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13.入学式にリチャードがいた・・らしい
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爽やかな風が吹き抜ける夏晴れの今日、ロクサーナの入学式が行われる。
同伴する保護者がいないロクサーナは一人会場の雛壇近くの席に座っていた。
会場内には和気藹々と友人と談笑する者や席に座り入学案内を読み直している者など多くの新入生が集まりソワソワざわざわと式の始まりを待っていた。
会場後ろには華やかに着飾った父兄が座っているが席が足りなくなったのか、職員が慌てて会場に椅子を運び入れている。
学園長や教諭が雛壇に上がり入学式がはじまった。
学園長・主賓・主任教諭と挨拶が続きロクサーナの新入生代表挨拶が無事終了した後、学園長が再び話しはじめた。
「今年は隣国メルバーグ王国リアム第二王子殿下が急遽留学される事となった。
文化の違いなどで戸惑われる事もあるかもしれない。学園の中では同じ生徒同士としてお互いの見聞を広める気持ちで生活して欲しい」
その後在校生挨拶としてリチャードが壇上に上がり歓迎の挨拶をしたが、留学生の事に気を取られていたロクサーナは全く気づいていなかった。
入学式が終わり、旧ロクサーナの時とは違うSクラスという事に新ロクサーナは不安になりながら教室に移動した。
席は決まっていないと聞いていたのでロクサーナは教室の1番後ろの窓際に座った。
ロクサーナ以外の生徒は既に面識があるようで、挨拶をしあったり近くの席を選んで座ったりと皆楽しそうにしている。
背の高い痩せ気味の教諭が一人の生徒と一緒に入ってきた。
癖のない長いブロンドを後ろで一つに結び、さっと教室内を見回した目は鮮やかな碧眼で濃いグリーンの制服らしき服を着ていた。
「先ずは紹介しよう。さっき学園長が仰られていたリアム第二王子殿下だ。急に決まった留学の為制服が間に合っておられないが、みな節度をもって一年過ごすように」
「この国に留学できた事を心より喜んでいます。どうか宜しく」
ペコリと優雅に会釈したリアムが空いていた席に座り教諭の挨拶がはじまった。
「一年このクラスを担当するジェレミー・シュルツだ。今日は自己紹介を済ませたら解散、授業は明日からはじまる」
シュルツ伯爵令息は宰相の次男。
あの断罪の日に傲慢な態度でティアラを差し出した、リチャードの側近の一人アーノルド・シュルツの次兄だ。
(雰囲気もそっくりだわ)
ロクサーナは最悪のはじまりにため息を押し殺した。
端から順番に自己紹介がはじまった。想像通り高位貴族の子女ばかりで、本人の自己紹介というよりも肩書きと領地の自慢がほとんどだった。
「ロクサーナ・モートンです。父はチャールズ・モートン侯爵、宜しくお願いします」
席に座ろうとすると一人の生徒が声を上げた。
「噂では主席入学はまちがいだとか。本当のところはどうなんですか?」
クラス中にくすくすと笑い声が聞こえ、振り向いた生徒の顔には嘲笑と嘲りが浮かんでいた。
「そのような噂は初めて知りました。試験結果については学園に問い合わせをして頂きたいとしか私には答えられません」
ロクサーナは落ち着いた声で教諭に話を振った。
「噂は私達も知っている。もしそれが事実であれば厳罰に処す事になる」
「教諭が噂を否定しないと言うのであれば噂は事実という可能性もあるのですね」
別の生徒が発言し生徒達はガヤガヤと騒ぎはじめた。
リアム王子殿下が右手を少し上げて、
「ではこの学園の試験の監督には不正を見逃すような不備があったと言うことですか?」
シュルツと生徒が一斉に口を噤んだ。
同伴する保護者がいないロクサーナは一人会場の雛壇近くの席に座っていた。
会場内には和気藹々と友人と談笑する者や席に座り入学案内を読み直している者など多くの新入生が集まりソワソワざわざわと式の始まりを待っていた。
会場後ろには華やかに着飾った父兄が座っているが席が足りなくなったのか、職員が慌てて会場に椅子を運び入れている。
学園長や教諭が雛壇に上がり入学式がはじまった。
学園長・主賓・主任教諭と挨拶が続きロクサーナの新入生代表挨拶が無事終了した後、学園長が再び話しはじめた。
「今年は隣国メルバーグ王国リアム第二王子殿下が急遽留学される事となった。
文化の違いなどで戸惑われる事もあるかもしれない。学園の中では同じ生徒同士としてお互いの見聞を広める気持ちで生活して欲しい」
その後在校生挨拶としてリチャードが壇上に上がり歓迎の挨拶をしたが、留学生の事に気を取られていたロクサーナは全く気づいていなかった。
入学式が終わり、旧ロクサーナの時とは違うSクラスという事に新ロクサーナは不安になりながら教室に移動した。
席は決まっていないと聞いていたのでロクサーナは教室の1番後ろの窓際に座った。
ロクサーナ以外の生徒は既に面識があるようで、挨拶をしあったり近くの席を選んで座ったりと皆楽しそうにしている。
背の高い痩せ気味の教諭が一人の生徒と一緒に入ってきた。
癖のない長いブロンドを後ろで一つに結び、さっと教室内を見回した目は鮮やかな碧眼で濃いグリーンの制服らしき服を着ていた。
「先ずは紹介しよう。さっき学園長が仰られていたリアム第二王子殿下だ。急に決まった留学の為制服が間に合っておられないが、みな節度をもって一年過ごすように」
「この国に留学できた事を心より喜んでいます。どうか宜しく」
ペコリと優雅に会釈したリアムが空いていた席に座り教諭の挨拶がはじまった。
「一年このクラスを担当するジェレミー・シュルツだ。今日は自己紹介を済ませたら解散、授業は明日からはじまる」
シュルツ伯爵令息は宰相の次男。
あの断罪の日に傲慢な態度でティアラを差し出した、リチャードの側近の一人アーノルド・シュルツの次兄だ。
(雰囲気もそっくりだわ)
ロクサーナは最悪のはじまりにため息を押し殺した。
端から順番に自己紹介がはじまった。想像通り高位貴族の子女ばかりで、本人の自己紹介というよりも肩書きと領地の自慢がほとんどだった。
「ロクサーナ・モートンです。父はチャールズ・モートン侯爵、宜しくお願いします」
席に座ろうとすると一人の生徒が声を上げた。
「噂では主席入学はまちがいだとか。本当のところはどうなんですか?」
クラス中にくすくすと笑い声が聞こえ、振り向いた生徒の顔には嘲笑と嘲りが浮かんでいた。
「そのような噂は初めて知りました。試験結果については学園に問い合わせをして頂きたいとしか私には答えられません」
ロクサーナは落ち着いた声で教諭に話を振った。
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「教諭が噂を否定しないと言うのであれば噂は事実という可能性もあるのですね」
別の生徒が発言し生徒達はガヤガヤと騒ぎはじめた。
リアム王子殿下が右手を少し上げて、
「ではこの学園の試験の監督には不正を見逃すような不備があったと言うことですか?」
シュルツと生徒が一斉に口を噤んだ。
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