28 / 33
28.喋る喋る、息継ぎなし?
しおりを挟む
「結婚⋯⋯し⋯⋯てない?」
「先ず一つ目です。ローゼン商会はわたくし主導で友人数名と共に立ち上げた商会ですの。離籍することを念頭に入れ会長職はバーラム公爵家のライリー様に押し付け⋯⋯お願いいたしました。
少しばかり自慢話をさせていただくならばそれなりの資産がございますの。ですから、契約書にはわざわざ『生活費・個人資産は別会計』と入れさせていただきました。
次に二つ目です。お預かりした婚姻届ですけれど、郵送前に不備に気付きましたので提出しておりませんの。
つ・ま・り、未だに婚約のままという事ですわね。
イーサン様が『白い結婚だ!』と楽しそうに叫ばれた時にはウケて⋯⋯驚いてしまいましたけれど、ご病気の公爵閣下の目の前で『最後』ですとか聞くに堪えない暴言を吐かれたので気付きました。
イーサン様は元々お父様からご許可をいただくなどの基本的な交流さえしておられなかったのですね。
平民になるご予定があったのであれば別ですけれども、この国では結婚する際当主の許可が必要ですものね。エスメラルダ様が代理でサインしておられましたが、当主代理としての申請をしておられませんでしたから無効ですね。
まさかこのような基本事項をエスメラルダ様もイーサン様もご存知なかったのでしょうか?
あの書類は結婚詐欺の証拠になりかねませんわよ?」
「平民になんてなるわけない! 俺は次期公爵なんだからな!!」
「なれればいいですわねえ。あっ、大変失礼いたしました! つい本音が⋯⋯。
数々の罪を犯された方であっても運が良ければ爵位を継げる可能性もなくはないでしょうしね、禁固刑にならなかったり短かったりすればそれはそれで⋯⋯。
社交界に受け入れられるかどうかはともかく。
まあ、老婆心ながら申し上げますと、イーサン様が暴言暴力などをされた方の中に高位貴族の方が何人もいらっしゃるとご存知です?
その方々からも勿論名誉毀損などで訴えられておりますから、加算方式で量刑の決まるこの国ではなかなかに大変だと思われますわ」
「ま、待ってくれ⋯⋯もしかしてあの時の店員は全部?」
「役員はバーラム公爵家・ホズウエル侯爵家・ナダル伯爵家・ノックス伯爵家とモーガン侯爵家ですわね。
わたくし以外の方達の事は社交界ではよく知られているそうですわ。
あ、バーラム公爵家は窃盗罪でも訴えたと仰っておられましたわねえ。なんでも馬車になんとなーく置いておいたシャンパンが空になっていたそうですの⋯⋯。誰からも飲んでいいか聞かれてないとか仰っておられましたから間違いなく窃盗ですわねえ」
「あんな風に置いてあったら飲んでいいって思うに決まってんじゃん!!」
「そこは見解の違いですかしら? 真面な頭をお持ちの方なら確認すると思いますわ。非売品と試供品の違いも分からない方達ではちょーっと難しかったですかしらね」
「お前が副会長だって知ってたらあんな契約書なんかサインしなかったのに⋯⋯それこそ詐欺だろうが!」
「まあ、詐欺だなんて! どうしましょう、これは追加の名誉毀損案件ですわ⋯⋯こんな最後になって罪状を増やさないでくださいませ。訴状を作るの面倒なんですのよ? 肩が凝りますしね。
それに、最低⋯⋯最悪⋯⋯特殊な過去をお持ちの方との婚約ですもの。財産狙いの方がこれ以上増えては困りますから、契約書を作るのは当然ですわ」
「⋯⋯決めた! 俺は生涯お前に尽くしてやるから、このまま結婚しよう。喜べ! 今までどこからも釣書が届かなかった貴様を俺がもらってやる。貧相な行かず後家だと思ってたがその見た目なら問題ない、子供が欲しければ寝屋の相手もしてやる。
貴様らが訴えを取り下げたら、次期公爵夫人にしてやるからな」
「なら、アタシのも取り消してよね!」
「あら、全部お断りしますわ。ゲス野郎と結婚だなんて生き地獄ですし、訴えを取り下げる理由なんてありませんもの」
「ゲ、ゲス野郎だと!!」
「はい、そう申しました。因みに釣書は結構届いておりましたけれど、モーガン侯爵が勝手に断っておられましたの。
わたくしはモーガン侯爵家にとって使い潰す予定の『介護要員』『雑務担当要員』でしたから結婚されては困るという事で釣書が届かないと言う事にしたようですわ。
ほら、世間に向けては良い家族を演じるのがお好きな方達ですから。
あの方達、イーサン様達とゲス仲間になれそうなほど腐ってますから、条件のいいお話は義妹に回しては顰蹙を買っておられましたの」
「で、でも⋯⋯このままじゃ」
「イーサン、いい加減にしなさい」
リチャードが起き上がりメアリーとウォルターに支えられて立ち上がった。
「先ず一つ目です。ローゼン商会はわたくし主導で友人数名と共に立ち上げた商会ですの。離籍することを念頭に入れ会長職はバーラム公爵家のライリー様に押し付け⋯⋯お願いいたしました。
少しばかり自慢話をさせていただくならばそれなりの資産がございますの。ですから、契約書にはわざわざ『生活費・個人資産は別会計』と入れさせていただきました。
次に二つ目です。お預かりした婚姻届ですけれど、郵送前に不備に気付きましたので提出しておりませんの。
つ・ま・り、未だに婚約のままという事ですわね。
イーサン様が『白い結婚だ!』と楽しそうに叫ばれた時にはウケて⋯⋯驚いてしまいましたけれど、ご病気の公爵閣下の目の前で『最後』ですとか聞くに堪えない暴言を吐かれたので気付きました。
イーサン様は元々お父様からご許可をいただくなどの基本的な交流さえしておられなかったのですね。
平民になるご予定があったのであれば別ですけれども、この国では結婚する際当主の許可が必要ですものね。エスメラルダ様が代理でサインしておられましたが、当主代理としての申請をしておられませんでしたから無効ですね。
まさかこのような基本事項をエスメラルダ様もイーサン様もご存知なかったのでしょうか?
