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12.ベリー嫌いの苺好き
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「凄い、凄いぞタイラー! さすが俺の弟分だな、うん。お前はやればできる男だってずーっとずーっと思ってたんだ」
ギルバートに頭を抱え込まれたタイラーが真っ赤な顔で逃げ出した。
「サ、サラのお陰だし。もう子供扱いはやめてくれ、僕だってやる時はやるに決まってる!」
「⋯⋯みんな、聞いたか? タイラーが、あの人見知りで引きこもりだったタイラーが長文を話してる」
感極まったギルバートが涙目になっている前で、ライリーはせっせとケーキを切り分けていた。
「ねえ、ほんとにみんなで食べていいの?」
「勿論よ、ホールケーキなんだもん」
「六つに切り分けてサラが2つだね」
ライリーが大きめに切ったケーキの乗った皿をメリッサとサラに手渡した。勿論、一番小さいのをギルバートに⋯⋯。
「なんであんなにお馬鹿なんだ? セドリックは凄く頭も良かったし性格もイーサンとは正反対だったのに」
ケーキに乗ったラズベリーをギルバートの皿にポイポイと乗せながらライリーがメリッサに問いただした。
因みにギルバートは大のベリー嫌いなので、ギルバートの涙が速攻で引っ込んだのはライリーのお陰かもしれない。
「母親のせいね。セドリックは後継として父親から厳しく育てられたけど、イーサンは母親にベッタリだったから。見ているのが気持ち悪いくらい甘々だったわ。
学園に入学する年になっても『あーん』してもらってたのを見た時は顎が落ちるかと思った」
「毎回毎回楽しませてくれるよな。俺の番が待ち遠しくて堪んないよ」
ニヤニヤと笑いを浮かべるライリーはギルバートの皿から苺を盗んでポイっと口に放り込んだ。
「あっ! てめえ、俺の苺ちゃんを食いやがったな」
「早いもん勝ち⋯⋯あっ!」
ドヤ顔をしていたライリーの皿の苺にギルバートのフォークが突き刺さった。
「早いもん勝ちだろ?」
「くそ! ベリー嫌いのくせしやがって」
「一ヶ月も待たされて⋯⋯ぼ、僕は今晩⋯⋯爆睡する予定なんで明日は休みをもらいました」
「目の下のクマが消えるまで休みを取るといいかもよ~。少々じゃ消えそうにないもん」
「次は間違いなくサラんとこだな」
「多分ね。ウエディングドレス作るって言うんだと思うけど⋯⋯気が重いなあ。行くのやめよっかな」
「そう言いながら準備してるくせに」
「まあね、商品を傷つけられたら困るもん。大切な一点ものとか手に入れにくい布とかは見せたくないのよね」
元々古着屋からはじまったローゼン商会だけに、衣類関係は特に充実している。
身分や種族に合わせた服はそれぞれの文化に合う素材を使ったこだわりの品も多く、フロアの総面積は大型家具も取り扱う店よりも広い。
「来るとしたら本店の3階かあ」
「ギルバートへの恐怖を乗り越えて来れるのかしら」
「あれから一ヶ月経ってるから、『喉元過ぎれば暑さを忘れる』ってやつじゃないかな」
本人は気づいていないようだが、吃らなくなったタイラーは少しずつ会話に参加することが増えはじめていた。
「鶏の三足だな。三歩歩いたら忘れるってやつ」
「毎回サラは顔を見せてるのに未だに気付かねえとか超ウケるぜ。いつ気がつくんだろうかって、すっげえ楽しみ~」
サラ達に楽しく『ざまぁ』されている事に気付いていないイーサンとアリーシャは、ソファの端と端に離れて座り顔を背けていた。
「お前、俺の前で男に媚び売るとか信じらんねえんだけど?」
「アンタだってチラチラ見かける銀髪女を気にしてるじゃん」
「俺は高位貴族の嫡男だぞ!? 平民に落ちたお前に文句を言われる筋合いなんかないからな!」
「⋯⋯偉そうにしないでよね。卒業パーティーの時結婚するって言ったのに、約束守ってくれなかったからこんな事になったんじゃん」
「それは、ママが⋯⋯兎に角、不貞は許さないからな! でないと捨てて他の女を連れてくる」
「⋯⋯分かってるってばぁ、アタシが大好きなのはイーサンだって知ってるでしょ?」
これからイーサンが自由にできるはずの資産を思い浮かべたアリーシャはイーサンの横ににじり寄り上目遣いでうっすらと涙を浮かべた。
「捨てるなんて酷い⋯⋯例え話でも悲しくなっちゃう」
大きな胸を両手で寄せてイーサンの腕にしがみつくと目に見えて鼻の下を伸ばしてアリーシャをソファに押し倒してきた。
「可愛く甘えるなら今回は許してやる」
「イーサンもぉ、あんな女なんか気にしないでね」
「うん」
イーサンが下半身に思考を奪われ本能だけの獣になっていくのをアリーシャは冷ややかな目で見つめながら頭を働かせた。
