【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

イーサンを探せ

9.スリングショット

「ここ最近のお嬢様の活躍ぶりをお聞きになりたいなら、３日か４日位はお時間を頂きませんと。
今頃セオが白髪になっていてもおかしくありませんね」

「お嬢、俺もう暫くここにいなきゃいけないんだけど」

「勿論よ、スペンサーの事ちゃんと見張っててね。
何をしでかすかわかんないから」

「それはお嬢の事だろ」

「何も問題はないのよ。セオとお父様にお任せしてあるから」

「って事は問題は２つあるって事？」

「あら？　そんなこと言ってな「そうです」」

「はぁ、マーサ」

「坊っちゃまに危険意識を持っていただきませんと。
お嬢様の暴走を止められるのは坊っちゃまだけかもしれません」

「最後の砦だな」

　スペンサーはマーサとイーサンを見比べながら、
「相当凄いんだね」

　二人が大きく頷いた。


「俺はここから５年は離れられないし、イーサン達に頑張ってもらわないと」

「坊っちゃま、甘うございます。イーサン達はお嬢様がにっこり笑ったら何でもありですから」

「それって・・イーサン、リディアに手を出したらどうなるか分かってる？」

「イーサン、私に膝蹴りを教えてくれたのはスペンサーなの。
この間すっごく役に立ったわ」

　ドヤ顔で自己申告したリディアに、

「・・お嬢様、自分で墓穴掘らなくても」


「お嬢の膝蹴りって手加減無しで来そうだな。去勢されるってやつか？」

「イーサン、２回目の時に少し加減の仕方覚えられたと思うのよ。だから大丈夫」


　イーサンとスペンサーが真っ青になっていった。

「リディア、２回目って」

「スペンサー、大丈夫。２人に１回ずつだもの」

「・・マーサ、５年をもっと短くできる方法を考えてみるよ。リディアを野放しにするのは野生の熊より危険そうだ」

「「是非お願いします」」


　リディアはスペンサーとイーサンが帰って行くのを窓から眺めていた。

（坊っちゃまと話される時、まるで昔の子供の時の様な話し方になっておられたわ）


「マーサ、明日は王都に帰らなくちゃね」

「お帰りになるんですか？　期限までまだ時間があると思いますが？」

「ここにいたらスペンサーに毎日会いに行ってしまいそうなの。
ランカスター伯爵にこの事がバレたら何かしそうだもの。
あの人は危険だわ」

「そうですね。裏で何を考えてるかわからない感じでしたね」

「ええ、正に貴族って感じ」



　グリューニーの商人ギルドでウォルフ・マンクに礼を言い、王都のポーレット伯爵邸に戻った。

　リディアは部屋に落ち着いてからマーサに伝言を頼んだ。

「お父様にお会いしたいって伝えてくれるかしら」