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8.お待ちしておりました! byメリッサ
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「はあ? 見せなさいって言ったんだけど!?」
「非常に繊細な作品でして、触れる事はご容赦いただいております」
そのテーブルクロスはこの店のオープン記念としてボビンレースの本場からプレゼントされた品の一つで、月替わりで展示している貴重な品。
「ケチくさいわね。買ったげるって言ってんのに、こっちに持ってきなさいよ!!」
サラとメリッサはそっと店の中に入って行った。
「はぁ、全くローゼン商会は使えん店ばかりだな。噂とは大違いだよ⋯⋯って、あれ? おい、そこの店員。お前どっかで会ったような⋯⋯ちょっとこっち来⋯⋯」
「申し訳ありません」
サラを見つけたイーサンが手を掴んだが、間に入った店員が少し声を張り上げた。
「謝るとかどうでもいいわ、ちょっとそこ、どきなさいよ!」
頭を下げて謝っていた男性店員を突き飛ばしたアリーシャはカウンターの中に入り込みテーブルクロスに手を伸ばした。
「お客様! 困ります、おやめ下さい!!」
吹き飛ばされた店員の元にメリッサが走り寄り、サラはアリーシャの前で両手を広げた。
「カウンターの中はご遠慮下さい」
「うっせえんだよ! 客が買うって言ったら売るのが商売だろうが! そのくらいの事も出来ないなら潰れてしまえ」
イーサンが女性店員に手を伸ばした時メリッサが前に出てイーサンの腕を掴んだ。
「お客様、店員に手を出すのはおやめ下さい」
「は? なんだお前は」
「雑貨部門を担当しております、メリッサ・ナダルと申します」
「ふーん、ならちょうどいい。さっきからあそこに飾ってあるテーブルクロスを買うと言ってるのに、店員がガタガタわけのわからんことを言うんだが?」
「説明書きにもありますように、あのお品は非売品でございます」
「だからなんだよ! あー、非売品ならタダでいいよなぁ、試供品とおんなじだよなあ」
メリッサの扇子がぼきりと音を立てて二つに割れた。
「お断りいたします」
「俺が誰だか分かってないんだろうがイーサン・ボクス⋯⋯次期公爵だぞ! そんな態度をとって良いと思ってるのか!?」
「はい、よーく存じておりますし非売品を寄越せなどと破落戸か盗賊のどちらかだと思っております」
「はあ? 言っていい事と悪い事があるだろうが! 不敬罪で捕まえてやる!」
「どうぞご遠慮なく。人前で不適切な発言を繰り返し他のお客様にご迷惑をおかけした上に、横柄な態度で暴言を吐き続け店員に手を出され、店の品を強奪されかけたと訴えさせていただきます」
「へ、訴える?」
「なによなによ! 偉そうにしてても公爵様には逆らえっこないんだから! そうだよね、イーサン」
サラの肩をこづいたアリーシャがプルプルして言葉に詰まっていたイーサンに向かって声を張り上げた。
「あ、ああ⋯⋯そうだよな。気の強そうな顔をして⋯⋯なんとしてでも客の要望に応えようするのが商売人だろうが!」
「⋯⋯⋯⋯きつそうな顔で悪かったわね! これだけ近くにいても私が誰だか分かんないって、アンタ本当に愚図で間抜けな大馬鹿ね! ちーっとも成長してないじゃん」
「な、なんだと!」
「私はボンクラなアンタの可哀想なお兄様の元婚約者のメリッサよ! メリッサ・ターンバルド!! そんなこともが覚えてられないの!?」
「お前⋯⋯あの、黒魔術使いの魔女」
「はあ? 私は妖精族! 黒魔術なんて使うわけないじゃない!!」
「そうか、兄上に捨てられてこんなとこで商人か⋯⋯はは、情けない。いかず後家になってローゼン商会に拾ってもらったか」
「ばーか! とっくに結婚して子供も二人いるわよ! それから、捨てられたんじゃないわ。あんたがそこの尻軽にうつつを抜かして公開婚約破棄騒動なんて起こすから私のお父様がボクス公爵家を見限ったのよ、そんな事も覚えてらんないの!?」
「あれは⋯⋯」
「そこで知らん顔してるクズ女! 子供を捨てて逃げ出しといて昔の男に縋って生きてるなんて、情けないったらないわね」
「ア、アンタには関係ないじゃん!」
「ええ、この店から出て二度と来なけりゃ関係ないわよ! さっさと出てって、お店が臭くなるわ」
「貴様ぁ! 昔っから偉そーにしやがって、ムカついた! こんな店潰してやる!! それが嫌なら土下座して謝れえ」
「は! あんた、馬鹿じゃないの!?」
「俺は次期公爵だぞ、丁寧にもてなして貢物の一つも持ってこい!!」
(ギルティ2個目、いただき~)
ニヤリと笑ったメリッサがパチンと指を鳴らした。
「非常に繊細な作品でして、触れる事はご容赦いただいております」
そのテーブルクロスはこの店のオープン記念としてボビンレースの本場からプレゼントされた品の一つで、月替わりで展示している貴重な品。
「ケチくさいわね。買ったげるって言ってんのに、こっちに持ってきなさいよ!!」
サラとメリッサはそっと店の中に入って行った。
「はぁ、全くローゼン商会は使えん店ばかりだな。噂とは大違いだよ⋯⋯って、あれ? おい、そこの店員。お前どっかで会ったような⋯⋯ちょっとこっち来⋯⋯」
「申し訳ありません」
サラを見つけたイーサンが手を掴んだが、間に入った店員が少し声を張り上げた。
「謝るとかどうでもいいわ、ちょっとそこ、どきなさいよ!」
頭を下げて謝っていた男性店員を突き飛ばしたアリーシャはカウンターの中に入り込みテーブルクロスに手を伸ばした。
「お客様! 困ります、おやめ下さい!!」
吹き飛ばされた店員の元にメリッサが走り寄り、サラはアリーシャの前で両手を広げた。
「カウンターの中はご遠慮下さい」
「うっせえんだよ! 客が買うって言ったら売るのが商売だろうが! そのくらいの事も出来ないなら潰れてしまえ」
イーサンが女性店員に手を伸ばした時メリッサが前に出てイーサンの腕を掴んだ。
「お客様、店員に手を出すのはおやめ下さい」
「は? なんだお前は」
「雑貨部門を担当しております、メリッサ・ナダルと申します」
「ふーん、ならちょうどいい。さっきからあそこに飾ってあるテーブルクロスを買うと言ってるのに、店員がガタガタわけのわからんことを言うんだが?」
「説明書きにもありますように、あのお品は非売品でございます」
「だからなんだよ! あー、非売品ならタダでいいよなぁ、試供品とおんなじだよなあ」
メリッサの扇子がぼきりと音を立てて二つに割れた。
「お断りいたします」
「俺が誰だか分かってないんだろうがイーサン・ボクス⋯⋯次期公爵だぞ! そんな態度をとって良いと思ってるのか!?」
「はい、よーく存じておりますし非売品を寄越せなどと破落戸か盗賊のどちらかだと思っております」
「はあ? 言っていい事と悪い事があるだろうが! 不敬罪で捕まえてやる!」
「どうぞご遠慮なく。人前で不適切な発言を繰り返し他のお客様にご迷惑をおかけした上に、横柄な態度で暴言を吐き続け店員に手を出され、店の品を強奪されかけたと訴えさせていただきます」
「へ、訴える?」
「なによなによ! 偉そうにしてても公爵様には逆らえっこないんだから! そうだよね、イーサン」
サラの肩をこづいたアリーシャがプルプルして言葉に詰まっていたイーサンに向かって声を張り上げた。
「あ、ああ⋯⋯そうだよな。気の強そうな顔をして⋯⋯なんとしてでも客の要望に応えようするのが商売人だろうが!」
「⋯⋯⋯⋯きつそうな顔で悪かったわね! これだけ近くにいても私が誰だか分かんないって、アンタ本当に愚図で間抜けな大馬鹿ね! ちーっとも成長してないじゃん」
「な、なんだと!」
「私はボンクラなアンタの可哀想なお兄様の元婚約者のメリッサよ! メリッサ・ターンバルド!! そんなこともが覚えてられないの!?」
「お前⋯⋯あの、黒魔術使いの魔女」
「はあ? 私は妖精族! 黒魔術なんて使うわけないじゃない!!」
「そうか、兄上に捨てられてこんなとこで商人か⋯⋯はは、情けない。いかず後家になってローゼン商会に拾ってもらったか」
「ばーか! とっくに結婚して子供も二人いるわよ! それから、捨てられたんじゃないわ。あんたがそこの尻軽にうつつを抜かして公開婚約破棄騒動なんて起こすから私のお父様がボクス公爵家を見限ったのよ、そんな事も覚えてらんないの!?」
「あれは⋯⋯」
「そこで知らん顔してるクズ女! 子供を捨てて逃げ出しといて昔の男に縋って生きてるなんて、情けないったらないわね」
「ア、アンタには関係ないじゃん!」
「ええ、この店から出て二度と来なけりゃ関係ないわよ! さっさと出てって、お店が臭くなるわ」
「貴様ぁ! 昔っから偉そーにしやがって、ムカついた! こんな店潰してやる!! それが嫌なら土下座して謝れえ」
「は! あんた、馬鹿じゃないの!?」
「俺は次期公爵だぞ、丁寧にもてなして貢物の一つも持ってこい!!」
(ギルティ2個目、いただき~)
ニヤリと笑ったメリッサがパチンと指を鳴らした。
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