(毎回イーサンが邪魔なのよね。次はアタシ一人で話を進めてくるわ)
ギルバートに頭を抱え込まれたタイラーが真っ赤な顔で逃げ出した。
「サ、サラのお陰だし。もう子供扱いはやめてくれ、僕だってやる時はやるに決まってる!」
「⋯⋯みんな、聞いたか? タイラーが、あの人見知りで引きこもりだったタイラーが長文を話してる」
感極まったギルバートが涙目になっている前で、ライリーはせっせとケーキを切り分けていた。
「ねえ、ほんとにみんなで食べていいの?」
「勿論よ、ホールケーキなんだもん」
「六つに切り分けてサラが2つだね」
ライリーが大きめに切ったケーキの乗った皿をメリッサとサラに手渡した。勿論、一番小さいのをギルバートに⋯⋯。
「なんであんなにお馬鹿なんだ? セドリックは凄く頭も良かったし性格もイーサンとは正反対だったのに」
ケーキに乗ったラズベリーをギルバートの皿にポイポイと乗せながらライリーがメリッサに問いただした。
因みにギルバートは大のベリー嫌いなので、ギルバートの涙が速攻で引っ込んだのはライリーのお陰かもしれない。
「母親のせいね。セドリックは後継として父親から厳しく育てられたけど、イーサンは母親にベッタリだったから。見ているのが気持ち悪いくらい甘々だったわ。
学園に入学する年になっても『あーん』してもらってたのを見た時は顎が落ちるかと思った」
「毎回毎回楽しませてくれるよな。俺の番が待ち遠しくて堪んないよ」
ニヤニヤと笑いを浮かべるライリーはギルバートの皿から苺を盗んでポイっと口に放り込んだ。
「あっ! てめえ、俺の苺ちゃんを食いやがったな」
「早いもん勝ち⋯⋯あっ!」
ドヤ顔をしていたライリーの皿の苺にギルバートのフォークが突き刺さった。
「早いもん勝ちだろ?」
「くそ! ベリー嫌いのくせしやがって」
「一ヶ月も待たされて⋯⋯ぼ、僕は今晩⋯⋯爆睡する予定なんで明日は休みをもらいました」
「目の下のクマが消えるまで休みを取るといいかもよ~。少々じゃ消えそうにないもん」
「次は間違いなくサラんとこだな」
「多分ね。ウエディングドレス作るって言うんだと思うけど⋯⋯気が重いなあ。行くのやめよっかな」
「そう言いながら準備してるくせに」
「まあね、商品を傷つけられたら困るもん。大切な一点ものとか手に入れにくい布とかは見せたくないのよね」
元々古着屋からはじまったローゼン商会だけに、衣類関係は特に充実している。
身分や種族に合わせた服はそれぞれの文化に合う素材を使ったこだわりの品も多く、フロアの総面積は大型家具も取り扱う店よりも広い。
「来るとしたら本店の3階かあ」
「ギルバートへの恐怖を乗り越えて来れるのかしら」
「あれから一ヶ月経ってるから、『喉元過ぎれば暑さを忘れる』ってやつじゃないかな」
本人は気づいていないようだが、吃らなくなったタイラーは少しずつ会話に参加することが増えはじめていた。
「鶏の三足だな。三歩歩いたら忘れるってやつ」
「毎回サラは顔を見せてるのに未だに気付かねえとか超ウケるぜ。いつ気がつくんだろうかって、すっげえ楽しみ~」
サラ達に楽しく『ざまぁ』されている事に気付いていないイーサンとアリーシャは、ソファの端と端に離れて座り顔を背けていた。
「お前、俺の前で男に媚び売るとか信じらんねえんだけど?」
「アンタだってチラチラ見かける銀髪女を気にしてるじゃん」
「俺は高位貴族の嫡男だぞ!? 平民に落ちたお前に文句を言われる筋合いなんかないからな!」
「⋯⋯偉そうにしないでよね。卒業パーティーの時結婚するって言ったのに、約束守ってくれなかったからこんな事になったんじゃん」
「それは、ママが⋯⋯兎に角、不貞は許さないからな! でないと捨てて他の女を連れてくる」
「⋯⋯分かってるってばぁ、アタシが大好きなのはイーサンだって知ってるでしょ?」
これからイーサンが自由にできるはずの資産を思い浮かべたアリーシャはイーサンの横ににじり寄り上目遣いでうっすらと涙を浮かべた。
「捨てるなんて酷い⋯⋯例え話でも悲しくなっちゃう」
大きな胸を両手で寄せてイーサンの腕にしがみつくと目に見えて鼻の下を伸ばしてアリーシャをソファに押し倒してきた。
「可愛く甘えるなら今回は許してやる」
「イーサンもぉ、あんな女なんか気にしないでね」
「うん」
イーサンが下半身に思考を奪われ本能だけの獣になっていくのをアリーシャは冷ややかな目で見つめながら頭を働かせた。
(毎回イーサンが邪魔なのよね。次はアタシ一人で話を進めてくるわ)
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