【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との

文字の大きさ
上 下
8 / 41

8.次の作戦は

しおりを挟む
 ロクサーナの次の目標は鍵を準備する事。

 今のところまだ何もおきていないがこれから先どんどん被害が出てくるはず。
 何しろ旧ロクサーナはこの頃から泥棒扱いされはじめたから。

 メリッサやステラの物がなくなりロクサーナの部屋から出てくる、ロクサーナの部屋に掃除に来たメイドがなくなったはずの銀器やちょっとした置物を見つける。


(鍵かぁ、高そう。しかも一文なしだし)


 もう少し大きくなれば仕事を探す事も出来るかもしれないが、7歳では自由に屋敷から出ることもできない。


 旧ロクサーナも仲が良かった庭師に相談してみた。

「鍵は高級品だからなあ、簡単には手に入らねえなあ」

「いくらくらい?」

「うーん、金貨2枚ってとこかな」



(ふむ、暫くは時間があるはずだからバイトができるようになる方法でも探すかな)



 そして思いついたのが、チョキチョキ・・チクチク・・。

 ロクサーナは有り余る暇な時間を使ってコツコツと黙々とひたすら作り続けた。

 チョキチョキ・・チクチク・・。



 ポラセリア王国は夏は暑いが冬になると極端に寒くなる所謂亜寒帯と呼ばれる地域。
 北方には針葉樹が林立し、痩せた土で春小麦・ライ麦・カブ・ジャガイモ・蕎麦などを栽培。南方では放牧や酪農を行っている。


 ロクサーナは冬に向けてキルトの作成に励んでいる。ミシンもアイロンもない手作業なので製作は遅々として進まないが、

(元手芸部の根性を思い知れ!)


 自分に発破を掛けながら日々頑張っていたが、材料が圧倒的に足りない事に悩み溜息をついた。


(仕方ない、あそこへ行くか)



 握りしめた両手に冷や汗をかきながらロクサーナは執務室のドアをノックした。

「お父さま、おねがいがあってまいりました」

 いつもと同じく顔も上げず声も発しない父親にロクサーナは震える声で要件を告げた。

「しっしきんていきょう資金提供をおねがいします」

 チャールズのペンが止まり顔を上げてロクサーナを見た。

「資金提供?」

「あっ、おこずかいのおねがいです」

 言葉のチョイスを間違えたと慌てふためくロクサーナをチャールズが凝視した。


「必要な物があればメリッサに言いなさい」

「あー、それはちょっとせんりゃくてき戦略的なもんだいが」

「ほう」

「ひみつなのです。そう、女の子にはいろいろとひみつがありますから」

「何に使う?」

「たいしたものではないのでお気になさらず」

「父親として気になるのは当然だが?」

「いえいえ、お父さまはそのようなこと気にかけるかたでは。
あっ、いや。おいそがしいですものね」

 テヘッと笑って誤魔化したロクサーナだがチャールズの顔が少し険悪になっている。


(ヤバい、まさかこの人が興味を持つとは・・やっぱりお金絡みだとねえ)


「おべんきょうのためにはりと糸をかいたいとおもうのです」

(これならどうだ?)


「なのにメリッサには言えないと」

「ないしょでれんしゅうしたいのです」


 黙り込んでロクサーナを見つめていたチャールズが引き出しから数枚の金貨を出してロクサーナに渡してくれた。

「買い物に行く時は必ずお前専属の侍女かメイドを連れて行くように」

「はい、もちろんです。ありがとうございます」


 専属の侍女もメイドもいないけどねー、と思いながら意気揚々と部屋に戻ったロクサーナ。


(針と糸・・刺繍の練習か? メリッサがロクサーナはやる気がなくて困ると不満を言っていたが、少しはやる気になったのか?
それなら殿下との婚約話を進めても良いかもしれんな。
王妃様から再三の催促が来ていることだしな)



 ふふふっとニヤけた笑いを浮かべながら金貨でお手玉をしているロクサーナはチャールズの思惑に気付いていなかった。


(ラッキーだけど針と糸買うのに金貨6枚? 金銭感覚おかしすぎ)

しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

気弱令息が婚約破棄されていたから結婚してみた。

古森きり
恋愛
「アンタ情けないのよ!」と、目の前で婚約破棄された令息がべそべそ泣きながら震えていたのが超可愛い!と思った私、フォリシアは小動物みたいな彼に手を差し出す。 男兄弟に囲まれて育ったせいなのか、小さくてか弱い彼を自宅に連れて帰って愛でようかと思ったら――え? あなた公爵様なんですか? カクヨムで読み直しナッシング書き溜め。 アルファポリス、ベリーズカフェ、小説家になろうに掲載しています。

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

処理中です...