5 / 41
5.生活改善してる場合じゃなかった
しおりを挟む
旧ロクサーナの食事はメリッサとステラの食事が終わってから、その残り物の一部が皿に盛られ厨房のテーブルの端に置かれている。
たまに肉や魚がある時もあるが、めぼしい物は厨房で働く使用人が食べてしまうのでパンとスープだけというのが定番のメニューで・・旧ロクサーナはそれを部屋に持ち帰り一人で食べていた。
新ロクサーナはそれまでより少し早めに厨房に行き、厨房の隅に陣取りパンを食べながら周りをキョロキョロ。
領主に出した料理の残りを分け合い、自分達専用に作った食事と一緒に食べていた料理人やメイドと目が合うとにっこり。
気心が知れてきたのか罪悪感に耐えきれなくなったのかほんの少しずつ品数が増えてきった。
(よっし、今日は林檎一切れゲット!)
メニューの改善と共に新ロクサーナが狙ったのは部屋の模様替え・・と言うか、家具の調達。
まず、入り口から見えるところには倉庫から運び込んだ木箱を積み上げた。
そしてメリッサにバレても文句が出ない程度を狙い、木箱の陰にローテーブルとクッションを置いた。
この世界にはローテーブルはないが、木箱を2つ並べその他に倉庫の隅で朽ちかけていた布や枕を使ってチクチク。
畳はなくても使い古しの絨毯を重ねれば最高の寛ぎスペースが出来上がった。
少し欠けたカップと蓋の割れたティーポット。今はまだ水しかないがいずれはお湯・・いつかは紅茶と夢を膨らませている。
その次に裂いた布をしっかりと撚り合わせ窓から外へ出られる長さの縄梯子を作った。
持っているのはチュニックが2枚と寝巻きが1枚。あちこち解れていたので倉庫から針と糸を頂戴してチクチク。
木から落ちて目が覚めた後から少しずつ生活改善していたら・・。
「覚えているだろうがリチャード王子との顔合わせは明日だ。準備はメリッサが手伝ってくれるが、それまで大人しくしていなさい」
(忘れてた! 一番肝心な事・・泣)
父親に呼び出され王宮に行くという最悪の知らせを聞いた翌日。
仕立て屋が持って来たドレスを着てサイズの確認をしたらロクサーナは部屋に戻るように指示された。
(似合わなかったー。7歳児に濃い紫のドレスって酷くない? しかもリボンは黒だよ)
ぶつぶつと小声で文句を言いつつも周りの様子を窺いながら部屋に戻った。
秘密のセットを手にドアの側でスタンバイし、厨房から声が聞こえなくなった時を狙いダッシュで裏庭に駆け込んだ。
裏庭の一番奥に目的のハゼの木が立っていた。灰褐色の樹皮に網目状に裂けたような模様ができているその木は、葉や枝から出てくる白い樹液で皮膚がかぶれる。
「嬢ちゃん、この木だけは触っちゃなんねえぞ」
庭師から聞いた話を思い出しながら枝にナイフで傷をつけると、真っ白な樹液がじわっと染み出してきた。
時間はかかったが、準備していた麻の布にたっぷりと含ませることが出来た。それを水で少し薄めて・・。
これだけあれば明日必ず役に立ってくれるはずだと思いながら、駆け足で屋敷に戻っていった。
(可哀想?・・全然)
翌日の昼過ぎに悪趣味な紫色のドレスを着込んだロクサーナはメリッサとステラと3人で馬車に乗り込んだ。
ロクサーナは真っ直ぐに下ろした髪にドレスと共布の紫色のリボンを結び踵のない赤い靴を履いている。
ステラは淡い緑のドレスに白いレースがふんだんに使われているとても可愛らしい装いだった。
ウエストにやや濃い緑のリボンを巻き、後ろで大きな蝶結びをしている。
サイドを編み込んだ髪には小さな宝石がついた髪飾りをつけ白い靴を履いている。
(そう言えば、アイツの目はグリーンだった)
無言のままの馬車が王宮に着き庭園に案内された。
たまに肉や魚がある時もあるが、めぼしい物は厨房で働く使用人が食べてしまうのでパンとスープだけというのが定番のメニューで・・旧ロクサーナはそれを部屋に持ち帰り一人で食べていた。
新ロクサーナはそれまでより少し早めに厨房に行き、厨房の隅に陣取りパンを食べながら周りをキョロキョロ。
領主に出した料理の残りを分け合い、自分達専用に作った食事と一緒に食べていた料理人やメイドと目が合うとにっこり。
気心が知れてきたのか罪悪感に耐えきれなくなったのかほんの少しずつ品数が増えてきった。
(よっし、今日は林檎一切れゲット!)
