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琥珀のネックレス

2.ミリアーナの試験

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 一週間後の昼時に王都支部へやってきたミリアーナは、かなり疲れて苛々していた。

 リディアは紅茶と茶菓子を事務員に頼み、ミリアーナと共に隣の応接室に入った。

 ミリアーナの出した資料を読み耽っていたが、

「ミリアーナ、糖菓を食べなさいな。爪を噛まずに済むかも」

「見てたの?」

「ミリアーナは昔から不安になると爪を噛む癖があったから、よく知ってるわ」

「何よ、偉そうに」

「姉だから仕方ないのかも。あなただってステラやメアリー・アンには偉そうにしてるんじゃない?
さて、この内容なんだけど現在の社会情勢とはかなりズレてるようね。
それに改善提案は意味がないか改悪になる」

「そんなわけないでしょう? リディアは間違ってるわ」


「では、向こうの部屋の事務員、誰でも良いから一人ここに来てもらって頂戴。
失礼のないようにお願いしてね」


 ミリアーナが応接室を出ていき、一人の少年を連れてきた。

(人を見る目はあるみたいね。この子は確か最近商会に入ったばかりの子だわ)

「ルーディ、これ覚えてるかしら?」

「ええっと、はい。少し内容が変わってるところがありますが、商会に入る前の試験ですね」

「ミリアーナ、彼に質問してみて」

「良いわよ。陸上交易で一番注意する点は?」

「積載量だと思います」
「何で? 山賊の方が危険じゃない」
「確かにそうなんですけど、山賊は何処にでもいますから。
積載量は移動距離や移動速度に大きく影響するので、休憩地点の確保や到着時間の予測に大きく影響します」


「銀については?」

「最近銀の産出量が減ってきているので、価格の変動に注意が必要です。
原因は坑道に溢れている水のせいなので、それを排出する方法が見つかれば価格はまた安定すると思います」


 ミリアーナはまた爪を噛み始め、リディアは糖菓の皿をミリアーナの前にそっと押し出した。

「ありがとうルーディ。忙しい所助かったわ」

「失礼します」


「・・こんな事、これから勉強すれば幾らでも覚えられるわ」

「そうね、ルーディと一緒に働いてみる?
彼の補佐? ルーディの指示で彼の仕事を手伝ってみるとか」


 ミリアーナは3日後リディアの所に駆け込んできた。

「冗談じゃないわ、こんな事やってられない」

「どうしたの?」

「書類のスペルが違うとか、束ね方が雑だとか。おまけにこの暑い中歩いて買い物に行けっていうのよ」

「ごく当たり前のことよ。
ミリアーナだって街に出てきてる時必要なものが出たら、メイドに買いに行かせるでしょう?
その時一々馬車を仕立てたりなんてしないわ」

「私は貴族なのよ!」

「ここでは違うの。
ここにいる間はあなたも私もただの商会員ですもの」

「リディアは歩いて買い物に行くとでも?」

「ええ、行くわよ。直ぐいなくなるって叱られるくらい」


「私には無理だわ」



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