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第一章 終

2.おっさんがスイッチ

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 スペンサーとイーサンが居心地悪そうに、倒れた椅子を直して座り、
「ルーカスすまなかった。てっきり・・」


 青くなっているルーカスも、
「いえ、誤解されても仕方のない状況だったかもしれませんので。
リディア様、誤解を招く発言は控えていただけますか?」


 アレクが小声で、
「おっさんが敬語喋るのってやっぱキモい」

「ああ? 何つった? もっかい言ってみろ」


「ほらね? 上手にスイッチ押すでしょう?」

 ドヤ顔のリディアと、大笑いしているスペンサーとイーサン。
 ルーカスは自分の言葉に青褪めている。


「マーサ、やっぱりルーカスのスイッチは【おっさん】かしら?」



 アレクと会い、フラタニティのことを思い出したことや今後の計画を、リディアはスペンサー達に話した。


「それで、河川交易の後はチャリティ団体の立ち上げを?」

「ええ、今でも私の収入の大半は教会や孤児院に寄付していたんだけど、団体の資金の一部にするのはどうかと思って」


「不足分は?」

「知り合いの貴族や商人、職業ギルドから寄付を募るわ。
貴族は寄付が大好きだし、商人や職業ギルドは実利が伴うから乗ってくると思うの」


「人手不足はどこも深刻だからね。
勉強する内容を細分化すれば、収益を見込むのは難しくないかも。
いい話だと思うよ。
但し、アレクが成功例になってくれたらだけど」


「アレクは問題ないと思うの。
ただ、一人だけだと成功例としては弱すぎるでしょう。
後何人か探さなくちゃと思ってる」


「計画は?」

「河川交易を軌道に乗せたら直ぐ。
不確定要素は・・スペンサーかしら」


「そう言うと思ったよ。
俺が将来どうするのかを聞き出そうとしてるんだろ?
聞きたいならはっきり口にすれば良いじゃないか」

「ごめんなさい。
商会は私が勝手に始めたことだし、無理矢理参加させるのは違うんじゃないかって思ったりもしてるの」


 スペンサーは居心地の悪そうなリディアをじっと見つめている。
「じゃあ、俺は商会には関わらない」

 リディアは一瞬俯いたが顔を上げて、
「分かったわ。はっきり言ってくれてありがとう」

「って言ったら寂しい?」



 リディアは目を見開き、
「お兄様酷いわ。馬鹿・間抜け・ちび!」

「だから今は、リディアの方がちびだって。
リディアは昔から怒るといつもその三つだよね。
全然成長してないと言うか」



「イーサン、ルーカス。セオにも伝えてくれるかな。
俺は三年でここを出る。
それまでに河川交易のルートを確定して軌道に乗せてくれ。
俺が参加したら、海上交易に乗り出すから。

狙いは香辛料の買い付け」


「直接生産地から買い付けるのね」


「香辛料は中継地点が多過ぎて値段が跳ね上がってる。
直接買い付けできれば、莫大な利益があげられると思わないか?」


「「面白そうですね」」

「但し、立ち上げには莫大な資金が必要になるから覚悟して欲しい。
俺が商会に参加するのを認めてくれるならその覚悟が必要になる。
リスク計算はルーカスの専門かな?

じっくり3人で検討して欲しい」


 イーサンが首を傾げ、
「それ、検討する必要ある?」

「あるさ、俺は元奴隷でリディアの兄と言うだけだからね。
商会に参加する資格があるかどうかはしっかり吟味して欲しい。
縁故で商会員になるのは俺自身嫌だから、試験でも何でも言ってくれ」

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