あの書類は結婚詐欺の証拠になりかねませんわよ?」
「平民になんてなるわけない! 俺は次期公爵なんだからな!!」
「なれればいいですわねえ。あっ、大変失礼いたしました! つい本音が⋯⋯。
数々の罪を犯された方であっても運が良ければ爵位を継げる可能性もなくはないでしょうしね、禁固刑にならなかったり短かったりすればそれはそれで⋯⋯。
社交界に受け入れられるかどうかはともかく。
まあ、老婆心ながら申し上げますと、イーサン様が暴言暴力などをされた方の中に高位貴族の方が何人もいらっしゃるとご存知です?
その方々からも勿論名誉毀損などで訴えられておりますから、加算方式で量刑の決まるこの国ではなかなかに大変だと思われますわ」
「ま、待ってくれ⋯⋯もしかしてあの時の店員は全部?」
「役員はバーラム公爵家・ホズウエル侯爵家・ナダル伯爵家・ノックス伯爵家とモーガン侯爵家ですわね。
わたくし以外の方達の事は社交界ではよく知られているそうですわ。
あ、バーラム公爵家は窃盗罪でも訴えたと仰っておられましたわねえ。なんでも馬車になんとなーく置いておいたシャンパンが空になっていたそうですの⋯⋯。誰からも飲んでいいか聞かれてないとか仰っておられましたから間違いなく窃盗ですわねえ」
「あんな風に置いてあったら飲んでいいって思うに決まってんじゃん!!」
「そこは見解の違いですかしら? 真面な頭をお持ちの方なら確認すると思いますわ。非売品と試供品の違いも分からない方達ではちょーっと難しかったですかしらね」
「お前が副会長だって知ってたらあんな契約書なんかサインしなかったのに⋯⋯それこそ詐欺だろうが!」
「まあ、詐欺だなんて! どうしましょう、これは追加の名誉毀損案件ですわ⋯⋯こんな最後になって罪状を増やさないでくださいませ。訴状を作るの面倒なんですのよ? 肩が凝りますしね。
それに、最低⋯⋯最悪⋯⋯特殊な過去をお持ちの方との婚約ですもの。財産狙いの方がこれ以上増えては困りますから、契約書を作るのは当然ですわ」
「⋯⋯決めた! 俺は生涯お前に尽くしてやるから、このまま結婚しよう。喜べ! 今までどこからも釣書が届かなかった貴様を俺がもらってやる。貧相な行かず後家だと思ってたがその見た目なら問題ない、子供が欲しければ寝屋の相手もしてやる。
貴様らが訴えを取り下げたら、次期公爵夫人にしてやるからな」
「なら、アタシのも取り消してよね!」
「あら、全部お断りしますわ。ゲス野郎と結婚だなんて生き地獄ですし、訴えを取り下げる理由なんてありませんもの」
「ゲ、ゲス野郎だと!!」
「はい、そう申しました。因みに釣書は結構届いておりましたけれど、モーガン侯爵が勝手に断っておられましたの。
わたくしはモーガン侯爵家にとって使い潰す予定の『介護要員』『雑務担当要員』でしたから結婚されては困るという事で釣書が届かないと言う事にしたようですわ。
ほら、世間に向けては良い家族を演じるのがお好きな方達ですから。
あの方達、イーサン様達とゲス仲間になれそうなほど腐ってますから、条件のいいお話は義妹に回しては顰蹙を買っておられましたの」
「で、でも⋯⋯このままじゃ」
「イーサン、いい加減にしなさい」
リチャードが起き上がりメアリーとウォルターに支えられて立ち上がった。
38
お気に入りに追加
3,640
あなたにおすすめの小説
妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました
日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」
公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。
それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。
そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。
※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました
サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。
「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」
やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる