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第一章 終
1.誰のケツ?
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「お帰りリディア」
「ただ今帰りました。スペンサーに会えてホッとしたわ。
今回も中途半端に終わったらどうしようって凄く不安だったの」
「前は上手く行かなかったのかい?」
「なんだか色々あって在地剰余のお話しができなかったり、中途半端なまま王都に戻ったり。
それに、ここのところ災難続きだったし」
「ところで、行きより人が増えてるみたいだね」
「そうだわ、アレクって言ってティルスの街で会ったの。
アレク、彼はスペンサーで私の兄。
隣に座っているのがイーサン、仕事仲間」
「まさかと思うけどここが事務所?」
イーサンが笑いながら答えた。
「まさか、ここはただの酒場だ」
「あんたがお嬢様の兄? 妾腹ってやつ?」
「いや、リディアとは双子だ」
アレクは不審そうにスペンサーやイーサンをジロジロ見ている。
「アレクとはティルスの街に着いて直ぐに会ったの。
漁師ギルドの長老の一人から財布を刷ろうとしてたの。
その時は今回もいつものパターンで、トラブルを解決して終わりになるのかと思ったわ」
「アレクは元奴隷でスリの・・多分・・常習犯?」
スペンサーの言葉にリディアが頷いた。
「そう言えば、ルーカスが凄かったのよ。
まるでベルセルクかウールヴヘジンみたいだったわ。
しかも左利き。何年も一緒に仕事してたのに気がつかなかったの」
「リディア様、それは・・」
スペンサーとイーサンが目を眇めた。
「つまりルーカスは変身したんだ。それ詳しく聞きたいな」
「俺にも聞かせて欲しいね」
「大した話ではありませんから。
リディア様、その話はもうやめましょう」
「何故? 変身したら大男を瞬殺して軽々肩に担いで・・息も切らしてなかったわ。
左利きのボクサーだったの」
リディアがこんな感じと言って、両手を構えた。
「ボクシングか。
道理でいい体格をしていると思った。
今までずっと鍛えてるのかな?」
「単なる体力作りですから、リディア様が仰るような事「嘘つけ、お前そこのガキよりちっこい頃からやってたじゃん。傭兵にでもなるつもりかと思ってた」」
「スイッチがどこにあるのかはまだよく分かってないんだけど、一番上手なのはアレクかしら」
「「?」」「ぷっ」
キョトンとしている男二人の様子と苦虫を噛み潰したようなルーカスを見て、マーサが吹き出した。
「アレクが駄々をこねると簡単にスイッチが入って、見ていてすっごく面白いのよ。
このルーカスがね、ケツを出せとか言うの」
がたがた、ばたん。
スペンサーとイーサンが立ち上がり、ルーカスに殴りかかる。
リディアとアレクが呆然としているとマーサが、
「待ってください! アレクのケツです!」
思わず固まる男達。マーサが真っ赤になってしゃがみ込んだ。
「どうしよう、あんな言葉大声で叫んじゃった」
「ただ今帰りました。スペンサーに会えてホッとしたわ。
今回も中途半端に終わったらどうしようって凄く不安だったの」
「前は上手く行かなかったのかい?」
「なんだか色々あって在地剰余のお話しができなかったり、中途半端なまま王都に戻ったり。
それに、ここのところ災難続きだったし」
「ところで、行きより人が増えてるみたいだね」
「そうだわ、アレクって言ってティルスの街で会ったの。
アレク、彼はスペンサーで私の兄。
隣に座っているのがイーサン、仕事仲間」
「まさかと思うけどここが事務所?」
イーサンが笑いながら答えた。
「まさか、ここはただの酒場だ」
「あんたがお嬢様の兄? 妾腹ってやつ?」
「いや、リディアとは双子だ」
アレクは不審そうにスペンサーやイーサンをジロジロ見ている。
「アレクとはティルスの街に着いて直ぐに会ったの。
漁師ギルドの長老の一人から財布を刷ろうとしてたの。
その時は今回もいつものパターンで、トラブルを解決して終わりになるのかと思ったわ」
「アレクは元奴隷でスリの・・多分・・常習犯?」
スペンサーの言葉にリディアが頷いた。
「そう言えば、ルーカスが凄かったのよ。
まるでベルセルクかウールヴヘジンみたいだったわ。
しかも左利き。何年も一緒に仕事してたのに気がつかなかったの」
「リディア様、それは・・」
スペンサーとイーサンが目を眇めた。
「つまりルーカスは変身したんだ。それ詳しく聞きたいな」
「俺にも聞かせて欲しいね」
「大した話ではありませんから。
リディア様、その話はもうやめましょう」
「何故? 変身したら大男を瞬殺して軽々肩に担いで・・息も切らしてなかったわ。
左利きのボクサーだったの」
リディアがこんな感じと言って、両手を構えた。
「ボクシングか。
道理でいい体格をしていると思った。
今までずっと鍛えてるのかな?」
「単なる体力作りですから、リディア様が仰るような事「嘘つけ、お前そこのガキよりちっこい頃からやってたじゃん。傭兵にでもなるつもりかと思ってた」」
「スイッチがどこにあるのかはまだよく分かってないんだけど、一番上手なのはアレクかしら」
「「?」」「ぷっ」
キョトンとしている男二人の様子と苦虫を噛み潰したようなルーカスを見て、マーサが吹き出した。
「アレクが駄々をこねると簡単にスイッチが入って、見ていてすっごく面白いのよ。
このルーカスがね、ケツを出せとか言うの」
がたがた、ばたん。
スペンサーとイーサンが立ち上がり、ルーカスに殴りかかる。
リディアとアレクが呆然としているとマーサが、
「待ってください! アレクのケツです!」
思わず固まる男達。マーサが真っ赤になってしゃがみ込んだ。
「どうしよう、あんな言葉大声で叫んじゃった」
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