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琥珀のネックレス

1.ミリアーナの覚悟

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 ポーレット伯爵は執務机で書類の精査をしており、義母アリシアはソファで刺繍をしている。

「お父様、スペンサーが見つかりましたの」

 ポーレット伯爵が慌てて立ち上がり、インク壺が倒れ書類が床に散乱した。

「どこだ? 連れて帰ったのか?」

 部屋を飛び出そうとする父親に事情を説明した。

「そうか、会いに行くぞ。
リディア、スペンサーは何が好きだったか覚えているか?
今何かいる物はないのか?」

 直ぐにでも飛び出していきそうな勢いの父親を止めようとしていた時、ミリアーナがノックもなしに飛び込んできた。

「リディア酷いわ、ネックレスの代金を払えだなんて」

「ミリアーナ、それはリディアには関係ないと何度言ったらわかるんだ」


「お父様はリディアばかり可愛がって、どうせ私の事なんて気にもかけておられないんだわ。
あんなネックレス、リディアにとったら大した金額じゃないくせに」


「いい加減にしろ。ミリアーナ、自分のしでかしたことの責任は取りなさい。
人の者を壊したら謝り弁償するのは大人として当然の事だ」


「ミリアーナ、公爵家に帰らなくていいの?」
「帰れるわけないでしょう?
私はロバート様から嘘つきの役立たずだって言われたのよ」

「ねえミリアーナ、あなたが気にしてるのは本当に商会の利益の事かしら?」

「当然でしょう。私がこの家の娘だって言うのなら、私だって商会の利益を貰って良いはずよ」

「分かったわ。
私は商会で仕事をしてお金を貰ってるの。
だからミリアーナも商会で仕事をしましょう」

「突然どう言うこと?」
 ミリアーナが訝しげな顔で聞いてきた。

「利益を求めるなら商会で働くの。そうすれば私と同じだわ、どうする?」

「いいわ、働くわよ」

「じゃあ、ちょっと待っててね」

 リディアは自室に帰り、数冊の書類の束を持ってきた。

「はい、これを読んで報告書をまとめて頂戴。
これは新しい商会員が入るときの試験用の資料よ。
定期的に内容は更新してるけど、商会員は全員受けている試験なの」

「報告書なんて書いたことないわ。どういう物なのかも分からない」

「だったら、問題点や改善案を提出して頂戴。
その内容を会議にかけて、雇うかどうか決定するから」

「そうやって私を馬鹿にしたいのね。
できるわけのない事をやらせて駄目でしたって言う為に」

「いいえ、これは入社前に全員がやってる事だから。
本当に商会に関わりたいのなら報告書か問題点と改善案のどちらかを書面で出して頂戴。
うちは仕事の出来る人しか雇わないから」

「リディアには出来るとでも?」

「出来るわ、それを作って毎回更新してるのは私だもの。
勿論、試験に使う前に補佐数名の監査が入るけど。
本気で働きたいなら1週間後迄に提出して頂戴。提出された内容で合否決定されて合格なら部署と仕事内容が決まるから」

「一週間ね、やってやるわ」

「自力でやったのかどうかか確認が入るからしっかり読み込んで口頭面接で慌てないようにね」

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