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14.これからの予定は?
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アリシアはエリーの顔を覗き込んだ。
「私もマイケルとお手紙の交換がしたいです」
アリシアの顔を見上げはっきりと気持ちを口にしたエリーに優しく微笑んだアリシアはマイケルに向かって頭を下げた。
「この子も望んでいるようですわ。どうか宜しくお願いします」
「じゃあ、出かける前にうち弟の料理でよければ召し上がって行かれませんか? こんな顔してますけど結構料理は真面ですのよ」
シリルが笑顔でアリシアとマイラに声をかけた。
「顔は余計だろうが。てめえのドレス姿の方がよっぽど真面じゃねえぞ」
「あら、アンタと違って奥様は褒めてくださったわ」
「ええ、色使いがとても素敵ですわ」
ほらねと言いたげなドヤ顔のシリルに一睨みしたケビン。
「ったく、社交辞令を鵜呑みにしやがって」
そう言いながら厨房に入って行ったケビンはスープの入った鍋を火にかけ料理をはじめた。
「じゃあエリーの今後の予定について話しましょうね。シリルさんとマイケルさんも良かったらご一緒して下さいな」
ケビンを除く5人でテーブルを囲んでアリシアの話を聞くことになった。エリーはアリシアの事を信頼しているがこのままではいられない事は覚悟していた。
(うちに帰らないといけないってなったらどうしよう)
エリーの不安げな顔を見たマイラがエリーの頭を撫でた。
「心配しなくてもあんなクソ兄貴の所へなんて帰さないわ」
「勿論ですとも。あの子達には散々言って聞かせたけれどもう堪忍袋の緒が切れました。
サロニカ王国って知ってるでしょう? あの国に全寮制のとても優秀な学園があるの、エリーはそこに編入してはどうかと思うの」
サロニカ王国はロンダール王国の西に位置する小国で、特に目立った産業はないが学術の研究機関が集まり各国から研究者や知識人が多く訪れる。
その中でも有名なパドラス大学は法律と神学にはじまり現在学部は民法・天文学・弁証法・哲学・文法・医学・修辞学と多岐にわたっている。
「パドラス大学附属学園の入学試験を受けて見たらどうかと思うの」
パラドス附属学園は非常にレベルが高く入学試験は一般の学園の中等部程度の学力が必要だと言われている。マイケルはアリシアの言葉にギョッとした。
「エリーがこの1年間以前と同じくらいお勉強を頑張っていれば大丈夫だと思うわよ。元々お母様はエリーをパドラスに入れるつもりで鍛えておられたんだもの」
「家に帰って先生が教えて下さる内容があまりにも簡単で吃驚したの。送って頂いた本でずっと勉強は続けていたけど・・。もし落ちたら」
1年間の独学がどれほど成果を上げているか分からないエリーは入学試験に尻込みしてしまった。
「落ちたらサロニカで1年間勉強三昧してもらう事になるわよー」
マイラがエリーの方に少し身を屈め顔を覗き込んだ。
「マイラ、エリーを脅かさないでちょうだい。パドラスに入れたらサイラスには文句が言えなくなるわ」
「そうか・・お祖母様私試験受けてみます。あの家に帰るのは絶対に嫌だもの」
「確かにパドラス大学の附属学園を退学して家に戻らせるなんてありえないものねぇ。アンタのお祖母様想像以上に頭の良い方ね」
「あら、シリルさんに褒められちゃったわ」
料理を運んできたケビンがくすくすと笑っているアリシアを見て苦笑した。
「おい、調子に乗ってねえでさっさと皿を運べよ」
「あっ、僕も手伝います」
「私も」
「可愛い子が2人もいたらあたし「つべこべ言ってねえで働け!」」
砂糖をかけたパンケーキ・スープ・モスタルダと呼ばれる果物のシロップ漬けをかけたオムレツがテーブルに並べられた。
この後エリーは家族からの使者に会わないために祖母達と一緒に直接サロニカ王国へ向かう。
「いくらあの子が愚かでもこのまま知らん顔で済ませる訳にはいかないくらいはわかってるはずですからね」
エリーが逃げ出す先はアリシアの元しか考えられない為いずれ誰が迎えにやってくるだろうが、サロニカ王国にいれば当分は見つからない。
「サロニカにいる知人には手紙を送ってあるから着いた頃には屋敷の手配は済んでいるはずよ」
「お祖母様達もサロニカにお住みになられるのですか?」
「ええ、前々からお誘いを受けているから暫く滞在しようと思っていたの。
お友達がとても有意義なサロンを開いていらっしゃるから参加するのがとても楽しみ」
「サロン?」
「私もマイケルとお手紙の交換がしたいです」
アリシアの顔を見上げはっきりと気持ちを口にしたエリーに優しく微笑んだアリシアはマイケルに向かって頭を下げた。
「この子も望んでいるようですわ。どうか宜しくお願いします」
「じゃあ、出かける前にうち弟の料理でよければ召し上がって行かれませんか? こんな顔してますけど結構料理は真面ですのよ」
シリルが笑顔でアリシアとマイラに声をかけた。
「顔は余計だろうが。てめえのドレス姿の方がよっぽど真面じゃねえぞ」
「あら、アンタと違って奥様は褒めてくださったわ」
「ええ、色使いがとても素敵ですわ」
ほらねと言いたげなドヤ顔のシリルに一睨みしたケビン。
「ったく、社交辞令を鵜呑みにしやがって」
そう言いながら厨房に入って行ったケビンはスープの入った鍋を火にかけ料理をはじめた。
「じゃあエリーの今後の予定について話しましょうね。シリルさんとマイケルさんも良かったらご一緒して下さいな」
ケビンを除く5人でテーブルを囲んでアリシアの話を聞くことになった。エリーはアリシアの事を信頼しているがこのままではいられない事は覚悟していた。
(うちに帰らないといけないってなったらどうしよう)
エリーの不安げな顔を見たマイラがエリーの頭を撫でた。
「心配しなくてもあんなクソ兄貴の所へなんて帰さないわ」
「勿論ですとも。あの子達には散々言って聞かせたけれどもう堪忍袋の緒が切れました。
サロニカ王国って知ってるでしょう? あの国に全寮制のとても優秀な学園があるの、エリーはそこに編入してはどうかと思うの」
サロニカ王国はロンダール王国の西に位置する小国で、特に目立った産業はないが学術の研究機関が集まり各国から研究者や知識人が多く訪れる。
その中でも有名なパドラス大学は法律と神学にはじまり現在学部は民法・天文学・弁証法・哲学・文法・医学・修辞学と多岐にわたっている。
「パドラス大学附属学園の入学試験を受けて見たらどうかと思うの」
パラドス附属学園は非常にレベルが高く入学試験は一般の学園の中等部程度の学力が必要だと言われている。マイケルはアリシアの言葉にギョッとした。
「エリーがこの1年間以前と同じくらいお勉強を頑張っていれば大丈夫だと思うわよ。元々お母様はエリーをパドラスに入れるつもりで鍛えておられたんだもの」
「家に帰って先生が教えて下さる内容があまりにも簡単で吃驚したの。送って頂いた本でずっと勉強は続けていたけど・・。もし落ちたら」
1年間の独学がどれほど成果を上げているか分からないエリーは入学試験に尻込みしてしまった。
「落ちたらサロニカで1年間勉強三昧してもらう事になるわよー」
マイラがエリーの方に少し身を屈め顔を覗き込んだ。
「マイラ、エリーを脅かさないでちょうだい。パドラスに入れたらサイラスには文句が言えなくなるわ」
「そうか・・お祖母様私試験受けてみます。あの家に帰るのは絶対に嫌だもの」
「確かにパドラス大学の附属学園を退学して家に戻らせるなんてありえないものねぇ。アンタのお祖母様想像以上に頭の良い方ね」
「あら、シリルさんに褒められちゃったわ」
料理を運んできたケビンがくすくすと笑っているアリシアを見て苦笑した。
「おい、調子に乗ってねえでさっさと皿を運べよ」
「あっ、僕も手伝います」
「私も」
「可愛い子が2人もいたらあたし「つべこべ言ってねえで働け!」」
砂糖をかけたパンケーキ・スープ・モスタルダと呼ばれる果物のシロップ漬けをかけたオムレツがテーブルに並べられた。
この後エリーは家族からの使者に会わないために祖母達と一緒に直接サロニカ王国へ向かう。
「いくらあの子が愚かでもこのまま知らん顔で済ませる訳にはいかないくらいはわかってるはずですからね」
エリーが逃げ出す先はアリシアの元しか考えられない為いずれ誰が迎えにやってくるだろうが、サロニカ王国にいれば当分は見つからない。
「サロニカにいる知人には手紙を送ってあるから着いた頃には屋敷の手配は済んでいるはずよ」
「お祖母様達もサロニカにお住みになられるのですか?」
「ええ、前々からお誘いを受けているから暫く滞在しようと思っていたの。
お友達がとても有意義なサロンを開いていらっしゃるから参加するのがとても楽しみ」
「サロン?」
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