メニューの改善と共に新ロクサーナが狙ったのは部屋の模様替え・・と言うか、家具の調達。
まず、入り口から見えるところには倉庫から運び込んだ木箱を積み上げた。
そしてメリッサにバレても文句が出ない程度を狙い、木箱の陰にローテーブルとクッションを置いた。
この世界にはローテーブルはないが、木箱を2つ並べその他に倉庫の隅で朽ちかけていた布や枕を使ってチクチク。
畳はなくても使い古しの絨毯を重ねれば最高の寛ぎスペースが出来上がった。
少し欠けたカップと蓋の割れたティーポット。今はまだ水しかないがいずれはお湯・・いつかは紅茶と夢を膨らませている。
その次に裂いた布をしっかりと撚り合わせ窓から外へ出られる長さの縄梯子を作った。
持っているのはチュニックが2枚と寝巻きが1枚。あちこち解れていたので倉庫から針と糸を頂戴してチクチク。
木から落ちて目が覚めた後から少しずつ生活改善していたら・・。
「覚えているだろうがリチャード王子との顔合わせは明日だ。準備はメリッサが手伝ってくれるが、それまで大人しくしていなさい」
(忘れてた! 一番肝心な事・・泣)
父親に呼び出され王宮に行くという最悪の知らせを聞いた翌日。
仕立て屋が持って来たドレスを着てサイズの確認をしたらロクサーナは部屋に戻るように指示された。
(似合わなかったー。7歳児に濃い紫のドレスって酷くない? しかもリボンは黒だよ)
ぶつぶつと小声で文句を言いつつも周りの様子を窺いながら部屋に戻った。
秘密のセットを手にドアの側でスタンバイし、厨房から声が聞こえなくなった時を狙いダッシュで裏庭に駆け込んだ。
裏庭の一番奥に目的のハゼの木が立っていた。灰褐色の樹皮に網目状に裂けたような模様ができているその木は、葉や枝から出てくる白い樹液で皮膚がかぶれる。
「嬢ちゃん、この木だけは触っちゃなんねえぞ」
庭師から聞いた話を思い出しながら枝にナイフで傷をつけると、真っ白な樹液がじわっと染み出してきた。
時間はかかったが、準備していた麻の布にたっぷりと含ませることが出来た。それを水で少し薄めて・・。
これだけあれば明日必ず役に立ってくれるはずだと思いながら、駆け足で屋敷に戻っていった。
(可哀想?・・全然)
翌日の昼過ぎに悪趣味な紫色のドレスを着込んだロクサーナはメリッサとステラと3人で馬車に乗り込んだ。
ロクサーナは真っ直ぐに下ろした髪にドレスと共布の紫色のリボンを結び踵のない赤い靴を履いている。
ステラは淡い緑のドレスに白いレースがふんだんに使われているとても可愛らしい装いだった。
ウエストにやや濃い緑のリボンを巻き、後ろで大きな蝶結びをしている。
サイドを編み込んだ髪には小さな宝石がついた髪飾りをつけ白い靴を履いている。
(そう言えば、アイツの目はグリーンだった)
無言のままの馬車が王宮に着き庭園に案内された。
42
お気に入りに追加
1,747
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。
松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。
全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……
三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」
ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。
何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。
えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。
正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。
どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
婚約破棄の『めでたしめでたし』物語
サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。
この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!?
プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。
貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる