御者の不手際で帰りが遅くなってしまいましたのよ、急いで準備しますね」
執務室の中の雰囲気に気付かないステラはメリッサの隣に座り可愛く首を傾げた。
「時間があまりありませんの、ご用は何ですか?」
「ジェームズ、王妃様から贈られた品を全て集めて持ってこい」
チャールズの低い声と表情に初めて異変に気づいたステラがメリッサをチラッと見た。
「ステラ、お前は今日メリッサと共に出て行くことになった。
荷物は一切持ち出すな、教科書だけは後で届けてやる」
「・・吃驚しました、真顔で仰るから本気かと思いましたわ」
相変わらず笑い顔を浮かべているステラは、
「準備がありますから私は「お前はリチャード殿下とは結婚出来ん」」
「まあ、ご心配頂かなくても大丈夫ですわ。でも最近少し悩んでおりますの、年下ですけどリアム様の方が素敵で彼と結婚しようかしらって思ったり。
でも、そんな事を言ったらリチャードが悲しみますわね」
「王子殿下を呼び捨てか?」
「あら、二人だけの秘密でしたのに。ふふっ」
「お前にはどちらとも結婚する資格はない。今日中に出て行くことに決まったしな」
「ご冗談を、一体どうされたのですか?」
チャールズの話が漸く理解できたのか、ステラが動揺しメリッサやジェームズにもの問いたげな顔を向けた。
「お、お母様? えっ?」
メイドや侍女たちがドレスやアクセサリーなどを抱えてやって来た。
「これらの品が何処から出てきたのか、それが理由だ」
ステラの顔が凍りついた。
ステラを連れて出て行け、荷物を持って行くことは許さん。理由は分かるな」
「そんな、何処へ行けと仰るのですか! しかも荷物もなしなどと」
「メルヨー男爵家に戻るがいい。手紙を書いてやる、お前がロクサーナに掛かった費用だと言っていた金について不問にしてやるだけでもありがたいと思え。
あの豪奢な部屋にある物を一つでも持ち出せば犯罪者として牢にぶち込んでやる」
「すっステラはどうなりますの?」
「アレは侯爵家とは関係ない、お前の連れ子だからな」
「そんな、あの子はリチャード様と」
「そう言うことか、お前はステラを王子妃にするために、ロクサーナに婚約の事を知らせなかったのだな。
ステラの父親は平民でお前は男爵の娘、王子妃にはなれん。
養子縁組はしておらんし、するつもりもなかったがな」
「そんな・・」
「ステラは何処だ」
「馬車が迎えに行っております。もうじきお戻りだと」
「ステラ専属の馬車と御者か?」
「・・はい」
「ロクサーナの送り迎えは?」
「・・徒歩で」
「侯爵家の一人娘が徒歩だと! 万が一のことがあったらどうするつもりだったのだ」
チャールズが目の前のテーブルをドン! と叩き、ジェームズが「ひっ!」と叫んで飛び上がった。
「今更だと思いますけど?」
怒り続けるチャールズを冷ややかな目で見ながらロクサーナが呟いた。
「どう言う意味だ」
「7年もあの部屋に住んでおりますけど特に不便はありません。
何よりこんな長い間何も知ろうとしなかった方が突然被害者のような顔をされても滑稽でしかありませんわ」
「私は報告を受けて・・」
「それに何の疑問も持たず過ごされていたのでしょう?
どんなに我儘な子供でも一度も食事に現れないなんて誰が聞いてもおかしいと思いますわ。
それを黙認しておられたのでしょう?」
「・・」
「突然万一の事などと言われても・・」
肩をすくめ話を途中でやめた。
(面倒・・同じ穴の狢じゃん)
静まりかえった執務室に、開いたままの入り口からステラの声が聞こえて来た。
「サッサとしなさいよ、リアムが待ってるのよ。こんな大切な日に帰りが遅くなるなんて、あの御者はクビよ。
今日中に次を探しておきなさい、わかったわね」
ステラの癇癪とその内容を聞いたチャールズが頬を痙攣させメリッサを睨みつけた。
「ジェームズ、ステラを呼んでこい」
血相を変えてジェームズが飛び出していきステラと共に戻ってきた。
「お父様、お呼びですか? 御者の不手際で帰りが遅くなってしまいましたのよ、急いで準備しますね」
執務室の中の雰囲気に気付かないステラはメリッサの隣に座り可愛く首を傾げた。
「時間があまりありませんの、ご用は何ですか?」
「ジェームズ、王妃様から贈られた品を全て集めて持ってこい」
チャールズの低い声と表情に初めて異変に気づいたステラがメリッサをチラッと見た。
「ステラ、お前は今日メリッサと共に出て行くことになった。
荷物は一切持ち出すな、教科書だけは後で届けてやる」
「・・吃驚しました、真顔で仰るから本気かと思いましたわ」
相変わらず笑い顔を浮かべているステラは、
「準備がありますから私は「お前はリチャード殿下とは結婚出来ん」」
「まあ、ご心配頂かなくても大丈夫ですわ。でも最近少し悩んでおりますの、年下ですけどリアム様の方が素敵で彼と結婚しようかしらって思ったり。
でも、そんな事を言ったらリチャードが悲しみますわね」
「王子殿下を呼び捨てか?」
「あら、二人だけの秘密でしたのに。ふふっ」
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「ご冗談を、一体どうされたのですか?」
チャールズの話が漸く理解できたのか、ステラが動揺しメリッサやジェームズにもの問いたげな顔を向けた。
「お、お母様? えっ?」
メイドや侍女たちがドレスやアクセサリーなどを抱えてやって来た。
「これらの品が何処から出てきたのか、それが理由だ」
ステラの顔が凍りついた。
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